アリスは、廃墟の中を歩いていた
「ダンジョン探索中です!」
周囲に敵はいない。特に変わった様子もない。隣には◻️◻️がいる。
一緒にゲームをして、笑って、話して。そんな時間が、ずっと続いていた。
「今日は◻️◻️も一緒で、楽しいです!」
「あはは、そうだね」
◻️◻️も笑う。
それが、当たり前だった。
その時、ふと違和感が走る。
「……?」
見え方が、少しだけ変わる。
何かが見えたわけじゃない。ただ、◻️◻️の姿が、少しだけ違って見える。
知らないものを見るような、そんな感覚。
「……敵、ですか?」
自分でも、少しおかしいと思う。
でも、その感覚は消えない。
むしろ、はっきりしていく。
「ターゲット、確認です」
◻️◻️が何か言っている。聞き慣れた声のはずなのに、意味がうまく入ってこない。
「戦闘、開始」
アリスは迷わない。
それが正しい流れだと、そう思ってしまうから。
「光の剣、起動」
「チャージ完了」
狙いを定める。
ほんの一瞬、動きが止まって――
「光よ!」
閃光。
轟音。
一瞬で、終わる。
「敵、撃破です」
⸻
違和感が消える。
視界が元に戻る。
そして、目の前の光景がはっきりする。
◻️◻️が、倒れている。
「……?」
アリスは首をかしげる。
「……あれ?」
さっきまで、普通に隣にいたはずなのに。
しゃがみ込む。◻️◻️に触れる。温もりはある。でも、動かない。
「動きません……?」
軽く揺らす。
「◻️◻️、起きてください。まだ終わってません」
返事はない。
「……応答なしです」
少し考える。
そして、思い出す。
「教会に行けば、大丈夫です」
ゲームでは、そうなっている。
「復活できます。きっと、大丈夫です」
そう言って、◻️◻️を背負う。
少しだけ、重い。
でも、問題ない。
「移動します」
歩き出す。
最初の教会で、断られる。
「できません」
「無理です」
「戻りません」
アリスは小さく頷く。
「ここでは、違うみたいです」
次に行く。また同じ。
「次に行きます」
何度も繰り返す。
◻️◻️を背負ったまま、歩き続ける。
腕が重い。足も少しずつ遅くなる。
「……まだ、大丈夫です」
自分に言い聞かせる。
「諦めません」
最後の教会でも、結果は同じだった。
「無理です。どこでも同じです」
「……?」
「亡くなった人は、戻りません」
その言葉が、残る。
どこでも同じ。
全部、同じ答え。
「……」
足が止まる。
それでも。
「違います。まだあります」
前に進もうとする。
「次に行けば、きっと見つかります」
そう思っていた。
そのはずだった。
「……あ」
足がもつれる。
体勢を崩す。
手が滑る。
◻️◻️の体が、床に落ちる。
鈍い音。
動かない。
さっきまで、隣にいたのに。
「……」
アリスはその場に座り込む。
自分の手を見る。血がついている。
思い出す。
さっきの違和感。
見え方のズレ。
「……まちがえました」
小さく言う。
違う。
敵じゃない。
最初から。
◻️◻️だった。
「……」
何も言えなくなる。
考えても、何も変わらない。
「……復活、できません」
初めて、それを理解する。
ゲームとは違う。
やり直しはない。
「……」
口が動く。
「ごめんなさい」
小さな声。
「ごめんなさい」
繰り返す。
「ごめんなさい」
止まらない。
「ごめんなさい」
涙が落ちる。
理由は分からない。
それでも。
「……ごめんなさい」
アリスは、動かなくなった◻️◻️の隣で、その言葉だけを、繰り返し続けた。