名探偵プリキュア! 〜A Memoir White〜   作:秋葉ばっこ

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アニメ6話と7話の間のお話。完全にオリジナル。
番外編に回しても良かったけど、本編でもワチャワチャさせてあげたくて、つい……。
何気ない日常も描いていきたいんだッ!!


〜Chapter2〜 もう戻れない日々
FILE16:揺るがぬ意志と選択


 

 

 

 

 和解してからというものの、みくるとあんなの俺に対する距離がやけに近い。

 左隣にはみくる、右隣にはあんな。

 

「ほら、口を開けてください。あ〜ん」

「あ、あ〜ん……」

「はなまる上手〜! 次はこっちだよ、はいどうぞ!」

 

 帰って早々、ジェット先輩が用意してくれたご馳走――お菓子ばかりだが――を、交互に食べさせられている。

 赤子のポチタンと同列どころか、それ以下の扱いをされているような気がする。

 勢いに押されてしまっていたが、いいようにされるのはごめんだ。

 

「あのなァ……さっきも言ったけど、飯くらい自分で食えるってば。いくら右腕がオシャカになったからって、ちょっと過保護すぎるぞ」

「「えっ……」」

 

 捨てられた子犬のような眼差しが、揃ってこちらを射抜いてくる。

 無言の圧力に負けじと、頭を掻きむしる。

 

「ぬおお〜……っ! こんな特殊なプレイがしたくて仲直りしたんじゃないぞ、俺はっ! 甘やかされるのは好きだが限度があるっ!」

「あ、逃げた!」

「食事中に席を立つなんて、お行儀悪いですよ!」

 

 するりと左右の包囲網から抜け出し、向かいのソファで黙々とケーキを食べているジェット先輩の後ろに隠れた。

 みくるとあんなに聞かれないように、彼に耳打ちする。

 

「パイセンからも何か言ってくれよ。このままだと、俺の尊厳が……!」

「自業自得だろ。……お前がボロボロになったのは、二人とも自分のせいだって思い込んでるんだよ」

「うぐっ……!」

 

 言葉に詰まり、ギプスでガチガチに固められた右腕を見下ろす。

 ジェット先輩の見立てでは、バラバラになった骨の癒合に二、三ヶ月。リハビリで更に数ヶ月の時間を有するとか。

 無茶を承知で行動したとはいえ、想像以上に酷い有様だった。これでは彼女たちが心配するのも当然だろう。

 ジェット先輩がクリームの付いたフォークで、俺が元いた席を指して。

 

「喧嘩してた反動もあるんだろうな。夕食の間くらい、付き合ってやれよ。二人を安心させるためにもさ」

「ぐぬぬ……! わ、わかったよォ……!」

 

 気乗りしない足取りで元の席に戻ると、ニコニコと笑顔を浮かべる二人に出迎えられた。

 すっかり彼女たちの尻に敷かれている。キュアット探偵事務所における工藤新二のカーストという物は、いつの間にか最底辺まで落ちぶれていたらしい。

 

「ポチ〜、ポチポチ〜!」

 

 俺の頭が気に入ったのだろうか。

 定位置と化したその上で、ポチタンが楽しげに鳴いていた。

 あれやこれやあって、神経を擦り減らしつつも、賑やかなひと時が過ぎていく。

 

「シンジさんがあんな状態だし、家事の分担を見直そうよ」

 

 夕食を終えた後。

 むくれている俺をよそに、みくるの提案によって第4回キュアット探偵事務所・定例会議が開かれた。

 

「――」

 

 部屋の清掃、トイレ掃除、風呂掃除、炊事、洗濯、ゴミ出し、エトセトラ……。

 順番に家事を挙げていって、希望者が名乗りを上げる完全挙手制。

 被った場合はジャンケンをして、勝った方が当番の権利を獲得するという、シンプルなルール。

 気怠そうにしていたジェット先輩も、なんだかんだ言いつつ積極的に参加している。

 

「――えっと、次は洗濯だね」

「わたしがやる。あんなもそれで良い?」

「うん。じゃあ、わたしは……あれっ……?」

 

 手を挙げていたのは、みくるだけではない。

 俺の左手も、不満を訴えるように屹立していた。

 

「俺を仲間外れにするんじゃない」

「わたしたちは別に、シンジさんを仲間外れにしてるわけじゃ……」

 

 申し訳なさそうに言うあんな。

 勿論、みんなが気を使ってくれているのはわかっている。わかっているが――。

 

「寂しいんだよ」

「子供ですかっ!?」

 

 子供扱いしてきたのはそっちだろうに。

 みくるの指摘を適当にあしらい、俺は続ける。

 

「こんなんでも出来ることはあるさ。大がかりな作業は無理だが、洗濯くらいなら片腕だけでも――」

「いや、ダメだろ。洗濯に関しては、ボクとシンジだけ免除されてるんだぞ?」

 

 食い気味に俺の提案を却下してくるジェット先輩。

 どうしてと尋ねる前に、みくるとあんなの反応を見て察した。

 

「う、それはっ……だ、だって……!」

「わたしたちの……うう、はなまる恥ずかしいよぅ……!」

 

 二人が顔を真っ赤にして、何かを言いたげに口をモゴモゴとさせていたからだ。

 

「なるほど。俄然、燃えてきたぞ」

「どこでやる気を出してるんですか!? ダメに決まってるでしょうっ!」

 

 みくるがポカポカと左半身をやわに叩いてくるが、引き下がるつもりは毛頭ない。

 男のプライドにかけて、意地を張り通さねばならない。

 

「この機会を逃したら次は無い。もう後悔するのはごめんだ。……止めてくれるな、みくる。俺はやると決めたらやる男だぜ……! これが俺の選択だ……!」

「格好つけてますけど、言ってることは最低最悪ですからね!?」

「うるさい、被ったからには正々堂々と勝負だ! いくぞっ! 最初はグー、ジャンケン――!」

 

 このまま勢いに乗じて勝たせてもらう。

 先にこちらが手を出してしまえば、後出しだのなんだのでイチャモンを付けられる。そうなれば必然的に俺の勝ちだ。

 

「ポ――」

 

 勝利を確信したのも束の間。

 

憤怒(ふんぬ)っ!」

「ングェ――ッ!? 会心の一撃!」

 

 平手打ち(パー)が飛んできて、俺の揺るがぬ意志(グー)は脆くも崩れ去ってしまった。

 頬に季節外れの紅葉を咲かせつつ、ふてぶてしく笑ってみせる。

 

「フッ、完敗だ……敗者は潔く諦めるのみ……ああ、短ェ夢だったなァ……」

 

 みくるの方が一枚も二枚も上手だった。

 よっぽど俺に洗濯物を触られたくないらしい。それこそ、たった一枚や二枚の布切れすら。

 彼女はスカートの裾を握りしめたまま、恨めしそうに。それでいて顔を赤らめながら睨んでくる。

 

「シンジさんのえっち! ハンニンダーと戦ってた時は、あんなに格好良かったのに……!」

「上げて落とすんじゃない。落として上げるのが好きなんだ、俺は。ここから巻き返してみせるぜ」

「なっ……!? ……この万年エイプリルフール男! 人間エレベーター! 苺の入ってないミルフィーユ!」

「どういう趣旨の罵倒だよ!?」

 

 俺とみくるのやり取りを見ていたあんなが、ぷりぷりと苦言を呈してくる。

 

「もうっ、みくるの言う通りだよ! 女の子が嫌がる事しちゃダメなんだからね! あんまり酷いと嫌いに……ならないし、なれないけどっ……ダメなものはダメっ!」

「はい、すみませんでした。返す言葉もございません」

 

 珍しく怒っていると思いきや、彼女はポツリと。

 

「……でも、ちょっと意外かも。シンジさん、歳上にしか興味ないと思ってたから」

「いいや? グラマー美人も悪くないけど、よっぽど歳が離れてなきゃ歳下もいける。俺の守備範囲を舐めんなよ、あんな」

 

 俺が真顔でそう言うと。

 嬉しさと恥ずかしさが入り交じった複雑そうな面持ちで、あんなが胸を撫で下ろす。

 

「そ、そっか。良かった……ね、みくる?」

「……わ、わたしっ!? 急に振ってこないでよ、あんな!」

 

 悪戯っぽく笑うあんなと、しどろもどろになっているみくる。

 そんな彼女たちの様子を見て、思わず自分の頬が緩んでいくのがわかる。

 

「――」

 

 もう二度と見られないと思っていた光景が、目の前にある。

 それだけで、言葉では言い表せないような充足感に満たされていく。

 

 ――二人が前みたいに笑い合えるようになって、本当に良かった。

 ――これからも一緒にバカをやっていきたい。

 

 なんて、気恥ずかしいので口には出さないが。

 みくるとあんなも同じことを思ってくれていたらいいなと、心からそう思える。

 

「若いな……」

 

 新しく取り出したキャンディを咥えながら。

 どこか郷愁の念に満ち満ちた、枯れた老人のような呟きを、ジェット先輩が静かに漏らしていた。

 そういうお年頃(222歳)なんだろう。

 

 

 

 

 翌日の放課後。

 良い知らせを伝えようと、急ぎ足で帰ってきたみくるが、勢いよく事務所の扉を開く。

 

「ただいま! ねえねえ、あんな、聞いて! 理事長に相談してみたら――って、ええっ!?」

 

 彼女が驚いたのは他でもない、大事をとって学園を休んでいたはずの新二が、部屋の真ん中で土下座をしていたからだ。

 腰に手を当てているあんなが、そんな彼を見下ろすように佇んでいる。

 

「あ、みくる。おかえり」

 

 帰ってきたみくるに気づいたようで、ゆっくりとこちらに振り返る。

 彼女は屈託のない笑顔を浮かべていたが、遠目でもわかるくらいの圧力を、みくるはハッキリと感じ取った。明らかに怒っている、と。

 

「う、うん……ねえ、あんな。何があったのか聞いてもいい?」

「……キャッチボールしてたんだ」

「キャッチボール?」

 

 情報が少なすぎて話が飲み込めない。

 首を傾げて反芻するみくるに、あんなが答えるように口を開く。

 

「シンジさんがね、中庭でポチタンとキャッチボールしてたの。……右手を使って」

「は――?」

 

 自ずと、新二の右腕に視線が行く。

 みくるが目にしたのは、昨夜までのそれではなかった。あるいは、それ以前の――。

 

「ウ、ウソ……!? 怪我が治ってる……!?」

 

 あまりの衝撃に鞄を落とし、土下座している新二の元へ駆け寄る。

 ただギプスを外しているわけではない。袖を捲ってみると、そこには元通りになった右腕が、確かに存在していたのだ。

 まるで最初から怪我をしていなかったかのように。シミひとつない白魚のような肌が、冷や汗で滲んでいる。

 

「どういう事ですか、シンジさん!? きちんと説明してください!」

 

 みくるが新二の肩を揺さぶると、彼はバツが悪そうに語り出した。

 その日の正午まで、時刻は遡る――。

 地下にある研究室にて。右腕の検査も兼ねて、新二とジェットの二人は、男同士水入らずの時間を過ごしていたらしい。

 

追想顕現(リコール・プレイバック)、略してリプレイか。自分で名付けたのか? そういう年頃なんだな」

「ちがわい! 俺が考えてたら、もっと格好良い技名にしてるっての! 例えば『スーパー・イミテイト・オブ・シンジ・マネマーネ』とか――」

「いや、もういい……」

 

 ネーミングセンスが壊滅的なのはわかった。

 キャンディを口の中で転がし、腕を組んだジェットが考え込む。

 

「ハンニンダーとの戦いで、アンサーとミスティックの技を使ったらしいじゃんか。……もしかして、一度見たものなら何でも?」

「う〜ん……今まで考えもしなかったけど、多分いけると思う」

「多分って……でも出来るんだろうな、お前が言うなら。ホント記憶力()()()良いよな、シンジって」

「いや〜それほどでも〜! 伊達に完全記憶能力は持ってねェからな〜! あっはっは!」

 

 褒めてないが。

 嘘か本当かはさておき、サラッと新事実を放り込んでくるのもやめて欲しい。

 

「自分の能力ぐらい把握しておいたらどうだ。制御できるようにならないと、後々苦労するかもしれないぞ」

「……うん。全くもってその通りなんだけど、普通の男子学生がする会話じゃないよな、これ」

 

 ライトノベル(あんなから教えてもらった)の主人公にでもなった気分だと、新二が茶化しつつ答えた。

 現に、度重なるアンサーアタックの模倣とその反動で、右腕が使い物にならなくなってしまっている。

 ジェットの提案は的を得ているのだが、そう簡単にいく話でもないらしい。

 

「力加減が出来ないんだよ。十を真似しようとすると、十しか出てこない。一から九を出したくても、そもそも知らないから不可能と来た」

「へぇ、思っていたよりもピーキーな能力なんだな。文字通りリプレイしか出来ないってわけだ」

「そうなんだよ。真似っ子する度に頭痛がするし、細かい調整は効かないし、地味〜なチカラですこと! 不便ったらありゃしないわ!」

 

 腰をくねらせ、何故か女口調で文句を垂れている新二。

 彼とは反対に、ジェットは前向きな意見を落とす。

 

「ん、そんな事ないだろ。使い所を考えれば、ファントムとの戦い以外でも役に立ちそうだけど」

「戦い以外……?」

「例えばそうだな……ポチタンの物をしまう能力だったり、それこそプロのパティシエの動きを再現したら、美味しいお菓子が作れるかもしれない!」

 

 後半はともかく、目から鱗だった。

 一度でも技術を盗み見てしまえば、自分のモノに出来るかは別として、一過性の事象として再現できてしまうのだ。ジェットが言うように、使い道は発想次第でいくらでもある。

 新二が目を輝かせて。

 

「ジェッティ……! あんたはやっぱり凄ェや!」

「フッ、ボクを誰だと思ってる」

「天才発明家……だろ?」

「よくわかってるじゃないか。シンジ」

 

 彼らはそっと握手を交わす。

 同じ男同士だからこそ通ずるものがあるのか。研究室には何人も立ち入ることのできない、なんとも奇妙な空気が流れていた。

 

「そ、その……ひとりで自分の能力について色々と実験してたというか。何が出来て、何が出来ないのかを知りたくて……」

 

 回想はここまで。

 顔を引き攣らせたみくるが。眉を顰めたままのあんなが、相変わらず新二を見下ろしている。

 

「ちょっとした思いつきだったんだよ。怪我をする前の自分の身体を追想顕現(リプレイ)したら、どうなるのかなーって。……そしたら出来ちゃった! てへ!」

 

 場を収めるアプローチのつもりなのか、語尾に星でも付いていそうな、絶妙に下手くそなウィンクを飛ばしているが、微塵も可愛さを感じられない。

 ただ、驚くほどの静寂だけが流れている。

 

「……へぇ。それで、ポチタンとキャッチボールして遊んでいたと」

 

 あんなの怒りが伝染したかのように、みくるのこめかみに、今にもはち切れそうな青筋が浮かんだ。

 

「ポ、ポチ……」

「行こう、ポチタン……ボクたちに出来ることは何もない……」

 

 扉の間から、恐る恐る彼女たちの様子を眺めていたジェットが、ポチタンを連れて立ち去っていく。

 数時間に渡るお説教の後、ようやく新二は解放された。

 長時間も正座をしていたせいか、産まれたての子鹿のような足取りだったが。

 

「もうっ! 見た時は本当にビックリしたんだからね?」

「ご、ごめんよ、あんな……みくるも……」

 

 驚いたものの、彼の持つ能力とやらは実に凄まじい。

 一度見たものを再現できると言うのなら。

 

「わたしたちと同じ技を使えるだけじゃなくて、プリキュアにも変身できたりします? な〜んて……」

 

 軽い気持ちで聞いたつもりだった。

 しかし。

 

「その気になりさえすれば出来るんじゃね? 頭痛がえらい事になりそうだし、時間も限られるだろうから、絶対にやらないけど」

「「……っ!?」」

 

 みくるの問いに返ってきたのは、再び彼女たちの肝を潰しかねないものだった。

 冗談を言っている雰囲気ではない。至極当然のことのように、新二はあっさりと言い放ってみせた。

 彼女たちが衝撃で固まっていると、間もなく追い打ちが飛んでくる。

 

「厄介な問題がもうひとつある」

「「厄介な問題……?」」

 

 ゴクリ……。

 打って変わり、深刻な顔つきを浮かべる彼を見て、あんなとみくるが固唾を呑み込んだ。

 

「……見たいか? 俺がアンサーとミスティックの衣装を着て、ポーズを決めてるところ」

「ずこーっ!」

 

 思わず、みくるがずっこける。

 そんな彼女のリアクションを古いと思いつつも、あんなは「ちょっとだけ見てみたいかも……」と小声で漏らしていた。頬をほんのりと染めながら。

 

「そ、そういえば……!」

 

 不穏な気配を察したのか、新二は話題を切り替えようと、倒れたままのみくるに声をかける。

 

「みくる、帰ってきた時に何か言いかけてなかったか? 理事長がどうとかって」

「そう! そうなんですっ!」

 

 勢いよく立ち上がり、制服についた埃を払うみくる。

 彼女は放置されていた鞄を取りに行ったかと思うと、すぐに戻ってきて、その中身を見せびらかしてきた。

 あんなは鞄を覗き込み、不思議そうに呟く。

 

「これって……制服だよね? みくるが着てるのと同じ」

「あんなの制服だよ!」

「そうなんだ。わたしの……って、ええ〜っ!? どういうこと!?」

 

 ふふん、と得意げにみくるが鼻を鳴らす。

 彼女曰く、学園の幽霊騒ぎ――北村恵子の件を解決した功績が理事長に認められたのだという。

 お陰であんなも『まことみらい学園』に通えるようになったのだと、みくるは鼻を高くして語った。

 

「ほ、本当に……?」

「もちろん、本当だよ!」

「……これからは毎朝、シンジさんとみくると一緒に学校に行けるんだね。みくるの近くに居られるんだ。……ウソじゃないよね?」

「うんっ! わたし、ウソつかないから!」

 

 敢えてあんなの口癖を真似て、みくるが歯を出して笑ってみせる。

 未だに実感が湧かないのだろう。口を開けて立ち竦んでいるあんなの頭を、そっと新二が叩く。

 

「良かったな、あんな」

「……うんっ!」

 

 あんなは溢れ出そうになっていた涙を拭うと、とびきりの笑顔を浮かべて、みくるへと抱きついた。

 

「ありがとう、みくるっ! はなまる嬉しい〜っ!」

「きゃっ――!? もう、あんなってば」

 

 微笑ましい光景に、うんうんと新二が頷く。

 

「よし、あんなの入学祝いだ! 今日は奮発して、みんなで外食にでも行こう! もちろん俺の奢り、で――」

 

 ――バタン。

 言葉尻に、彼はバランスを崩して転倒してしまう。突然、電池が切れたかのように前触れもなく。

 まだ足が痺れているのかと、心配した二人が寄り添おうとするが、どこか様子がおかしい。

 

「ハァ、ハァ……」

 

 呼吸が荒い。肌という肌に、脂汗が浮かんでいく。

 今まで気づけなかったが、顔色も真っ青だ。

 みくるが、慌てて新二の額に手を当てると。

 

(あつ)っ――!? 凄い(ねつ)……! シンジさん、こんな状態で今まで動き回ってたの……!?」

 

 二人の脳裏に、先程の会話が過ぎる。

 能力を使えば使うほど、頭痛という反動に苛まれる事になると、彼自身が語っていた。

 

「もしかして、右腕を治したから……?」

 

 見かけは元通りでも、そうではなかった。

 自分たちの預かり知らない所で、新二はまた傷ついていたのかもしれない。

 それでも彼女たちに心配をかけまいと、あくまでも平静を装っていたのかと思うと、胸がざわめく。

 

「ソファに寝かせてあげないと……! みくる、運ぶの手伝って!」

「う、うん……!」

 

 ――ああ、また心配をかけてしまった。

 そんな思考を最後に、工藤新二は朧気になっていた意識を手放すのだった。

 




【悲報】主人公、また倒れる

大きな力には代償が伴うものです。
仮に今の新二くんがキュアアンサー、キュアミスティックに変身した場合、直ちに命を落とします。本人は誤魔化していますが、理論上は可能というだけです。

「多分いける!」
「試してみたら出来ちゃった! えへ☆」
「その気になれば出来るんじゃね?」

裏を返せば、代償次第で幅広く能力を活用させる事ができます。怪我の治療しかり。
都合が良いだけの能力より、デメリットのある能力が好きなんです。完全に私の趣味ですね。

一週間以内に更新できるように頑張ります。
次回もはなまるっ!
平場はパイセン、真面目な時はジェット先輩、感極まるとジェッティ。
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