<本編完結>親友のお隣さん~万の羽が彩るハッピーエンド~   作:白豆男爵

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難産でございます。どうアレンジを加えるかが難しくて...


終わり近づくおとぎ話

コラボライブ当日、開始の三時間前。

かぐやの希望で同じ部屋からログインしようとしていた。

 

「いよいよ今日だね!かぐや超ワクワクする!」

「私、ずっと緊張してるよ...」

「二人とヤチヨならきっと最高のライブにできる。全力で楽しんでこい。」

「「うん!」」

 

三人でハンドサイン(仲良しのやつ)をしてツクヨミに向かうのであった。

 


 

「だらららら、蟹!だらららら、うさぎ!」

「はいはい、可愛い可愛い。」

 

私はかぐやの物真似ルーレットを適当にあしらう。

ここはライブ会場の控室。緊張でそれどころじゃない。

 

「練習しすぎてお腹空いた~。終わったらパンケーキ食べよ!」

 

対するかぐやはあまり緊張してないようだ。怖いもの知らずといった方がいいだろうか。

 

「私は緊張でご飯食べれんかったよ...」

「だらららら、どじょう!」

「わっ!」

 

突然現れたヤチヨに驚き、思わず立ち上がる。

 

「パンケーキいいな~、ヤチヨも食べたいな~。」

「一緒食べる?」

「あ...よよよ、ヤチヨは電子の海の歌姫なので食べられないのです。」

「え~、それ何の拷問?かぐやだったら絶対ムリ!」

 

確かに、食べるのも作るのも大好きなかぐやにとって、絶食の生活はどうあがいたって無理だろう。

と、そんな会話を繰り広げていると...

 

『各所、準備OKです。』

舞台監督からのメッセージ。時間ぴったりだ。

 

「いざ、行こうか。」

 

ヤチヨの顔は既に、歌姫のそれに切り替わっていた。

私たちの足場は上昇し、ライブ会場へ。

 

「毎度ヒリヒリなんだよねー、この空気。」

 

会場について開口一番、ヤチヨはそう言う。

 

「ねえ、ヤチヨ。」

「なんだいなんだい?」

 

私は思い切ってその質問を投げかける。

 

「ヤチヨのデビュー曲ってもう歌わないの?」

 

『Remember』私を救ってくれたヤチヨのデビュー曲。

ヤチヨは長らくあの歌を歌っていない。今回のセットリストからも外れていた。

 

「あれはもう届いたから、お役目かんりょ~~☆」

「えっ、それってどういう...?」

「ほら、時間だよ。」

 

意味を訪ねるよりも先に、会場はライトアップ。

私たちの衣装も変わり、髪型はサイドテールへ。

それと同時に盛り上がる会場の熱気が、私たちへと降り注ぐ。

 

「ヤオヨロ~~☆みんな!生きるのどうですか?」

 

ヤチヨは観客へ問いかける。

 

「良い事あった?それとも泣いちゃいそう?よしよし、全部大丈夫。どんなに孤独な道のりでも、楽しかったなーって記憶が足元を照らすよ。」

 

ヤチヨの優しく、寄り添うような声が観客に届く。

 

「この瞬間を忘れられない思い出にしたいから...どうか一緒に踊ってくれる?」

 

そうして始まる、私たちのステージが。

 


 

会場が、観客たちが熱狂する。

かぐや・いろPとヤチヨのコラボライブが幕を開けた。

俺は綾紬、諌山と共に観客席からその様子を見届ける。

一曲目、『ワールドイズマイン』。どうやらこのライブに向けてRemixされているようで、知っている曲のはずなのに、まるで別の曲のように感じる。

 

「すごい!演出も、熱狂も、今まで見てきた中で一番だ。なあ、ROKA?」

「...」

「...ROKA?」

 

だが俺と諌山は忘れていた。綾紬芦花が、酒寄彩葉に恋する少女だということを。

普段目にすることのないであろう彩葉のサイドテールときらびやかな衣装。

熱心に、楽しそうに演奏する姿を見て、完全にフリーズしていた。

 

「ROKA?ちょっと、戻ってきて~!」

「目開けたまま気絶してる...」

 

綾紬が彩葉のことを好きなのは知っていた。綾紬と諌山では彩葉に向ける感情が決定的に違っていると感じたからだ。

だがここまで...まさか最序盤にノックアウトされるとは。

 

「ROKA~~~~!」

「...はっ、私は何を...」

「よかった、戻ってきた...ほら、ちゃんと見てないと彩葉に怒られるぞ?」

 

しかし直後...

 

「ヘイベイビー」

 

唯一彩葉が歌うフレーズ。そのたった一つは、綾紬にとどめを刺した。

 

「「あっ」」

「...」

 

完全に綾紬芦花は消し炭になってしまった。

仕方ない、もう諦めよう。

 

「まみまみ、あとは任せた。」

「えっ、ちょっと、私に押し付けないでよ~!」

 

そうして俺はステージに向き合い、ライブに集中する。

楽しそうなかぐやと彩葉をずっと眺めていた。

 


 

「ヤチヨさいこー!」

「ヤチヨー!」

「かぐや、結婚してくれー!」

「かぐや、愛してるぞー!」

 

歓声は鳴りやまない。ライブの余韻が会場を渦巻いていた。

 

「めーーーーーっちゃ楽しかった!」

 

かぐやはテンションマックスでそう言う。

 

「彩葉、万羽、好き。」

「わっ、私!?」

 

突然の告白に思わず変な声が出る。万羽には多分聞こえていないだろう。

 

「あーもー、彩葉と万羽と結婚しよっかなー。」

 

続けて爆弾発言。万羽に聞こえてなくてよかったよ、本当に。

 

「あんた...日本じゃ重婚は出来ないよ?」

「ダメ?」

「まあ、生活費折半してくれるなら、一緒にいるのはいいけどさ。」

「え、本当?」

 

そんな会話をしていたとき、突如暗雲が立ち込める。

会場のモニターに月が映る。その異変はツクヨミだけでなく、現実世界も浸食する。

大型ディスプレイ、スマートフォンなども連鎖的に月を映し出す。

スマートグラスを装着している人々は謎の人型を目撃する。

白い胴体、その上には人の頭ではなく、灯篭そのものが乗っかっていた。

その異変は徐々に拡大していき、やがてモニターにはある日付が映し出された。

 

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続いてツクヨミ内では一部のアバターがその人型に変貌し、ライブ会場に向かう...

 


 

俺は周囲を警戒していた。なにかは分からない。

俺の本能が警鐘を鳴らす。このままでは、取り返しのつかないことになると。

もしもの時のために銃剣を顕現させる。

だが、遅かった。

突如飛来してきた謎の人型に触れられ、まるで電源を落とされたように膝を落とす。

その目はうつろになり、先ほどまで楽しそうな表情をしていたかぐやの面影はなくなっていた。

 

「っ!かぐや!」

 

俺は全速力でステージに向かう。緊急事態だと、直感で感じた。

ライブの演出かも知れない。でも、その時は俺がライブの演出に介入してきた頭のおかしい奴になるだけだ。

リスクに比べればそんなもの問題じゃない。

 

「来るなっ!」

 

彩葉も何かを感じたのか、双剣を取り出し、人型を攻撃する。

 

「二人から...離れろっ!」

 

着地直後、俺は剣を振り払い、目の前の人型をなぎ倒す。

だが、人型は無尽蔵に飛来し、じりじりとこちらに迫ってくる。

しかし次の瞬間、人型は何かの力を受けて吹っ飛んだ。

 

「おいたはだめだよー」

「ヤチヨ!?」

 

ヤチヨは指揮棒のごとく指を振り、それに合わせて人型が弾かれていく。

 

「モウシワケゴザイマセン」

 

人型は突然日本語を発したかと思うと、自ら撤退を選んだように消滅していった。

 

 

「今のは一体?何が起こってしまうんだ?続報を待て!」

 

ヤチヨは観客に向かって大声を張り上げる。

演出として終わらせるつもりか。混乱を防ぐにはベストな選択だろう。

 

「みんな、今日は本当にありがとう~☆」

「ヤチヨ、今のって...」

「うーん、バグじゃなさそうだし、やんちゃっ子の悪戯かにゃ~、調べとくよ。」

 

ヤチヨは首をかしげながらいつもの調子で答える。

こうしてコラボライブの幕は下りた。

俺たちに一抹の不安を残して。

 


 

「二人とも、大丈夫か!?」

 

現実に戻ってくると、万羽はすぐに私たちにそう言った。

 

「私は大丈夫、でもかぐやが...」

「大丈夫大丈夫!そんなに心配しなくても平気だよ!」

「そっか、よかった...二人に何かあったら俺...」

 

まただ。万羽はどこか不安定な表情で安堵する。

彼の秘密と、何か関係しているんだろうか...

 

「ねえ、約束、覚えてる?」

「...ああ、もちろん。でもいいのか?疲れてるだろ。」

「いいの。私は、今聞きたい。」

「なになに?何の話?」

 

かぐやは何のことか分からず、気になるといった様子でまじまじと見つめてくる。

 

「分かった。かぐやへの説明も含めて、今話そう。」

 

そして万羽は言葉を紡いでいく。彼自身が隠してきた秘密を教えるために...




次回、万羽の過去が明らかに!?
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