アビドス高校は、たった三人だけの小さな高校だった。
その均衡は、あまりにもあっけなく崩れた。
ユメ先輩が、砂漠で亡くなった。
――そして今度は、残酷な形で「見つかってしまった」。
ホシノが見つけたのだ。
風に削られた砂丘の陰で、半ば埋もれるようにしていたその姿を。
最初は、それが何なのか分からなかった。
分かりたくなかったのかもしれない。
けれど、近づいた瞬間、理解してしまった。
動かない身体。
乾いた血の跡。
そして、もう呼吸をしていない現実。
「……ユメ先輩」
声は、砂に吸い込まれるように消えた。
返事は、当然ない。
ホシノは、その場に崩れ落ちた。
指先で触れた体温は、もう砂と変わらないほど冷たかった。
(私のせいだ)
あのとき、止めていれば。
あんな言い方をしなければ。
その思考は、何度も何度も頭の中で繰り返され、
やがて逃げ場のない確信へと変わっていく。
やっとの思いで戻った後も、
現実は少しも軽くならなかった。
隣には、◻️◻️がいた。
沈黙が続く中、風だけが二人の間を通り抜けていく。
ホシノは何も言えなかった。
言葉にした瞬間、すべてが壊れてしまいそうで。
そのとき――
「……俺のせいだ」
低く、かすれた声が響いた。
ホシノは、ゆっくりと顔を上げる。
◻️◻️は、頭を抱え、歯を食いしばっていた。
その顔は、後悔と絶望で歪んでいる。
「ユメ先輩が砂漠に行くのを、あの時止めてれば……」
「せめて……持ち物を確認すれば……」
言葉は震え、途切れながらも続く。
その一つ一つが、ホシノの胸を抉った。
分かっている。
自分だけじゃない。
でも――
「……っ」
気づけば、ホシノは◻️◻️の胸ぐらを掴んでいた。
「何で……何で今さらそんなこと言うの……!」
声が震える。
怒りなのか、悲しみなのか、自分でも分からない。
「お前がちゃんと見てれば……!ユメ先輩は――!」
責める資格なんてない。
それでも、止められなかった。
その瞬間だった。
ぽたり、と。
赤い液体が、ホシノの手に落ちた。
「……え?」
◻️◻️の目から、血が溢れていた。
耳からも、鼻からも、口からも。
まるで、内側から壊れていくように。
「が……っ……」
苦しげな音が漏れる。
体が震え、力が抜けていく。
キヴォトス最高の神秘。
その影響を、その一身に受けたのだ。
テクストを持たないイレギュラーが、耐えられるはずがない。
「ちょ、ちょっと待って……何それ……」
ホシノの声は、明らかに動揺していた。
状況が理解できない。
目の前で起きていることが、現実だと認識できない。
「◻️◻️……?」
呼びかける。
だが、◻️◻️の瞳は、すでに焦点を失い始めていた。
体が崩れ落ちる。
慌てて支えるが、もう力は戻らない。
「ねえ……返事してよ……」
揺らす。
何度も、何度も。
「ねえってば……」
返事は、なかった。
風が吹く。
砂が舞い上がる。
ホシノの手には、
ユメ先輩を見つけたときと同じ、冷たい感触が残っていた。
二度目だった。
――そして今度は、自分の目の前で失った。
「……うそ」
ぽつり、とこぼれる。
次の瞬間、感情が決壊した。
「ねえ!◻️◻️!!」
抱き寄せる腕に、力がこもる。
「ねぇ!!起きてよ!!ねぇってば!!」
何度も揺らす。
砂が舞い、視界が滲む。
「さっきまで……喋ってたじゃん……!」
声が崩れる。
涙が止まらない。
「こんなの……こんなの、おかしいよ……!」
◻️◻️の体は、もう何も応えない。
それでも。
「ねえ……お願いだから……」
顔を近づける。
震える手で、頬に触れる。
冷たい。
「返事してよ……」
ぽろぽろと涙が落ちる。
◻️◻️の顔に、砂に、染み込んでいく。
「ねえ……◻️◻️……ねぇ……」
呼びかけは、やがてかすれ、消えていく。
風だけが、答えるように吹き抜けた。
三人だったはずの世界は、
もう、ホシノ一人だけになっていた。
頭を内側から破裂させてみたい