タイトルって考えるの難しいよね
先生に呼び止められたのは、放課後だった。
“悪いんだけど、これをラビット小隊に届けてくれないか?”
差し出されたのは、大きな段ボール箱。中には食料や医療品――支援物資が詰まっているらしい。
ラビット小隊。先生はすでに顔を合わせているが、俺はまだ会ったことがない。
「初対面、か」
ヘルメットを被り直しながら、段ボールを受け取る。
“場所は子ウサギ公園だ。ミヤコたちに渡してくれればいい”
「了解です」
段ボールをバイクに固定し、俺は走り出した。
風を切る。単純な依頼のはずだった。
だが、公園に近づいた頃、異変に気づく。
怒号。銃声。破壊音。
「……ヘルメット団か」
前方の通りで暴れているのが見える。規模も大きい。
このまま進めば巻き込まれる。
俺は迷わず脇道へ入り、ルートを変えた。
「公園は、この先……!」
裏道を抜け、子ウサギ公園の手前でバイクを止める。
エンジンを切り、段ボールを抱えて走り出した。
背後ではまだ銃声が続いている。時間はない。
公園の入口が見えた、その瞬間――
足元で、「カチッ」と音が鳴る。
「……は?」
次の瞬間、パンッ、と軽い破裂音とともに煙が弾けた。
殺傷力はない。ただ、音と煙だけが派手に広がる。
「なんだこれ……」
理解が追いつかない。
――だが、それで十分だった。
煙の中、ヘルメットを被り、段ボールを抱えたまま立つその姿。
それは、外から見れば――完全にヘルメット団の一員だった。
そして、爆発。
疑う余地はなかった。
「待っ――!」
言葉を発する暇もなく、
銃声が重なった。
衝撃が身体を貫く。
一発、二発では終わらない。
連続する銃撃。
段ボールを抱えたまま、膝が崩れる。
視界が揺れる中、かすかに見えたのは――銃を構えた少女たち。
どうして撃たれているのか、分からない。
ただ、
「……なんで……」
その言葉だけが漏れて――
意識は途切れた。
⸻
――同時刻、子ウサギ公園内。
「爆発音を確認。入口方向です」
ミヤコは即座に反応した。
先生とはすでに接触済み。支援物資が届くことも聞いている。
だが、状況がそれを上回った。
直前まで、周囲ではヘルメット団が暴れていた。
その最中に、爆発音。
そして、煙の中から現れたのは――
ヘルメットを被り、段ボールを抱えた人物。
「……ヘルメット団です」
サキが即断する。
「爆発物を所持。敵対行動と判断します」
ミユも、迷いなく銃を構える。
情報より、現場。
目の前の状況は明確だった。
「……対象、排除」
ミヤコは一瞬の逡巡もなく命じる。
「射撃」
三人の銃声が重なる。
正確な射線。無駄のない連携。
対象は何かを言おうとしていたが、止まらない。
撃つ。
それだけだった。
やがて、動きが止まる。
「……制圧完了」
銃口を下げる。
煙が晴れていく。
そこにあったのは――
倒れた、一人の男子生徒。
そして、撃ち抜かれた段ボールからこぼれ落ちる、食料や医療品。
「……これは……」
ミヤコの声が、わずかに揺れる。
その瞬間、先生から聞いていた情報が、遅れて現実に追いつく。
「支援……物資……?」
サキが言葉を失う。
ミユも、動けない。
誤認。
あまりにも単純で、あまりにも致命的な判断ミス。
⸻
その後。
FOX小隊の問題も重なり、SRTは「犯罪者を生み出す学校」として歴史に名を残すことになる。
だが、その始まりは――
子ウサギ公園で起きた、
一瞬の判断と、
取り返しのつかない誤射だった。
それを正確に語れる者は、ほとんどいない。