名探偵プリキュア! 〜A Memoir White〜   作:秋葉ばっこ

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主人公、お前人間じゃないってよ。
そのうちオリキュアになるかもしれないし、ならないかもしれない。その時の気分でフワフワ書いてます。


FILE03:キュアット探偵事務所

 

 

 

 

 想田まりさんの結婚式は上手くいった。

 ニジーから取り返したティアラを、俺が二人――プリキュアに変身していたアンサーとミスティックの代わりに渡したのだ。

 そのおかげか、借りていた服をボロボロにしてしまった件は咎められずに済んだ。

 むしろ迷惑をかけてしまったと、幸野さんに謝られてしまった。

 

「はぁ……」

 

 本日、十八回目の溜息が零れる。

 俺の数歩先を歩いている、みくるとあんな――元の姿に戻った二人が、振り向きざまに話しかけてきた。

 

「良かったじゃないですか、額の石が消えて。これでいつも通りのシンジさんですね」

「あ〜あ、可愛かったのにな〜。ちょっと残念……」

 

 彼女たちは、俺の額を見て能天気にそんなことを言ってくる。

 あのハート型の石――妖精の証(?)は、彼女たちがプリキュアになっている時にだけ発現するみたいだ。

 しかも、みくるによると、名探偵プリキュアのパートナーには『おとも妖精』の存在が必要不可欠だとか。彼女の話を鵜呑みにするなら、ポチと俺が該当する。

 

「俺のアイデンティティが……人間じゃなかったのかよ、俺……」

 

 怪盗団ファントム、マコトジュエル、ハンニンダー、プリキュア。そして、あんなが2027年の未来からやってきたという衝撃の事実。

 今日だけで色濃いイベントが盛りだくさんだったが、俺にとってはそれすら些事に等しい。

 まさか自分が人外であるなどと、夢にも思わなかった。茫然自失となった俺を見かねてか、ブライダルスタッフのバイトも早退する羽目になったし。

 ブツブツとぼやいていると、みくるに優しく背中を叩かれた。

 

「そう落ち込まないでください。あなたが人間であろうと、そうでなかろうと、わたしにとってシンジさんはシンジさんですよ」

「小林少女……」

「そうだよ! シンジさんはシンジさんだよ! えっと、わたしは今日が初対面だから、なんとも言えないけど!」

「明智少女……」

 

 フォローになってないが、二人の気持ちは嬉しい。

 べそをかいていたとはいえ、歳下の女の子に慰められている俺の姿は、なんとみっともないことだろう。

 

 『我思う、故に我あり』。

 今の俺にはピッタリの言葉だ。

 

 自身の両頬をパン、と叩いて気合いを入れ直す。

 いつまでもウジウジしてたら始まらない。最年長としてしっかりしなくては。

 

「で、俺たちはどこに向かってるんだ?」

「着きましたよ。……キュアット探偵事務所です。ここに名探偵プリキュアがいるはず」

 

 プリキュアが他にもいるのか。

 みくる曰く、プリキュアの存在は周囲に明るみにしてはいけないとの事。

 だったら、どうして彼女がプリキュアについて詳しいのかと疑問が残るが、重要なのはそこじゃない。

 俺は首から下げているペンダント――マコトジュエルに触れる。

 

「そのマコトジュエルについても、何かわかるかもしれません。きっと力になってくれますよ」

「なるほど、結構色々と考えてくれてたんだな。意外だ」

「心外ですね……いいから行きますよ! ほら、あんなさんも!」

「わっ、待ってよみくるちゃん!」

 

 みくるに押される形で、探偵事務所の扉を開けた。

 まだ日が傾くには早い時間帯だというのに、やけに暗い。物理的にもそうだが雰囲気もだ。

 静まり返った廊下に、俺たちの足音が反響している。

 

「失礼しますよっと」

「「ごめんくださーい!」」

 

 誰かいないか探していると、応接間らしき場所に辿り着いた。

 ポチが好奇心のままに飛び回り、部屋の中を散策し始める。

 

「ポチ〜」

 

 やけに小綺麗というか、片付いているというか。あちこちにダンボールが積み上げられていて、風情も華々しさもあったものじゃない。

 みくるも似たような感想を抱いたらしく、ポツリと呟く。

 

「なんか、イメージと違う……」

「すみませーん! どなたか居ませんかー?」

「依頼は断ってる」

 

 あんなが声を張り上げると、意外にもすぐに返事が帰ってきた。

 思いがけず高い声音だ。女性から発されたものよりかは、まるで子供のようなソレに聞こえる。

 

「あの、力を貸して欲しいんです! わたし、未来からタイムスリップして来ちゃって……」

「冗談に付き合ってる暇はない。帰ってくれ」

 

 声の主を探そうと、あんなとみくるが部屋を見回している。

 俺もその場で目を凝らして周囲を伺うが、ガサガサとビニールのような音が聞こえてくるだけで、それらしい人影は見当たらない。

 近くにいるのはわかるのだが……。

 

「冗談じゃなくて本当に……!」

「わたしたち、名探偵プリキュアなんです!」

 

 すぐそこの机の影から、金髪の少年が飛び出してきた。

 彼はそのままの勢いで机の上に飛び乗ると、しゃんと立ち上がり、みくるとあんなの二人を見下ろす。

 

「――」

 

 口に咥えているのはロリポップだろうか。

 金髪を後ろで束ね、頭の上にはゴーグル。パーカーの上に、オーバーサイズの白衣を羽織っている。

 その特徴的な外見に、俺は見覚えがあった。

 

「あ、ジェットパイセンじゃん! よっす!」

「……どこかで見た顔だと思えば、便利屋の息子じゃないか。お前が尋ねてくるなんて、いったいどういう風の吹き回しだ? というか、ボクが事務所にいるのを知った上で来たのか?」

「いやあ、ちょっと込み入った事情があってさ。パイセンがいるなんて知らなんだ」

 

 ジェット先輩は、俺が定期的にバイトさせてもらっている洋菓子店『パティスリーチュチュ』のお得意様だ。

 当初は、子供がお使いで来ているものと思って対応していた。そのついでに色々とサービスしていたら、いつの間にか顔を覚えられてしまったのだ。

 見た目こそ幼いが、これでも俺よりずっと歳上だと聞いたことがある。

 

「それより、お前たちがプリキュアだって?」

 

 緑の瞳が、みくるとあんなを射抜く。

 

「……ないな」

「本当だよ! わたし、ウソつかないから!」

「どうだか……ん? そいつは――って、うわあっ!?」

 

 あんなのペンダントに瞠目すると、ジェット先輩は驚いた拍子にバランスを崩し、背中から転倒してしまう。

 やけに派手な埃が舞い上がったかと思えば、その中から現れたのはなんと、黄色い猫のような外見をした――ポチと同じ妖精だった。

 

「いてて……!」

「パイセン、あんたも妖精だったのか……」

「……あんた()?」

 

 俺の言葉に引っ掛かりを覚えたものの、ジェット先輩はすぐに顔をしかめて、再び人間の姿に変身する。

 妖精としての姿を見られたことが不快なのか、彼は「ふん」と不機嫌に鼻を鳴らした。ビジュアルも相まって、拗ねた子供にしか見えない。

 

「ひとまず話だけは聞いてやる。そこに座れ」

 

 案内されるがまま、俺達は部屋にあったソファに腰を落とす。

 手前からみくる、俺、あんなの順。プリキュアに変身した時もそうだが、どうして俺を挟むようにして座るんだろう。

 

「ペンダントを見ている間、これでも舐めてろ」

 

 お茶を切らしているからという理由で、代わりにロリポップを手渡された。

 あんなはグレープ、みくるはピーチ、俺のはミルク味。

 向かいのソファで、ジェット先輩はルーペを片手にあんなから借りたペンダントを観察している。

 彼は眉を八の字にし、訝しげに呟いた。

 

「……これでプリキュアに変身しただと?」

 

 芳しくない反応だ。見てくれはただの懐中時計なので、気持ちはよくわかる。

 あんなはタイムスリップをする直前、2027年の未来にある自室の机の上で。みくるは幼少期に祖母から貰った、と話す。

 一通り見て満足したのか、ジェット先輩はテーブルの上にペンダントとルーペを置くと、今度は俺の方をジロリと見てきた。

 

「それで、どう見ても人間にしか見えないお前が『おとも妖精』になったと」

「おう。自覚はないけどな」

 

 そう答えつつ、ロリポップの包装を剥がし、口へと放り込む。

 同じくロリポップを頬張ったみくるが。

 

「あなたも、プリキュアのおとも妖精なんでしょ?」

「いいや、ボクは――天才発明家のジェット! 探偵道具を発明するのが仕事だ!」

「へぇ〜、まだ小さいのにすごいね!」

 

 あんなが手を叩いて褒めている。

 純粋な厚意で言っているのだろうが、誰が見てもわかる子供扱いに、ジェット先輩が露骨に渋い顔を浮かべた。

 

「……小さい? そう言うお前は何歳だ」

「わたし14歳だよ」

「えーっ!? わたしももうすぐ14歳!」

「そうなの!? はなまるびっくり〜! みくるちゃん、敬語で話してるから歳下かと思っちゃった!」

「そっかー!」

 

 俺とジェット先輩を差し置いて、みくるとあんなが完全に二人だけの世界に入ってしまった。

 同い歳なら敬語はいらない、と女子同士で盛り上がっている。そんな彼女たちの様子を瞥見し、ジェット先輩が「これだから子供は……」と吐き捨てる。

 

「ふん。思った通り、ボクの方が歳上だな」

「そういや聞いたことなかったかも。パイセン、歳いくつなん?」

「222歳だ」

「マジか。クソジジイじゃん、ジェット老輩」

「誰がクソジジイだ! 成人してるとはいえ、ボクは妖精の中では若い方なんだぞ! 老輩もやめろ!」

 

 怒られてしまった。

 妖精の価値観は定かでないが。彼らからしてみれば、俺たちぐらいの年齢は赤子も同然だったりするんだろうか。

 いつの間にか女子会が終わっていたようで、上機嫌のみくるが尋ねてくる。

 

「シンジさんは15歳でしたよね。誕生日はいつでしたっけ?」

「四月五日。新学期が始まる前日に、ピチピチの16歳になるんだ」

「五日って、明々後日じゃないですか。なんか意外かも……」

 

 誕生日に意外もクソもあるか。

 俺が言い返す前に、あんなが身を乗り出して。

 

「ねえ、みくるの誕生日っていつなの?」

「22日だよ」

「へえ、地球の日(アースデー)じゃん。バースデーだけに……ぷぷっ。地球の子、ミスティック小林……格好いいじゃないか」

「本当だ! はなまるすごいね!」

「あんな、感心するところじゃないから。……シンジさんもいい加減、わたしのことをキチンと名前で呼んでください」

 

 みくるが、ジトっとした目を向けてくる。

 本人が呼べと言っているのだから、断る理由はない。

 

「みくるたん」

「た、たん!? 子供扱いもやめてください! 普通に呼んでくれれば、それで……!」

「二人だって、ポチのことを『ポチたん』って呼んでるじゃないか」

「ポチタンはポチタンだよ?」

 

 あんなに簡潔かつ迅速に訂正されてしまった。

 ペットを可愛がって呼ぶ的なアレかと思っていたが、違うらしい。

 

「じゃあ、みくる」

「……っ! は、はい……!」

 

 名前を呼んだだけだというのに、みくるがはにかむ。

 その様子が面白くて、つい吹き出してしまった。

 

「ぷっ、なに照れてんだよ。なあ、あんな?」

「なっ――!?」

 

 あんなの返事よりも先に、みくるが更に顔を真っ赤にして、破竹の勢いで立ち上がった。

 彼女はすかさず俺を指さし、罵詈雑言と呼ぶには可愛らしい罵倒を浴びせてくる。

 

「あ、あんなの事はあっさり……! シンジさんのバカ! バーロー! 見た目は大人、頭脳は子供っ! 子供妖精っ!」

「な、なんだとォ!?」

 

 しかしながら、俺の沸点も低かった。さながら液化ヘリウムのように。

 負けじとソファから立ち上がり、腰に手を当て不満をあらわにした。いわゆる仁王立ちで、みくると向かい合う。

 

「こんにゃろ〜、トサカに来たぞ! この俺のどこが子供だって言うんだ!? 言ってみろよ!」

「その反応全部が、ですっ!」

「にゃにを〜……!? おいコラ、中坊! 年功序列って言葉を知らないのか? 歳上はもっと敬うべきだぞ!」

「ふん、大人気ない! 敬語を使ってあげてるだけ感謝して欲しいくらいです!」

 

 俺とみくるはお互いに顔を近づけ、激しく睨み合う。

 一触即発。まさに火花を散らしていると、あんながクスリと笑った。俺たちの様子を見て、心底楽しそうに。

 

「ふふっ。シンジさんとみくる、本当に仲良しなんだね。わたし一人っ子だから、二人の兄妹みたいな関係がちょっと羨ましいな」

「そういうもんか? あんなさえ良ければ、俺のことを『シンジお兄ちゃん』って呼んでくれてもいいぞ!」

 

 あんなは一瞬きょとんとするが、少しだけ頬を赤らめて。

 

「えっと、シンジお兄ちゃん? ……あはは、なんだか恥ずかしいかも」

「おお……! これが『萌え』か……!?」

 

 思った以上の高火力だ。

 俺がデレデレしているのが気に入らないのか、みくるが頬を抓ってくる。

 

「もうっ……! あなたって人は、いつもいつも! あんなにまでちょっかい出さないでください!」

「いで、いででっ……! 呼び方くらいでそんなに怒るなよ、小林少女ォ!」

「『みくる』です! はい、復唱っ!」

「みくるです!」

 

 ――ギチッ!

 言われたまま復唱したのに、頬を引っ張られる力がさらに強まった。

 

「効かないねえ、ゴムだから――って、いひゃい(痛い)いひゃい(痛い)っ! 謝るからひゃなせ(離せ)って! み、みくるっ……!」

 

 少々、悪ふざけが過ぎたか。

 目尻に涙を浮かべて、懇願しながら名前を呼んだ。

 

「……ふんっ!」

 

 みくるは指を離すと、そっぽを向いてしまった。

 心なしか耳がまだ赤い気がするが、これ以上からかうと後が怖い。

 真っ赤といえば、抓られた部分もそうだ。ジンジンと痛む頬を摩る。今頑張れば、リスの頬袋くらいは膨らませられるかもしれない。

 一連の流れを、あんなは一貫してニコニコと眺めている。

 

「はなまる仲良しだね!」

「どこがだよ。いてて……」

 

 しかし、この場にいるのは俺たちだけではない。

 すっかり当初の目的と、ジェット先輩の存在を失念してしまっていた。

 彼は、溶けて小さくなった飴を噛み砕いて。

 

「はぁ……お喋りがしたいならよそでやってくれ。まったく、お前たちがプリキュアだなんて信じられないな……」

 

 追い出されるかもしれないと思ったが、意外と冷静だ。

 それとも呆れが礼に来ているだけか。

 あまりに耳の痛い一言に、俺たちは黙りこくるばかりであった。

 




「年長者なんだから、俺がしっかりしなきゃ!」
数刻後。
「なんだとォ!? %$○€$〒>#……!」

新二くんは基本的にガキです。
気になる子に意地悪してる小学生みたいなもん。
あんなの【お兄ちゃん】呼びは今回限りですヨ。親睦を深めるのは、まだまだこれからですからね。

るるかが作中で高校一年生という情報を聞いたので、それに合わせて急遽主人公の年齢を変更させていただきました。プロローグと2話も少しだけ手直ししてます。混乱させたらごめんよ。
書き溜めて一気に投稿するのか、日を空けてまばらに投稿するの、どっちがいいんだろうね?

次回の更新は本日18時!

たんプリで好きなキャラは? 参考程度に教えてちょ

  • 明智あんな(キュアアンサー)
  • 小林みくる(キュアミスティック)
  • 森亜るるか(キュアアルカナ・シャドウ)
  • ???(キュアエクレール)
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