<本編完結>親友のお隣さん~万の羽が彩るハッピーエンド~   作:白豆男爵

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花火シーンの完成度が高すぎて改変するの難しい...


きっとまだ終わらないと思っていた夏

俺が自分の過去を打ち明けた翌朝。

俺は夏期講習に行くために制服に着替え、下のリビングへと降りていく。

ドタバタと足音がする。どうやらかぐやはすでに起きているようだ。

 

「おはよう、万羽!」

「おはよう。って、これは一体...」

 

下に降りた俺の視界がとらえたのは、出刃包丁を煌めかせるかぐやと、俎上からはみ出すほどの大きな魚だった。

 

「白甘鯛!通称シラカワ!」

「いや、魚種を聞いてるんじゃなくて。」

「料理配信用に買ったの。炭で焼きたいんだけどぉ、ダメ?」

「火事になるからやめなさい。」

 

そんなやり取りをしていると、上から彩葉が降りてきた。

 

「これは、一体...」

「俺と同じ反応してる。」

「シラカワ!料理配信用!てか、制服着てるけど、もう学校始まるの?」

「ううん、夏期講習。ずっと行ってたでしょ。」

「そだっけ?昨日は?」

「日曜日だったろ。さすがに日曜に講習はないぞ?」

「ほんとだ、夏休みだから曜日の感覚なくなってたー。」

「あんたはいつも日曜でしょ。」

「たっはー」

 

おどけて額をたたくかぐや。俺も彩葉も釣られて笑ってしまう。

そんなどこかぎこちない会話をして俺たちは家を出た。

 

 

「じゃあな、彩葉。」

「うん、また後で。」

 

俺たちはほどなくして学校に着く。と言っても、受けている講習の科目は別なのでいったん別れる。

俺は理系のコースなので文系コースの彩葉とは別なのだ。ちなみに理系コースの理由は、理転と文転どっちが楽かって言われたら...そういうことだ。

授業の内容はあまり頭に入ってこなかった。いつも通りの元気なかぐやに見えたが、どこか空元気な気もする。

やはりライブのときに何かあったのだろうか...

俺たちを引き離す不穏な足音が聞こえてくる気がした。

 


 

夏期講習を終えて私はツクヨミで芦花と真実と話していた。

 

「昨日のライブ良かった!」

「良すぎちゃってた!」

「「彩葉の演奏、感動して泣いた〜!」」

「あ、ありがと。」

「花丸つけたげるー。」

 

怒涛の感想ラッシュにちょっとたじろぐ。

 

「てか万羽君、ライブの演出に一枚噛んでたとはね〜。」

「そうそう、急に飛び出しちゃったからびっくりしたよ~。」

「え?あっ、そ、そうなの!サプライズ...的な?」

 

どうやら万羽の乱入はライブの演出として収まっているらしい。

ヨロズとしての活動に影響が無さそうで安心した。

そう思っていると芦花が話を切り出す。

 

「夏の終わりに花火などいかがかな〜?」

「電車で一時間くらいか...みんなで行くよね?」

「ノンノン、我らには大事な使命があるのです。」

「夏休みの宿題を完全に放置していたのです。」

「というわけで、」

「「後はよしなに〜」」

 

そう言って二人はログアウトする。

芦花も真美も夏休みの宿題は事前に終わらせておくタイプだ。今日まで放置なんてあるはずもない。

 

「...気遣わせちゃったな。」

 

そうつぶやいて私もログアウトする。

目を開け、自分の部屋で目を覚ます。

...誘い方がわからない。このごろ自分から遊びに誘ったことなんて全くと言っていいほどない。誰かを参考にしようと思い浮かんできたのは、金髪の同居人の顔であった...

 


 

夏期講習から帰ってきた俺は私服に着替えてリビングに降りる。

 

「うおっ、寿司になってる...」

「あっ、万羽!食べて!」

 

そう言ってかぐやは俺の口にシラカワの寿司を突っ込む。

 

「...めちゃくちゃ美味い。」

「でしょ?」

「かぐやなら料理人になれるかもな。」

「料理人か〜。それもいいけど、やっぱりかぐやはライバーが一番好きかな〜。」

「ああ、かぐやにはライバーが一番合ってるよ。」

 

そんな会話をしていると彩葉が降りてきた。

 

「お。彩葉も食べてー。」

「なにこれ、うますぎ。」

「でしょ?明日は麺からラーメン作る!」

「すげぇ...」

「もはや職人だな...」

「...」

 

彩葉は少し頬を赤らめながらスマートフォンの画面を見せる。

そこには花火大会と書いてあった。

 

「かぐや...あ、遊ぼー。」

 

そんな、頑張ってかぐやの真似をしたような彩葉のお誘いが炸裂した。

そしてしばしの静寂の後...

 

「やった!やたやた!やったーー!」

 

かぐやは狂喜乱舞。彩葉に誘われたのがよほどうれしかったようだ。

 

「よし、すぐ行こ!そうだ、浴衣着よう!...はいっ、予約いれた!さあ、行くぞー!」

「待て待て、早いから。一旦落ち着こ?」

「無理!待てない!」

「とりあえず、キッチン片付けてから、な?」

 

そんな怒涛の勢いのかぐやをなだめ、俺たちは浴衣のレンタル店に向かった。

 

「じゃあ、俺は外で待ってるから。ゆっくり選んでおいで。」

「何言ってるの?万羽も着るんだよ?」

「...はい?」

「だって、一人だけ私服はアンバランスじゃん!」

「いや、男の浴衣に需要なんて...」

「問答無用!彩葉、拉致るよ!」

「了解~。」

「ちょっ、彩葉まで!?分かった、着るから!だから離せ~!」

 

そして俺は半強制的に浴衣を着ることとなった。

あまり派手なのは嫌なので、シンプルな黒い浴衣を選んだ。

俺は主役じゃないからな。こういうのでいいんだよこういうので。

そう思っていると着替え終わった二人が出てきた。

二人とも向日葵の柄の浴衣だ。

 

「和服よき~☆」

「なんか、変じゃない?」

「そんなことないよ、二人とも似合ってる。」

「そ、そう?///」

「あ、彩葉照れてる~。」

「う、うるさい!ほら、行くよ!」

 

浴衣を選び終わった俺たちは電車に乗って会場まで移動する。

電車に乗ってみると、浴衣を着ている子が何人もいた。

場違い感が出なくてちょっと安心した。

 

「さて、無事会場に着いたわけだが...」

「始まるまでまだ時間あるし、どうする?」

「屋台!全部回る!」

「全部は無理だろ。」

 

かぐやの勢いに振り回され、様々な屋台を回る。

射的、蟹釣り、食べ物...ありとあらゆる屋台を巡る。

やがてレジャーシートの上に戦利品を下す。まさか本当にほぼ全部の屋台を回ってしまうとは。

かぐや、恐ろしい子。

 

「ひょえ~、楽しすぎー!楽しキングダム!」

 

そう言いながら手で国の形を作る。テンションが上がってるのか、彩葉もそのポーズをまねる。

じゃあ俺もやるか。

 

「うぇーい、二人とも真似っこ~~」

 

恥ずっ。やらなきゃよかった。

そんな中、彩葉が言葉を発する。

 

「...いつも着けてるよね、それ。」

 

そう言って指さすのは、かぐやのブレスレット。

赤ん坊のころからずっと身に着けていたものだ。

 

「あ、なんか落ち着くんだー。故郷(ふるさと)って感じ?」

故郷(ふるさと)...」

 

なんとなく、分かっていた。あの日モニターに映った9/12。

その日は満月だ。しかも仰々しく満月の画像まで映していた。

この楽しい日々の期限は、きっと長くない。

 

「月ってさあ、味も温度もなくてまじつまんないの。決められた役割をずーっと、繰り返すだけなんだよね。」

「想像つかないな...そんなの。」

「まるでゲームのNPCだな。」

「そもそも、つまんないとか、そんなこと考えるのが異常っていうかさ...かぐやだけ、浮いてたんだ。」

 

そんな悲しい言葉を、綺麗な顔で紡ぐかぐや。

その直後、花火が上がる。

 

「わぁ...」

 

次々に上がっていく花火に、かぐやは感嘆の声を漏らす。

 

「寂しいし、退屈。毎日繰り返し、"退屈、死にそう。もうやだ、どっか行きた~い"って思って、窓から彩葉たちの世界を見たら、みんな好き勝手動いてて、複雑で、一回きりで、自由に見えた。」

「私たちが?」

「うん。でも...みんな抑えてもいるんだよね、自分の気持ち。もっと大事なもののために。」

「何?大人じゃん。」

「ついこの間まで赤子だったのにな...」

「へへ、彩葉の真似~。ねえ、彩葉。一個聞いていい?」

「何?」

「彩葉は、お母さんのこと好き?」

 

かぐやは笑顔を崩さずに尋ねた。会話の空白を埋めるように花火が上がる。

 

「好き...好きか...どうだろう...分かんないな。」

「彩葉...」

「そうだね...嫌いになれたらなって、何回も思ったよ。」

 

その答えを聞いて、かぐやは小さく涙を流す。

 

「そんなん、彩葉、余計に可哀想じゃん~。」

 

泣きながらも、笑顔は崩さない。それが"かぐや"だとでも言うように。

 

「てかごめんね?怒ったって良かったのに。"かぐやには分かんない"って、言いたかったっしょ?」

 

それは彩葉が熱を出したあの日、彩葉が飲み込んだ言葉。

 

「違うよ、言いたかったんじゃない...言いたくなかったの。」

「...そっか。」

「かぐや...」

 

彩葉はその手で、かぐやの手首を掴みながら...

 

「帰っちゃうの?」

「いや~、仕事放り出してきちゃってさ。強制送還的な?あはは。」

 

いつもの調子で、でもどこか大人びた雰囲気で、かぐやは告げる。

 

「かぐやは、かぐや姫だったみたい。」

 

かぐやという名前の由来、かぐや姫。その運命までも、それと同じだというのだろうか...

 

「次の満月の夜にお迎えがくる。」

「お迎えって、うちに?」

「うーん、たぶんツクヨミにかな。仮想の世界って、月ととても近いから。」

「...また逃げればいいじゃん。かぐやは、かぐや姫じゃないよ。もっとハチャメチャで!めちゃくちゃで!だから、おとぎ話とは違う!」

「そんな、ハチャメチャかぐや姫にもお迎えが来ましたが、最後の日までめちゃくちゃ楽しく過ごしましたとさ...って、そういうのがいいじゃん!」

「...俺たちを、ハッピーエンドまで連れていくんじゃなかったのか?」

「これが私のエンディング!チョー楽しく、運命に向かって走ってく!...そりゃあ本当はさ。もっともっと、彩葉と万羽と一緒に歌いたかったし、楽しい思い出もいっぱい作っていきたかったよ。新しい曲だってたくさん。あ、そうだ、ライブしたいなー。お迎えがくる日、派手に!」

 

直後、スターマインが弾けた。まるでかぐやの言葉に応えるように。

 

「うおおお、腹に響く!煙の匂い!いいなぁー!」

 

今この瞬間、花火を見るかぐやの瞳が、何よりも輝いて見えた。

やがて、花火大会も終わる。周りに誰もいなくなり、残るのは俺たちと、静寂だけ。

 

「もうおうち()に帰らなくちゃ...帰れなくなっちゃう。」

 

かぐやは悲しそうにそう言う。かぐやの意思を尊重したい気持ちと、かぐやを失いたくない気持ちの間で板挟みになり、押しつぶされそうだった。

翌日、超新星ライバー"かぐや"の引退と卒業ライブが発表された。

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