<本編完結>親友のお隣さん~万の羽が彩るハッピーエンド~ 作:白豆男爵
書く順番がごっちゃごちゃですね。
かつてツクヨミに現れた超新星、かぐやの卒業ライブから約一か月。
ツクヨミのあらゆる掲示板には女性のシルエット画像と共に『Coming soon...』という文字が表示されていた。
そのシルエットはまさに一か月前に引退したかぐやに酷似しており、SNSでも反響を呼んでいた。
『かぐやちゃん復帰!?』
『さすがに早すぎない?まだ一か月だぞ』
『でもこのシルエットは間違いなくかぐやちゃんだろ』
と、かぐやの復帰を喜ぶ声と共に、あまりにも早すぎる復帰に疑問の声、そもそも期待されているような情報ではないのではないかといった声も見られた。
そして今日、ツクヨミ内の特設ライブステージにて、その復帰ライブが幕をあげた。
「かぐやっほ~!みんな来てくれてありがとー!」
その声はまさに、みんなが望んでいた声。曇りなき笑顔で、彼女は観客たちに感謝を告げる。
「月から帰ってきた、かぐやだよー!今日からまた、みんなといっぱい思い出作りたいから、応援よろしくねー!」
そんな挨拶と共に曲のイントロが流れる。
その曲名は『Reply』。
かつて卒業ライブで披露されたその曲は、かぐやの歌声と共に、フルコーラスで帰ってきた。
やがて曲が終わり、圧巻のライブに大きな歓声が上がる。
「今日はありがとう!この後配信するから、来てねー!」
歓声に包まれながらかぐやの復帰ライブは終了。その後のかぐやの復帰配信は多くの同接を記録した。
なお、かぐやはこの配信で盛大にやらかすこととなる。
「かぐやっほ~!改めて、みんな、ただいま~!」
『かぐやちゃんおかえり!』
『待ってたよ!』
コメントもかぐやの復帰を祝う言葉がすらすらと流れていく。
やがて視聴者の興味は一つのことに収束する。
『なんで一か月前、卒業しちゃったの?』
あまりにも唐突だった引退宣言。そして一か月で復帰。
こんなことはライバー界隈でも類を見ない異常事態である。
視聴者は喜びと共に疑念を抱かざるを得なかった。
「えーっとね、やらなきゃいけないことを放り出して家出しちゃってさ?それで帰らなきゃいけなくなっちゃって。強制送還的な?あのライブの後本当に帰っちゃったんだ。」
かぐやはその経緯を語りだす。この理由に関しては彩葉が用意した台本である。
別に月だのなんだのと本当のことを言ってもそういう話として受け入れられるとは思うが、念には念をという彩葉の考えだった。
「でも、ヨロズがかぐやのところに来てね?交渉してかぐやを連れ戻してくれたんだ。」
『かぐやパパが?』
『そこはいろPじゃないんだ。』
コメントは少し困惑する。そりゃそうだ。
かぐやを連れ戻したのはチャンネル関係者のいろPではなくあくまでゲスト枠のヨロズだというのだから。
「それはねー、事情があって、かぐやのところに来れるのがヨロズしかいなかったんだって。だからいろPの代わりにヨロズが来てくれたんだ。」
あくまでもかぐやは用意された台本を話す。
コメントの色んな質問も想定してそれぞれどのように返すのかきちんと書いてある。
『かぐやちゃんにとってヨロズさんってどんな人?』
かぐやの目についたのはそんなコメント。
このような質問に対する台本はない。だが、かぐやはそのコメントを拾い、語りだす。
「ヨロズはねー、優しくて、頼りになって、強くて、かぐやのことをちゃんと考えて怒ってくれる。本当にお父さんみたいな人だと思ってるよ。」
かぐやはいつものテンションが高い声ではなく、落ち着いた、でもどこか嬉しそうな声音で話す。
『ヨロズが公認パパになっちゃった...』
『まあ溢れ出てるよね。お父さんオーラが』
『かぐやちゃんの配信での父親ムーブといったらもう...』
コメントもヨロズのお父さんっぷりに脳を焼かれている。
『ヨロズとかぐやちゃんって付き合ってるの?』
突然、そんなコメントが流れる。
「えっ!?つ、付き合ってないよ!?あくまでヨロズは友達だから!」
『なんか反応が...』
『明らかに動揺してない?』
『まさか本当に...』
「ち、違うよ!だって万羽は彩葉と付き合って...あっ。」
その瞬間、かぐやは盛大にやらかす。万羽の本名を滑らせただけでなく、かぐやのプロデューサーであるいろPと、最も仲の良いライバーであるヨロズが交際していることを公にしてしまったのだ。
『あ、』
『本名...』
『え?』
『ヨロズといろPって付き合ってるの?』
『マジ?』
コメントも斜め上からの新事実に困惑の嵐だ。
『ヨロズ:かぐやさん、あとでお話があります。』
『あっ、本人だ』
『さん付けは本当にキレてるときのやつだ...』
ヨロズもコメントに現れ大パニック。
ちなみに現在彩葉はバイト中のため、このことを知るのはもう少し後である。
「と、とりあえず、今日の配信はこれでお終い!みんな、これからもよろしくねー!」
かぐやはその言葉と共にササっと配信を切る。
これからかぐやに待ち受けているのは万羽によるお説教である。
「かぐやさん、私は今本当に怒っています。何故だか分かるよね?」
「かぐやが万羽の本名と、万羽が彩葉と付き合ってることを言っちゃったからです...」
現在、私はリビングで正座をさせられています。
目の前にいる人物...万羽を本当に怒らせてしまったからです。
「本名に関してはこの際いい。いずれ口を滑らすときがくると思ってたし。でも、彩葉と付き合ってるのを公にするのは話が違うよな?」
「ご、ごめんなさい。でもでも、かぐやだってわざとやったんじゃないんだよ?」
「かぐやがわざとこんなことするなんて思ってないよ。常にこういう事態に気を付けて配信して欲しいって話だ。」
「うぐっ。でも、付き合ってるのは事実じゃん!」
「あのな、俺が心配してるのはこの事でかぐやたちの活動に影響が出るかもしれないってことだ。」
「どういうこと?」
「例えば芸能人同士が交際したとしよう。それを発表したとして、全員が好意的に受け取るってわけじゃない。好きな芸能人が交際したからそれが気に食わずに離れる人だっているし、交際を快く思わない人のせいで活動を妨害されることもあるかもしれない。ライバーに関しても同じことなんだよ。かぐや・いろPとしてのブランドに傷がつくかもしれない。だからこの事実は伏せておこうって話だったんだが...」
万羽はそんな考えを口にした。この選択も、すべては私たちのためを思ってのことだったのだ。
「...ごめんなさい。かぐや、そこまで考えてなかった。万羽はちゃんと全部考えて、言わないって選択をしてたんだね。」
「分かったならよろしい。大事なのは次から間違えないことだ。ほら、ライブと配信で疲れただろ?パンケーキ作ってあるから、二人で食べよう。」
「本当!?食べる!」
やっぱり万羽は優しい。さすが、彩葉は見る目あるなー。
彩葉がパートナーとして愛情をもらうなら、私は家族として、万羽にいっぱい愛情を注いでもらおう。
「へへっ、万羽、大好き!」
「俺もだよ、かぐや。」
だから今この時間だけは...万羽はかぐやのものなんだから。
万羽とかぐやの間は家族愛としての感情が行き来しています。
傍から見たら本当の父と娘みたいに見えるそうな...
芸能人交際云々は私の偏見も入ってるのでご容赦ください...