<本編完結>親友のお隣さん~万の羽が彩るハッピーエンド~ 作:白豆男爵
『何という急展開!突如ツクヨミに現れたフリーダム、超新星かぐやの卒業ライブ!最後のファンサだ!目に焼き付けろ!』
忠犬オタ公の涙交じりのアナウンスが会場を盛り上げる。
私の卒業ライブが今、幕を開けようとしていた。
「みんな、ありがとー!」
「今日でお別れみたいなんだけど、悲しくはしたくないんだ!みんなでお見送りして、ハッピーに卒業させて!」
次の瞬間、あの日のように曇天が広がり、そこから月人が出現する。
それに合わせて私の後ろから7つの桃が降ってきた。
桃から出てきたのは芦花や真実、ブラックオニキスの面々、そして彩葉と万羽だった。
『鬼アチー!! 超新星かぐやのラストライブに、かぐやのプロデューサー、いろP!美容インフルエンサーのROKA、グルメインフルエンサーのまみまみ!そしてかつて鎬を削った黒鬼こと、ブラックオニキスッ!最後の1人はかぐや・いろPの動画に最も多くゲストとして出演した、通称かぐやパパこと、ヨロズが駆けつけたァァァ!』
「俺の紹介だけ締まらないなぁ...」
「ライブの余興!かぐや、私達は私達で精一杯やるからさ、万が一勝っちゃったら、ドンキで買い出しして、パンケーキ作ろ!」
「万が一じゃねえ...だろ?」
「ああ、負ける気なんて微塵もない!」
「そうか...みんな、
私は満面の笑みを浮かべ、歌い始めた。
『どんな明日が来ても──ー笑えるように、今を生きてゆこう』
一曲目、『瞬間、シンフォニー』
その開始と同時に月人は攻めて来る。
残機の表示がある。
どうやらKASSENのルールに準じてくれるらしい。
それなら好都合!
俺は五本目まで顕現させ、尻尾の波状攻撃で月人のミニオンを殲滅する。
「俺が道を切り開く!続いてくれ!」
俺はその言葉と共に地を蹴る。
「速っ!気合入ってんな、ヨロズ!」
「私たちも行くよ!」
「ほな、久しぶりのキョーダイ会議と行こうか!」
「うわ、懐かし。」
俺に続いて酒寄兄妹が敵を蹴散らす。
さすがゲーマー兄妹だな。
俺は主力であろう月人のうちの一体目掛けて猛進する。
「ブースター、最大点火!」
剣のブースターの出力を極限まで高め、最高速度で月人の武器ごと首を切り裂く。
とにかく相手の残機を減らす。目指すは大将であろう菩薩型。周囲のミニオンを尻尾で殲滅しつつ主力に戦いを仕掛けていく。
かぐやの歌が、俺たちに力をくれる。戦う勇気が湧いてくる。
彩葉たちも後ろで戦っている。一番戦力が高いのは九尾化を使える俺だ。役目を全うしろ!
「「バッドエンドになんて、させない!」」
俺と彩葉は同時にそう叫ぶのだった...
かぐやの一曲目が終わった。
敵の主力の残機をすべてゼロまで減らした。
ここまでは順調だ。いや、順調すぎる。
未知の相手だ、何が起こるか分からない。
そう思っていると、月人の主力たちが変貌を遂げる。
今までは本気じゃなかったってのか!?
一方、かぐやはステージの仕掛けで服装を変え、天守閣の頂上へ。
『瞳映る静かな世界──何を見てたんだろう』
二曲目『Reply』が始まる。変貌を遂げた月人に次々と仲間を落とされていく。出し惜しみはしてられない!
俺は即座に八本目まで顕現させる。
その瞬間、菩薩型が俺の前に飛来する。
「大将のお出ましか。」
わざわざ来てくれるとは、上等。俺がお前を倒してこの戦いを終わらせる!
菩薩型は巨大な斧を取り出し、俺に向かって振り下ろす。
「ぐっ!?」
九尾化のバフ込みでこの重さ...腕が持っていかれる!
俺はブースターを点火して攻撃を抜け出す。
『この一瞬が最高のパーティーなんだ』
『なんと!たった今、ブラックオニキスの帝、雷、乃依のチート使用が確認されました!』
『Reply』のサビにはいると同時にそんな実況が聞こえる。
(準備ってチートのことだったのかよ!)
ゲームにおけるチートというのは古来よりご法度とされる行為だ。
ゲームを生業とするプロゲーマーがチートを使用などもってのほか。スポンサーからの信頼は地に落ちてしまうだろう。これからの生活に大きな影響を及ぼす。
逆に言えば、ブラックオニキスはそれだけの覚悟を持ってチートを使用しているのだ。
「こっちも負けてられないな!」
俺は会話の通じない月人に向かってそう宣言するのだった。
俺は尻尾をフル展開しながら距離を縮める。
その間にも綾紬、諫山、続いて雷、乃依が落とされる。
菩薩型の攻撃をかいくぐり、懐に潜り込む。
そして俺がまさに菩薩型に斬りかかろうとした直後、
「っ!」
くそっ、ここで限界が!
突然のめまいに襲われ、思わず動きが止まってしまう。
菩薩型はその隙を見逃さず、武器を大きく振り被って俺を真っ二つにした。
『Reply』が終了した。それと同時にかぐやの周りを月人が取り囲む。
勝てなかった。お兄ちゃんたちがチートまで使ってくれたのに、万羽が負担に耐えてまで戦ってくれたのに、その結末を変えることは出来なかった。
「待って...まだしたいこと...たくさんあるって...」
「そうだ、まだ終わりじゃない。」
「え?」
私の隣に、リスポーンしたばかりの万羽が立っていた。
でも、もうKASSENは終わってしまった。ここから一体どうするって言うの?
「ごめん、彩葉。」
彼はそう一拍置いたあと、満面の笑みで、覚悟を決めた顔で、顔に赤い文様を浮き出させながら告げる。
(待って、何をしようと...まさか!)
「駄目っ!」
「約束、破るわ。」
九本目の尻尾を、顕現させた。