名探偵プリキュア! 〜A Memoir White〜   作:秋葉ばっこ

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6/7
日間総合ランキング42位
二次創作ランキング32位
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日間総合ランキング153位
二次創作ランキング113位
すぐに転落してたとはいえ、一時的にランクインしてたみたいです。本当に基準がわからんくてびっくりする。
お気に入り・評価・感想いつもありがとうございます。

シンジ「プリティホリックの店番してました;;」
絵の謎を解き明かせ! ~完~
というわけで美術館回です。


FILE24:インビテーション・オブ・アルカナ

 

 

 

 

 休日のキュアット探偵事務所。

 穏やかに流れている空気を一変させたのは、点けっぱなしにしていたテレビから聞こえてくる、あるニュースのアナウンスだった。

 

『昨日、宝生美術館の宝生ちなみオーナーに、怪盗団ファントムと名乗る人物から予告状が届きました』

「「えっ!?」」

 

 明日、夜8時

 『星明かりのプリンセス』

 をいただく。

 怪盗団ファントム

 

「あんな、これって……!」

「うん。みくる、ポチタン、シンジさん、美術館に行こう!」

「ええ!」

「ポチ!」

 

 二人と一匹はそう腕を鳴らし気炎を吐くのだが、最後に呼ばれた少年だけは、気炎ではなく寝息を吐く。

 すっかり定位置となったソファの上で、新二は腹を出していびきをかいていたのである。

 

「HAHAHA。ジェット先輩、それじゃプリティホリックならぬワーカーホリックだぜ。たまには仕事を忘れて、パーッと遊ぼうじゃないか……俺が疲れを癒してあ・げ・る」

「ど、どんな夢見てるんですかっ!」

「寝てないで起きてよーっ!」

 

 みくるとあんなに叩き起こされ、しぶしぶ起き上がる新二。

 彼は眠たい目を擦りながら、部屋の隅にあるブラウン管に視線をやると、いきなり(まなじり)を決した。

 

「――っ!」

 

 空のように澄み渡った碧眼が大きく見開かれ、ニュースに写っている予告状を捉える。

 ただ事ではないと感じたみくるは、いつになく険しい面持ちを浮かべる新二の袖を掴み、心配そうに。

 

「ど、どうしたんですか、急に怖い顔しちゃって……?」

「いや、くしゃみが出そうで出なかっただけ――()ってェ!? なんで叩くんだよっ!」

 

 緊急事態発生(スクランブル)だ。

 後頭部を抑えている阿呆を引きずって、名探偵の二人は現場である『宝生美術館』に早速と向かった。

 自分たちが探偵である旨を伝えると、受付の女性は困った様子でオーナーである宝生ちなみにコールをかける。

 

「はい。怪盗から首飾りを守ると……」

 

 言いながら、忙しない様子のみくるとあんなの方を見やる。

 アポ無しの訪問。それに加えて、探偵を自称しているのは中学生にしか見えない二人の少女。口を開けて呆けている少年は保護者代わりだろうか? 受付をしている彼女が訝しむのも無理はない話だった。

 

「予告状なんて、名探偵への挑戦ね。ファントムの好きにはさせない!」

 

 みくるは腕を組み、そこはかとない決め顔で宣言してみせた。

 いかにもなシチュエーションに、端的に言って浮かれているのである。

 

「うん。ポチタンもミスティックの衣装を着て、やる気まんまんだよ!」

「ポチポ〜チ!」

 

 しばらくメインホールで待機していると、みくるの視界にとある人物が入ってきた。

 二階に続く階段から優雅に降りてくるのは、ニュースに映っていた美術館のオーナー……宝生ちなみ。気のせいか、実際に「スタスタ」と声に出してこちらに向かってきているような。

 そんな事は露知らず、みくるはプリキットブックとペンを取り出し。あんなはポチタンを抱っこしたまま、彼女を出迎えようとするが。

 

「宝生さん! 初めまして、キュアット探偵事務所の小林みくるです!」

「明智あんなで……す?」

「なんて可愛いポーチなのっ! このフリフリも堪らないわ〜っ! 譲ってくださらない!?」

「ええ〜っ!? ダメです、友達ですからっ!」

 

 勢いよく宝生ちなみに詰め寄られ、あんなが慌ててポチタンを背中に回す。

 実際、ポチタンは『時空の妖精』と呼ばれている、妖精の中でも一際珍しい存在だ。それを知らずして惹かれるとは、美術館のオーナーだけあって確かな審美眼をしている……のかもしれない。

 にこやかな笑顔を浮かべ、とある提案をする宝生ちなみ。

 

「星明かりのプリンセスの警護は、あーた達に任せるから。ねっ?」

「ポ、ポチタンは譲りませんけど、星明かりのプリンセスは任せてくださいっ!」

「……そっ。まあ、気が変わったら譲って?」

 

 残念そうに言いながらも、彼女は星明かりのプリンセス――怪盗団ファントムの標的である、首飾りの宝石の警護を一任してくれた。

 オーナー自ら案内してくれる事になり、星明かりのプリンセスがある特別展示室まで向かう道中、行く先々で展示されている品々に、心奪われるあんなとみくる。

 

「わああっ……!」

「世界中から集めた、あたくしのコレクションよ。皆さんにも見ていただいてるの。そして――こちらが、星明かりのプリンセス!」

 

 ガラス製のケースの向こうで、美しい緑色の宝石が光沢を放っている。

 行きかう人々がわざわざ歩みを止め、その煌びやかさに目を奪われてしまう理由もわかる。当初の目的さえも忘れて、あんなとみくるは目を宝石のように輝かせた。

 

「はなまる綺麗〜!」

「歴史的価値のある首飾りで、20億円は下らないわ」

「「ええ〜っ!? 20億円〜っ!?」」

 

 驚いている二人の横目に、沈黙を貫いている新二の姿があった。

 

「……」

 

 彼は口を結んだまま、じっと星明かりのプリンセスを注視している。

 眩しさに目を細めているのとは違う。まるで訝しむかのように、不躾な眼差しを宝石にぶつけていた。

 流石に気がかりになり、みくるがこっそりと、肘で新二の脇腹を突つく。

 

「……シンジさん。宝生さんの話、聞いてます?」

「んん〜? ああ、泥団子を綺麗に作るにはどうするかって話だろ。聞いてる聞いてるゥ」

「息をするように嘘つくのやめてくださいよ」

 

 この通り、ニュースを見てから新二の様子がおかしいのである。

 声をかけても、うんともすんとも言わない……わけではなく、返ってくるのは素っ頓狂な返事ばかり。それだけなら平常運転に聞こえてしまうが、兎にも角にも不自然極まりないと、あんなとみくるは感じていた。

 

「ねぇ、シンジさん。どこか具合でも悪いの?」

「……ピンと来たぜ。ポチタンのタンの由来って、牛タンとかと同じ『舌』なのかもしれない」

「ポチ!?」

 

 あんなは心配して声をかけてみるも、やはり意味不明な返答を投げ返されてしまい、紐に繋がれているポチタンが思わず声を上げる。

 そんな彼女の肩を軽く叩き、みくるが首を振りながら言う。

 

「そっとしておこう、あんな」

「みくる……」

「帰ったらジェット先輩に直してもらおっか。頭のネジと一緒に」

「みくる!?」

 

 言葉尻に、二人は新二の方を見やる。

 

「――」

 

 普段ならすぐにでもムキになり、一喝(ツッコミ)を飛ばしてきそうなものだが、彼はぼんやりと視線を彷徨わせるだけであった。

 

「アレはどう考えても……でも、わざとらし過ぎるよなァ……パチットモンスター、縮めてパチモン……」

 

 右往左往。順繰りに美術館の展示品を見ては、ブツブツと小さく何かを呟く新二。

 考え事に脳のリソースを割いているせいで、まともな受け答えが出来ていないのだろう。そう判断したみくるは、あんなとポチタンと共に、引き続き宝生ちなみの話に耳を傾ける。

 

「あーた方の出番はありませんわ。はい、カモ〜ン」

 

 パン、パン――。

 手を鳴らした途端、美術館中にいたと思われる警備員が、一斉に集結した。

 優秀な警備員が数十人。防犯カメラによる二十四時間の監視。星明かりのプリンセスが収納されているガラスは、象が踏んでも壊れないという耐久性を誇るのだという。

 極めつけは、宝生ちなみの顔を認識することでケースを開くことが出来るという、当時としては最先端の技術の賜物。厳重なセキュリティがあるので探偵など必要ない、と宝生ちなみは豪語する。

 

「とにかく、あーた方が必要無いのはわかったでしょう? ポーチを譲る気になったらいつでも声をかけてね。オーッホッホッホ!」

 

 受付の女性を引き連れ、高笑いをしながら去ろうとするオーナー。密集していた警備員もそれぞれの持ち場に戻ろうと散り散りになっていく。

 そんな流れに便乗するように、新二もまたフラフラとした足取りで、宝生ちなみに近づく。

 

「オーナー。少し聞きたいことがあんだけど」

「おや、あーたは……? オッホッホ、構いませんわ。今のあたくしは機嫌が良いんですの。この美術館に纏わる事なら、何でも答えてあげましょうとも」

「お、太っ腹〜。誰かに聞かれるとアレなんで耳貸してくださいや。ゴニョゴーニョ・ゴーニョニョ――」

 

 そう言って、新二が耳打ちした途端。

 宝生ちなみは顔を真っ青にして、周囲を警戒し始めた。

 

「な、ななな、何故それを……!? ゴ、ゴホン……! い、いえ、そのような事実はありませんわ……何が目的ですの?」

「べっつにー。ちょっと見せて貰いたい物があるんすよ」

「……良いでしょう。ここは人目に付きますわ。場所を変えますわよ」

「いやあ〜悪いね〜。じゃ、そういうわけだから、また後で会おうぜ〜!」

 

 あんなとみくるが声をかける暇もなく、新二は宝生ちなみと共に行ってしまった。

 終始あくどい顔を浮かべていたが、いったいどうしたと言うのだろう? 彼の奇行は今に始まった事ではないので、何か考えがあるかもしれないと二人は納得する。

 

「ファントムが狙うってことは、星明かりのプリンセスにマコトジュエルが宿ってるんだよね?」

「きっとね。予告の時間は夜8時。それまで美術館を調査しよう、あんな!」

「うん!」

 

 彼女たちは改めてプリキットブックとペンを取り出して、各々で調査に乗り出した。

 みくるは、侵入経路や逃走経路になりそうな場所を隈なく調べ。特別展示室を出てすぐ、あんなも同じように調査を進めていき、気になったことをメモしていく。

 

「凄い人気ね」

「――えっ?」

 

 最中、見覚えのない少女に話しかけられた。

 紫色を基調とした、狐のようなぬいぐるみを抱いた少女だった。

 周囲に誰もいないことを確認し、声をかけられているのが自分だと、あんなはそう理解する。

 

「あの首飾り」

 

 自分よりも少しだけ歳上だろうか? どこか落ち着いた様子で、少女は遠巻きに星明かりのプリンセスを眺めている。

 というより、展示に群がっている人々を観察しているかのような、そんな印象を受けた。

 

「……ああ、そうですね。ファントムが狙ってて話題になってますし」

「だけじゃない。騒動になる前から、首飾りが好きな人はたくさんいた……何がそう惹きつけるのかしら?」

「う〜ん、よくわからないけど……みんなの想いが集まって、キラキラ輝いているから……ですかね!」

 

 笑って答えるあんなに、少女は瞼を閉じて沈黙を返す。

 すると、廊下の曲がり角の先から、今度は知った声が聞こえてきた。

 

「おーい。あんなー、みくるー」

「あ、シンジさんだ……失礼します!」

 

 ぺこりとお辞儀をし、あんなは踵を返して新二の元へと向かう。

 

「……期待はずれね」

 

 背後からそんな声が聞こえてきて、あんなは直ぐに振り返るが、既に少女の姿はなかった。

 小首を傾げている彼女の元へ、新二が手を振りながら歩いてくる。

 

「いたいた。んなとこで突っ立ってどうしたんだよ」

「ううん。知らない女の人に声をかけられて、ちょっとお喋りしてただけ」

「ぬぁにィ〜!? ど、どこだ、件の女性は!? どんなおにゃのこだった!? 可愛かったか!?」

「……むっ、教えてあげないもん」

 

 あまりにも予想通りの反応だったため、あんなは頬を膨らませて突っぱねた。

 質問責めに遭いながら、新二の様子がおかしかったのは気のせいだったのかもしれないと、同時に安心を覚える。

 あんなの心、新二知らず。彼は不意に鼻をすんすん鳴らし。

 

「なんか臭うな……」

「……えっ、ウソ!? わたし汗臭いかな……?」

「違う、あんなはいつもいい匂いだよ。そうじゃなくて、この辺から嗅いだことのある香りがする」

「そ、そっか……良かったぁ……えっ!? ね、ねぇ、さらっと凄いこと言わなかった!?」

 

 顔を真っ赤にしたあんなが体を揺するが、新二は微動だにせず、顎に手を当てて考え事に耽っている。

 間もなく閉館時間。ファントムが予告した時刻まで、数十分を切っている。

 一方、美術館の屋上にて――。

 

「――さてと、作戦開始の前に占っておくわ!」

「わあ〜」

 

 先程、あんなに声をかけた少女であり、予告状を出した張本人――森亜るるかが、淡白とした笑顔で拍手を送る。

 小さな三角帽子を斜めに被り、水晶玉に肉球を翳しているのは、彼女のおとも妖精であるマシュタン。占いが進むにつれて、水晶玉が怪しく光っていく。

 

「――見えたわ! るるか、あなたの前におじゃま虫が現れるって!」

「ありがとう。マシュタンの占いはよく当たるものね」

 

 でも、とるるかは付け足して。

 

「私に失敗はない。それに、()()()の方も完璧」

「……仕込み?」

「オープン――」

 

 本来、キュアット探偵事務所に所属する探偵をサポートするためのアイテム――プリキットのひとつであるグロスを、るるかが取り出し使用した。

 ほんのり薄紫色に染まった唇が、月夜に照らされ艶っぽく光る。次第に眩い輝きが彼女の身体を覆っていき、体格や装いまでをも変化させていく。

 サングラスをかけながら、るるかが。

 

「行こう、マシュタン」

「任せて、るるか! 作戦開始!」

 

 るるかは警備員の姿に扮し、特別展示室へ。

 マシュタンは電気室に侵入し、20時丁度に停電が起きるように動く。それが彼女たちの作戦であった。

 

「あと一分……」

 

 オープンする前のジュエルキュアウォッチ――開かれた懐中時計を見下ろし、みくるが小さく呟く。

 ケースを取り囲むように配置されている警備員の列に、既にるるかは紛れ込んでいた。

 

「あと十秒……」

 

 あんなとポチタンは、月明かりのペンダントから目を離さぬように。

 対照的に、手を頭の後ろで組んだ新二が、きょろきょろと展示室を見回す。

 様々な思惑が交差する中、ついに予告時間である20時が訪れようとしていた――。

 

「――、停電っ!?」

「あらまあ!?」

 

 どうやらマシュタンが上手くやってくれたらしい。

 周囲がどよめき立つ中、るるかは冷静にサングラスを外し捨てる。

 すぐに非常電源が作動し、室内は元の明るさを取り戻したのだが。

 

「――あれはっ!?」

 

 真っ先に異変に気づいたのは、みくるだった。

 首飾りが保管されているケースに、ファントムのマークが描かれた紙切れが貼り付けられていたのだ。

 すぐにあんながカードを手に取り、内容を読み上げていく。

 

「怪盗団ファントム参上。星明かりのプリンセスはすり替えられた偽物。あしからず……」

「なんですってえええ〜〜〜っ!? たたた、大変っ!!」

「――ダメ、罠ですっ! 偽物だと思わせ、確認のために鍵を開けさせる……でも、中身は本物!」

 

 慌ててケースを解錠しようとする宝生ちなみへと、みくるが必死に呼びかけるが、時すでに遅し。

 警備員に変装していたるるか――ケースを開けさせるように仕向けた犯人が、月明かりのプリンセスの前で待ち構えていた。

 

「――その通り。鍵を開けた瞬間、ケースの中身を貰う。古典的なトリック」

 

 言葉尻に、彼女は予め用意しておいた煙幕を地面へと叩きつける。

 あっという間に特別展示室が煙に覆われ、人々の視界を散漫なものにする。

 マコトジュエルが奪われたことを察知したポチタンが、一際大きく鳴いた。

 煙が蔓延する中、お互いの安否を確認するように。

 

「すぐに追いかけないと……! みくる、シンジさん!」

「わたしならここに……でも、シンジさんが居ないの!」

「そ、そんな……!?」

 

 言われてみれば、停電が直ってから彼の姿を見かけていないような。

 もしもファントムの策略だとして、それにしてはタイミングがおかしい。他に思い当たることはないかと考えた結果、あんなの勘がひとつの答えを導き出す。

 

「もしかして……!」

「どうしたの、あんな?」

「行こう、みくる、ポチタン! マコトジュエルを取り返さなきゃ!」

 

 迷いという名の煙を払うように、探偵たちは勢いよく部屋の外へと飛び出した。

 場面は、再び美術館の屋上へと移り変わる。

 

「上手くいったわね、るるか!」

「うん」

 

 マシュタンと合流したるるかは、月明かりのプリンセスを手に満足気に頷いた。

 あとは再びプリキットグロスを用いて、一般人に変装するなりして逃走すればいい。

 口だけの探偵がここにたどり着くまでに、どれだけ時間がかかる事やら。なんとも手応えのない相手だったと、高を括っていると。

 

「よう、お嬢さん方。月夜の散歩もたまにゃ良いもんだな」

「……っ!? あ、あなたは……!」

 

 マシュタンが勢いよく振り向いた先には、塔屋に背中を預けている新二の姿があった。

 つまり、彼は自分たちが逃げてくるよりも先に屋上に来て、そのまま待機していたということだ。

 探偵の二人ではなく、まさかこの男が来るとは。マシュタンは信じられないと言った様子で尋ねる。

 

「ど、どうしてここがわかったの……!?」

「どうしても何も、呼ばれたから来たんだよ。るるかにな」

「なんですって?」

 

 チラリ、とるるかの方を見やるマシュタン。

 新二は腕を組んだまま、いつにも増して得意げに続ける。

 

「ニュースを見た時、見覚えのある字だと思ったんだ。どうにかする手段なんて幾らでもあっただろうに、わざわざ手書きの予告状を寄越すなんて、わざとしか思えねェ」

「……筆跡だけで、るるかの正体を見抜いたというの?」

「事前にオーナーを揺すって、警備員の顔写真が載ったリストを見せてもらったってのもある。この美術館にある展示品って、どれも偽物ですよね〜? つって。堂々と女警備員が入ってきた時は驚いたぜ」

「……」

「あとは匂いかな。お前さん、ご丁寧にプリティホリックで売ってるフレグランスをつけてるだろ。う〜ん、グッドスメル。俺オススメのライラックの(かほ)り〜。へへ、最近じゃ嗅覚にも自信があるんだわ!」

 

 それだけでここに辿り着いたというのか。

 マシュタンは感心するのと同時に、普通に引いた。

 

「ストーカーみたいよ、あなた」

「う、うるせぇな! とにかく、俺の観察眼もたまにゃ役に立つってこったい!」

「ふふっ……」

 

 新二とマシュタンのやり取りに、るるかは静かに笑みをこぼしたあと、警備員の変装を解く。

 それから、彼女は嬉しそうに新二の元へと歩み寄った。

 

「お世辞にも推理とは言えないけれど、流石の記憶力ね。あなたなら来てくれると思ってた」

「そりゃどうも。で、いったい何がしたくて俺を呼びつけたわけ?」

「……試していたの。あの子たちとシンジ、どちらが先に私を見つけるかを」

「はぁ……?」

 

 要領を得ない返答に、新二はそんな声を漏らす。

 彼の疑問に答えるべく、るるかは淡々と言葉を紡いでいく。

 

「あの子たちにシンジを任せられるかどうか、見定めたかった。結果は知っての通り……探偵ですらない人間に出し抜かれるようでは、期待はずれもいいところね」

「任せるとか、期待はずれとか、さっきからお前が何言ってるのかさっぱりなんだけど」

「……それにしては、あまり驚いてないように見えるけど。私がファントムの一員であることにも気づいたはずなのに」

「別にどうでもいいだろ、そんなの。お前がファントムだからって、俺たちの関係が変わるわけじゃないだろ?」

 

 本気で言っているのか、この男は――?

 曲がりなりにも、彼はキュアット探偵事務所側の人間だと思っていた。

 この場に姿を現したのも、月明かりのプリンセスに宿るマコトジュエルを取り返し、自分たちの悪事を止める為だとばかり。

 

「――」

 

 依然として驚くマシュタンであったが、嬉しそうにしている相棒(るるか)の姿を見ていると、どうしても横から口を挟むことが出来なかった。

 るるかは新二の手を優しく取って、自分の元へと引き寄せる。

 

「――単刀直入に聞くわ。シンジ、私と一緒に来る気はない?」

「るるかと一緒に……?」

「ええ。このままファントムと敵対していても、危険な目に遭うだけ。だったら私の傍にいて欲しい。すぐ近くで、あなたを守らせて欲しいの」

 

 工藤新二は()()()()の事情を知りすぎてしまっている。探偵でないとはいえ、無関係な人間と言い張るのはもう不可能に近い。

 ただの一般人として生きられないのなら、せめてファントムの監視下に置き、危険から遠ざけたい。るるかはそう考えたのだ。

 

「……さあ、選んで。あの子たちか、私のどちらかを」

 

 一世一代の告白にも取れるような言葉だった。

 実際、彼女にとっては本当にそうだったのかもしれない。

 

「――」

 

 空色の瞳の奥で、決定的な何かが揺れ動く。

 新二がその言葉をどう受け取ったのか、それは本人にしか分からない。ただひとつ言えるとすれば、彼がこれから紡ぐ選択によって、物語の命運は左右していくことだろう。

 夜はまだ始まったばかりだ――。

 




シンジ「筆跡! 匂い! ベストマッチ!」
マシュタン「キッショ。なんで分かるんだよ」
るるか「ウレシイ……ウレシイ……」

珍しく三人称視点。主人公が何を考えているのか描写したくない時、意識がない時とかにたまにやる。
るるかが絡んでるのもあって、たまには主人公にも推理方面で活躍させたいと思ったら、予想以上にキショくなってしまった。毛利小五郎みたいにしたかったのにィ〜!

この小説では、予告状を敢えて手書きで用意したという事にさせてください。
るるかを自分勝手な理由で動いてる女の子にしたくないんですけど、そこんところ上手く描けてるかが心配。まあ、愛が重いのは間違いないか。
あんみくが探偵として未熟だから、シンジくんを手元に置きたいみたいです。プリキュアと並んで戦ってる現状がおかしいだけなんだよなぁ……。

なるべく早く更新できるように頑張ります。
次回もはなまるっ!
アンケートも答えてくれると嬉しいっ! 参考にしますん。

主人公をプリキュアにするべきかどうか

  • このままでいい。花京院の魂も賭けよう
  • 好きにしろ。フィニッシュを決めるのは俺だ
  • 自認・栗花落カナヲだから決められないの
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