名探偵プリキュア! 〜A Memoir White〜 作:秋葉ばっこ
キュアアルカナ・シャドウ……好きだ……。
見なよ……オレのるるかを……。
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◇
ジェット先輩から貰ったプリキットもあって、荷造り自体はすぐに終わった。
お袋に軽く挨拶して家を出たのはいいが、時刻はまだ正午と言ったところか。約束の夕方まで、かなり時間が空いている。
どう時間を潰そうかウロウロしていると、見慣れた看板が目に入った。
『パティスリーチュチュ』。無意識のうちに、知った場所に足を運んでしまっていたらしい。
「――」
引き返すのも変かと思い、扉を開けて店内に入る。
ドアベルが鳴ると、程なくして帆羽が出迎えてくれた。
「いらっしゃいませ! ……あら、工藤くん? 今日のシフトに入ってたかしら?」
「いんや、近場を通りかかったから顔見せに来た。ついでに何か買っていこうかなって」
「……えっ? あの子たちの代わりに受け取りに来てくれたんじゃなくて?」
ショーケースの前で屈み、どの商品を買おうか悩んでいると、帆羽からそんな事を言われた。
「ん、何の話してんの?」
「……ああ、なるほど。悪いことは言わないわ。今日は真っ直ぐ帰ってあげて」
「はぁ? ひとりで納得されても困る。帰るって言っても、まだ時間が――」
「いいから!」
わざわざレジから出てきたかと思えば、帆羽がグイグイと押してきて、そのまま店から追い出されてしまう。
みくるたちのお土産に何かしら買っていこうと思っていたのだが。
去り際、帆羽は悪戯そうに笑って。
「誕生日おめでとう、工藤くん。ケーキ楽しみにしててね?」
「ケーキ……? あ、行っちまった。何だってんだ、いったい……」
そのケーキを買い損ねたというのに、楽しみにするもクソもないじゃないか。
戸惑うままに頭を掻いて、その場を後にする。
「暇だァー……暇すぎて死にそう……」
駅前まで来てみたはいいものの、特にやりたい事もなくベンチに腰かける。
ここまで来る間に、まことみらい学園の制服を着た少年少女とすれ違った。
「そうか。今日は入学式か」
彼ら、あるいは彼女たちは新入生だったのだ。
どうりで丈が長かったり、サイズの合わないブカブカな服に着られていたわけだ。
自分にも、ああいった時期があったのだと思うと感慨深い。それはそれとして、明日から新学期が始まると思うと気が滅入る。
「つってもなァ……」
休日の過ごし方というものが、未だによくわかっていない。
そういえば、あんなやポチタンと初めて出会う前にも、こんな事があった気がする。
あの時は確か、迷い猫を探しているみくると鉢合わせたんだった。彼女と別れた後、当てもなく街中をブラブラして、それで――。
「シンジ」
「――うおっ!? 何だ、るるかか。びっくりしたァ」
そうだ、今みたいにるるかと会ったんだ。
すっかり考え込んでいたようで、目の前にいる彼女に気づくのに時間がかかった。
「……」
るるかはジッと俺を見つめ、思慮を巡らせるように立ち尽くしている。
今日も今日とて、その腕の中に狐のようなぬいぐるみを抱いたまま。
「な、なんだよ。俺の顔に何かついてるか」
「ううん。……それより聞きたいことがある。あなたは昨日、どこで何をしていたの?」
「変なこと聞くんだな。藪から棒に」
「いいから答えて」
――ずい。
以前の会話のように、いつになく真剣な表情を浮かべ、るるかが顔を近づけてくる。
「ち、近ッ……!?」
吐息が触れ合う距離に、思わず後退ろうとするものの、ベンチに背中を預けていてはそれすらも出来ない。
逃げ場がないと悟った俺は、肩を竦めて。
「い、いつも通りバイトだよ。それがどうかしたのか」
「……そう。それならいいの」
「相変わらず変なヤツ……」
俺の解答に納得したのか、るるかの表情が少しだけ和らいだ。
今日の予定ならまだしも、昨日の事を聞かれるとは思わなかった。浮気調査じゃあるまいし、いまひとつ真意が掴めない。
ドギマギしていると、彼女はそっと顔を離して、踵を返そうとする。
「あっ、おい! ちょっと待てよ」
「……何?」
るるかが振り返る。
どうして彼女を呼び止めたのか、自分でもよくわからなかった。
正直、聞きたいことは山ほどあるが……。
「……」
あんなとポチタン、ジェット先輩と出会って。あろう事か、あんなとみくるの『おとも妖精』になって。
妖精という存在を知ってから、ずっと疑問に思っていた。
るるかのすぐ傍には、いつも妖精が近くにいたのではないかと。
今、彼女の腕に抱かれているそれは、どこまでも沈黙を貫いているだけであって、本当は――。
「……シンジ?」
どうしても、物問うことが出来ない。
それを口にしてしまえば、俺と彼女を繋ぎ止めているモノが。決定的なナニカが壊れてしまうような、確信めいた予感があったからだ。
今の関係性に甘んじていたいと思うのは、俺の我儘なのか、それとも――。
どちらにせよ、あえて薄氷を踏み抜くのはよそう。そう決心して、俺はいつもの調子を取り繕う。
「……んー、いや。今日はアイスをせびって来なかったから、不思議に思っただけ」
「まだ
「ふーん。それは残念、せっかく奢ってやろうと思ったのに」
「……そう」
俺がわざとらしくそう言うと、るるかのアホ毛が残念だと言わんばかりに、しなりと垂れ下がった。
「シンジ」
「あん?」
「そこ、ペンキ塗りたてだって」
「え、あ、うわあああ――っ!? 俺の服があああっ!!」
意趣返しのつもりか、それとも純粋に注意したつもりなのか。
急いで立ち上がるが、時すでに遅し。後頭部、背中、ズボンにかけて、びっしりと布地が空色に染まっていた。
マコトジュエルやハンニンダー関係なく、どうやら俺は衣服を汚してしまう運命にあるらしい。
その場で喚き散らしていると、再びるるかが。
「シンジ」
「今度は何だよっ!?」
振り返ると、そこには。
「16歳の誕生日、おめでとう」
どこから取り出したのやら、白い花束を持つるるかが立っていた。
ふわり、と清々しく晴れ渡る青空と、どこまでも広がる草原を連想させるような、爽やかな香りが鼻腔をくすぐる。
その光景が、あまりにも絵になっていたものだから、思わず見惚れてしまっていた。
「――」
るるかに「……ん」と、短く催促される。受け取れということらしい。
白い花がふんだんに束ねられている。俺の記憶が確かなら『ワスレナグサ』という名前の種類だったはずだ。図鑑で見たことがある。
いつもアイスの事しか考えていないような彼女から、これだけ上品な贈り物を貰えるとは。
「……えっと。ありがとな、るるか」
「うん。……またね、シンジ」
「ああ、またな」
小さく手をひらひらと振って、るるかが来た道を戻っていく。
その背中が見えなくなるまで、俺はいつまでも立ち尽くしていた。
「……」
なんだ、この気持ちは。
心の性感帯をくすぐられるような、身体の芯から熱が沸いてくるような、形容しがたいむず痒さ。心地良さとは裏腹に、痒いところに手が届かないもどかしさも感じる。
具体的には、顔の上半分がムズムズする。
「んん……!? こ、これは……!」
そっと額に手を伸ばしてみると、妖精の証であるハート型の石が浮かび上がっていた。
なるほど、こそばゆかった理由はこれか。
こうなった原因はわかりきっている。みくるとあんなが、プリキュアに変身したから現れたのだろう――って、視界がやけに眩しいような。
「あ、あれ……?」
たちまち、周囲に光が立ち込めていく。
何事かと身構えるよりも先に、燦然とした輝きが、あっという間に俺を飲み込んでしまった。
◆
「どんな謎でもはなまる解決! 名探偵、キュアアンサー!」
「重ねた推理で笑顔にジャンプ! 名探偵、キュアミスティック!」
「「名探偵プリキュア!」」
「わたしの答え、見せて「どわあああ――っ!? ここどこ、うわ、ハンニンダーいるし! あの歌舞いてるおっさん誰!?」……あげます?」
アンサーとミスティックが固まった。
二人がプリキュアに変身した途端、何人も立ち入れないはずの空間に、突如として新二が現れた……いや、落ちてきたからだ。
ハンニンダーとゴウエモンも例外ではないが、当の本人である新二が一番困惑しているし、なにより彼の衣服は何故かペンキ塗れになっている。
「オレの名はゴウエモン。怪盗団ファントム
「江戸川ドイル。おとも妖精さ……」
「「えっ……!?」」
躊躇なく偽名を名乗るものだから、アンサーとミスティックが驚愕し、一斉に新二の方を振り向いた。
気持ち格好つけているように見えるのは、二人の気のせいではない。彼が凛とした表情を作るのは、決まってふざけている時だからだ。
切り替えの速さと図々しさだけはピカイチだなと、ミスティックが呆れ返る。
「おとも妖精、か。するってぇとあれかい。お前さんが噂の『ビッグベイビーチョベリバタートル』とやらか」
「なんだその不名誉な通り名はっ!?」
十中八九、噂の出処はニジーとアゲセーヌだろう。
「もっと他にあるだろ! ホワイトスーパークールガイとか、マキシマムビューティマンとか!」
どんぐりの背比べだ。
むしろ、怪盗団ファントムから呼ばれているコードネーム(?)の方がマシかもしれない。
「人間の姿をした『おとも妖精』……面白いじゃねえの。プリキュアの前に、お手並み拝見といこうじゃあねえか。やってやれ、ハンニンダー!」
「ハンニンダーッ!」
ゴウエモンが扇を振りかざすと、ハンニンダーが脇目も振らずに飛び出した。
さあ、プリキュアのおとも妖精とやらがどう動くのか。
敵の実力を見定めるべく、ゴウエモンが事の成り行きを注視する。
「フッ――」
迫る脅威を前にして、新二は不敵に笑ったかと思えば。
「たちゅけて」
どこまでも他力本願であった。
慌ててミスティックが彼の前に躍り出て、ジュエルキュアウォッチを操作する。
「――ミスティックリフレクションッ!!」
即座に赤い宝石状のバリアが展開され、ハンニンダーのタックルを弾き返す。
敵が反動で仰け反ったチャンスを逃さまいと、アンサーが切り込んだ。
「アンサーアタック!!」
「ダアア……ッ!?」
エネルギーを纏った拳撃が、漫画の原稿で出来たボディを大きく『く』の字に湾曲させる。
ハンニンダーは後退りながらも、すんでのところで踏みこたえていた。
「ほう、中々やるな……! しっかりしろ、ハンニンダー!」
「ハ、ハンニンダー……!」
ハンニンダーが建物を背にし、反撃の狼煙を上げるべく体制を整えようとするが――追撃の手が緩まる事はなかった。
「オープン!」
その声の主は、新二だった。
彼の手によって投げられたキーホルダー……ジェットから渡されたプリキットが、掛け声を皮切りに変貌していく。
シングルサイズのベッド、あるいは学習机、あるいはデスクチェア、あるいは本棚――。
どこの家庭にでもありそうな家具の数々が、怒涛の嵐となってハンニンダーを襲う。
「……なるほどなァ。一見して大したタマじゃねえと思ったが、ただの金魚のフンでもなさそうだ。ニジーが警戒していたのも頷けるってもんよ」
ゴウエモンは素直に感心していた。
実際、大したダメージにはなっていないものの、打ちどころが悪かったようで、ハンニンダーが目を回してフラついている。
一方で、攻撃の主は「ああ、俺の思い出たちが……」と、遠い目を浮かべている。説得力はないが、この状況を狙っていたのだとしたら、かなりの策士だ。
「漫画の原稿と!」
「純一さんの笑顔を!」
「「取り戻すんだっ!」」
アンサーとミスティックの二人が、ジュエルキュアウォッチを構えた。
「「これが、わたしたちの……アンサーだあああ――っ!!」」
浄化の光が、マコトジュエルだけでなく、ハンニンダーが作り出した空間をも明るく照らしていく。
「「キュアット解決っ!」」
「ウソノワール様から授かった力を、いとも容易く退けるとは。中々楽しませて貰ったぞ。……プリキュア、江戸川ドイル! また
――ウソノワール。
ゴウエモンの口振りからして、それが怪盗団ファントムの親玉らしい。
振りかぶった扇から桜吹雪が舞い散り、新二たちの前からゴウエモンが姿を消す。
まことみらい市のどこか。建物の屋上で一息ついていると、いつの間にかはぐれていた新入り――るるかとマシュタンが、ゴウエモンの元に現れた。
「おお、新入りか! どこで何をしていたのか聞きたい所だが……良い報せがあるぜ。プリキュアと行動を共にしている『おとも妖精』の名は、江戸川ドイルってんだ」
「江戸川ドイル……?」
「おうよ。骨があるのか無いのか、いまいち掴みどころのない坊主だったが、見ていて退屈しないのは確かだな。おかげでマコトジュエルを手に入れ損ねた! ハッハッハ!」
ゴウエモンが、かんらかんらと笑う。
その名前に思うところがあるのか、るるかは眉を顰めたままポツリと呟く。
「江戸川……」
そんな彼女の様子を、マシュタンが物憂げに見つめていた。
――今日はアイスをせびって来なかったから、不思議に思っただけ。
工藤新二はそう誤魔化していたが、彼の視線はマシュタンへと向けられていた。
件の『おとも妖精』の正体と、工藤新二を結びつける要素は少ない。が、少なくとも彼は妖精の存在について知っているか、もしくは疑い始めている。
「るるか。悪いことは言わないわ。もうあの子と会うのはやめた方がいいと思うの」
「……どうして? マシュタン」
「……なんとなくよ」
あの子が誰なのかを聞いてこない辺り、るるかも気づきかけているのではないか。
気づいた上で、あえて見て見ぬふりをしているのではないかと。マシュタンにはそう思えてならなかった。
「シンジ……」
ボソリと呟くと、るるかは腕の中のマシュタンを抱きしめる。
静かに震える肩を、マシュタンだけが感じ取っていた。
◇
今朝、俺が探偵事務所を出てすぐに、なんと依頼人が来たらしい。
小松崎純一。漫画家志望の大学生で、ペンネームはジュンジュン・コマッツ。
あんな曰く、2027年の未来では人気漫画家として名を馳せているのだという。
今回のマコトジュエルは、そんな彼が持っていた漫画の原稿から生まれたのだ。
――そんな事はどうでもいい。
俺はハンニンダーとの戦いで、荷物運搬用のプリキットをこれでもかと解放してしまった。
ジェット先輩から言われた言葉を思い出す。
『そうそう、そのプリキットは使い捨てだから気をつけろよ。決して遊びに使うんじゃないぞ』
使い捨て。
俺の部屋にあった家具の数々は、ハンニンダーが消えてもそのまま残った。原型を留めている物はひとつも無かったが。
そのせいで不法投棄だのなんだの騒ぎになってしまい、めちゃくちゃ怒られてしまった。
幸い、渡されたプリキットが幾つか残っていたので、大まかな物はすぐに片付ける事はできたが。
「はぁ、何の為に荷造りしたんだか……」
元通り綺麗になるまで掃除していたら、すっかり日が暮れてしまった。
なんだか損ばかりしている気分だ。時間を持て余していたのも本当なので、ちょうど良かったと自分に言い聞かせる。
「うんうん。今日は濡れ衣も着せられなかったし、結果オーライだな」
自分で言ってて悲しくなってくる。
トボトボと歩いていると、キュアット探偵事務所が見えてきた。
扉を開けた瞬間――。
「「シンジさん、お誕生日おめでとうっ!」」
パン、パン、パン。
乾いた音が鳴り響くのと同時に、パーティクラッカーから飛び出した紙テープや紙吹雪が、俺の頭に覆い被さる。
「ぶぇっ――!?」
色とりどりの騒がしい視界の中、みくるとあんなだけでなく、ポチタンやジェット先輩も出迎えてくれているのが分かった。
彼の持つ皿の上には、ホールケーキが鎮座している。生チョコやチョコチップの装飾がふんだんにあしらわれた、立派なチョコレートケーキ。
ホワイトチョコレートで出来たプレートに、『Happy Birthday シンジ』と書かれている。
「帆羽のやつ……だから『楽しみにしててね』って言ってたのか」
ケーキの予約、パーティ、例のアレ。
ようやく線と線が繋がった。大体的に誕生日を祝われるのなんて初めてなものだから、今この瞬間になるまで考えすらしなかった。
「「せーのっ」」
俺が立ち尽くしていると、みくるとあんなが息を揃えて。
「「おかえりなさい!」」
「――」
そうか、今日から俺は探偵事務所で暮らしていくんだ。
ようやく彼女たちの一員になれた気がして、目頭が熱くなる。
「ただいま」
それから、はなまる楽しい誕生日パーティが始まった。
蝋燭の火を吹き消した勢いで、チョコクリームがジェット先輩の顔面に飛んでいったり。ポチタンが切り分けたケーキに突っ込み、顔中をチョコ塗れにしたり。へし折れたネームプレートが俺の頭頂部に突き刺さったり。
頭部に被害が集中しながらも、俺たちは疲れも忘れ、とことん羽目を外し、愉快な喧騒の一部になっていく。
「ボクからの誕生日プレゼントだ。ありがたく受け取れ」
夜の帳が降り始めた頃。
ジェット先輩から『例のアレ』を手渡された。
「名付けて、『プリキットプレーヤー』」
「プリキットプレーヤー?」
「まあ、言ってしまえばただのMDプレーヤーだ。他にもプリキットボイスメモと同じ機能が付いてる。大事に使ってくれ」
「こんなに小さいのにか。すっご! ありがとう、パイセン!」
プリキットシリーズなら、普段はキーホルダーにして持ち運べるということだ。しかも通信機能と変声機能まで備えている。
これを数日もかからず完成させるとは、やはり天才と褒めざるを得ない。
俺の素直な感想に、ジェット先輩は満更でもない様子で頬を掻いていた。
「……それはそれとして、パイセン。この見た目はどういう了見なんすか」
「可愛いだろう」
「可愛いけども」
「ボクが作ったからな。当然だ」
直接本人に「可愛い」や「子供」と言うと怒る癖に、探偵道具のひとつだと割り切っているからか、プレーヤーを褒められるのは嫌じゃないらしい。むしろ可愛さを誇示している始末。
ボイスメモと同じく、妖精態のジェット先輩の見た目をしたそれを、まじまじと眺める。
「――」
16歳の男子が持ち歩くには、少し可愛すぎる気がする。
貰い物なので文句は言えないし、女子ウケも良さそうなので、まあ良しとしよう。
「ディスクどこにぶっ挿すんだ、これ」
「頭の部分が開くようになってる」
「え、怖い……」
急にグロテスクになった。
頭の中に直接セットするのか。
「そうだ、誕生日プレゼントと言えば……オープン!」
使い捨てのプリキット。ハンニンダーとの戦いで唯一使わなかったそれを展開する。
るるかから貰った、ワスレナグサの花束だ。
「わぁっ、はなまる素敵なお花だね! 誰かから貰ったの?」
「ああ、ちょっと知り合いにな。せっかくだし事務所に飾らせてもらおうかなって」
「知り合い……? もしかして、また女の人ですか?」
はしゃぎ疲れたようで、穏やかな寝息を立てているポチタンを見守っていたみくるが、唐突に反応を示した。
先程まで一緒にはしゃいでいたのに、今はむっとしている。
「ただの幼馴染だよ。みくるが思ってるような関係じゃねえって」
「へ、へぇ〜……そうですか。ふ〜ん……ま、まぁ、興味ありませんけどね」
「じゃあ聞くなよ……」
何故か、みくるが嬉しそうに鼻を鳴らし、指先で髪を弄っている。
あんなは花束を取り出すと、水の入った花瓶にワスレナグサを挿し、風通しの良さそうな場所に飾っていた。
その様子を眺めていると、みくるが思い出したように。
「そういえば、ワスレナグサの花言葉って……」
「花言葉だァ? 女の子は好きだよなぁ、そういうの。で、どういう意味なんだ? 知ってるなら教えてくれよ」
「……嫌です。シンジさんにだけは絶対に教えてあげません! ふんっ!」
「ええ……」
かと思えば、また不機嫌になってしまった。
女心と秋の空とはよく言ったものだ。
『16歳の誕生日、おめでとう』
るるかはどういう意図で、俺にワスレナグサを渡したんだろう。
みくるが言うように、花言葉をメッセージとしていたのか。それとも、たまたま目に入った花がワスレナグサだったのか。
彼女の事だから、きっと適当に見繕っただけなんだろう。
ひとり納得し、俺はプリキットプレーヤーを握りしめた。
「――」
今日という日を、俺は決して忘れないだろう。
例え、何があろうとも。
ヒント:今回のサブタイトル
たまたま新二くんの誕生花を調べてたら、ワスレナグサとかいう花が出てきて、リアルで声出た。そんなことある??????
誕生日の由来ですが、工藤新一・江戸川コナンの誕生日(5月4日)を逆さまにしたものなので、本当にただの偶然です。
当作品における、怪盗団ファントム メンバー早見表
・ニジー おのれビッグベイビー
・アゲセーヌ おのれチョベリバタートル
・ゴウエモン 江戸川ドイル、おもしれー男
・ウソノワール 人型おとも妖精? 知らん、何それ、怖……。
・るるか シンジ……。
・マシュタン 絶対に気づかれてるやんけ!
次回からアニメで言うところの5話に突入します。シリアス書けるか不安……。
一週間以内に更新できるように頑張ります。
次回もはなまるっ!
たんプリで好きなキャラは? 参考程度に教えてちょ
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