落日の竜狩り ―真鍮の鎧と主への誓約―   作:もいもい130

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第二十話:【水の都と、交差する銀等級】

 

 

どこまでも続く青空の下、街道の果てに巨大な石造りの防壁が見えてきた。

 

豊かな水をたたえる幅広の堀。

そこを行き交う大小の船と、活気に満ちた人々のざわめき。

至高神の総本山にして、南方の要衝『水の街』である。

 

「わあぁ……! すごいです、オーンスタインさん! 建物が全部石でできてますよ!」

 

少女は興奮気味に、隣を歩く黄金の騎士を振り返った。

 

オーンスタインは約250センチ〜280センチにも及ぶ圧倒的な巨体を揺らし、静かに頷く。

彼の黄金の兜に、水面を反射した光がキラキラと揺らめいていた。

故郷である神話の地ロードランにも似た、どこか厳かで美しい街並みだ。

 

だが、彼らが街の正門へと近づくにつれ、周囲の空気は明らかな「異常」へと変わっていった。

 

「な、なんだあれは……ッ!?」

「止まれ! 止まらんか!!」

 

正門を警備していた複数の門兵たちが、血相を変えて槍を構えたのである。

 

無理もない。

のどかな昼下がりの街道を、見上げるほどの黄金の巨人が歩いてくるのだ。

 

常人なら一歩も動けないほどの重厚な真鍮鎧を纏い、背には身の丈を越える巨大な十字槍を負っている。

そして何より、隠しきれずに漏れ出している、圧倒的な『武威』。

 

「ど、どこの国の将軍だ!? いや、人間なのか……!?」

「魔将かもしれん! 応援を呼べ!!」

 

門兵たちは極度の緊張に顔を引き攣らせ、切先を震わせながらオーンスタインを取り囲んだ。

周囲の旅人や商人たちも、短い悲鳴を上げて蜘蛛の子を散らすように逃げていく。

 

オーンスタインは足を止め、兜の奥から静かに門兵たちを見下ろした。

彼に敵意はないが、ただ立っているだけで放たれる重圧が、門兵たちの心をへし折りそうになっていた。

 

一触即発の空気が張り詰める中。

 

「あ、あのっ! 違います! 待ってください!!」

 

黄金の巨人の背後から、ひょっこりと小さな影が飛び出した。

黒いローブを着た、小柄な新米魔術師の少女である。

オーンスタインと並ぶと、ちょうど胸元あたりに頭がくる体格差だった。

 

「こ、この人は魔物じゃありません! 冒険者です! これ、認識票です!!」

 

彼女は慌てて自分の首から提げた認識票と、オーンスタインの認識票を高く掲げた。

門兵の一人が、恐る恐るその認識票を覗き込む。

 

「……こ、黒曜等級……!? こんな規格外のバケ……いや、御仁が、辺境の街のギルド所属だと……?」

 

認識票が本物であると確認した門兵たちは、ようやく槍を下ろした。

だが、未だに信じられないという顔でオーンスタインを見上げている。

 

「ほ、本当なんだな……? よし、身分は証明された。だが、この街に入るには入場税が必要だ。二人で銀貨……」

「はいっ! 銀貨ですね!」

 

門兵が言い終わる前に、少女はローブのポケットから革袋を取り出した。

このポケットの奥には、大結晶トカゲからドロップした『光る楔石』も大切に保管されている。

 

チャリン、と手際よく入場税を数え、門兵の手に握らせる。

 

「オーンスタインさんのお金は、全部私が管理していますから! ……ねっ?」

 

少女はえっへん、と胸を張って、オーンスタインを見上げた。

お財布を完全に管理している彼女の、少し誇らしげなドヤ顔である。

彼女の奥底にある独占欲が、『彼のお世話ができるのは私だけ』という優越感となって表れていた。

 

オーンスタインはそんな彼女の様子を静かに見つめた。

呆れたように、あるいは感心したように、小さく一度だけ頷く。

 

「……あ、ああ。確認した。通ってよし!」

 

門兵たちは、威圧感の塊のような黄金の巨人と、その財布の紐を完全に握っている小柄な少女というアンバランスな関係に困惑しながらも、道を空けた。

 

 

門をくぐり抜けると、そこには辺境とは別世界のような光景が広がっていた。

 

石畳のメインストリートの横には、美しい透き通った運河が流れている。

そこを優雅なゴンドラが行き交い、水上には美しい歌声や笑い声が響いていた。

 

だが、オーンスタインが通りに足を踏み入れた瞬間、その喧騒は別の意味でざわめき始めた。

 

ガシャァン……ガシャァン……。

 

重厚な足音が石畳に響くたび、すれ違う人々が息を呑んで道を空ける。

まるでモーセの海割りのように、人波が真っ二つに分かれていくのだ。

 

「ねえ、見た……? あの巨大な鎧……」

「まるで動く要塞じゃないか……」

 

ざわめきが波紋のように広がっていく。

だが、オーンスタイン自身は周囲の視線など微塵も介していなかった。

 

「オーンスタインさん! まずは、冒険者ギルドに行きましょう!」

 

少女が、彼に追いつこうと小走りで隣に並んだ。

 

「鍛冶屋の親方さんが言っていた、鉱人道士さんと蜥蜴僧侶さん。ギルドに行けば、きっと会えるはずです!」

 

彼らが水の都へ来た目的は、その二人との接触を図ることだ。

 

彼女の言葉に、オーンスタインは静かに頷く。

周囲の畏敬の視線を背に受けながら、二人は水の街の冒険者ギルドへと歩みを進めた。

 

だが、彼らはまだ知らない。

向かう先のギルドの酒場で、己の『英雄譚』が既に歌い上げられていることを。

そして、あの日辺境で直接言葉を交わすことなくすれ違った銀等級の冒険者たちが、今まさにそこで休息を取っていることを。

 

---

 

水の街の冒険者ギルドは、至高神の神殿にも程近い場所に位置していた。

 

重厚な石造りの建物の奥、酒場を兼ねた広いホールでは、昼間から多くの冒険者たちがグラスを傾け、喧騒に身を委ねている。

 

その喧騒の中心で、一人の吟遊詩人がリュートを弾き鳴らしていた。

 

「〜♪ 聴け、西の果てより届きし、新たな英雄の調べを!」

 

よく響く声が、酒場に集う者たちの耳を惹きつける。

 

「現れ出でたるは、黄金の獅子! その背には身の丈を越える十字の槍!」

「怒れる雷(いかずち)を呼び覚まし、忌まわしき小鬼(ゴブリン)の軍勢を、ただの一撃で塵へと還す〜♪」

 

大袈裟な身振り手振りで歌い上げられる英雄譚。

だが、それを聞いていた冒険者たちの多くは、半ば呆れたように笑っていた。

 

「おいおい、いくらなんでもホラが過ぎるぜ!」

「一人で小鬼の軍勢を雷で消し飛ばすだと? そんな魔法使いみたいな重戦士、いるわけねえだろ!」

 

ヤジが飛ぶ中、酒場の片隅の丸テーブルでは、五人の冒険者たちが静かに休息を取っていた。

 

地下水路での過酷な小鬼退治の合間。

彼らこそ、この街の大司教『剣の乙女』から直々に指名を受けた、銀等級の異種族パーティである。

 

「まったく。小鬼(ゴブリン)ごときで、大袈裟な歌を作るものね」

 

長い耳をピクピクと動かしながら、妖精弓手(ハイエルフ)がエールをあおった。

 

「たしかにあの日、屋根の上から見ていたけど……遠くの空が真っ白になるくらいの『雷光』は見えたわ。でも、詠唱も魔法陣の気配も一切なかった。ただの自然の雷を自分のおかげにしてるだけじゃないの?」

 

エルフの鋭敏な感覚で戦場を俯瞰していた彼女は、その「魔法の理屈から外れた現象」を未だに疑っていた。

 

「いやいや、耳長(エルフ)よ。わしらも前線で見ておったろう。あの雷はただの自然現象じゃあねえ。狙い違わず小鬼の密集地に落ちおったんじゃ」

 

鉱人道士(ドワーフ)が、火酒の入ったジョッキを机にドンと置きながら溜息を吐く。

 

「全くだ。あの夜、直接声をかけようとしたんじゃがな……あの金獅子の旦那、『北の岩場の化け物蜥蜴(ロックリザード)』の討伐にさっさと向かっちまって、ついぞ話しかけられんかったわい」

 

「そうよ! だから直接問い詰めたかったのに……私たちも剣の乙女様の緊急依頼で、後ろ髪引かれながら辺境を出発しちゃったし」

 

妖精弓手が、悔しそうにテーブルを指先で叩いた。

 

「ふしゅるるる……。拙僧も、あの神話的な闘気の主と、一度でいいから語らってみたかったですな」

 

蜥蜴僧侶(リザードマン)が、チーズをかじりながら目を細める。

 

彼らの向かいでは、女神官が両手でカップを包み込みながら、一人だけ真剣な表情で吟遊詩人の歌を聞いていた。

 

(……ホラ話なんかじゃない。あの日、最前線にいた私と他の冒険者さんたちは、確かに見たんだから……)

 

彼女の脳裏に、牧場の防衛戦で見た圧倒的な光景が蘇る。

夜の闇を真昼のように照らし出し、小鬼の群れを一網打尽に消し飛ばした、綺麗で、恐ろしい雷撃。

 

「……小鬼の話ではないのだな」

 

黙々と短剣の手入れをしていたゴブリンスレイヤーが、鉄兜の奥から淡々と呟いた。

彼にとっては、目前の小鬼退治の算段のほうが重要だった。

 

その時だった。

 

ギィィ……ッ。

 

ギルドの重厚な木扉が、ゆっくりと押し開かれた。

逆光の中に、尋常ではない大きさの影が浮かび上がる。

 

歌い上げていた吟遊詩人が、ふと視線を扉に向けた。

 

「その姿、まさしく黄金の……え?」

 

リュートを弾く手が、ピタリと止まる。

 

「え?」

 

酒場のあちこちで、冒険者たちが間の抜けた声を漏らした。

先ほどまで「ホラ話だ」と笑っていた者たちの顔から、急速に血の気が引いていく。

 

ガシャァン……ガシャァン……。

 

重厚な、だが奇妙なほど滑らかな足音が、静まり返ったギルド内に響き渡る。

 

太陽の光を反射して輝く、巨大な黄金の獅子甲冑。

背に負った、威圧的な十字槍。

 

噂の張本人が、歌の中からそのまま抜け出してきたかのように、そこに立っていたのだ。

 

「……ッ」

 

ギルド内の喧騒が、水を打ったように静まり返った。

息をすることすら躊躇われるほどの、神話的な重圧が空間を支配する。

 

その中で、銀等級のパーティのテーブルだけが、全く別の意味でパニックに陥っていた。

 

「「「えっ!? なんでここに!?」」」

 

妖精弓手とドワーフの声が、完璧にハモった。

辺境の街ですれ違い、ついぞ話しかけられなかった規格外の英雄が、なぜ数百キロも離れた水の街のギルドに突然現れたのか。

 

「あ、あの方は……!」

 

女神官が弾かれたように椅子から立ち上がる。

驚愕する面々の中で、しかし彼らの『本能』は、瞬時に黄金の巨人の武威を正確に分析し始めていた。

 

「……嘘、でしょ」

 

妖精弓手の長い耳が、ピンと張り詰める。

 

(あんな分厚い金属の塊を着ているのに……足音以外の『衣擦れの音』や『鎧の軋み』が全くない!? なにあの滑らかな歩き方……信じられない!)

 

「ふ、ふしゅるるる……ッ!」

 

蜥蜴僧侶は、鱗がざわざわと逆立つのを感じていた。

 

(ただの雷使いではない……! なんという恐ろしい闘気。我ら竜の末裔を、幾千と屠ってきたかのような……純然たる『竜狩り』の気配!)

 

そして、静まり返る酒場の中で、ゴブリンスレイヤーだけが極めて冷静に黄金の騎士を観察していた。

鉄兜の奥で、彼の視線が十字槍の切先と、オーンスタインの巨体を舐めるように動く。

 

(……あの得物の長さと体格では、狭い洞窟(小鬼の巣)には到底入れないな。つかえる)

 

彼は、己の経験則に照らし合わせて分析を始める。

 

(だが、女神官の報告と吟遊詩人の歌が事実だとするなら……広範囲の雷撃は、平原や森での群れの掃討においては、極めて理にかなった効率的な手段だ。……火攻めや水攻めと同じか。いや、手間の少なさで言えばそれ以上か)

 

彼の脳内では、目の前の生きた神話を『いかに小鬼殺しに利用できるか』という、極めて実用的な思考だけが回っていた。

 

「オーンスタインさん、すごく静かですね。お昼時だから、もっと賑やかだと思ったんですけど」

 

黄金の騎士の背後から、ひょっこりと顔を出した少女が不思議そうに首を傾げる。

小柄な少女の無邪気な声だけが、静まり返ったギルド内に響いていた。

 

---

 

水を打ったように静まり返るギルドの酒場。

 

その沈黙を破るように、カツ、カツ、という小さな足音が響いた。

それに続く、ガシャァン……という重厚な金属音。

 

少女はオーンスタインを背後に従え、まっすぐに一番奥の丸テーブルへと歩み寄った。

そこには、先ほどから彼らを凝視して固まっている銀等級の冒険者たちがいる。

 

「あ、あの……! もしかして、鉱人道士(ドワーフ)さんと、蜥蜴僧侶(リザードマン)さんですか?」

 

少女が声をかけると、テーブルの面々は弾かれたように肩を揺らした。

 

「お、おう。いかにもわしがドワーフの術士じゃが……」

 

ドワーフは答えながらも、視線は完全に少女の頭上――黄金の獅子兜と、その異常な質量を誇る真鍮鎧に釘付けになっていた。

 

鍛冶の専門家である彼の目は、その鎧に「継ぎ目」や「鍛造の跡」が一切ないことを見抜いている。

 

(なんちゅうデタラメな造りじゃ……。ドワーフの業火でも、エルフの秘術でもない。まるで神が直接泥を捏ねて鉄にしたような……!)

 

一方、その隣に座るリザードマンは、もはや言葉を発することすらできずにいた。

 

「ふ、ふしゅるるる……ッ」

 

至近距離に黄金の巨人が立った瞬間、彼の竜の末裔としての本能が、警鐘を通り越して『平伏』を命じていたのだ。

空気を震わせる純然たる闘気。それは間違いなく、かつて数多の古竜を地に堕としてきた『竜狩り』の覇気そのものだった。

 

「辺境の街の、鍛冶屋の親方さんから聞いてきました。あなたたちなら、もしかしたら知っているかもしれないって」

 

極度の緊張に包まれるテーブルの中で、少女はローブのポケットに手を入れた。

そして、コロン、と一つの鉱石をテーブルの上に置いた。

 

それは、窓から差し込む昼の光さえも吸い込み、内側から青白い星々が瞬くような、神秘的な明滅を繰り返す石。

 

「な……ッ!?」

 

ドワーフの息が止まった。

それだけではない。妖精弓手(ハイエルフ)も、そして黙々と短剣を研いでいたゴブリンスレイヤーの視線さえも、その一点に釘付けになった。

 

「北の岩場で、すごく大きくて硬い化け物蜥蜴(ロックリザード)を倒したんです。その時に、これが手に入って……」

 

「お、お前さんたち……あのすれ違った日に、あの岩蜥蜴を狩りに行っておったのか!?」

 

妖精弓手が、震える指先でその光に触れようとして、思わず手を引っ込めた。

 

「ちょっと、何よこれ。魔力が……凝縮されすぎて、触れたら火傷しそうなくらいよ。こんな高密度の魔力石、エルフの森にもないわ……!」

 

「こ、これは……」

 

ドワーフは震える両手で、まるで赤子を抱くようにその石を掬い上げた。

 

「なんちゅう重さじゃ……見た目の何十倍もの質量が詰まっておる。それにこの光……ただの魔石じゃねえ。自ら光を発する『光る楔石』じゃと……!?」

 

鍛冶職人としての探求心が、恐怖や驚愕を完全に上回った。

ドワーフは興奮のあまり立ち上がり、テーブルから身を乗り出した。

 

「嬢ちゃん! いや、そこの金獅子の旦那! これを打ってくれって言うんじゃろうが、わしらドワーフの炉でも、この石は赤くすらならんぞ!」

 

ドワーフはオーンスタインの鎧を指差した。

 

「旦那のその規格外の鎧と同じじゃ! こんな神代の石を打つには、伝説に聞く『原初の火』か、失われた『神代の種火』でもなきゃ絶対に不可能じゃ!!」

 

『種火』。

 

その言葉に、オーンスタインの肩が僅かに反応した。

彼の故郷であるロードランにおいて、武具を鍛えるために不可欠な神聖なる炎の源。その伝承が、この四方世界にも存在しているのだ。

 

「どこかに、その『種火』の手がかりはないでしょうか?」

 

少女が身を乗り出して尋ねた、その時だった。

 

「……その石を鍛えれば、武器になるのか」

 

これまで静観していたゴブリンスレイヤーが、低く、落ち着いた声で口を開いた。

 

「え? あ、はい。オーンスタインさんの槍のように、すごく強くて、雷の力も宿るはずです!」

 

「……そうか」

 

ゴブリンスレイヤーは、鉄兜の奥から黄金の騎士オーンスタインを正面から見据えた。

 

「強力な武器になるのなら、小鬼(ゴブリン)を殺すのには大いに役立つだろう」

 

空気が変わる。

妖精弓手が「ちょっと、オルクボルグ!?」と慌てるのを手で制し、彼は淡々と提案を口にした。

 

「……俺たちはこれから、この街の地下水路へ向かう。そこには大量の小鬼が巣食っており、俺たちの手には余る『何か』がいる可能性がある」

 

彼は立ち上がり、オーンスタインを見上げた。

身長差は圧倒的だが、その眼差しには一切の怯えも、過剰な畏れもない。

あるのはただ、目の前の存在が『小鬼を効率よく殺せるか否か』という評価だけだ。

 

「……お前たちの目的がその石の鍛え方を知ることなら、協力しよう。俺たちの依頼主である至高神の大司教(剣の乙女)なら、古代の伝承や『火』について、深く知っているかもしれない」

 

ゴブリンスレイヤーは、言い切った。

 

「小鬼殺しに力を貸すなら、俺が彼女に繋いでやろう」

 

沈黙が流れる。

オーンスタインは黄金の兜を僅かに傾け、足元にいる『小鬼殺し』を見つめた。

 

言葉は通じずとも、戦士としての魂が共鳴する。

手段を選ばず、ただ泥臭く目の前の敵を滅ぼすことに特化した男。

そして、名誉を重んじ、主のために雷を振るう神話の騎士。

 

全く異なる二人の戦士の運命が、一石の『光る楔石』を介して、水の街の地下深くに眠る混沌へと繋がっていく。

 

『――本当に、貴方という人は。どこへ行っても厄介事に愛されるのね』

 

ふと、オーンスタインの耳元で、懐かしい女性の声がした気がした。

呆れたような、それでいてどこか楽しげな、鋭い刃のような響き。

 

錯覚か、それとも幻影か。

オーンスタインは小さく息を吐き、そして、力強く一度だけ頷いた。

 

「……よろしくお願いします!」

 

少女が、オーンスタインの代わりに嬉しそうに頭を下げた。

 

未知なる火の探求と、地下に潜む小鬼の脅威。

二つの世界の戦士たちが交差し、最強にして異端の共闘が、今ここに結ばれたのだった。

 

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