名探偵プリキュア! 〜A Memoir White〜   作:秋葉ばっこ

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キュアアルカナ・シャドウ……好きだ……。
見なよ……オレのるるかを……。

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FILE10:私を忘れないで 後編

 

 

 

 

 ジェット先輩から貰ったプリキットもあって、荷造り自体はすぐに終わった。

 お袋に軽く挨拶して家を出たのはいいが、時刻はまだ正午と言ったところか。約束の夕方まで、かなり時間が空いている。

 どう時間を潰そうかウロウロしていると、見慣れた看板が目に入った。

 『パティスリーチュチュ』。無意識のうちに、知った場所に足を運んでしまっていたらしい。

 

「――」

 

 引き返すのも変かと思い、扉を開けて店内に入る。

 ドアベルが鳴ると、程なくして帆羽が出迎えてくれた。

 

「いらっしゃいませ! ……あら、工藤くん? 今日のシフトに入ってたかしら?」

「いんや、近場を通りかかったから顔見せに来た。ついでに何か買っていこうかなって」

「……えっ? あの子たちの代わりに受け取りに来てくれたんじゃなくて?」

 

 ショーケースの前で屈み、どの商品を買おうか悩んでいると、帆羽からそんな事を言われた。

 

「ん、何の話してんの?」

「……ああ、なるほど。悪いことは言わないわ。今日は真っ直ぐ帰ってあげて」

「はぁ? ひとりで納得されても困る。帰るって言っても、まだ時間が――」

「いいから!」

 

 わざわざレジから出てきたかと思えば、帆羽がグイグイと押してきて、そのまま店から追い出されてしまう。

 みくるたちのお土産に何かしら買っていこうと思っていたのだが。

 去り際、帆羽は悪戯そうに笑って。

 

「誕生日おめでとう、工藤くん。ケーキ楽しみにしててね?」

「ケーキ……? あ、行っちまった。何だってんだ、いったい……」

 

 そのケーキを買い損ねたというのに、楽しみにするもクソもないじゃないか。

 戸惑うままに頭を掻いて、その場を後にする。

 

「暇だァー……暇すぎて死にそう……」

 

 駅前まで来てみたはいいものの、特にやりたい事もなくベンチに腰かける。

 ここまで来る間に、まことみらい学園の制服を着た少年少女とすれ違った。

 

「そうか。今日は入学式か」

 

 彼ら、あるいは彼女たちは新入生だったのだ。

 どうりで丈が長かったり、サイズの合わないブカブカな服に着られていたわけだ。

 自分にも、ああいった時期があったのだと思うと感慨深い。それはそれとして、明日から新学期が始まると思うと気が滅入る。

 

「つってもなァ……」

 

 休日の過ごし方というものが、未だによくわかっていない。

 そういえば、あんなやポチタンと初めて出会う前にも、こんな事があった気がする。

 あの時は確か、迷い猫を探しているみくると鉢合わせたんだった。彼女と別れた後、当てもなく街中をブラブラして、それで――。

 

「シンジ」

「――うおっ!? 何だ、るるかか。びっくりしたァ」

 

 そうだ、今みたいにるるかと会ったんだ。

 すっかり考え込んでいたようで、目の前にいる彼女に気づくのに時間がかかった。

 

「……」

 

 るるかはジッと俺を見つめ、思慮を巡らせるように立ち尽くしている。

 今日も今日とて、その腕の中に狐のようなぬいぐるみを抱いたまま。

 

「な、なんだよ。俺の顔に何かついてるか」

「ううん。……それより聞きたいことがある。あなたは昨日、どこで何をしていたの?」

「変なこと聞くんだな。藪から棒に」

「いいから答えて」

 

 ――ずい。

 以前の会話のように、いつになく真剣な表情を浮かべ、るるかが顔を近づけてくる。

 

「ち、近ッ……!?」

 

 吐息が触れ合う距離に、思わず後退ろうとするものの、ベンチに背中を預けていてはそれすらも出来ない。

 逃げ場がないと悟った俺は、肩を竦めて。

 

「い、いつも通りバイトだよ。それがどうかしたのか」

「……そう。それならいいの」

「相変わらず変なヤツ……」

 

 俺の解答に納得したのか、るるかの表情が少しだけ和らいだ。

 今日の予定ならまだしも、昨日の事を聞かれるとは思わなかった。浮気調査じゃあるまいし、いまひとつ真意が掴めない。

 ドギマギしていると、彼女はそっと顔を離して、踵を返そうとする。

 

「あっ、おい! ちょっと待てよ」

「……何?」

 

 るるかが振り返る。

 どうして彼女を呼び止めたのか、自分でもよくわからなかった。

 正直、聞きたいことは山ほどあるが……。

 

「……」

 

 あんなとポチタン、ジェット先輩と出会って。あろう事か、あんなとみくるの『おとも妖精』になって。

 妖精という存在を知ってから、ずっと疑問に思っていた。

 るるかのすぐ傍には、いつも妖精が近くにいたのではないかと。

 今、彼女の腕に抱かれているそれは、どこまでも沈黙を貫いているだけであって、本当は――。

 

「……シンジ?」

 

 どうしても、物問うことが出来ない。

 それを口にしてしまえば、俺と彼女を繋ぎ止めているモノが。決定的なナニカが壊れてしまうような、確信めいた予感があったからだ。

 今の関係性に甘んじていたいと思うのは、俺の我儘なのか、それとも――。

 どちらにせよ、あえて薄氷を踏み抜くのはよそう。そう決心して、俺はいつもの調子を取り繕う。

 

「……んー、いや。今日はアイスをせびって来なかったから、不思議に思っただけ」

「まだ()()()の途中だから」

「ふーん。それは残念、せっかく奢ってやろうと思ったのに」

「……そう」

 

 俺がわざとらしくそう言うと、るるかのアホ毛が残念だと言わんばかりに、しなりと垂れ下がった。

 

「シンジ」

「あん?」

「そこ、ペンキ塗りたてだって」

「え、あ、うわあああ――っ!? 俺の服があああっ!!」

 

 意趣返しのつもりか、それとも純粋に注意したつもりなのか。

 急いで立ち上がるが、時すでに遅し。後頭部、背中、ズボンにかけて、びっしりと布地が空色に染まっていた。

 マコトジュエルやハンニンダー関係なく、どうやら俺は衣服を汚してしまう運命にあるらしい。

 その場で喚き散らしていると、再びるるかが。

 

「シンジ」

「今度は何だよっ!?」

 

 振り返ると、そこには。

 

「16歳の誕生日、おめでとう」

 

 どこから取り出したのやら、白い花束を持つるるかが立っていた。

 ふわり、と清々しく晴れ渡る青空と、どこまでも広がる草原を連想させるような、爽やかな香りが鼻腔をくすぐる。

 その光景が、あまりにも絵になっていたものだから、思わず見惚れてしまっていた。

 

「――」

 

 るるかに「……ん」と、短く催促される。受け取れということらしい。

 白い花がふんだんに束ねられている。俺の記憶が確かなら『ワスレナグサ』という名前の種類だったはずだ。図鑑で見たことがある。

 いつもアイスの事しか考えていないような彼女から、これだけ上品な贈り物を貰えるとは。

 

「……えっと。ありがとな、るるか」

「うん。……またね、シンジ」

「ああ、またな」

 

 小さく手をひらひらと振って、るるかが来た道を戻っていく。

 その背中が見えなくなるまで、俺はいつまでも立ち尽くしていた。

 

「……」

 

 なんだ、この気持ちは。

 心の性感帯をくすぐられるような、身体の芯から熱が沸いてくるような、形容しがたいむず痒さ。心地良さとは裏腹に、痒いところに手が届かないもどかしさも感じる。

 具体的には、顔の上半分がムズムズする。

 

「んん……!? こ、これは……!」

 

 そっと額に手を伸ばしてみると、妖精の証であるハート型の石が浮かび上がっていた。

 なるほど、こそばゆかった理由はこれか。

 こうなった原因はわかりきっている。みくるとあんなが、プリキュアに変身したから現れたのだろう――って、視界がやけに眩しいような。

 

「あ、あれ……?」

 

 たちまち、周囲に光が立ち込めていく。

 何事かと身構えるよりも先に、燦然とした輝きが、あっという間に俺を飲み込んでしまった。

 

 

 

 

「どんな謎でもはなまる解決! 名探偵、キュアアンサー!」

「重ねた推理で笑顔にジャンプ! 名探偵、キュアミスティック!」

「「名探偵プリキュア!」」

「わたしの答え、見せて「どわあああ――っ!? ここどこ、うわ、ハンニンダーいるし! あの歌舞いてるおっさん誰!?」……あげます?」

 

 アンサーとミスティックが固まった。

 二人がプリキュアに変身した途端、何人も立ち入れないはずの空間に、突如として新二が現れた……いや、落ちてきたからだ。

 ハンニンダーとゴウエモンも例外ではないが、当の本人である新二が一番困惑しているし、なにより彼の衣服は何故かペンキ塗れになっている。

 

「オレの名はゴウエモン。怪盗団ファントム(いち)の色男たあァ、オレのことよ。……して坊主、お前さんの名前を聞かせてもらおうか」

「江戸川ドイル。おとも妖精さ……」

「「えっ……!?」」

 

 躊躇なく偽名を名乗るものだから、アンサーとミスティックが驚愕し、一斉に新二の方を振り向いた。

 気持ち格好つけているように見えるのは、二人の気のせいではない。彼が凛とした表情を作るのは、決まってふざけている時だからだ。

 切り替えの速さと図々しさだけはピカイチだなと、ミスティックが呆れ返る。

 

「おとも妖精、か。するってぇとあれかい。お前さんが噂の『ビッグベイビーチョベリバタートル』とやらか」

「なんだその不名誉な通り名はっ!?」

 

 十中八九、噂の出処はニジーとアゲセーヌだろう。

 

「もっと他にあるだろ! ホワイトスーパークールガイとか、マキシマムビューティマンとか!」

 

 どんぐりの背比べだ。

 むしろ、怪盗団ファントムから呼ばれているコードネーム(?)の方がマシかもしれない。

 

「人間の姿をした『おとも妖精』……面白いじゃねえの。プリキュアの前に、お手並み拝見といこうじゃあねえか。やってやれ、ハンニンダー!」

「ハンニンダーッ!」

 

 ゴウエモンが扇を振りかざすと、ハンニンダーが脇目も振らずに飛び出した。

 さあ、プリキュアのおとも妖精とやらがどう動くのか。

 敵の実力を見定めるべく、ゴウエモンが事の成り行きを注視する。

 

「フッ――」

 

 迫る脅威を前にして、新二は不敵に笑ったかと思えば。

 

「たちゅけて」

 

 どこまでも他力本願であった。

 慌ててミスティックが彼の前に躍り出て、ジュエルキュアウォッチを操作する。

 

「――ミスティックリフレクションッ!!」

 

 即座に赤い宝石状のバリアが展開され、ハンニンダーのタックルを弾き返す。

 敵が反動で仰け反ったチャンスを逃さまいと、アンサーが切り込んだ。

 

「アンサーアタック!!」

「ダアア……ッ!?」

 

 エネルギーを纏った拳撃が、漫画の原稿で出来たボディを大きく『く』の字に湾曲させる。

 ハンニンダーは後退りながらも、すんでのところで踏みこたえていた。

 

「ほう、中々やるな……! しっかりしろ、ハンニンダー!」

「ハ、ハンニンダー……!」

 

 ハンニンダーが建物を背にし、反撃の狼煙を上げるべく体制を整えようとするが――追撃の手が緩まる事はなかった。

 

「オープン!」

 

 その声の主は、新二だった。

 彼の手によって投げられたキーホルダー……ジェットから渡されたプリキットが、掛け声を皮切りに変貌していく。

 シングルサイズのベッド、あるいは学習机、あるいはデスクチェア、あるいは本棚――。

 どこの家庭にでもありそうな家具の数々が、怒涛の嵐となってハンニンダーを襲う。

 

「……なるほどなァ。一見して大したタマじゃねえと思ったが、ただの金魚のフンでもなさそうだ。ニジーが警戒していたのも頷けるってもんよ」

 

 ゴウエモンは素直に感心していた。

 実際、大したダメージにはなっていないものの、打ちどころが悪かったようで、ハンニンダーが目を回してフラついている。

 一方で、攻撃の主は「ああ、俺の思い出たちが……」と、遠い目を浮かべている。説得力はないが、この状況を狙っていたのだとしたら、かなりの策士だ。

 

「漫画の原稿と!」

「純一さんの笑顔を!」

「「取り戻すんだっ!」」

 

 アンサーとミスティックの二人が、ジュエルキュアウォッチを構えた。

 

「「これが、わたしたちの……アンサーだあああ――っ!!」」

 

 浄化の光が、マコトジュエルだけでなく、ハンニンダーが作り出した空間をも明るく照らしていく。

 

「「キュアット解決っ!」」

「ウソノワール様から授かった力を、いとも容易く退けるとは。中々楽しませて貰ったぞ。……プリキュア、江戸川ドイル! また相見(あいまみ)えよう!」

 

 ――ウソノワール。

 ゴウエモンの口振りからして、それが怪盗団ファントムの親玉らしい。

 振りかぶった扇から桜吹雪が舞い散り、新二たちの前からゴウエモンが姿を消す。

 まことみらい市のどこか。建物の屋上で一息ついていると、いつの間にかはぐれていた新入り――るるかとマシュタンが、ゴウエモンの元に現れた。

 

「おお、新入りか! どこで何をしていたのか聞きたい所だが……良い報せがあるぜ。プリキュアと行動を共にしている『おとも妖精』の名は、江戸川ドイルってんだ」

「江戸川ドイル……?」

「おうよ。骨があるのか無いのか、いまいち掴みどころのない坊主だったが、見ていて退屈しないのは確かだな。おかげでマコトジュエルを手に入れ損ねた! ハッハッハ!」

 

 ゴウエモンが、かんらかんらと笑う。

 その名前に思うところがあるのか、るるかは眉を顰めたままポツリと呟く。

 

「江戸川……」

 

 そんな彼女の様子を、マシュタンが物憂げに見つめていた。

 ――今日はアイスをせびって来なかったから、不思議に思っただけ。

 工藤新二はそう誤魔化していたが、彼の視線はマシュタンへと向けられていた。

 件の『おとも妖精』の正体と、工藤新二を結びつける要素は少ない。が、少なくとも彼は妖精の存在について知っているか、もしくは疑い始めている。

 

「るるか。悪いことは言わないわ。もうあの子と会うのはやめた方がいいと思うの」

「……どうして? マシュタン」

「……なんとなくよ」

 

 あの子が誰なのかを聞いてこない辺り、るるかも気づきかけているのではないか。

 気づいた上で、あえて見て見ぬふりをしているのではないかと。マシュタンにはそう思えてならなかった。

 

「シンジ……」

 

 ボソリと呟くと、るるかは腕の中のマシュタンを抱きしめる。

 静かに震える肩を、マシュタンだけが感じ取っていた。

 

 

 

 

 今朝、俺が探偵事務所を出てすぐに、なんと依頼人が来たらしい。

 小松崎純一。漫画家志望の大学生で、ペンネームはジュンジュン・コマッツ。

 あんな曰く、2027年の未来では人気漫画家として名を馳せているのだという。

 今回のマコトジュエルは、そんな彼が持っていた漫画の原稿から生まれたのだ。

 

 ――そんな事はどうでもいい。

 俺はハンニンダーとの戦いで、荷物運搬用のプリキットをこれでもかと解放してしまった。

 ジェット先輩から言われた言葉を思い出す。

 

『そうそう、そのプリキットは使い捨てだから気をつけろよ。決して遊びに使うんじゃないぞ』

 

 使い捨て。

 俺の部屋にあった家具の数々は、ハンニンダーが消えてもそのまま残った。原型を留めている物はひとつも無かったが。

 そのせいで不法投棄だのなんだの騒ぎになってしまい、めちゃくちゃ怒られてしまった。

 幸い、渡されたプリキットが幾つか残っていたので、大まかな物はすぐに片付ける事はできたが。

 

「はぁ、何の為に荷造りしたんだか……」

 

 元通り綺麗になるまで掃除していたら、すっかり日が暮れてしまった。

 なんだか損ばかりしている気分だ。時間を持て余していたのも本当なので、ちょうど良かったと自分に言い聞かせる。

 

「うんうん。今日は濡れ衣も着せられなかったし、結果オーライだな」

 

 自分で言ってて悲しくなってくる。

 トボトボと歩いていると、キュアット探偵事務所が見えてきた。

 扉を開けた瞬間――。

 

「「シンジさん、お誕生日おめでとうっ!」」

 

 パン、パン、パン。

 乾いた音が鳴り響くのと同時に、パーティクラッカーから飛び出した紙テープや紙吹雪が、俺の頭に覆い被さる。

 

「ぶぇっ――!?」

 

 色とりどりの騒がしい視界の中、みくるとあんなだけでなく、ポチタンやジェット先輩も出迎えてくれているのが分かった。

 彼の持つ皿の上には、ホールケーキが鎮座している。生チョコやチョコチップの装飾がふんだんにあしらわれた、立派なチョコレートケーキ。

 ホワイトチョコレートで出来たプレートに、『Happy Birthday シンジ』と書かれている。

 

「帆羽のやつ……だから『楽しみにしててね』って言ってたのか」

 

 ケーキの予約、パーティ、例のアレ。

 ようやく線と線が繋がった。大体的に誕生日を祝われるのなんて初めてなものだから、今この瞬間になるまで考えすらしなかった。

 

「「せーのっ」」

 

 俺が立ち尽くしていると、みくるとあんなが息を揃えて。

 

「「おかえりなさい!」」

「――」

 

 そうか、今日から俺は探偵事務所で暮らしていくんだ。

 ようやく彼女たちの一員になれた気がして、目頭が熱くなる。

 

「ただいま」

 

 それから、はなまる楽しい誕生日パーティが始まった。

 蝋燭の火を吹き消した勢いで、チョコクリームがジェット先輩の顔面に飛んでいったり。ポチタンが切り分けたケーキに突っ込み、顔中をチョコ塗れにしたり。へし折れたネームプレートが俺の頭頂部に突き刺さったり。

 頭部に被害が集中しながらも、俺たちは疲れも忘れ、とことん羽目を外し、愉快な喧騒の一部になっていく。

 

「ボクからの誕生日プレゼントだ。ありがたく受け取れ」

 

 夜の帳が降り始めた頃。

 ジェット先輩から『例のアレ』を手渡された。

 

「名付けて、『プリキットプレーヤー』」

「プリキットプレーヤー?」

「まあ、言ってしまえばただのMDプレーヤーだ。他にもプリキットボイスメモと同じ機能が付いてる。大事に使ってくれ」

「こんなに小さいのにか。すっご! ありがとう、パイセン!」

 

 プリキットシリーズなら、普段はキーホルダーにして持ち運べるということだ。しかも通信機能と変声機能まで備えている。

 これを数日もかからず完成させるとは、やはり天才と褒めざるを得ない。

 俺の素直な感想に、ジェット先輩は満更でもない様子で頬を掻いていた。

 

「……それはそれとして、パイセン。この見た目はどういう了見なんすか」

「可愛いだろう」

「可愛いけども」

「ボクが作ったからな。当然だ」

 

 直接本人に「可愛い」や「子供」と言うと怒る癖に、探偵道具のひとつだと割り切っているからか、プレーヤーを褒められるのは嫌じゃないらしい。むしろ可愛さを誇示している始末。

 ボイスメモと同じく、妖精態のジェット先輩の見た目をしたそれを、まじまじと眺める。

 

「――」

 

 16歳の男子が持ち歩くには、少し可愛すぎる気がする。

 貰い物なので文句は言えないし、女子ウケも良さそうなので、まあ良しとしよう。

 

「ディスクどこにぶっ挿すんだ、これ」

「頭の部分が開くようになってる」

「え、怖い……」

 

 急にグロテスクになった。

 頭の中に直接セットするのか。

 

「そうだ、誕生日プレゼントと言えば……オープン!」

 

 使い捨てのプリキット。ハンニンダーとの戦いで唯一使わなかったそれを展開する。

 るるかから貰った、ワスレナグサの花束だ。

 

「わぁっ、はなまる素敵なお花だね! 誰かから貰ったの?」

「ああ、ちょっと知り合いにな。せっかくだし事務所に飾らせてもらおうかなって」

「知り合い……? もしかして、また女の人ですか?」

 

 はしゃぎ疲れたようで、穏やかな寝息を立てているポチタンを見守っていたみくるが、唐突に反応を示した。

 先程まで一緒にはしゃいでいたのに、今はむっとしている。

 

「ただの幼馴染だよ。みくるが思ってるような関係じゃねえって」

「へ、へぇ〜……そうですか。ふ〜ん……ま、まぁ、興味ありませんけどね」

「じゃあ聞くなよ……」

 

 何故か、みくるが嬉しそうに鼻を鳴らし、指先で髪を弄っている。

 あんなは花束を取り出すと、水の入った花瓶にワスレナグサを挿し、風通しの良さそうな場所に飾っていた。

 その様子を眺めていると、みくるが思い出したように。

 

「そういえば、ワスレナグサの花言葉って……」

「花言葉だァ? 女の子は好きだよなぁ、そういうの。で、どういう意味なんだ? 知ってるなら教えてくれよ」

「……嫌です。シンジさんにだけは絶対に教えてあげません! ふんっ!」

「ええ……」

 

 かと思えば、また不機嫌になってしまった。

 女心と秋の空とはよく言ったものだ。

 

『16歳の誕生日、おめでとう』

 

 るるかはどういう意図で、俺にワスレナグサを渡したんだろう。

 みくるが言うように、花言葉をメッセージとしていたのか。それとも、たまたま目に入った花がワスレナグサだったのか。

 彼女の事だから、きっと適当に見繕っただけなんだろう。

 ひとり納得し、俺はプリキットプレーヤーを握りしめた。

 

「――」

 

 今日という日を、俺は決して忘れないだろう。

 例え、何があろうとも。

 




ヒント:今回のサブタイトル
たまたま新二くんの誕生花を調べてたら、ワスレナグサとかいう花が出てきて、リアルで声出た。そんなことある??????
誕生日の由来ですが、工藤新一・江戸川コナンの誕生日(5月4日)を逆さまにしたものなので、本当にただの偶然です。

当作品における、怪盗団ファントム メンバー早見表
・ニジー おのれビッグベイビー
・アゲセーヌ おのれチョベリバタートル
・ゴウエモン 江戸川ドイル、おもしれー男
・ウソノワール 人型おとも妖精? 知らん、何それ、怖……。
・るるか シンジ……。
・マシュタン 絶対に気づかれてるやんけ!

次回からアニメで言うところの5話に突入します。シリアス書けるか不安……。
一週間以内に更新できるように頑張ります。
次回もはなまるっ!

たんプリで好きなキャラは? 参考程度に教えてちょ

  • 明智あんな(キュアアンサー)
  • 小林みくる(キュアミスティック)
  • 森亜るるか(キュアアルカナ・シャドウ)
  • ???(キュアエクレール)
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