記憶のカケラを見に先ほどの部屋に来た僕達だったが…
「そういえばあの人魂、からくり箱にしまって開けられなくなったって言ってたな…」
「これって、開けられるんですか?」
「うーん…」
僕はからくり箱を見る。箱の上部には0~9の数字が書かれた木のボタンがあり、このボタンを押せば開くのだろう。適当に押してみるが反応がない。
「困ったな、からくり細工だからそんなに桁数は多くないと思うけど…」
仮に4桁のパスワードだとしても同じ数字を使っていいのなら10000通りあるぞこれ。
「何かヒントとかないかな」
言い方が適切じゃないかもしれないが、高齢者はパスワードをメモしていることが多い。通帳の表紙に暗証番号を書いている人もいるくらいなのだ。何かヒントくらいなら書いているかも…
「あ、京介さんこれ」
紅葉が箱の下を指さす。そこには
シュウカトウシュンノウタアワセ
と書かれていた。
「シュウカトウシュンノウタアワセ…なんだそれ」
シュウカトウシュンノウタアワセ…ウタアワセとは歌合わせだろうか。じゃあ、シュウカトウシュンの歌合わせだと思われるが…
「シュウカトウシュンってなんだ…?」
「春夏秋冬なら知ってますけど」
「いや、シュウカトウシュンだから似てるけど違うね。うん?シュウカトウシュン…?」
「あ、もしかして秋夏冬春って意味じゃないですか!」
「僕もそう思った。もしかしてその歌に秘密が隠されてるんじゃないかな。でも、肝心の歌合わせって言われると…」
「掛け軸に歌が書かれてましたよ」
「見に行ってみようか。ちゃんと読めてないし」
「そうですね」
僕たちは隣の部屋に向かった。
「確かに和歌は書いてあるね」
僕は掛け軸を見つめる。
三輪山を しかも隠すか 春霞 人に知られぬ 花や咲くらむ
五月待つ 花橘の 香をかげば 昔の人の 袖の香ぞする
白露の 色はひとつを いかにして 秋の木の葉を ちぢに染むらむ
ふるさとは 吉野の山し 近ければ ひと日もみ雪 降らぬ日はなし
「あ、この四つの歌どれも季節の歌ですね」
「確かに、『春霞』、『秋の木の葉』は春と秋だね。『み雪』は雪だし冬だろうね。残ったものが夏なのかな」
「『五月』は初夏ですし、暦の上では夏ということでしょう」
言われてみれば、五月五日から立夏と呼ばれていた気がする。
「よく見てみるとこれ、和歌の中に数字が入ってる」
三輪山の三、五月の五、色はひとつの一、ひと日の一、み雪のみは、恐らく「美」だろう。
この数字を秋夏冬春に当てはめてみると…
「1513かな」
「…入れてみましょう」
「うん」
神妙な面持ちで紅葉がこちらを見つめる。数字を確認しながらからくり箱のボタンを押す。
すると、かちりと音を立てて箱が開いた。
「…」
「…」
箱を開けると中にはガラス片があった。おそらく最後の一枚だろう。
「先に僕が見ようか?」
「…そうですね、お願いします」
「うん、分かったよ」
先ほどまでと同じように僕はカケラに手を伸ばした、その時だった。
カタカタカタ…
「え?震えてる?」
カケラがカタカタと震えているかと思うと、突如まばゆい光に包まれる。
「うわ!」
「きゃっ!」
当たりを包み込むほどの光に僕たちは飲み込まれた。
おまけ 本庄さんと大園さん
とある日の放課後 放送室
「…」
「(はあ…本庄先輩っていいな。あんな胸大きくて…やっぱり胸大きい方がいいのかな…)」
「…」
「(はあ…大園さんのスリムさが羨ましい…やっぱり男の子ってすらっとしてる方がいいよね…)」
「「はあ…」」
「なあ日向、あの2人はお互いを見つめあってなぜため息をついてるんだ?」
「…わからない。でも何か悩み事なのかな」
「2人とも、悩み事か?」
「なんでもないですよー」「なんでもないよ…」
「…そうか?」
「2人とも、何かあれば相談に乗るよ」
「(一番相談できなさそうな人が言ってきましたね)」
「(君のせいで悩んでるんだけど…)」
コンコン
「うん?はい」
「あ、いたいた。おい日向」
「新山先生、どうかしました?」
「お前、屋上にプランター運んだだろ?排水溝塞いでるみたいで水漏れしてるんだ。少し動かしてくれ」
「うわ!それは申し訳ないです!急いで動かしに行きます!」
「俺も手伝おう」
「それは悪いよ…」
「構わない。もうそろそろ部活の方に行こうと思っていたからな。終わり次第部活に行く。そのついでだ」
「それならお言葉に甘えるよ。ちょっと行ってくるね!」
「いってらっしゃいー」「気をつけてね」
バタン
「本庄先輩ちょっといいですか?」
「どうかしたの?」
「参考までに先輩の胸を揉ませてください」
「なんの参考!?」
「お願いします先輩、今から一年間でどれくらいの成長幅なのかを知っておきたいんです」
「えー…恥ずかしいよ…」
「お願いします!パフェ奢ります!」
「う…そ、それじゃあ…私も一つお願いしていい?」
「なんでしょう」
「大園さんの腰回りの肉付きを確かめたいんだけど」
「に、肉付きですか…いいですけど…」
「ありがとう!」
「それじゃ、立ってもらって…行きますよ先輩」
「う、うん!どんとこい!」
スッたゆん
「」「う、く、くすぐったいね…」
「(何この重量感…!超巨大なスクイーズでも入ってるの!?)」
「大園さん?」
「は、いえいえ、ありがとうございます。確か腰回りでしたっけ?どうぞー」
「う、うん。いくね…!」
スッ
「」「あわっ!腰回り触られるとゾクってしますよね…!」
「(何これ!?同じ内臓入ってるの!?細すぎてびっくりするんだけど!)」
「先輩…?鼻息荒いですよ?」
「あ、ごめんね!」
「先輩、もう少し触っていいですか?」
「う、うん。いいよ。私もいい?」
「はい、いいですよ」
「(あと一年でこの大きさまでするには…牛乳、鶏肉、そしてキャベツもいいって聞いたけど)」モミモミ
「(この細さにするには…やっぱり腰回りの運動?フラフープとか?)」さわさわ
「ただいまー」
「」「」
「…失礼しました」
「待って日向君!誤解!誤解だから!」
「先輩待って!話を聞いて!」
「ごめん!お邪魔しちゃった!何も見てない!」
「だから!」「違うんだってばぁ!」
しばらく、大園さんたちと目を合わせられない日が続いたのだった。