名探偵プリキュア! 〜A Memoir White〜 作:秋葉ばっこ
メモワール(memoir、複数形:memoirs)は、フランス語で「記憶」「思い出」を意味する名詞である。英語でも主に「回想録」「自伝」を指す言葉として使われる。
※Wikipediaより引用。
◇
元より逃げる算段をつけていたのだろうか。後を追うように、人気のない雑木林を奔る。
しばらく全力疾走していると、前方にニジーの姿を捉えた。
「待ちやがれ――ッ!!」
「……驚いたな。もう追いついたのか」
記憶が確かなら、この道を抜けた先に、ちょっとした広場のような場所があるはず。開けた場所にさえ出れば、今度こそ見失うことはない。
奴を捕まえてティアラを取り返してみせる。そう俺が意気込んでいると。
黄色い声が、頭上で響き渡った。
「わあああ〜〜〜っ!?」
「きゃ――っ!?」
空を仰ぎ、俺は目を疑う。青空に似つかわしくない影法師が、ふたつも浮かんでいたからだ。
みくるとあんなが空を飛んでいる。否、跳んでいると形容するのが正しいかもしれない。
「なんだアレ……? ぬいぐるみ?」
あんなが肩から下げていた紐に繋がれていたモノだ。
視覚が正常に機能しているなら、二人はあのぬいぐるみに引っ張られているように見える。
「はぇ〜、最近のぬいぐるみは喋って動くんだなあ。すっげェ〜……」
アメリカで売ってるペットロボットみたいなものだろうか。近々、日本でも発売されるなんて噂を聞いたことがある。
俺が立ち尽くしていると、隣にいたニジーがやれやれと言った様子で、口を挟んでくる。
「アレはぬいぐるみじゃない。妖精だよ。そんなことも知らないのかい?」
「へえ、そうなんだ。教えてくれてありがとう……と見せかけて、隙ありっ!」
「おっと」
――するり。
飛びかかってはみたものの、機敏な動きで避けられてしまった。
不意を突いたつもりだったんだが、抜け目がない。
「なんて手癖の悪いビッグベイビーだ」
「お前が言うな!」
みくるとあんなは、空中で俺やニジーを追い越して、向かい側に着地していた。
偶然にも、結果的にこいつを挟み撃ちにする形になったわけだ。
「ティアラを返して!」
「できない相談だよ。このティアラには『マコトジュエル』が宿っているんだもの」
「マコトジュエル……?」
あんなの言葉に答えるように、ニジーが続ける。
彼がティアラの前で手を握ると、手中に小ぶりのナニカが現れた。ボトルのように見えなくもない。
エメラルドグリーンの宝石が埋め込まれ、羽のデザインが施された宝飾――話の流れから察するに、マコトジュエルと呼ばれているものだろう。
どこか見覚えのある形状だ。スラックスのポケットに押し込んでいたペンダントに、無意識に手が伸びる。
「花嫁がティアラを大切にしている思いが、マコトジュエルを引き寄せたのさ。このジュエルを頂くのが、ボクたちの目的」
「ボクたち……怪盗団ファントムとか言ってたな」
「ああ、そうとも」
組織ぐるみで『マコトジュエル』を集めているのか。
何の目的があるかは知らないが、話を聞かされた以上は放っておけない。
「ティアラを返す代わりに、素敵なショーをお見せするよ」
ニジーのマントが翻り、どこからかバラの花を取り出したかと思えば、ティアラに向かって投擲する。
「――ウソよ覆え! 出でよ、ハンニンダー!」
茎がティアラに刺さった瞬間、奴の持っていたマコトジュエルが禍々しい闇に覆われていく。
程なくして、ティアラの姿を象った怪物が、俺たちの前に姿を現した。
「ハンニンダーッ!!」
付け髭、シルクハット、マント。
本体のティアラから手足が生えているその姿は、どこか間の抜けたフォルムをしているが、俺たちの度肝を抜くには充分だった。
大きな巨体が、みくるとあんな――そして、妖精を見下ろしている。
驚き立ちすくんでいる彼女たちを見て、俺は迷わず走り出した。
「ファントムが新たに開発した、ハンニンダーさ。さあ、ショータイムだよ、ベイベーッ!」
「ハンニンダーッ!」
ニジーの号令と共に、ハンニンダーとかいう化物が動く。
奴は目を細め、大きくマントをはためかせると、紫色の閃光が飛び散った。
まるで巨大な鎌鼬だ。冷酷無比な刃が、みくるたちを刈り取るべく迫る。
「間に合え――っ!!」
――届いた。
すんでのところで、二人と一匹を突き飛ばし、ハンニンダーの猛威から救うことができた。
爆発と見間違うほどの轟音と衝撃と共に、周囲の木々が裂け、なぎ倒されていく。もう少し遅れていたら、俺たちも今頃はああなっていたかもしれない。
「二人とも、立てそうか」
「はい……!」
「は、はい……」
手を貸して二人を立ち上がらせるが、みくるは立ち上がるのでやっとの様子だ。
無理もないだろう。あの怪物を目の当たりにして、恐怖を感じない方がおかしい。
「なんとかしないと――!」
あんなの方はどうかというと、冷や汗を浮かべながらも、真っ直ぐにハンニンダーを見据えている。
放っておいたら、すぐにでも突っ込んでいきそうな気迫だ。
あまりにも勇猛で、あまりにも無謀。その真っ直ぐさが故に、少し力を加えれば根元から折れてしまいそうな、少女特有の危うさ。
この子の勇気を、蛮勇と呼ばせはしない。
俺が二人を護るんだ。
「――」
しっかりしろ、工藤新二。
誰かが何とかしないといけないのであれは、この場においては年長者の俺が適任だろう。消去法だとしてもだ。
子供と呼ぶには穢れていて、大人と呼ぶにはひどく拙い。それでも、みくるとあんなを護るためには、他に選択肢はない。
「怖い、けど……やるしかねえだろ……!」
恐怖を、それ以上の恐怖で支配しろ。
善し悪しは関係なく、一度刻まれてしまった記憶は、決して色褪せない。乾く前のセメントに跡を残せば、そっくりそのまま固まるように。
「あああ〜〜〜っ!?」
決心した俺は、スラックスのポケットからペンダントを取り出すと、大袈裟に喚いてみせた。
俺の見当違いでなければ、これは――。
「あれれ〜おかしいぞ〜? こんな所にもうひとつ『マコトジュエル』がある〜! 不思議だな〜! シンジくん、びっくり仰天〜!」
「なんだって……?」
よし、ニジーが食いついた。
芝居がかった言動を訝しんでいるものの、奴は俺の手にあるマコトジュエルに釘付けになっている。
「あれ、気づいてなかったのか? 怪盗団ファントムとか言ったっけ。お前ら、もしかして大したことないんじゃねえの?」
「……」
みくるたちから距離を取り、わざとらしく注意を引きつけていく。
「悔しかったらここまでおいで、べろべろば〜!」
「なんて下品な。まさしくビッグベイビー……いいだろう。まんまとキミの挑発に乗ってあげようじゃないか。ハンニンダー! 彼からマコトジュエルを奪うんだ!」
指示を受けたハンニンダーが巨体を活かし、俺目掛けて猛進してくる。
咄嗟に身を翻して、回避する。
「ハンニンダーッ!」
「うお、危ねっ……!?」
なんとか避けることができたが、そう何度も上手くいくはずがない。
それでもやらなければ。とにかく距離を取って、みくるたちから意識を逸らすんだ。
ふと、足元に視線を落とすと、ちょうどいいサイズの棒切れを見つけた。
「あちゃ〜……こんなに汚しちゃって。革靴で走り回るもんじゃないな。うえー、後で絶対に怒られるやつじゃん……」
ワイシャツ、ジレ(ベスト)、スラックス、よくわからん前掛けまで、ことごとく土汚れで台無しだ。シャツに関しては、まばらに広がる草染みまで目立っている。
洗濯が大変そうだな、なんて場違いな考えが浮かんでしまうが、頭を振って雑念を払う。
「……よし」
俺は蝶ネクタイを外し、ベストと前掛けをおもむろに脱ぎ捨てた。窮屈感はなくなったので、先程よりかはマシに動けるだろう。
ついでに足元の棒を拾い上げて、ハンニンダーに向き合う。
「へっ。こう見えても俺は武芸百般なんだ。得物さえあれば、
「得物だって……? 笑わせてくれるじゃないか。そんな棒切れで何ができるって言うんだい?」
「……」
「答えられない、か……図星のようだね。邪魔者には退場してもらおう。やってしまえ、ハンニンダー!」
もちろん、武芸百般なんてのはハッタリだ。
ニジーが号令を下すと、ハンニンダーが応えるように唸りを上げる。
「ハンニンダーッ!!」
ビリビリ、と空気が震えた。
嫌な汗が頬を伝う。
奴の予備動作を鑑みるに、また体当たりを仕掛けてくるだろう。
木の棒を握り直し、差し迫る巨体を迎え撃つべく腰を落とす。
「……ブルっちまうぜ。ダンプカーに喧嘩売ってるようなもんじゃないか」
踵を返し、この場を見なかったことにするのは簡単だ。
だけど、もしも俺が逃げてしまえば、あの少女達が輪禍に遭うのはわかりきっている。であれば、ここで一歩も引くわけにはいかない。
少し離れた地点で、みくるとあんなが固唾を呑み、こちらの様子を伺っているのが見える。
「シ、シンジさん……わたしたちの事はいいから、逃げてくださいっ!」
「そうだよ! このままじゃ、シンジさんがっ……!」
後者に至っては、俺を助けようと今すぐにでも駆け出して来そうな勢いだ。
そんな二人を安心させるべく、俺は歯を見せて笑い、あくまでも気丈に振舞ってみせる。
「だいじょうブイ! 俺がなんとか時間を稼ぐから、お前たちこそ逃げろ」
再び、ハンニンダーの方へと向き直る。
大きな図体が肉薄するまで、あと数秒もない。
タイミングを見極めると同時に獲物を振りかぶると、渾身の力で踏み込んだ。
「お望み通り、見せてやるよ……!」
レールの上に石ころを置けばどうなるか。
答えは簡単だ。列車は脱線し、あらぬ方向へと激突する。俺がやろうとしているのは、まさにそれだ。
ハンニンダーの動きは単調かつ直線的。きっかけさえ与えてやれば、軌道を逸らすのは容易い――!
「どりゃあああ――っ!!」
裂帛の叫びと共に、横薙ぎに一閃。
「ハンニンダーッ!?」
ずっしりとした手応え。
思わず棒切れを握る両拳が、ひしゃげたかと錯覚するほどの反動。
ハンニンダーが視界の端を横断し、俺のいた場所から後方へと投げ出されていった。
巨体によって木々がなぎ倒され、土煙と礫が舞う。
「――うわっ!?」
俺はというと、流れる巨躯に掠っただけだというのに、同じように宙に放り出されてしまった。
視界が乱回転したかと思えば、すぐに衝撃が背中を襲ってくる。木の幹にでも打ち付けられたのだろう。
意に反して、肺中の空気を吐き出してしまう。
「ガハッ――!? ゴホッ、ゴホッ……!」
「シンジさんっ!」
あまりの痛みに身をよじる。
悶え苦しんでいると、俺を心配する声が遠くから聞こえてきた。声の主はみくるか、それともあんなか。靄がかかった意識の中では、それすら不明瞭だ。
遠目に様子を見ていたであろうニジーが、ほれみたことか、とでも言いたげにあざけ笑う。
「ハッ、見るも無惨な姿だ。一瞬とはいえ、このボクが驚かされるなんてね。ただの人間にしては中々やるみたいだけど、キミのやり方は美しくないな」
「うる、せえなァ……! てめーの美的感覚なんて、知ったこっちゃ、ねェよ……!」
ニジーに悪態をつきながら、なんとか体を起こす。
棒切れは粉微塵になってしまった。自分もこうなっていたのかもしれないと思うと、ゾッとする。
「ああ、クソ……痛ってェ……!」
痛いものは痛いが、轢断されるよりずっとマシだ。
下手をすれば死んでいた可能性だってある。
「身を守ると豪語していたのに関わらず、この体たらくとは。有言実行する所を見せてくれるんじゃなかったのかい? ビッグベイビー」
「……けっ。自分の身を守るなんて、俺は一言も言ってないっての」
俺はそう吐き捨てるが、ニジーの余裕な態度は依然そのままだ。
「うぐっ……!」
膝が笑っている。足腰に上手く力が入らない。
バランスを崩して倒れそうになった所、不意に何者かの手によって肩を支えられ、体勢を立て直した。
「立てますか?」
言うまでもない。
ニジー以外に誰かがいるとすれば、それは――。
「……小林少女!? それに明智少女も! 二人とも、逃げろって言ったじゃないか……!」
「あなたを置いて逃げられるわけないじゃないですか! ……身を守るっていうのは、わたしたちの事だったんですね」
「助けてくれてありがとう、シンジさん。でも、もう一人で無茶したらダメだよ! 今度はわたしたちが、あなたを助ける番!」
「はは……」
みくるとあんな。
順繰りに、それでいて矢継ぎ早に諭され、思わず笑いが零れてしまう。
「格好つけてくれちゃって。俺より一回りも小さい癖に」
今だって、恐怖のあまり足を震わせているのに、二人は決して逃げようとしない。
それは想田まりのティアラと笑顔を取り戻すためか、それとも俺という存在を見捨てられないからか。いや、理由なんてどうでもいい。
とにかく、二人のいたいけな少女――まだ幼さの残る名探偵は、恐怖に立ち向かうことを選んだのだ。
――パン、パン、パン。
乾いた拍手が響く。
音の出どころは、ニジーだった。
「泣かせてくれるじゃないか。でも、探偵ごっこはもう終わりだよ」
「ハンニンダー……!」
俺が諌められている間に、ハンニンダーも戻ってきてしまったようだ。
手負いの俺と、みくるとあんなが組んだところで、どう転んでも奴らをどうにかするビジョンが浮かばない。
悔しさで下唇を噛んでいると、あんなが。
「――ごっこじゃない! 本物だよ!」
「あんなさん……!?」
「みくるちゃんは名探偵になるんだ! 絶対になれる! 誰かを助けたいっていう気持ちがあるから!」
あんなの言葉に、みくるがハッと顔を上げた。
自分でもらしくないと思ったが、今なら言える気がする。
「同感だな。俺が今まで出会ってきた人たちの中で、小林少女ほど負けず嫌いな奴はいなかった。……なれるよ、お前なら。立派な名探偵ってやつにさ」
「……っ!」
みくるの瞳が、大きく揺れる。
俺たちを見ながら、彼女は思い出したように語り出す。
「……わたしも、過去に助けられたから……今度はわたしが名探偵になって、みんなを助けたい!」
どうして名探偵を志すようになったのか。
どうして自分が今、ここに立っているのかを。
「ティアラを取り返して、困っているまりさんを助けたい! みくるちゃんと一緒に!」
「――ええ、でもそれだけじゃない! シンジさんのことも守ってみせる! わたしたち二人で!」
二人の気持ちが通じ合い、手を重ねた瞬間――光が瞬いた。
それは希望か、願いの結晶か。あるいは両方だと、確信めいた直感が告げている。
「えっ……!? ペンダントが勝手に!」
「わたしのと同じ……!?」
それぞれの懐から微光が飛び出したかと思うと、彼女たちの首元に収束し、時計型のペンダントに変化した。
二人がそれを手にすると、燦然と輝く光が広がり、周囲を包み込んでいく。
みくるとあんなが中心なら、彼女たちの間にいた俺も当然のように巻き込まれるわけで。
「ちょ、ちょっと待て……うわあああ――っ!?」
視界が白一色に染まっていく中、妖精の「ぷいきゅあ〜!」という舌っ足らずな声が聞こえてきた。
「「オープン! ジュエルキュアウォッチ!」」
俺はいったい何を見せられているんだろう。
光明が形を成す――紫と桜、二つの光彩と共に、みくるとあんなの姿が変化していく。
「どんな謎でも、はなまる解決! 名探偵キュアアンサー!」
「重ねた推理で笑顔にジャンプ! 名探偵キュアミスティック!」
「「名探偵プリキュア!」」
「わたしの答え、見せてあげる!」
ポーズを決められても困る。どう反応するのが正解なんだ。
いたたまれない気持ちで、俺はど真ん中で小さくサムズアップをした。
「ハンニンダーッ!」
二人がプリキュアとやらへの変身を終えた途端、ハンニンダーが拳を突き出す。
流れる星、なんて美しいものじゃない。上空から襲いかかるそれは、俺からしてみれば死を告げる鉄槌に等しい。
「「はあああ――っ!!」」
アンサーとミスティック。
二人は息の揃った跳躍を見せると、ただの蹴撃で拳を迎え撃ち――苦戦することなく、競り勝った。
ハンニンダーが大きく吹き飛ばされる。
「ハンニッ……!?」」
凄まじい威力だ。
あの細い四肢のどこにそんなパワーが秘められているのか。
「わたし、プリキュアって……!?」
本人たちも変化に戸惑っているようで、着地したアンサーが自分の手を見下ろしている。
対称的に、ミスティックは自身の姿をじっくりと眺めると、それから嬉しそうに瞳を輝かせた。
「名探偵! わたしがなりたかった、名探偵プリキュア!」
「ええっ、これが!?」
遠目で傍観していたニジーが、息を呑んでいるのがわかる。
「プリキュアだって……!?
ミスティックがぴょんぴょんと跳ねながら、見せびらかすように俺の前へ踊り出てきた。
よほど嬉しいのか、いつも以上に距離が近い。
「見てください、シンジさん! 憧れのプリキュアですよ!」
「ああ、うん。凄いぞ、小林少女」
「えへへ……!」
俺はというと、却って冷静になってしまっていた。
ミスティックの頭を優しく叩くと、彼女は頬をほころばせる。
「ミスティック、いこう!」
「あ、はいっ!」
促されたミスティックが、アンサーと並んでハンニンダーに相対した。
時計型のアイテム――ジュエルキュアウォッチを開き、長針を11時まで持っていくと、二人が身を屈める。
「「これが、わたしたちの……アンサーだあああ――っ!!」」
踏み込んだ勢いで、地面がえぐれている。
先程の蹴りが小手調べなら、全力の一撃が織り成す威力は計り知れない。
彼女たちは同時に飛び出すと、ふたつの光が徐々にひとつに合わさっていき、勢いのままにハンニンダーの胴体を貫いた。
「す、すっげェ〜……!」
反射的にそう呟いてしまった。
遅れてやってきた衝撃が空気を揺らす。広がる余波がこちらにまで届き、体内が振動するかのような感覚を覚える。
これが、みくるの目指していた『名探偵』なのか。
俺の……というか、世間一般的なイメージとは乖離がありすぎる。
理解が追いついている自信はない。だが、二人の姿とあの表情を見ていると納得せざるを得ない。彼女たちは紛れもなく、名探偵なのだと。
「「キュアット解決!」」
彼女たちがポーズを決めると、ハンニンダーを飲み込むように、たちまち背後から光の柱が立ち上る。空まで届きそうな勢いで。
あれだけ禍々しく闇が蠢いていたマコトジュエルが、徐々に元の輝きを取り戻し、アンサーの手に収まった。
ハンニンダーもいつの間にか消えているし、決着がついたんだろう。
「くっ……! 今日は幕を下ろしておこう!」
ニジーは歯噛みし、緑色の玉――煙幕を地面に叩きつける。
緑がかった煙が晴れると、奴の姿は既に消えていた。
アンサーとミスティックはしばらく身構えていたが、戦いが終わったことを悟ると、ゆっくりと肩の力を抜く。
「えっと、お疲れ様……?」
俺が声をかけると、二人がこちらへと振り向く。
そして、俺の顔を見た途端に、何故か目を丸くした。
視線の位置が、幾分か高いような。
「シンジさん、おでこのそれは……? ハート型の石……? これって、まるで……」
「ポチタンと同じ? わあっ、お揃いだね!」
「はい……? 何を言ってるんだ、お前ら」
――コツン、コツン。
額に触ってみると、確かに触り慣れない感触がある。
ハート型の石と言われても、鏡がないのでピンと来ないが、明らかに肌の質感とは違う。
「うわっ!? な、何だこれっ……!? うぐぐ……取れないぞ! いったいどうなってんだ!?」
「あははっ! はなまる可愛いよ、シンジさん! すっごく似合ってる!」
「嬉しくないって! 呑気なこと言ってないで、明智少女も外すの手伝ってくれよ!」
「ええ〜……せっかく可愛いのに、もったいないよ」
アンサーは不満そうだ。
俺が「いいから!」と急かすと、彼女はしぶしぶ俺の額に手を伸ばす。
「……引っ張るよ? せーのっ!」
「いだだだっ……!? ちょ、待って……ギブギブギブッ! 明智少女、ストップ、ストーップ!」
首根っこごと持っていかれると思った。
騒ぎ立てている俺たちを尻目に、ミスティックが顎に手を当てて考え込む。
ポチタンと呼ばれていた妖精と俺を交互に見比べると、突然ミスティックが声を張り上げた。
「わかりましたっ!」
「わかったって?」
アンサーが首を傾げる。
「ふっふっふ……! よくぞ聞いてくれました!」
ミスティックは得意げに笑い、まるで全てを見透かしたかのような表情で、俺を指差した。
固唾を呑み、次の言葉が紡がれるのを待つ。
「シンジさん、あなたは人間じゃありませんね!」
「ええっ、突然の人格否定!? 小林少女、お前……そんなに俺のこと嫌いだったんだな……普通にショックだ……」
「ち、違います! 文字通りの意味です! シンジさんのことは、その……嫌いではないですから……!」
ミスティックの声は徐々に尻すぼみになっていき、後半のセリフは聞き取れなかったが、冷静さを欠くには充分すぎる宣告だ。
「人間じゃないって……俺がか!? そんなハズは……少なくとも、親父とお袋は普通の人間なのに……!」
背筋を冷たいものが走った。
15年と362日を生きてきて、初めて味わった衝撃だ。
間髪をいれず、トドメの一撃が放たれる。
「そう、あなたは――ポチタンと同じ『妖精』なんです!」
ざあざあ、と頬を撫でるような風が吹いている。
同時に、さああ、と血の気が引いていく。
「……うせやろ」
「ポチポチ〜!」
あまりの焦燥に溢してしまった呟きは、アンサーとミスティック以外に届くことはなく、木々のざわめきによって掻き消される。
俺たちの会話を理解しているのか、そうでないのか。呆然と佇む俺の周りを、ポチタンが上機嫌にふよふよと浮かんでいた。
主人公あるある。重い過去匂わせがち。
何気にフィジカルも強い新二くん。
あくまでも常人の範疇に留まっているので、戦いの場で出しゃばるのは今回だけかも……? 少なくとも今は。
更新ペースに関しては期待しないでください。
アニメ本編の様子を伺いながら、ゆっくり執筆していきます。
たんプリで好きなキャラは? 参考程度に教えてちょ
-
明智あんな(キュアアンサー)
-
小林みくる(キュアミスティック)
-
森亜るるか(キュアアルカナ・シャドウ)
-
???(キュアエクレール)