<本編完結>親友のお隣さん~万の羽が彩るハッピーエンド~   作:白豆男爵

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やっぱ曇らせあってこそのハッピーエンドだよなぁ(悪魔の笑い)
曇らせからしか得られない栄養素は、あります!


力の代償

「行ってくる。」

「待って!かず...」

 

俺は彩葉が言葉を発しきる前に天守閣に向かって跳躍する。

目指すのはかぐやのいる天守閣頂上。

尻尾で周辺の灯篭型をすべて一掃。

かぐやを庇うように着地する。

 

「万羽!?なんで...」

「このまま諦めきれるか!」

「かぐやも、二人と一緒に居たいよ!でも、かぐやが、かぐやが悪いのっ!だから...!」

 

『もういい』とでも言いたいのか?

そう、仕事を放り出してきたのはかぐやの方。

月人だって仕事から逃げたかぐやを連れ戻しに来ただけだ。

どちらかといえば悪者は俺らの方なのかもしれない。

でも、でも...

 

「理屈じゃない!俺は、かぐやと一緒に居たい!こんなエンドじゃ、誰も笑えない!彩葉とかぐやの笑顔を失わせない!だから、たとえ正しくなくても、最後まで抗う!」

 

その言葉と共に尻尾を使って左右からくる中型を吹き飛ばす。

俺は即座に菩薩型に斬りかかるが、こちらのスピードに対応してくる。

(こうなったら、最大出力でぶち抜くしかない!)

ブースターを最大点火、目を閉じ、集中して剣を構える。

頭が痛い。少しでも油断したら気絶してしまいそうだ。

耐えろ、この体がどうなったっていい。かぐやと彩葉の笑顔を守るためなら、この命だって...

 

『駄目だよ。万羽。』

ふと気づくと、俺は真っ暗な空間に立ち尽くしていた。

そして俺の目の前に立っていたのは...

 

「叶...?」

 

もうこの世にいないはずの幼馴染、深海叶だった。

 

「どうして?それにここは...」

『ここから先は、駄目。それじゃあ、ハッピーエンドにならない。』

「叶...そうだよな。」

 

俺は言われて気づく。

 

「馬鹿だなぁ...置いていかれる側のつらさは、知っていたはずなのに。」

 

それは、俺が経験したつらさ。

中学生にして味わった絶望。

俺はその十字架を彩葉たちに背負わせようとしていたのだ。

 

「ありがとう、叶。」

 

俺がそう言うと、叶は笑顔を浮かべて消えていく。

現実に意識を戻す。俺は九尾化を解き、再度菩薩型に向き合う。

 

「さあ、真剣勝負だ。」

 

菩薩型も何かを読み取ったのか、斧を構えてこちらを見つめていた。

ブースターの炎は蒼く輝き、高音を響き渡らせる。

刹那、俺が踏み出し、剣と斧が交差する。

正義()正義()のぶつかり合い。それを制したのは...

 

「っ!」

「万羽!」

 

紛れもない、正義()であった。

ああ、くっそ。肝心な時に役に立たないなぁ、俺。

でも、最後くらい、笑ってお別れしなきゃな。

 

「ありがとう、かぐや。」

 

HPがゼロになった俺は最後に、笑顔で、その言葉を残し、リスポーンするのであった。

 


 

万羽が月人に敗れた。

最後の最後に九尾化を解き、真っ向から斬りかかり、敗北した。

 

「改めて、はるばるようこそ。逃げちゃってごめん。でも、すっごい、すっごい楽しかったんだ!」

 

そんな屈託のないかぐやの笑顔に、表情の変わらない月人も微笑んでいるように見えた。

そしてかぐやは足元に現れた光る雲に乗ってツクヨミの月へ向かって上っていく。

 

「最高の卒業ライブでした!いっぱいお土産もらっちゃった。みんなありがとう~!」

 

会場からはかぐやとの別れを惜しむ声が響く。

 

「えへへ、名残惜しいけど()()()()()()。」

 

そんな、私たちの願いを否定するような言葉。

かぐやの覚悟はもう決まってしまっていた。

 

「それから...彩葉、万羽。」

 

現実で、ぬくもりを感じた。かぐやが、私と万羽の体を抱きしめている。

待って、待ってよ...行かないで...

 

「大好きっ!」

 

かぐやは私たちだけに、その言葉を残した。

 

「バイバーイ!」

 

かぐやは羽衣を着せられ、月に帰るその瞬間まで、笑顔だった。

 

「...みんな、お疲れさまでした。本当にありがとう...先帰るね、ごめん。」

 

私はそう言ってログアウトした。

目を開けると、部屋の床にかぐやが身に着けていたものが落ちていた。

その有様が、私に現実を突き付ける。

かぐやの痕跡を確かめるように、家中を重い足取りで歩き回る。

 

「お金勝手に使うし。滅茶苦茶やるし。片づけないし。万羽にも迷惑かけて、ずーっと、邪魔だったよ。本当、最悪だよ。」

 

直後、スマホの通知が鳴る。かぐやからの入金の報せだった。

『使っちゃった分、返す!ご迷惑おかけしました』だなんて、

 

「...こんな大金、使えるかよ。馬鹿ヤロー...」

 

私はリビングの床に膝をつき、ただ泣きじゃくっていた。

 


 

リスポーン直後、俺は彩葉が心配だからとみんなに感謝と別れを告げてログアウトした。

彩葉はもう配信部屋には居ないようだ。

リビングの方から、すすり泣く声が聞こえる。

視界が揺らいでいる。

俺はおぼつかない足取りで、壁を伝うように彩葉のもとへ向かう。

かぐやがいなくなって彩葉は絶望の底にいるはずだ。

俺が、支えてあげないと。

だから、ここで倒れるわけには...

 

「いろ...は...」

 

限界が来た俺の体は、その言葉と共に床に倒れ伏す。

 

「万羽...?万羽っ!しっかりしてっ!」

 

約束破ったバチが当たったかな...

俺はそんなことを考えながら意識を手放すのだった。




九尾化最大解放の代償として脳へのダメージが深く、倒れてしまった万羽。一体どうなってしまうのか!?
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