アリウスって終わってるよね
アリウスには、戦うことを許されていない生徒が一人だけいた。
◻️◻️――非戦闘員の男子生徒。
特殊な存在である彼は戦場に立つことはなく、与えられた役目はただ一つ。
秤アツコの世話係だった。
それはベアトリーチェからの命令。
最初、アツコは彼を信用していなかった。
だが彼は無理に距離を詰めることもなく、必要なことだけを淡々とこなす。
食事を用意し、体調を気遣い、ただ隣にいる。
その積み重ねが、少しずつ彼女の警戒を解いていった。
やがて彼は、錠前サオリ、槌永ヒヨリ、戒野ミサキとも言葉を交わすようになる。
ヒヨリは軽く話しかけ、
ミサキは無関心を装い、
サオリは一定の距離を保ったまま観察していた。
それでも、拒絶されることはなかった。
アリウスにしては珍しい、穏やかな時間だった。
――そして、それは終わる。
エデン条約調印式。
混乱の中、◻️◻️はアツコの隣にいた。
顔を寄せる。
「……逃げてください」
息のような小さな声。
直後、背後から足音が迫る。
「いたぞ!」
アリウスの追手。
◻️◻️は迷いなくアツコの前に出た。
次の瞬間。
乾いた銃声が一発、響く。
胸元から血が溢れ、彼の体が揺れる。
そのまま、力なく崩れ落ちた。
「……え……?」
アツコの思考が止まる。
現実を理解するより先に、
「――――ぁああああああああああ!!」
絶叫が喉から溢れた。
だが、立ち止まることはできなかった。
耳に残るのは、たった一言。
――逃げてください。
アツコは走る。
振り返らずに。
しかし、すぐに行く手を遮られる。
別の追手が、銃を向けていた。
逃げ場はない。
そのまま取り押さえられ、抵抗もできずに拘束される。
引きずられるようにして――
アリウス自治区へ連れ戻された。
⸻
奪還作戦。
錠前サオリ、槌永ヒヨリ、戒野ミサキ。
そして、先生。
四人はアリウス自治区へ突入する。
幾重もの防衛線を突破し、最深部へ。
重い扉を破壊し、踏み込んだ先。
そこはベアトリーチェのいる部屋だった。
静まり返った空間。
その床に――
転がっているものがあった。
◻️◻️の首。
まるでゴミのように、無造作に放置されている。
血はすでに乾き、
それでも顔だけははっきりと分かる。
ヒヨリの肩が震える。
だが、声は出ない。
ミサキは目を逸らさず、ただその現実を見つめている。
サオリは静かに視線を落としたまま、何も言わない。
重苦しい沈黙が、その場を支配する。
やがて――
「……ふざけるな」
低い声が響いた。
先生だった。
「命を、なんだと思っている……!」
抑えきれない怒りが、はっきりと表に出る。
視線はまっすぐ、ベアトリーチェへ。
だが当の本人は、ただ愉しそうに微笑んでいた。
まるで、この状況そのものを楽しんでいるかのように。
R.N.さんリクエストありがとうございました。