<本編完結>親友のお隣さん~万の羽が彩るハッピーエンド~ 作:白豆男爵
初投稿作でこれは嬉しい限りでございます...
かぐやの見てきたものが、次々に流れ込んでくる。
八千年前に不時着したときの絶望。
病気で亡くなってしまった、初めて出会った男の子。
市営で値切られ続ける行商人。
墨で指を黒くしながら物語を書く文人。
かぐやに恋した歌人。
焼け跡になった街で花を売り続けた少女。
二人三脚で太夫を目指した花魁。
人は時に醜く争い、時に眩しいほどの輝きを見せる。
その中でかぐやは何度も何度も出会い、人を好きになり、別れを繰り返した。
やがて科学技術が発展し、人はワールドワイドウェブを作り出した。
かぐやは人と人がつながれる仮想世界を作ろうと思い至り、気づく。
『そっか、私が、ヤチヨになるんだ。』
CIA職員の協力のもと、宇宙船である『もと光る竹』を正倉院から盗み出し、それを直接ネットにつなぐ。
そうしてツクヨミを作り上げ、電子の歌姫として道を歩み始める...
「...葉、万羽!」
ああ、誰かが俺たちを呼ぶ声が聞こえる。
「彩葉、万羽!」
「はっ!」
「ヤチヨ...」
俺と彩葉は目を開け、今にも泣きそうなヤチヨの顔を見つめる。
「馬鹿、壊れちゃうよ...」
「心配かけたな...でも、これで追いついた、だろ?」
「うん。ヤチヨはもう、一人じゃない。」
「...ありがとう、二人とも。」
俺たちは三人で抱き合う。感じないはずのぬくもりを確かめるように。
「さて、ヤチヨ、一つ質問がある。」
「何?」
「ツクヨミから月に行くことは...可能か?」
「万羽、それ本気!?」
かぐやを救う一番シンプルな方法。それはかぐやを月まで迎えに行くことだ。
思いつく二つ目の方法は隕石の衝突を防ぐことだが、こんな方法よりもよっぽど現実味がある。
それに、月からツクヨミに干渉できるなら、逆だって理論上は可能なはずだ。
「多分、出来ると思う。
「それにヤチヨの話と照らし合わせれば、仕事の引き継ぎさえ完了させてしまえば月人はかぐやがいなくなっても問題ないはずだ。前回はこっちが抵抗したから強硬手段に出たのであって、交渉を持ちかけるくらいなら話も通じると思う。」
「そうだね。ヤッチョが引き継ぎのデータのコピーを持ってるから、それを渡せばかぐやを自由にできるはず。」
「万羽、これなら...!」
「ああ。月にさえ行く方法さえ確立すればかぐやにまた会える。ヤチヨに頼りっきりになっちゃうけどな...」
「それくらいヤッチョにお任せあれ!とりあえず二人は家に帰って休んで?さすがに心配。」
そうして俺と彩葉はヤチヨに一旦別れを告げ、帰路につくのであった...
ヤチヨから真相を告げられて数日後、みんなにもこの事実を共有するためにツクヨミにある屋外ミーティングルームに集まっていた。
「ヤチヨがかぐやちゃん...わかr...いやわかるかい!」
「これでわかるって言ってたらどうしようかと思いましたよ。」
「本当に...かぐやちゃん、なんだよね?」
「うん。久しぶり、芦花、真実!」
自分の推しが八千年を生きた姿がヤチヨであるという事実に脳を破壊されている帝さんの横で、ヤチヨは八千年ぶりに綾紬や諌山に再会できたことを喜んでいる。
俺と彩葉が八千年を追体験したという話はさすがにしなかった。
こんな話をしたらみんなに要らぬ心配をかけてしまう。
「それで?話ってのはこれだけじゃないだろ?」
「さすがお兄ちゃん。話が早くて助かる。」
「単刀直入に言うと、今俺たちは輪廻を巡る前のかぐやを救うための作戦を立ててます。」
「そんなことが可能なのか?」
雷さんがそう質問する。
「細かい内容はヤチヨが話すよ。あの後調べてみたけど、満月の日ならこっちからでもツクヨミと月を一時的につなげられるみたい。」
「満月...次の満月って...」
「確か十月十一日だ。」
「ただし、月に送れるのは恐らく万羽だけ。」
「えっ?どういうこと、ヤチヨ。」
彩葉の言葉とともに一同は少し困惑する。
「普通のアバターだと、強度が足りないの。月で活動すると、脳が不可に耐えられなくなっちゃう。」
「それがどうして万羽だけが月に行けるのに繋がるんだ?」
帝さんが疑問を投げかける。それは恐らく...
「俺が九尾化を使えるからか?」
「そうだよ。何度も九尾化という名のバグを意図的に使った影響で、万羽のアバターのプログラムが変化してる。今の万羽のアバターなら月に行っても活動できるはずだよ。」
「う~ん、専門的な話をされても私にはさっぱり~。」
「まあ要は万羽しかかぐやを迎えに行けないってこと。それだけわかれば大丈夫!」
「なら簡単な話だ。満月の夜、俺がかぐやを月まで迎えに行くだけだ。」
「なあ、助けに行くのはいいんだが、大丈夫なのか?その、タイムパラドックス?とかいうやつが起こったりするんじゃないか?」
『タイムパラドックス』、過去を改ざんすることで歴史が変わり、未来に影響を及ぼすという現象だ。
「確かに普通なら、かぐやが八千年前に行かなかった時点で矛盾が生じて、ヤチヨの存在が消えちゃうかもしれない。」
「でも恐らく、今俺たちは輪廻の外側にいます。言うなれば、前回のループから分岐しようとしている状態。ヤチヨの存在が消える可能性は低いと見ていいと思います。」
「そうか、何もできないのがちょっと悔しいが、任せたぜ万羽。かぐやちゃんを迎えに行って、必ず帰ってこい!」
「もちろん、絶対に助けます!」
今はまだ、結末を変えられていない。
ここで行動しなければ、きっとまた同じ輪廻が繰り返される。
もうかぐやに、八千年の孤独を味あわせたりしない。
俺は心の中で決意を固めるのであった。
キャラを集合させるとどうしても何人か空気になっちゃうんですよね…なんとかしたい。