ALIEN: BELIUS IV   作:もいもい130

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第4話:深淵(狂気の遺産)

 

 

### 第1部:腐食の沼

 

 アドバンス・ポストの巨大アンテナが崩落した轟音は、降り続く酸性雨の音にすぐに飲み込まれた。

 

 ジャングルの深部へと進むにつれ、植生はさらに異様さを増していった。

 そして、小隊の足元の泥濘は、ついに彼らの膝を飲み込むほどの「沼」へと姿を変えていた。

 

 それは、ただの泥水ではない。

 ベリウスIVの空から降り注ぐ強酸の雨が、窪地に長期間澱み、濃縮された「腐食の沼」だ。

 水面からは鼻をつくような黄色い有毒ガスが立ち上り、沈んだ枯れ木が溶け崩れていく不気味な音が絶え間なく響いている。

 

「……迂回ルートを探しますか、少尉」

 ヴェガ上等兵が、ぬかるみに足を取られながらマッケンジー少尉に尋ねた。

 

「いや、そんな時間はない。救難信号を拾った軌道上の母艦が、いつ見切りをつけるか分からないからな」

 マッケンジーは、沼の向こう側――黒々とした巨大な影を落とす、ウェイランド・ユタニ社のメイン施設を睨みつけた。

 

「強行突破する。足元に気をつけろ、コーティングが保たないぞ」

 

 六名の海兵隊員たちは、覚悟を決めて酸の沼へと足を踏み入れた。

 

 一歩進むごとに、ジュワッという不吉な音が足元から上がる。

 タクティカル・アーマーの耐酸コーティングは、これまでの激戦と長時間の行軍ですでに限界を迎えていた。

 ブーツの接合部や装甲の隙間から、強酸の泥水が容赦なく侵入してくる。

 

「ぐっ……!」

 ドレイク兵長が、苦悶の声を漏らした。

 重量のあるスマートガンを抱えている彼は、人一倍深く沼に沈み込む。

 ズボンの生地が溶け、生身の皮膚が酸で焼かれる激痛が走っていたのだ。

 

「止まるなドレイク。止まれば骨まで溶けるぞ」

 衛生兵のポポフ一等兵が、泥水を掻き分けてドレイクの横に並び立つ。

 彼は歩みを止めないまま、手にしたオートインジェクターをドレイクの太ももに乱暴に押し当てた。

 

「痛いか? 生きてる証拠だ。これでしばらくは火傷の痛みも忘れる」

 プシュッという圧縮音と共に、強力な鎮痛剤が打ち込まれる。

 

「……ありがてえ、ポポフ。お陰で最高にハイな気分だ」

 ドレイクは引きつった笑いを浮かべ、再びスマートガンの銃身を前へ向けた。

 

 全員が歯を食いしばり、顔を歪めながら、腐食の沼を歩き続ける。

 神経を削るような痛みと、立ち込める有毒ガス。

 そして何より、足を取られて思うように動けないという事実が、歴戦の隊員たちの心を確実にすり減らしていた。

 

「……少尉」

 突然、ヴェガが立ち止まり、モーション・トラッカーの画面を凝視した。

「微弱な反応。……極めて近いです。ですが、環境ノイズが多すぎて座標が特定できません」

 

 周囲には、黄色いガスと酸性雨のカーテンが広がるのみ。

 木々の枝にも、沼の対岸にも、動く影はない。

 

「下だ!!」

 ブラッドリー軍曹が、私物のイサカM37を水面へ向けたのと同時だった。

 

 バシャアアアッ!

 

 泥の底から、漆黒の怪物が勢いよく飛び出してきた。

 奴らは沼の底で完璧に泥と同化し、息を潜めて待ち伏せていたのだ。

 環境に適応した、泥まみれのゼノモーフ。

 

「撃て!」

 マッケンジーの叫びと共に、銃声が沼地に轟く。

 

 だが、足場が悪すぎる。

 パルスライフルの射撃は僅かに逸れ、ドレイクのスマートガンも、この近距離の乱戦では味方を巻き込む恐れがありフルオートで撃てない。

 

「ギシャアアアッ!」

 一体のゼノモーフが、水面を滑るような恐るべき跳躍力で、最年少のチェン一等兵に襲いかかった。

 泥に足を取られていたチェンは、回避行動を取ることもできず、迫る銀色の顎を見つめる。

 

「チェン!!」

 横から巨体がぶつかってきた。ブラッドリーだった。

 彼はチェンを力任せに突き飛ばし、自らがゼノモーフの鋭い爪を胸のアーマーで受け止めた。

 

 ガキンッ!

 チタン合金の装甲が嫌な音を立てて削れ、ブラッドリーは巨大な質量に押し潰されるように、酸の沼へと背中から倒れ込んだ。

 

「軍曹!!」

 チェンが泥水に顔を突っ込みながら叫ぶ。

 

 ゼノモーフがブラッドリーの上に馬乗りになり、内なる顎(インナーマウス)を突き出そうと口を大きく開いた。

 ブラッドリーは散弾銃の銃身を敵の喉元に押し当てて抵抗するが、泥水に浸かったせいでポンプアクションが作動しない。

 

「クソ虫が……俺の若いモンに、手を出してんじゃねえ……!」

 ブラッドリーが血を吐きながら呻く。

 その顔のすぐ数センチに、死の牙が迫る。

 

 その時。

 

 ダダダダンッ!!

 

 正確な四点バーストの銃撃が、ゼノモーフの側頭部を完璧に貫いた。

 頭蓋を粉砕された怪物は、悲鳴を上げる間もなく、黄色い酸の血を撒き散らしながらブラッドリーの横へと崩れ落ちた。

 

 硝煙を上げるM41Aパルスライフルを構えていたのは、チェンだった。

 彼の目には、かつて実戦に怯えていた青年の面影はない。

 泥と仲間の血に塗れ、ただ純粋な生存と反撃の意志だけが宿っていた。

 

「……大丈夫です、軍曹! 訓練通りにやれば……奴らだって、ただのデカい虫なんだから!」

 

 チェンは自らに言い聞かせていたかつての言葉を、今度は確信に満ちた声で放ち、ブラッドリーの腕を掴んで泥水から強引に引き起こした。

 

「……へっ。言うようになったじゃねえか、ひよっこが」

 ブラッドリーは泥を吐き出しながら、ニヤリと笑みを浮かべた。

 

「無駄話は後だ! 突破するぞ!」

 マッケンジーが火炎放射器で水面を焼き払い、残りの群れを牽制する。

 炎と蒸気が入り混じる地獄の中を、六名は一丸となって突き進んだ。

 

 やがて、ブーツの裏が固いコンクリートの感触を捉える。

 ついに沼地を抜け出したのだ。

 

 酸による火傷で全員が満身創痍だったが、彼らの眼差しは決して折れていなかった。

 見上げる先には、分厚い隔壁に守られたウェイランド・ユタニ社の巨大研究所が、冷たい人工の光を放ってそびえ立っていた。

 

### 第2部:蜘蛛の糸と虚ろな巨城

 

 ウェイランド・ユタニ社、ベリウスIV巨大研究所。

 そのメインエントランスを塞ぐ分厚い鋼鉄の隔壁が、青白い火花を散らして軋んだ。

 

「……よし、ロック機構は焼き切った!」

 ポポフ一等兵がポータブル溶接機を後方に投げ捨てる。

 

「下がりな! 仕上げは俺がやる!」

 ドレイク兵長が前に踏み出し、M56スマートガンの銃口を焼け焦げた蝶番へと押し当てた。

 耳を劈くような連射音が轟き、大口径の弾丸が分厚い金属を完全に粉砕する。

 

 ズドォォン、という重い音と共に、巨大な隔壁が内側へと倒れ込んだ。

 

「突入する。警戒を怠るな」

 マッケンジー少尉を先頭に、六名の海兵隊員は油断なく銃を構え、漆黒の巨城へと足を踏み入れた。

 

 施設内は、不気味なほど静まり返っていた。

 非常用の赤い照明だけが、等間隔で冷たい光を放っている。

 

「……なんだ、ここは」

 ブラッドリー軍曹が、イサカM37を構えたまま低く唸った。

 

 エントランスホールは、凄惨な地獄絵図の痕跡に満ちていた。

 壁一面に刻まれた無数の弾痕、ひしゃげたバリケード、そして強酸によってドロドロに溶かされた自動警備システムの残骸。

 床には、夥しい量の血溜まりが黒く変色してこびりついている。

 

 だが、奇妙だった。

 これほどの激戦があったにも関わらず、人間の死体も、あのゼノモーフの死骸も、ただの一つすら転がっていないのだ。

 

「綺麗に『お掃除』された後ってわけか。気味が悪いぜ」

 ドレイクが、スマートガンの銃身で床の血痕を指し示す。

 

「ヴェガ、セキュリティルームへ向かえ。メインフレームにアクセスして、現状を把握する」

 マッケンジーの指示に、ヴェガ上等兵は無言で頷き、ガラスが粉砕された受付の奥へと進んだ。

 

 彼女は生きている端末を見つけると、手早くケーブルを接続し、キーボードを叩き始める。

 

「……メインフレームへの侵入に成功。……少尉! 通知があります!」

 常に感情を表に出さないヴェガの声が、微かに上ずった。

 

「第3話で送信した広域SOSに対する、自動応答シグナルです。……軌道上の母艦が、こちらからのデータを受信しました!」

 

 その言葉に、小隊の全員が息を呑んだ。

 

「マジかよ……! 助けが来るのか!」

 チェン一等兵が、パルスライフルを握りしめたまま歓喜の声を上げる。

 

「回収用の降下艇(ドロップシップ)が発進。座標は、この施設の屋上にあるメインポート。……到着まで、残り四十分です!」

 

 四十分。

 あと四十分生き延びて屋上へ辿り着けば、この地獄から抜け出せる。

 蜘蛛の糸が、暗闇の底に垂らされた瞬間だった。

 

「よくやったヴェガ! 屋上ポートへの直通エレベーターを動かせるか?」

 マッケンジーが身を乗り出す。

 

「……やってみます。ただ、施設の主要電力は意図的にシャットダウンされています。システムログを辿って……」

 キーボードを叩くヴェガの手が、不意にピタリと止まった。

 

 彼女はモニターに映し出された文字列を、信じられないものを見るような目で見つめている。

 

「どうした、ヴェガ」

 マッケンジーが顔をしかめる。

 

「……少尉。この施設、襲撃を受ける前から『完全封鎖』の手続きが取られています。それに……」

 

 ヴェガは、隠しディレクトリから引きずり出した「特秘指令(スペシャル・オーダー)」のログをモニターに大写しにした。

 そこには、ウェイランド・ユタニ社のロゴマークと共に、冷酷なテキストが並んでいた。

 

『優先指令:対象(完全生物)の捕獲および生態データの収集を最優先とする』

『注記:施設内の研究員は感染拡大のモルモットとして破棄。救援要請は意図的に遅延させ、到着した海兵隊(第312特務小隊)を実戦データ収集用の標的として運用せよ』

 

 沈黙が、ホールを支配した。

 

「……どういう、ことだ?」

 チェンの震える声が響く。

 

「簡単なことだ。会社(コーポレーション)の背広組は、最初から全部知ってたのさ」

 ブラッドリーが、吐き捨てるように言った。

 

「俺たちがジャングルで虫けらみたいに死んでいくのを、安全な軌道上のモニターから見物しながら、熱心にデータを取ってたってわけだ。クソったれが!!」

 ガンッ! と、ブラッドリーは怒りに任せて端末の横の壁を殴りつけた。

 

「ふざけるな! 俺の仲間は、ハリスは! こんなクソみたいなデータ集めのために死んだって言うのか!」

 ドレイクが激昂し、スマートガンの銃口をモニターに向けた。

 

「やめろドレイク! 端末を壊すな!」

 マッケンジーが、ドレイクの銃身を力強く手で押さえつけた。

 少尉の瞳の奥にも、静かで、しかし決して消えない底知れぬ怒りの炎が燃えていた。

 

「会社が俺たちをどう思っていようが関係ない。俺たちの命は、俺たち自身のものだ」

 

 マッケンジーは小隊の全員を順番に見据え、力強く告げた。

 

「会社のために死ぬな。生き残って、あのクソ野郎どもの顔面に泥を塗ってやるために飛べ。いいな!」

 

 その言葉に、怒りに震えていた隊員たちの目に、確かな闘志が戻る。

 

「……エレベーターを動かす方法を見つけろ、ヴェガ」

「はい。ですが……」

 

 ヴェガはモニターの施設立体図を指差した。

 

「主要システムを再起動するには、施設の最下層……地下のメインリアクターを手動で操作する必要があります。屋上へ行くには、一度、一番下まで降りなければなりません」

 

 マッケンジーは深く息を吐き、パルスライフルの残弾を確認した。

 

「行くぞ。地獄の底へ」

 

### 第3部:近衛兵

 

 非常電源の薄暗い光を頼りに、小隊は地下へと続く幅の広い非常階段を素早く下っていく。

 

「少尉、この下の階層にメイン・セキュリティの武器庫があります」

 先頭を歩くヴェガ上等兵が、手元の端末を確認しながら言った。

「ロックはすでに解除されています。恐らく、警備部隊が最後に抵抗を試みた場所です」

 

「ちょうどいい。全員の残弾はもう一桁だ。底へ降りる前に、持てるだけのナマリを拾っていくぞ」

 マッケンジー少尉の言葉に、隊員たちの顔に僅かな安堵が走る。

 

 武器庫の重厚な扉は、半ば開いたまま固定されていた。

 内部には夥しい数の薬莢が散乱し、壁には無数の弾痕が刻まれていたが、幸運なことに保管用のコンテナは無傷のまま残されていた。

 

「ビンゴだ。あの背広組ども、兵器の予算だけはケチらなかったらしいな」

 ブラッドリー軍曹が、新品の12ゲージ散弾の箱を乱暴にこじ開け、愛用のイサカM37に次々と弾を装填していく。

 

 ドレイク兵長は弾薬箱に群がり、M56スマートガン用のドラムマガジンを両手に抱え込んだ。

「ハッ、最高だぜ! これであの『ピッピッ』って音を、心置きなく朝まで鳴らし続けられる!」

 

 チェン一等兵とポポフ一等兵も、M41Aパルスライフルのケースレス弾マガジンをタクティカル・アーマーのポーチに限界までねじ込む。

 マッケンジーはアンダーバレル用の30mm榴弾をベルトに吊るし、M240火炎放射器の燃料タンクを背負い直した。

 

 弾薬の重量が、彼らの体に重くのしかかる。

 だが、その重みこそが、この地獄で生き残るための唯一の「安心」だった。

 

「準備はいいな。……行くぞ、リアクターを叩き起こす」

 

 武器庫を後にし、さらに深層へと足を踏み入れた途端、空気の質が劇的に変わった。

 

 むせ返るような異常な熱気と、肺にへばりつくような腐敗臭。

 施設の最下層、メインリアクターを取り囲む巨大な区画は、すでにウェイランド・ユタニ社の施設としての原型を留めていなかった。

 

 太い冷却パイプやコンクリートの柱という柱が、あの黒く光る樹脂状の物質で幾重にもコーティングされている。

 壁には不気味なシワが寄り、まるで巨大な生物の胃袋の中に迷い込んだかのようだった。

 ただの苗床ではない。ここは、彼らの生態系の中心――「巣(ハイヴ)」そのものだ。

 

「……気持ちの悪い場所だ。あの沼の方がまだマシだったぜ」

 ドレイクがスマートガンの銃身で、垂れ下がる樹脂の粘液を払い除ける。

 

「リアクターの制御盤はあそこです」

 ヴェガが指差した先、巨大なタービンの根本に、樹脂に半分飲み込まれたコンソールがあった。

 

 マッケンジーとヴェガが駆け寄り、手動のメインブレーカーに手をかける。

「上げるぞ!」

 

 ガコンッ!

 重い金属音と共にレバーが押し込まれると、地下区画の巨大なタービンが低い唸り声を上げて回転を始めた。

 頭上の照明が次々と点灯し、施設に強大な電力が蘇る。

 これで、屋上ポートへの直通エレベーターが動くはずだ。

 

 だが、その強烈な光と振動は、最悪の存在を眠りから呼び覚ます合図でもあった。

 

「……少尉。上です」

 チェンが、震える声で頭上を指差した。

 

 リアクターの巨大な配管の上。

 そこに、今まで彼らが戦ってきたゼノモーフとは明らかに次元の違う、巨大な怪物が這い踞っていた。

 

 体長は通常個体の一回り以上大きく、関節には鋭い棘がびっしりと生え揃っている。

 最大の特徴は、その頭部だった。

 ツルリとした流線型ではなく、王冠のような、あるいは巨大な盾のような、硬質な扇状のクレスト(装甲板)を備えているのだ。

 

 ハイヴの中心を守護する存在。プレトリアン(近衛兵)だった。

 

「シャアアアアアッ!!」

 

 鼓膜が破れそうなほどの巨大な咆哮が地下空間を震わせ、プレトリアンが配管から重々しく飛び降りた。

 ズドォォン! と、コンクリートの床がひび割れる。

 

「撃て! 撃ちまくれェッ!」

 ドレイクが雄叫びを上げ、スマートガンをフルオートで連射する。

 毎分1200発の弾幕が、プレトリアンの巨体に吸い込まれていく。

 

 だが、次の瞬間、隊員たちは絶望に目を見開いた。

 

 カキンッ! カカカカカキンッ!

 火花が散るばかりで、強靭な外殻と頭部のクレストに当たった大口径の弾丸が、まるでパチンコ玉のように次々と弾き返されたのだ。

 

「嘘だろ……スマートガンの弾が通じねえぞ!」

 ドレイクが驚愕の声を上げる。

 

「散開しろ! 正面に立つな!」

 マッケンジーが叫び、パルスライフルのアンダーバレルから30mm榴弾を放つ。

 爆発がプレトリアンの足元を抉るが、巨体はわずかにたじろいだだけだ。

 

 怪物は太い尾を鞭のように薙ぎ払い、コンソールを粉砕した。

 その余波で吹き飛ばされた破片が、ブラッドリーの肩を掠める。

 

「火炎放射器だ、少尉! 焼くしかねえ!」

 ブラッドリーが身を隠しながら叫ぶ。

 

「エレベーターへ向かえ! 俺とドレイクで時間を稼ぐ!」

 

 マッケンジーは前に進み出ると、M240火炎放射器のトリガーを深く絞り込んだ。

 轟音と共に、猛烈なオレンジ色の業火がプレトリアンを包み込む。

 いかに分厚い装甲を持とうと、超高温のナパーム剤による熱量は無効化できない。

 

「ギガアアアアッ!!」

 プレトリアンが炎に焼かれ、苦悶の叫びを上げて後退する。

 その僅かな隙を突き、マッケンジーとドレイクも後退しながら、起動したばかりのエレベーターへと全力で駆け出した。

 

 電力は戻った。あとは屋上へ逃げ切るだけだ。

 背後から迫る巨大な足音と絶叫を背に、彼らは最後の希望へと向かって走った。

 

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