ALIEN: BELIUS IV   作:もいもい130

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急にAlienと海兵隊が描きたくなった(´・ω・`)


酸雨の墓標
第1話:降下(ベリウスIVの咆哮)


 

 

### 第1部:鋼鉄の雨とジャングルの洗礼

 

 恒星間強襲揚陸艦『ガズラー』の格納庫に、金属的なアナウンスが響き渡った。

「降下10分前。全ユニット、M577-A2『マンティコア』へ搭乗せよ」

 

 マッケンジー少尉は、愛用のパルスライフルのボルトを引き、薬室を確認した。カチリ、という硬質な音が、戦場へのスイッチを入れる。

彼の背後には、連邦海兵隊が誇る第312特務小隊、通称「ヘルハウンド」の面々が揃っていた。総勢10名。最新鋭のタクティカル・アーマーに身を包んだ彼らは、一人一人が歩く兵器庫のような威容を放っている。

 

「少尉、今回の『荷物』は相当ヤバそうですね。ウェイランド・ユタニの連中、生体兵器の実験でもこじらせたんですか?」

 重火器担当のドレイクが、M56スマートガンの重い給弾ベルトを調整しながら軽口を叩く。彼のバイザーには、既に射撃管制システムが起動し、グリーンのデータが流れていた。

 

「余計な推測は命取りだ、ドレイク。我が任務は生存者の救出と施設の確保。それ以外はボーナスだと思え」

 マッケンジーが短く突き放すと、通信担当のヴェガが冷ややかに付け加えた。

「救難信号の波形を解析しましたが、叫び声の背後で聞こえるノイズ……あれは機械の故障音じゃありません。生物の、それも巨大な個体の多重奏です」

 

 小隊は、巨大なタイヤを鳴らして待機する重装甲車『マンティコア』に次々と乗り込んだ。

車内は最新のホログラフィック・ディスプレイが周囲の状況をリアルタイムで投影し、戦術支援AIが最適な降下ルートを算出し続けている。

 

「降下艇『ドラグーン』、ドッキング解除。突入開始!」

 

 激しい衝撃が小隊を襲った。大気圏突入の摩擦熱で、外装が悲鳴を上げる。

マンティコアを腹に抱えた降下艇は、植民地惑星ベリウスIVの分厚い雲海を突き破り、湿った緑の地獄へと急降下した。

 

 着地の衝撃。

ハッチが開き、マンティコアの巨大なタイヤが泥濘を跳ね上げて発進した。

外は猛烈な酸性雨が降り注ぎ、原生林の巨大な樹木が装甲車の行く手を阻む。だが、マンティコアの上部に据え付けられた連装パルスキャノンが、邪魔な巨木を光条と共に粉砕し、強引に道を切り拓いていく。

 

「第2分隊、ブラッドリー軍曹。周囲の警戒を厳にせよ。タレットを車外に展開する」

 マッケンジーの指示で、装甲車の側面パネルが展開。4基のUA 571-C自動タレットが自動的に配置され、360度の殺傷圏を形成した。

 

 研究所「ジャングル・デルタ」のゲート前に到達した時、マッケンジーは異様な光景を目にした。

厚さ30センチの強化チタン合金製の門が、内側から「引き裂かれて」いたのだ。熱で溶けたような跡と、暴力的なまでの力による破壊。

 

「……ハリス、ドローンを出せ。内部のスキャンを急げ」

 技術兵のハリスが、小型の偵察ドローンを放つ。ドローンは青白いレーザー光を放ちながら、闇に包まれた研究所の奥へと吸い込まれていった。

 

 マンティコアのメインモニターに、ドローンが送ってくる映像が映し出される。

廊下の壁一面に塗りたくられた、黒い樹脂状の物質。

そして、その物質に埋め込まれるようにして静止している、数数の「影」。

 

「少尉……これを見てください」

 ハリスの声が震えていた。

サーマルセンサーが捉えたのは、壁の中に潜む無数の小さな熱源。

それは、何かの心拍のように、不気味に、規則正しく脈動していた。

 

「ピッ……ピッ……ピッ……」

 車内の大型動体探知機(モーション・センサー)が、初めて反応を示した。

それも、一箇所ではない。

装甲車の真下、床下、および頭上の木々。

全方向から、信じられない速度で「何か」が収束しつつあった。

 

「全員、戦闘配置! マンティコア、全システムを戦闘モードへ移行!」

 マッケンジーの叫びが、装甲車内に響き渡る。

最新鋭の要塞が、ついにその牙を剥く時が来た。だが同時に、彼らはまだ気づいていなかった。

自分たちが持ち込んだこの「鋼鉄の箱」こそが、奴らにとって最高の「獲物」であることを。

 

### 第2部:遭遇と戦慄

 

 装甲車マンティコアのハッチが重々しく開き、マッケンジー少尉率いる第1分隊が泥濘の地表へと降り立った。

頭上ではマンティコアの連装パルスキャノンが、ジャングルの闇を威圧するように低く唸りを上げている。

 

「第2分隊、ブラッドリー軍曹。お前たちはマンティコアを死守しろ。タレットの射線を重ね、ネズミ一匹通すな」

 マッケンジーの指示に、ベテランのブラッドリーが短く応じる。

「了解だ、少尉。この『動く要塞』に近づく奴は、跡形もなく消し炭にしてやる」

 

 マッケンジー、ドレイク、ヴェガ、および技術兵ハリスの4名は、引き裂かれた研究所のゲートを潜り、内部へと足を踏み入れた。

ヘルメットに装着された高輝度LEDライトが、埃の舞う廊下を白く切り裂く。

壁は奇妙な黒い樹脂状の物質に覆われ、まるで生物の内臓の中に迷い込んだような錯覚を覚えさせた。

 

「……少尉、これを見てください」

 ヴェガが壁の一部を指差した。

そこには、ウェイランド・ユタニ社の警備兵と思われる死体が、壁と一体化するように塗り込められていた。

彼の顔は絶望に歪み、その胸部は内側から爆発したように無惨に突き破られている。

 

「チェストバスターか……。ここまでの繁殖規模、報告にはなかったぞ」

 ドレイクがスマートガンのグリップを握り直す。

その時、ハリスが持つポータブル・モーション・トラッカーが、鋭い電子音を奏で始めた。

 

「ピッ……ピッ……ピッ……!」

 

「来ます! 距離30、20……上です! 天井のダクト内!」

 

 ハリスの叫びと同時に、頭上の通気口の格子が弾け飛んだ。

闇の中から、濡れた黒い外殻を持つ「死神」が、音もなく舞い降りる。

ゼノモーフだ。

 

「撃てッ!!」

 

 マッケンジーのパルスライフルが咆哮を上げた。

10mm炸薬弾 soldier連射が、エイリアンの肩部を粉砕する。

「ギギィッ!」という耳を突き刺すような悲鳴と共に、黄色い強酸性の血液が壁に飛び散り、コンクリートを激しく焼き溶かした。

 

 ドレイクのスマートガンも火を噴く。

コンピュータ制御の自動照準が、暗闇を縦横無尽に跳ね回るエイリアンの動きを正確に追尾し、大口径の弾丸がその細長い頭部を叩き割った。

だが、一体を仕留めた喜びは、即座に絶望へと塗り替えられる。

 

「ピッピッピッピッピッ……!」

 

 トラッカーの音が、もはや区切りのない連続音へと変わった。

廊下の前後、さらには足元のグレーチング(格子状の床)の下からも、無数の爪の音が響き始める。

 

「囲まれた! マンティコアへ撤退しろ! 下がれ、下がれッ!」

 

 4人は背中を合わせ、火線を維持しながら後退を開始した。

最新鋭の装備による弾幕は、確かにエイリアンを次々と肉片に変えていく。

しかし、奴らは仲間の死体を踏み越え、さらには天井や壁を立体的に利用して、海兵隊の射線を巧みに潜り抜けてくる。

 

「少尉、外も交戦中です! ブラッドリーたちの悲鳴が……!」

 ヴェガのインカムから、激しい銃声と罵声が混じり合ったノイズが漏れ出す。

 

 彼らが研究所の出口に辿り着いた瞬間、外の光景に息を呑んだ。

最新鋭の装甲車マンティコアが、巨大な漆黒の「波」に飲み込まれようとしていたのだ。

数十体という単位ではない。

ジャングルの闇から、果てしない数のゼノモーフが、自爆も厭わぬ勢いで装甲車に飛びかかっていた。

 

「タレットB、弾切れ! 奴ら、数が多すぎるッ!」

 外周を警戒していた第2分隊の悲鳴が響く。

1基のUA 571-C自動タレットが、エイリアンの強酸にまみれて火花を散らし、沈黙した。

 

「ブラッドリー! ハッチを開けろ! 中に入るぞ!」

 マッケンジーが叫びながらマンティコアへ駆け寄る。

だが、その時、装甲車の底面から、これまでの個体とは比較にならないほど巨大な「尾」が伸び、足元の隊員一人を軽々と空中へと跳ね上げた。

 

「……あ、がっ……!?」

 

 海兵隊員が、ジャングルの奥へと引きずり込まれていく。

最新鋭のタクティカル・アーマーも、その理不尽な暴力の前には紙細工に等しかった。

 

「総員、マンティコア内へ収容! 閉鎖防御(クローズド・ディフェンス)に移行しろ!!」

 

 マッケンジーたちは、地獄と化したジャングルを後にし、血痕のついた装甲車の内部へと滑り込んだ。

背後で重厚なハッチが閉まる。

だが、その鋼鉄の壁を隔てたすぐ向こう側から、無数の「爪」が装甲を掻きむしる、悍ましい音が響き渡っていた。

 

### 第3部:鋼鉄の棺桶

 

 重厚なハッチが閉まると同時に、外部の豪雨と銃声が遮断され、車内には不気味なほどの静寂が訪れた。

だが、それは一瞬のことだった。

装甲車の外壁を、無数の鋭利な爪が「キィィィィン」と削り取る、耳を劈くような音が四方八方から響き渡る。

 

「報告せよ! 第2分隊、被害状況は!」

 マッケンジー少尉の怒号が、赤い非常用照明(エマージェンジー・ライト)の下で響く。

 

「……サンチェスとミラーがやられました。外周警戒中に、上から……」

 ブラッドリー軍曹が、煤に汚れた顔で吐き捨てた。

彼のタクティカル・アーマーには、仲間のものと思われる鮮血がべっとりと付着している。

精鋭10名のうち、既に2名を失った。降下からわずか30分も経っていない。

 

「全システム、クローズド・ディフェンス(閉鎖防御)に移行! 外部カメラをモニターに回せ!」

 ハリスが震える指でコンソールを叩くと、メインモニターに外の光景が映し出された。

そこには、マンティコアの装甲に群がる漆黒の影があった。

奴らは連装パルスキャノンの死角を正確に突き、砲身を力任せに曲げようとしている。

 

「ピッ……ピッ……ピッ……」

 車内のモーション・センサーが、不吉なリズムを刻み始めた。

 

「少尉、おかしいです。外部の反応だけじゃない……。この音、もっと『近い』」

 ヴェガが顔を強張らせ、床下を指差した。

マンティコアの強固な底部装甲。しかし、そこには研究所から持ち帰ってしまった「あるもの」が付着していた。

強酸性の血液だ。

 

 ジジッ、ジジジ……という、金属が焼ける嫌な音が足元から聞こえてくる。

「馬鹿な……。マンティコアの複合装甲を溶かしているのか!?」

 ドレイクがスマートガンを床に向ける。

 

 次の瞬間、床の装甲板がドロリと溶け落ち、真っ赤に焼けた穴が開いた。

そこから、蛇のようにしなる漆黒の尾が飛び出し、近くにいた通信兵の足首を貫いた。

 

「ぎゃあああああッ!!」

 

「撃て! 撃てえッ!」

 マッケンジーの命令を待たず、狭い車内でパルスライフルの銃声が炸裂した。

10mm炸薬弾の連射が跳ね返り、火花が散る。

穴から這い出そうとしたゼノモーフの頭部をドレイクが粉砕したが、酸の返り血が車内の精密機器を次々とショートさせていく。

 

「システムダウン! 自動消火装置、作動しません!」

 ハリスの悲鳴。

車内には白煙が立ち込め、電子機器の焦げる臭いと、酸の刺激臭が充満していく。

最新鋭のハイテク機器が、原始的で強力な酸によって次々と無力化されていく皮肉。

 

「……マッケンジー、ここはもう保たん! 外へ出るぞ!」

 ブラッドリーが叫ぶ。

だが、モニターが死ぬ間際に見せた映像には、ジャングルの闇からさらに増援として現れた、数百体ものゼノモーフの光る眼が映っていた。

 

 外は地獄、中は棺桶。

 

 マッケンジーは、パルスライフルの残弾を確認した。

「95」。

彼は血のついた唇を歪め、不敵に笑った。

 

「ブラッドリー、ドレイク、ハリス。……全員、酸素マスクを装着しろ。ハリス、マンティコアの動力源をオーバーロード(過負荷)させろ」

 

「少尉、まさか……自爆させる気ですか!?」

 

「ただ死ぬつもりはない。この『鋼鉄の箱』を巨大な手榴弾に変えて、奴らの真っ只中でぶち撒けてやる。……ハッチ開放と同時に、北のアドバンス・ポスト(前哨基地)まで全速力で駆け抜けるぞ!」

 

 隊員たちが覚悟を決めたように、重い呼吸音と共にマスクを装着する。

車体の振動が激しくなる。

奴らがついに、屋根のハッチをこじ開けようとしていた。

 

「カウント、5……4……3……」

 マッケンジーが引き金に指をかける。

最新鋭の装備を失い、泥塗れの肉体一つでジャングルの深淵へ飛び込む。

海兵隊の本当の戦いは、ここから始まるのだ。

 

「開けろッ!!」

 

 マンティコアのハッチが爆発的に開放された。

飛び出していくマッケンジーの視界に、雨に濡れ、銀色の歯を剥き出しにした死神たちの群れが映った。

 

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