落日の竜狩り ―真鍮の鎧と主への誓約―   作:もいもい130

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第三十三話:【最果ての港町と、巨人の石橋】

 

 

第一部:潮風の街と、商人との別れ

 

 

竜鳴の峰の過酷な山道を抜け、さらに数日の長閑な街道を下った先。

二人の視界に、ついに果てしなく広がる青が飛び込んできた。

 

東の大陸の最果てに位置する、巨大な港町。

これまでの峻厳な山々や、薄暗い森、そして狂ったような暴風雨とは全く異なる光景がそこにはあった。

 

鼻腔をくすぐる、強い潮風の匂い。

絶え間なく響く波の音と、上空を舞う海鳥たちの甲高い鳴き声。

そして何より、多様な国々の人々が行き交う、途方もない活気と熱気が街全体を包み込んでいる。

 

万年の嵐が吹き荒れていた禁足地を越え、ようやく辿り着いた「人の営み」の最前線。

霧雨に濡れることのない、カラリと晴れ渡った空が、二人の旅の再開を祝福しているかのようだった。

 

「……では、お二人とも。私はここでお別れとなります」

 

港の片隅、様々な物資が積み上げられた巨大な商船の前。

案内役を務めた商人は、二人に真っ直ぐに向き直り、深々と頭を下げた。

 

その顔には、死線を超えた安堵だけではない。

目の前の二人に対する、絶対的な畏敬と深い感謝が刻まれていた。

神代の騎士と行動を共にするという、一生に一度あるかないかの奇跡を体験した男の、晴れやかな顔だった。

 

彼は、自身の商会から用意させた大きな麻袋を、少女の前にそっと差し出した。

 

「これは、私からのささやかな餞別です。日持ちのする干し肉や東の果実、それに、特殊な製法で不純物を抜いた良質な水が入っています。海の上では、真水は何よりも貴重ですからな」

 

「こんなにたくさん……! ありがとうございます、商人さん」

 

少女が両手でしっかりと受け取ると、商人はさらに、丁寧に折り畳まれた一着の真新しい外套を差し出した。

それは、深い青色をした、上質な海獣の毛皮で裏打ちされた防寒着だった。

 

「東の海は、山の嵐とはまた違った底冷えがします。お嬢さん、あなたは私の命の恩人です。せめてこれくらいは受け取ってください」

 

「……大切に使わせてもらいます。本当に、何から何まで」

 

少女は外套を胸に抱きしめ、深く頭を下げた。

 

その後ろで、オーンスタインも無言のまま、商人に向けて静かに一度だけ頷いた。

その威風堂々たる労いの仕草に、商人は再び深く、地面に額がつくほどの一礼をする。

 

「いつか西の大陸の……あの『黒い泥』の騒ぎが落ち着き、平和が戻ったら。その時はまた、商いをしに向かいます。どうか、ご無事で」

 

「ええ、必ず。……お元気で、商人さん!」

 

少女は力強く手を振り、商人の背中が人混みに紛れて見えなくなるまで、ずっとその場で見送っていた。

 

「さて、と」

 

少女は新しい青い外套を羽織り、ぐるりと首を回した。

海風を防ぐ上質な生地は、驚くほど軽く、そして温かかった。

彼女は自身のローブのポケットの上から、ずっしりと重い『財布』の感触を確かめる。

 

「オーンスタインさん、私たちも市場を回って、島へ渡るための最終準備をしましょうか」

 

少女が振り返ると、黄金の騎士は静かに頷き、彼女の隣に並んだ。

 

二人は、活気あふれる市場の大通りへと歩みを進める。

 

すれ違う人々は皆、見上げるほど巨大で神々しい真鍮の鎧に驚き、思わず道を空けた。

無理もない。彼がそこに立っているだけで、まるで神話の彫像が動き出したかのような、圧倒的な存在感を放っているのだから。

だが、オーンスタイン自身は周囲の喧騒や好奇の目に動じることなく、ただ静かに、相棒である少女の歩幅に合わせて歩調を緩めていた。

 

以前の彼なら、目に付いたものに対して無造作に金貨の袋を放り投げ、周囲を大混乱に陥らせていたかもしれない。

しかし今は違う。

資金の管理も、商人との交渉も、すべて少女が一手に担っている。

 

「すみません、この軟膏を二つ。それから、そっちの薬草も」

 

少女が店主としたたかに値切り交渉をしている間、オーンスタインはその背後で、一切の身動きをせずに待機している。

彼はただ待っているだけではない。

兜の奥の視線は、市場に並べられた見慣れぬ品々を、密かに、しかし鋭く観察していた。

 

ふと、彼の足が止まった。

 

視線の先にあるのは、東の近海で獲れたばかりの、巨大で奇妙な形をした深海魚や、硬い甲殻を持つ海の魔物たちの死骸が並ぶ鮮魚店だ。

 

オーンスタインは無言のまま、その奇妙な海の生き物たちを見下ろしていた。

 

神の都アノール・ロンドには存在しなかった、泥臭くも生命力に溢れた海の産物。

彼はそれに触れようとしたり、下劣な興味を示したりすることは一切ない。

ただ、己の知らない未知の世界の風景を、神代の騎士としての静謐な威厳を保ったまま、瞳の奥に焼き付けているようだった。

 

「……ひっ」

 

屋台の主が、巨大な黄金の騎士に睨み下ろされていると勘違いし、恐怖で震え上がっている。

彼の放つ静かな威圧感は、一般の人間にとってはそれだけで致死量のプレッシャーなのだ。

 

「あ、すみません。うちの相棒、ちょっと東の海のお魚が珍しかったみたいで」

 

交渉を終えた少女が小走りで戻ってきて、屋台の主に愛想よく笑いかけた。

そして、オーンスタインの巨大なガントレットの端を、怒るでもなく、ごく自然な手つきでちょこんと摘む。

 

「行きますよ、オーンスタインさん。そろそろ、あの『橋』の入り口に向かわないと」

 

「……ン」

 

オーンスタインは短く喉を鳴らすと、素直に少女の引きに身を任せ、再び歩き出した。

 

神代の騎士と、彼を導く魔法使いの少女。

言葉は少なくとも、そこには確かな信頼と、対等な相棒としての穏やかな時間が流れていた。

 

西の大陸の危機と、これから向かう絶海の島。

過酷な運命が待ち受けていることを知りながらも、この最果ての港町での束の間の日常は、二人の絆をより一層確かなものにしていくのだった。

 

やがて二人は、港町の喧騒を抜け、潮風がひときわ強く吹き付ける断崖絶壁へと辿り着く。

そこが、次なる神話の舞台への入り口であった。

 

 

第二部:神代のスケールと、海を割る道

 

 

港町の喧騒が、背後で少しずつ遠ざかっていく。

 

二人が歩みを進めた先は、街の外れにある海に突き出た断崖絶壁だった。

一般の人間は決して近づかない、立ち入りが固く禁じられている荒涼とした岬。

そこには、潮風を遮るものは何一つなく、ただ見渡す限りの広大な海と、東の果てに渦巻く分厚い暗雲だけが広がっていた。

 

「ここが……」

 

岬の先端に立った少女は、吹き付ける強烈な海風に青い外套をはためかせながら、息を呑んだ。

 

眼下の荒波を割るようにして、はるか沖合の暗雲に向かって一直線に伸びる、途方もない建造物。

それが、商人から教えられた『遺跡の橋』であった。

 

遠目から見た時は、ただの巨大な石のアーチに過ぎないと思っていた。

だが、間近でその『入り口』を前にした少女は、自分自身のちっぽけな想像力が完全に打ち砕かれるのを感じた。

 

「……大きすぎる」

 

少女の口から、震える声が漏れた。

 

それは、人間の常識で作られた『橋』ではなかった。

橋に敷き詰められた石畳のブロック、そのたった一つが、先ほどまで彼らが歩いていた港町の、酒場や民家一軒分ほどの大きさがあるのだ。

石の柱に至っては、天を突く山そのものを切り出して海に突き立てたかのような、狂気的なまでのスケール感だった。

 

どれほどの年月、この激しい荒波に洗われ続けてきたのだろうか。

表面にはびっしりとフジツボや分厚い海藻が張り付き、所々は風化して崩落している。

だが、その橋の根幹を成す構造は、微塵も揺らいでいない。

人間のちっぽけな文明など、数千回は優に滅んでしまうほどの悠久の時を、この橋は海の上で耐え抜いてきたのだ。

 

「神代の巨人が建造した、って……本当だったんですね」

 

少女は、首が痛くなるほど見上げて、巨大なアーチを見つめた。

人間の手では、こんな家ほどの大きさのある石材を切り出すことも、海の上に運ぶことも絶対に不可能だ。

 

四方世界がまだ、途方もない力を持った神々や巨人たちの遊び場であった時代。

その神話の時代の遺物が、今もこうして東の最果てに口を開けている。

圧倒的な未知と、歴史の重みに当てられ、少女は足がすくみそうになるのを感じた。

 

だが。

彼女の隣に立つ黄金の騎士の反応は、全く異なるものだった。

 

ガシャン、と。

オーンスタインが、橋の入り口となる巨大な石畳の上に、静かに足を踏み入れた。

 

彼の兜の奥の瞳は、威圧的なスケールを持つ巨大遺跡を見上げても、微塵も揺らいではいない。

それどころか、彼はどこか懐かしむような、穏やかな仕草で、橋の欄干にあたる巨大な石柱へと歩み寄った。

 

分厚い真鍮のガントレットで、風化した冷たい石の表面を、そっと撫でる。

 

『……』

 

オーンスタインの内に、遠く、暖かな郷愁が広がっていた。

 

この途方もないスケール。

見上げるほどの高さ。

見渡す限りの、幅の広い石の道。

 

それは、彼がかつて暮らしていた故郷——『神の都(アノール・ロンド)』の光景そのものだった。

 

彼の故郷は、神々と、それに仕える巨人たちのための都だった。

階段の一段一段が、人間の背丈ほどもあるのが当たり前だった。

大広間の扉は山のように高く、都の鍛冶場では、巨大な体躯を持つ心優しき巨人の鍛冶屋が、日夜、神代の鉱石を打ち据えていた。

 

この四方世界へ迷い込んで以来。

オーンスタインにとって、人間の作る街や建物は、すべてが狭く、小さく、窮屈で、壊れやすいミニチュアの箱庭のようだった。

油断すれば肩がぶつかって家屋を壊してしまいそうな、違和感と閉塞感に満ちた世界。

 

だが、この『遺跡の橋』は違う。

 

ここには、かつての彼の日常と同じ「正しい大きさ」があった。

彼ら神族が全力で槍を振るい、雷を放ち、縦横無尽に駆け回っても、決して壊れることのない、強固で雄大な盤石の舞台。

 

オーンスタインは、大きく息を吸い込んだ。

潮の匂いに混じって、石材の古びた匂いが胸に満ちる。

 

ここは、自分の知る世界に似ている。

この巨大な橋の向こうに、自分と同じ神代の時を生きる主——無名の王がいるのだという確信が、より一層深まっていく。

 

「オーンスタイン、さん」

 

少女の声に、オーンスタインは静かに振り返った。

 

彼女は、彼の背中を見つめながら、すべてを理解したような、優しい微笑みを浮かべていた。

 

彼女には、彼がこの場所で何を感じているのかが、手に取るように分かった。

威圧感に押しつぶされそうになっていた自分とは違う。

彼は今、かつての自分の居場所に似たこの景色に、安らぎさえ覚えているのだと。

 

(そうですよね。あなたにとっては、この大きさが……普通の景色だったんですものね)

 

少女は、胸元の獅子のペンダントをギュッと握りしめた。

 

彼が、かつてどのような世界で、どれほどのスケールの中で生きてきたのか。

その片鱗を、この巨大な橋が教えてくれた気がした。

 

人間の少女である自分には、この橋はあまりにも大きすぎる。

一段の段差を乗り越えるのすら、苦労するかもしれない。

物理的な大きさが、そのまま自分と彼との『住む世界の違い』を突きつけてくるようで、ほんの少しだけ胸が痛んだ。

 

けれど。

 

(絶対に、置いていかれたりなんかしない)

 

少女は、唇をキュッと引き結び、自らの意志で、巨大な石畳の上へと足を踏み出した。

 

ドンッ、と、革靴が石を打つ音が響く。

 

「行きましょう、オーンスタインさん。この道の先に……あなたの探している人が、待っているんですよね」

 

少女は、強風に煽られながらも、真っ直ぐに黄金の騎士を見上げて言った。

その瞳には、未知への恐怖を塗り潰すほどの、強烈な覚悟と、彼への深く重い愛情が燃えていた。

 

どれほど世界が大きくても。

彼がどれほど高い場所へ昇っていこうとも。

魔法の杖を握りしめ、自分の足で、必ずその隣に追いついてみせる。

 

オーンスタインは、決意に満ちた小さな相棒の瞳を見つめ返し、深く、力強く頷いた。

 

『……ン』

 

短い呼応。

それは、神代の騎士が、彼女を真の相棒として認め、共にこの巨大な道のりを歩むという、確かな誓いであった。

 

海風が大きく唸りを上げ、二人の外套を激しく揺らす。

轟音を立てて砕け散る白波の飛沫が、巨大な石橋を濡らしていく。

 

神々が歩んだ、海を割る遺跡の道。

その果てしない旅路の第一歩が、今、静かに踏み出された。

 

 

第三部:橋上の歩みと、波間の影

 

 

海を割る巨大な遺跡の橋。

その上を歩むのは、人間にとっては途方もない苦難の連続だった。

 

容赦なく吹き付ける潮風は、山頂の嵐とはまた違う重さを持っている。

波が砕けるたびに、細かい塩水が雨のように降り注ぐ。

普通の冒険者であれば、数時間も歩けば体温を奪われ、塩で装備をガチガチにされて動けなくなっていただろう。

 

だが、今の二人には、それを跳ね除ける確かな力があった。

 

「……《水面の盾(アクア・ヴェール)》」

 

少女が杖を掲げ、短く詠唱する。

すると、彼女とオーンスタインの体を覆うように、薄く透明な水の皮膜が展開された。

それは、山頂で展開したような巨大で魔力消費の激しい障壁ではない。

必要最小限の範囲で、飛沫と冷たい潮風だけを滑らかに受け流す、極めて繊細で高度な魔力操作の結晶だった。

 

ザバーンッ!

 

足元の巨大な石の隙間から吹き上がった波飛沫が、二人に降りかかる。

だが、飛沫は少女の展開した透明な皮膜に触れた瞬間、反発するように弾かれ、一滴の塩水も二人を濡らすことはなかった。

 

「ふふっ。どうですか、オーンスタインさん」

 

少女は、荒れ狂う橋の上を快適に歩きながら、得意げに隣を見上げた。

 

「このくらいなら、歩きながらでもずっと維持できます。これでもう、市場で見たお魚みたいにびしょ濡れにはなりませんよ」

 

オーンスタインは、自身の鎧を濡らすことなく弾かれていく波飛沫を見て、感心したように兜を僅かに揺らした。

かつて彼がアノール・ロンドで共に戦った魔術師たちとも遜色のない、実戦的で無駄のない術の行使。

ただ守られるだけだった少女が、今や明確に「旅の環境を支配する」頼もしい相棒へと成長している。

 

彼は無言のまま、真鍮のガントレットで、ぽん、と少女のフードの頭を軽く叩いた。

『よくやった』という、彼なりの不器用な称賛のサインだった。

 

「えへへ……」

 

少女は嬉しそうに目を細め、胸元の『獅子のペンダント』を外套の上からそっと握りしめた。

彼に認められることが、何よりも誇らしい。

自分が彼の隣に立つ資格を、一つずつ証明できているような気がして、胸の奥が温かくなる。

 

二人は、海上の廃墟を静かに進んでいった。

 

見渡す限りの広大な青。

そして、その波間に延々と続く、崩れかけた巨大な石のアーチ。

所々で完全に崩落している場所もあるが、巨大なブロックの残骸が海面から突き出しており、オーンスタインの跳躍力と少女の魔法による補助があれば、飛び移って進むことができた。

 

美しくも、どこか寂寥感を誘う退廃的な光景。

そこには、人間の文明の喧騒は一切届かない。

神代の遺物と、荒れ狂う自然だけが支配する、静寂で孤独な世界だった。

 

だが、その孤独が、今の少女には心地よかった。

こんな世界の果てのような場所で、彼と二人きりで歩いている。

彼が神の世界へ帰るその日まで、この特別で甘やかな時間がずっと続けばいいのにと、密かに願ってしまうほどに。

 

しかし、神々の盤上である四方世界は、決して二人に平穏な散歩だけを許しはしなかった。

 

港町を出発して、半日が過ぎた頃。

太陽が西に傾き、海面が朱色に染まり始めた、その時だった。

 

——カサッ、カサカサカサッ……!

 

波の音とは違う、硬質なものが岩を擦るような、不気味な音が響いた。

 

「……え?」

 

少女が足を止める。

音は、前方の崩落した巨大な石畳の隙間から聞こえてきた。

 

ブクブクブク……と、橋の隙間から覗く海面が、異様に泡立っている。

そして、海藻とフジツボにまみれた暗い水底から、「それ」は這い上がってきた。

 

「な、何ですか……あれ……」

 

少女の顔が、一瞬で強張る。

 

巨大な石畳の縁に、巨大な鋏(はさみ)がかけられた。

それは、蟹のようであった。

だが、決してただの海の生き物ではない。

 

甲羅の大きさは、荷馬車ほどもある。

そして何より異様なのは、その分厚い甲羅の表面に、青白く発光する『結晶』がびっしりと無数に突き出していることだった。

 

神代の魔力が海に溶け出し、長い年月をかけて海の生物を変異させた成れの果て。

『大結晶蟹』。

 

カチカチカチッ!と、巨大な鋏が威嚇するように打ち鳴らされる。

さらに、不気味な足音は一つではない。

前方から、横の海面から、ぞろぞろと複数の巨大な結晶蟹たちが、二人の行く手を阻むように橋の上へと這い上がってくる。

 

「……っ」

 

少女は、即座に手にした杖を構え直した。

道中の簡単な防壁魔法から、戦闘用の攻撃と防御の魔力構成へと、瞬時に意識を切り替える。

 

だが、彼女が魔法を放つより早く。

 

バチィィィンッ……!!

 

隣から、目を焼くような黄金の閃光が弾けた。

 

オーンスタインが一歩前に出て、神代の炎で鍛え直された『竜狩りの十字槍』を構えていた。

彼の周囲の空気が、高密度の雷の魔力によってビリビリと歪む。

 

大広間の守護者であった彼の本能が、立ち塞がる外敵に対して、容赦のない排除の意志を示している。

 

(……島へ至る道は、やっぱり簡単じゃないですよね)

 

少女は、その頼もしい黄金の背中を見つめながら、小さく息を吐いた。

そして、自身の水魔術を、彼の雷と連携させるための戦術を頭の中で高速で組み上げる。

 

夕日に照らされる巨人の石橋の上。

波間の影から這い出した異形の魔物たちとの、新たな死闘の幕が開こうとしていた。

 

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