<本編完結>親友のお隣さん~万の羽が彩るハッピーエンド~   作:白豆男爵

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獣を飼い慣らせ、決戦の時!

翌日から、曲作りの合間を縫って彩葉の立ち会いの下、バグを使いこなす特訓が始まった。

わかったこととして、このバグの効果だが、

一、ステータスの大幅上昇

二、尻尾からエネルギー体を伸ばす攻撃機能の開放

三、視覚、聴覚の強化

主にこの三つだ。尻尾の数を増やせば効果の上昇幅も大きくなるらしい。

元々ある二本の尻尾を含めて最大で九本目まで増やせることから、この現象を『九尾化』と名付けることにした。

もちろん、メリットだけでなくデメリットも存在する。長時間の使用は脳に負担がかかることだ。

初日にどこまで尻尾を増やせるのか検証しようとした所、九本目以上は増やせず、目眩がしたのでその時点で彩葉のストップがかかり終了した。

それ以降は脳を慣らすべく徐々に尻尾の数を増やしていき、かぐやの卒業ライブ前日の現在、八本目まで顕現させることに成功していた。

 

「っ!八本は1分半が限界か...」

「万羽!今日はもう休もう?」

「彩葉...でも、もう時間がない。できるだけ完全に近い状態にしなきゃ...」

「八本を1分半も維持できれば十分だよ!」

「そうそう、無理して妹に心配かけさせんな。」

「いてっ!」

 

その言葉とともに背後から金棒で軽く叩かれる。

 

「帝さん、来てたんですか...」

「お兄ちゃん。スケジュールとか大丈夫なの?」

「明日はいよいよ月人と正面対決だからな。今日は予定あけてあるんだよ。」

 

ブラックオニキスとしての活動に加えて明日に向けた準備もあるはずなのに、こうして余裕綽々といった感じで様子を見に来るあたりさすがトップチームといったところか。

だったら少しくらいその余裕にあやかっても文句は言われないだろう。

 

「帝さん。一本だけ勝負してくれませんか?」

「大丈夫なのか?」

「あと一回くらいいけます。今の実力を確かめたいんです。」

「...いいぜ。俺も明日に向けて準備運動しなきゃいけないしな。」

 

こうして、俺と帝さんの一本勝負が始まった。

 

「それじゃあ行くよ?よーい...始め!」

 

彩葉の合図とともに戦いの火蓋が切られる。

俺は尻尾を八本目まで顕現させ、一気に距離を詰める。

 

「うおっ!前より速いな!」

「そりゃあ、特訓しましたから、ねっ!」

 

俺の剣戟を金棒で受け止めた帝さんは大きく後退る。

俺はすかさず尻尾のエネルギー体を伸ばして攻撃を仕掛ける。

この攻撃方法はまだ俺と彩葉しか知らない。そのはずなのだが、帝さんはすべて弾いてみせた。

 

「マジっすか...」

「伊達にプロゲーマーやってないんでな!」

 

今度は帝さんから距離を詰めてくる。金棒から刀身を引き抜き、銃撃で牽制しながらこちらに向かってきた。

ステータスはこちらが大幅に有利、専用攻撃だって駆使しているはずなのに、互角どころかこちらがやや押されている。

経験の差を思い知らされる。これがプロゲーマー、ブラックオニキスの帝アキラ!

 

「ふっ!」

 

やがて帝さんは後手に回っていた俺の銃剣をはじき飛ばし、銃口をこちらに向ける。

 

「チェックメイトだ。」

「...参りました。やっぱり帝さんは強いですね。」

「なあ、前も言ったけどさん付けしなくていいって。なんならお義兄さんって呼んでくれても...いてっ!」

「変なこと言わないでお兄ちゃん!///」

「さすがに知り合いの年上にタメ口はできないですって。あと付き合ってない人の兄をお義兄さんと呼ぶのも。」

「ちょっとからかっただけなのにそんなまじめに反論しなくても...」

 

最後ちょっと締まらなかったが、この一対一(タイマン)は帝アキラの勝利で幕を閉じるのだった。


 

ついにやってきた九月十二日。今日はかぐやの卒業ライブ。

そして、月のお迎えがくる日。

俺、彩葉、かぐやは三人そろって配信部屋で準備をしていたのだが...

 

「...え?」

 

かぐやがいない。ちょっと目を離した隙に視界から消えていた。

 

「「かぐや!」」

 

俺たちは焦った声でその名前を叫ぶ。

こんな突然...!?

 

「何?」

 

呼ばれた当人は机の下からヌッと出てきた。

俺たちは心から安堵する。

 

「ブレスレット落ちたから拾ってた。」

「良かった、急に連れていかれたのかと...」

「驚かさないで...」

「二人とも心配性~。彩葉、これあげる。」

 

そう言ってかぐやが差し出したのは今拾ったブレスレット。

 

「いいの?」

「彩葉には名前もらったから、そのお返し!万羽にもなにかあげたかったんだけど、思いつかなくて。」

「俺はいいよ。今までたくさんかぐやにもらってきたから。」

「そうなの?」

「そうなんだよ。」

 

かぐやが来てからというもの、毎日が楽しかった。俺の過去だって受け入れてくれた。これ以上はもらいすぎというものだ。

 

「さあ、もうそろそろ時間だぞ。」

「うん、行こう。かぐや、万羽。」

 

そうして俺達はツクヨミにログインする...

 


 

ログインすると、ヤチヨがライブ会場に案内してくれた。

 

「ここって...」

 

KASSENのフィールド内に特設ステージが作られていた。

 

「彩葉とヨロズの要望でね!」

 

どうやら二人がヤチヨに頼んでくれたらしい。

 

「私がヤチヨだったら二人のこと、もっと虜にできたのかな...」

 

そしたら二人に、ついてきてほしいって言えたのかな、と、思わずそう思ってしまった。

 

「ノンノン!かぐやじゃないとできなかった!かぐやなら全部大丈夫!ヤッチョが保証しちゃう!」

「...チョー無責任!でも、ヤチヨのそういうところ、嫌いじゃなかった!」

 

その言葉を聞いたヤチヨは、控室に一度戻るとのことでステージを離れた。


 

俺と彩葉はライブ会場の控室でかぐやの案内から戻ってきたヤチヨと話す。

 

「ただいま〜☆」

「おかえり、かぐやはどうだった?」

「喜んでたよ〜?燃える!って。」

「そうか、それはよかった。」

 

喜んでくれたのなら、頼んだ甲斐があったというものだ。

そう思っていると、

 

「...私がヤチヨだったら、かぐやも帰りたくないって言ってくれたのかな...」

 

突然、彩葉はそんな言葉を零す。予想していなかった言葉に少し戸惑ってしまった。

 

「あっ、ごめん。変なこと言った、忘れて。」

「彩葉、かぐやと一緒にここまでこれたのは酒寄彩葉だからこそだと俺は思う。もっと自信を持っていい。」

「万羽...ありがとう。」

 

そんなやりとりをしていると、『各所、準備OKです』というメッセージウィンドウが表示された。

 

「ヤチヨはここから先は行けないことになってるの...頑張ってね、二人とも。」

「...そういう運命だから?」

 

彩葉はちょっとヤチヨのような言い回しでそう質問する。

 

「二人なら大丈夫!」

 

ヤチヨはそんな、無責任だけどどこか前向きで、俺たちの知っているお姫様のような返しをした。

 

「彩葉、絶対に守りきろう。俺たちの日常を。」

「うん!」 

 

さあ、いよいよ決戦の時だ。

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