エデン条約調印式は、静かで厳かな空気に包まれていた。各学園の代表が集い、これからの秩序を決める重要な場。桐藤ナギサの隣には、いつも通り◻️◻️が立っていた。
落ち着いた声で状況を確認し、周囲を警戒している。ナギサもまた、表情を崩さずに会場を見渡していた。
「……異常はありませんね」
「はい。今のところは」
短いやり取り。それだけで、二人の間には確かな信頼があった。何も起こらなければ、それが一番良い。誰もがそう思っていた。
だが、その静けさは一瞬で破られる。
遠くから響く異音。低く、重く、空気を震わせるような音。
「……何だ?」
誰かの声。
次の瞬間、空を切り裂く影が落ちてきた。
「……ミサイル!?」
叫びが上がるより早く、それは会場の一角に突き刺さるように落ちた。
爆発。
視界が白く弾け、轟音が世界を飲み込む。衝撃で床が揺れ、人々が吹き飛ばされる。瓦礫が崩れ、悲鳴があちこちから上がる。
ナギサはすぐに身を守りながら、横にいたはずの存在を探した。
「◻️◻️!」
返事はない。
煙が広がる中、彼の姿が見えない。
ナギサは迷わず駆け出した。普段の落ち着いた振る舞いはそこにはない。焦りが足を速める。
瓦礫をかき分け、名前を呼ぶ。
「◻️◻️!どこですか!」
そして——見つけた。
崩れた構造物の下に、動かない彼の姿。
「……っ」
息が詰まる。
ナギサは駆け寄り、瓦礫をどかそうとする。手が震える。
「……起きて……ください」
静かに声をかける。しかし、反応はない。
そっと肩に触れる。冷たい。
「……◻️◻️……?」
もう一度呼ぶ。
それでも、何も起こらない。
ナギサの表情が崩れていく。
「……そんな……」
信じられないというように、何度も呼びかける。
「ねえ……返事を……」
声がかすれる。
それでも、彼は動かない。
現実が、ゆっくりと重くのしかかる。
ナギサは、その場に崩れるように膝をついた。
「……どうして……」
絞り出すような声。
「……私が……側にいたのに……」
目に涙が滲む。
言葉が途切れ、呼吸が乱れる。
「……◻️◻️……」
名前を呼ぶ声が震える。
だが、返ってくる声はない。
「……嘘でしょう……?」
小さく首を振る。
「そんな……」
現実を拒もうとするが、目の前の光景がそれを許さない。
「……起きてください……お願いです……」
その声は、次第に崩れていく。
そして——
「……どうして!!」
ナギサの絶叫が響いた。
冷静で、理知的だった彼女の声は、今やただの悲鳴だった。
会場の喧騒の中で、その叫びだけがはっきりと残る。
彼女はただ、動かなくなった◻️◻️の手を握りしめていた。
離したくないと願うように。
もう二度と戻らないと分かっていても。