あっけなく死ぬ男子生徒の話   作:とーふめんたる

4 / 39
ホシノってやっぱ曇らせで光るよね

いつもと同じ道。

アビドスの風は、今日も乾いていて、どこか落ち着いていた。

 

「……たまには、こういうのもいいな」

 

誰に言うでもなく、独り言をこぼす。

 

背後の気配には、気づけなかった。

 

次の瞬間、意識が大きく揺れる。

 

視界が歪み、足元が崩れた。

 

「……っ……?」

 

何が起きたのか分からないまま、意識が遠のいていく。

 

 

薄暗い空間。

 

意識がゆっくりと浮上する。

 

「……っ……」

 

体が重い。思うように動かない。

 

目を開けると、そこには一人の男が立っていた。

 

整った身なり。

静かな佇まい。

だが、その視線は鋭く、冷たい。

 

「……目が覚めたか」

 

低く、抑えた声。

 

ゆっくりと距離が詰まる。

 

「貴様は……何も分かっていない」

 

その言葉には、明確な敵意が宿っていた。

 

「アビドス……」

 

その名を口にした瞬間、ほんのわずかに感情が揺れる。

 

「私の手から、すべてを奪っていった場所だ」

 

静かに吐き出される言葉。

 

「地位も、権限も……私が築いてきたものも」

 

一拍置いて、目を細める。

 

「貴様らは、それを正当な結果だとでも思っているのか?」

 

重い沈黙。

 

そして、はっきりと告げる。

 

「ならば、その結果が何を生むのか——自分の体で確かめるがいい」

 

そこからのことはあまりに悲惨だった。

 

一本一本指を折られ

 

殴られ、蹴られ

 

目玉をくりだされ

 

最後に、縄で首を絞められ、ゆっくりと、悶え苦しみながら、死んだ。

 

 

ホシノ視点

 

「……◻️◻️?」

 

◻️◻️の連絡は、途絶えた。

 

胸の奥がざわつく。

 

「……先生」

 

すぐに連絡を入れる。

 

返ってきたのは、アビドス郊外の廃墟にあるという情報。

 

「……なに、それ」

 

嫌な予感が、確信に変わっていく。

 

「……行くしか、ないよね」

 

走る。

 

息が上がっても、止まれなかった。

 

 

廃墟の中。

 

空気は、冷たく、重い。

 

何も言葉が出ない。

 

ただ、そこに在る「現実」だけが、静かにホシノの心を押し潰していく。

 

「……◻️◻️」

 

声は、かすれていた。

 

近づくたびに、足が震える。

 

信じたくない。

認めたくない。

 

それでも——目の前の光景は、否定を許してくれない。

 

「……ねえ……」

 

そっと、手を伸ばす。

 

触れた瞬間、指先に伝わる冷たさに、呼吸が止まる。

 

「……うそ……でしょ……」

 

視界が揺れる。

 

「……なんで……」

 

喉の奥が締めつけられる。

 

「……どうして……」

 

声がうまく出ない。

 

胸の奥に、ずっと押し込めていたものが、崩れ始める。

 

「……守るって……」

 

小さく呟く。

 

その言葉が、自分自身に突き刺さる。

 

「……守るって、言ったのに……!」

 

叫びは、抑えきれなかった。

 

声が震え、空間に響く。

 

「……どうして……どうしてこんなことに……!!」

 

感情が、溢れる。

 

悔しさ。

後悔。

怒り。

無力さ。

 

全部が、ぐちゃぐちゃに絡み合って、胸を締めつける。

 

「……私が……」

 

言葉が途切れる。

 

「……私がちゃんとしていれば……!」

 

拳を握る。

 

震えが止まらない。

 

「……こんなの……こんなのって……!!」

 

もう一度、叫ぶ。

 

叫んでも、何も変わらない。

 

それでも、叫ばずにはいられなかった。

 

崩れてしまいそうな自分を、どうにか繋ぎ止めるように。

 

やがて、声は途切れる。

 

廃墟には、再び静寂が戻る。

 

ただ残るのは——

 

どうしようもなかったという事実と、

 

「守れなかった」という、重く、深い痛みだけだった。

 

ホシノはその場に立ち尽くしたまま、

 

ただ、静かに震えていた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。