あっけなく死ぬ男子生徒の話   作:とーふめんたる

24 / 39
アリスって人の心ありそうだよね

 

夜のミレニアムサイエンススクール、校舎の一角。

 

廊下に銃声が響き、静寂は破られていた。

その中心で、アリスはネル――“メイド先輩”と対峙していた。

 

「ここで終わりです、メイド先輩」

 

「ハッ、やれるもんならやってみな!」

 

互いの銃火が交錯し、壁や床に弾痕が刻まれていく。

破片が飛び散り、空気が震える。

 

アリスはスーパーノヴァを構え、静かに引き金に指をかけた。

 

「魔力充填100パーセント……行きます!」

 

次の瞬間、轟音が響き渡る。

 

放たれた一撃は、まっすぐに床へと突き刺さった。

 

――崩落。

 

ひび割れが広がり、床が崩れ、天井までもが軋みを上げる。

コンクリートの塊が崩れ落ち、校舎そのものが揺らぎ始めた。

 

その場に、たまたま夜に忘れ物を取りに来ていた男子生徒がいた。

 

逃げる間もなく、崩れ落ちた瓦礫に巻き込まれる。

 

アリスは、その存在に気づかなかった。

 

気づく前に、すべては終わっていた。

 

***

 

翌日。

 

ミレニアムの校舎。

 

重い沈黙の中、ひとりの女子生徒がアリスの前に立つ。

 

その日が、初めての出会いだった。

 

目は赤く腫れ、涙は止まらない。

それでも、その視線はまっすぐにアリスを射抜いていた。

 

「……あなたがやったのよ……!」

 

震える声が、静かな空間に突き刺さる。

 

「それで人が死んだ……!」

 

一歩、踏み出す。

 

「それだけで、十分でしょ……!!」

 

怒りと悲しみが混ざった声が、抑えきれず溢れ出す。

 

「何が起きたか分かってるの……?」

 

「あなたが撃って……そのせいで、人が死んだのよ……!!」

 

「ただ忘れ物を取りに来ただけだったのに……!」

 

言葉が途切れ、息が乱れる。

 

「……どうして……」

 

涙がこぼれ落ちる。

 

「……どうしてそんなことができるの……」

 

アリスは、何も言えない。

 

目の前の現実と、突きつけられた言葉。

その重さを、ただ受け止めることしかできなかった。

 

「……アリスは……」

 

かすれた声が漏れる。

 

「……勇者……です」

 

その言葉は、相手に向けられたものではなかった。

ただ、自分自身に言い聞かせるような響きだった。

 

そのとき。

 

(――その認識でも、構いません)

 

静かな女性の声が、どこかから響く。

 

(あなたは、“魔王”です)

 

アリスは目を見開く。

 

「……魔王……?」

 

女子生徒の泣き声が、遠く感じられる。

 

「……アリスは……」

 

ゆっくりと、その言葉を反芻する。

 

「……魔王……?」

 

守れなかった。

 

壊してしまった。

 

取り返しのつかない結果を生んでしまった。

 

ならば。

 

「……アリスは……」

 

まっすぐに女子生徒を見つめる。

 

その瞳には、まだ揺らぎがあった。

 

「……魔王です」

 

けれど、その言葉を否定しなかった。

 

「……だから」

 

一度、深く息を吸う。

 

「全部……やり直します」

 

ケイの声は変わらない。

 

(その認識で問題ありません)

 

(“魔王”としての選択は、適切です)

 

女子生徒は、ただ泣き続けている。

 

初めて出会った相手に、すべてをぶつけたまま。

 

アリスは、その姿を見つめ続けていた。

 

スーパーノヴァを握る手だけが、静かに、強く握られている。

 

その日、キヴォトスは滅んだ。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。