<本編完結>親友のお隣さん~万の羽が彩るハッピーエンド~ 作:白豆男爵
ちょっと曇らせあるので注意です。
そうして翌朝に目を覚まし、いつも通り学校の準備をする。
いつも通りじゃないことと言えば...
「えー!やだやだやだ、一緒いて!」
「無理、学校休めない!」
昨日までの出来事は夢ではないとばかりに酒寄の玄関からあの少女の声がする。
あいつ、家で大人しく出来るのか?
否、そうはとても思えない。しかし学校を休むわけにもいかない。
何とか折り合いをつけたのか玄関から出てきた疲れ顔の酒寄と共に学校へと向かうのであった。
ここまで重い足取りの通学があっただろうか...
「神崎、進路はまだ決められないか?」
「はい、すみません...」
俺は放課後職員室で担任の先生と話していた...進路についての面談である。
「まだ目標というか、やりたいことがあまり見えてこなくて...」
「いいんだ。高校生なら誰でもあることだよ。落ち込む必要はない。まだまだ時間はあるから、ゆっくり考えて行こう。」
「ありがとうございます...」
そうして会話を終えて俺は職員室を出る。
やりたいこと...そう思った瞬間、フラッシュバックする。
忘れもしない、あの日の記憶が...
・・・
『なんで...どうしてこんなことに...』
動かなくなった体を前に、俺はそう言葉をこぼす。
自分の無力さを呪う。守ると誓ったはずなのに。
どうして、どうして、どうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうして...
俺には...夢を語る資格なんて...
・・・
「...崎君。神崎君?」
「はっ。ど、どうしたんだ酒寄?」
しまった、話しかけられてるのに気づけないなんて...
久しぶりに思い出した。最近はあまりなかったのに...
「いや、私次進路指導の面談だから...ちょっと話しかけようと思っただけ。」
「あ、ああ。そうだったのか。すまん、ちょっとまだ緊張が取れてなくて、職員室って緊張するよな~ははは。」
そう言いながら顔を窓の方面へと逸らす。
誰にも知られるわけにはいかない。これは俺のせいでできた俺の傷。
特に、酒寄に心配をかけるわけにはいかない。
守りたい人に心配をかけたくないから。
「...ん?あれは。」
俺は見つけてしまった。顔をそらした先の校門で見覚えのある少女がこそこそしているのを。
あいつ、早速だな...
「どうしたの?神崎君?」
「いや、なんでもない。俺は先に帰っとくよ。バイトないし、あいつが何しでかすか不安だからな。」
「そうだね、お願い。」
そうして俺は酒寄と別れる。
教室にいた綾紬と諌山にも別れを告げ、一目散に校門へ向かう。
「おい、そこで何してる。」
俺は校門にいる我儘宇宙人に話しかける。
「あっ!万羽!やっと出てきたよ~。」
「なんでここにいるんだよ。酒寄に家から出るなって言われてただろ。」
「だって~、退屈なんだもん。」
「ほら、帰るぞ。俺はともかく、酒寄にばれたらどうなることか...」
「やだー、彩葉が出てくるまでここにいるー!」
めんどくせぇ~。まるで我儘を体現したような感じだ。
てか酒寄と同じくらいの背丈になってないか?
こういう時はより上質な餌で釣るのがいいんだろうが...
そういえば酒寄のやつ、粉と水のパンケーキを昼飯として置いていったとか言ってたな。
粉と水のパンケーキ...酒寄曰く画期的貧乏飯らしいが味、栄養、満腹度共に全く考慮されていない。
なるべく食べるのを控えさせるようにしていたのだが隙あらば節約しようとする酒寄にそうさせるのは中々難易度が高い。
ともかく、こいつをここから離れさせるには...
「なあ、酒寄が作った奴よりもっとおいしいパンケーキ、食べたくないか?」
「えっ!?何それ、食べたい!」
よし、釣れた。
口止めしておけばばれることもないだろう、多分。
「よし、それじゃあ俺が今から連れてってやるから。酒寄には内緒だぞ?」
「うん、分かった!彩葉には内緒!」
そうして俺はその宇宙人を連れてパンケーキを食べられるところへ向かうのであった...
「彩葉って進路どうするの?」
「音楽系でしょー?それかeスポーツとか?」
「そんな才能ないよ~。それに、最低限東大とか行かないと親が認めてくれなそうなんだよねー。」
「最低がそこ?厳しー。」
「私なんかでろでろに甘やかされてるなー。」
私は芦花と真実とそんな会話をしながら帰路を辿る。
今この瞬間も不安が付きまとっている。
あいつ、家で大人しくしてるといいが...
「こっちだよねー?」
「うん。彩葉おいでー。」
「あれ?今日何かあったっけ?」
「新しいカフェ。行くって約束したじゃん。」
「れっちご~。」
「あ、あはは~、後生ですから~。」
ごめん、神崎君。後は任せた...
私は心の中で謝罪しながら二人に連れていかれるのであった...
「んー!これがパンケーキ!?彩葉のと全然ちが~う。」
「ふう、なんとかなった...」
俺は新しくできたと噂のカフェで目の前のこいつにパンケーキを食わせていた。
後は酒寄が帰る前にこいつを家に連れて帰るだけ...そう思っていた矢先。
「うわぁ、きれいなカフェだね~。」
ん?今聞き覚えのある声が...
店の入り口の方を向くと、綾紬と諌山、そして酒寄がいた。
酒寄はもう完全に無の表情となっている。
「お?よっ、彩葉!」
「あれ?万羽君じゃん。そっちの子は?まさか彼女!?」
「ちげーよ!」
まずい、もうなんかハチャメチャだ。
やっぱりさっさと連れ帰るべきだったか。
「はっ!えーと...私のいとこ!隣の部屋だから、神崎君にも面倒見てもらってるの!」
現実に帰ってきた酒寄がすかさずフォローをいれる。
ナイス酒寄。
そして綾紬と諌山はしれっと隣のテーブル席に座る。
これはいろいろと聞かれるぞ...
「ていうか彩葉の服着てるー。」
「パンケーキ好きなの?かわい~。」
「私、月から来たの!」
はい、やらかした。何言ってくれちゃってんのこの宇宙人。
ほら二人ともフリーズしちゃってるから。
「つ、築地!築地から来たんだよな!いやー、まだ自分の住んでるところもうまく言えないらしくてさーははは。」
いや、ちょっと苦しいかこれは?
「わー、おいしいお鮨屋さん教えて~。」
よし、何とかごまかした。
酒寄が静かに親指を立てる。
「そうなんだー、お名前は?」
あっ、そういえば名前ないぞこいつ。
ずっと少女とか宇宙人とかで呼んでた弊害が...
「か、かぐや!」
酒寄が咄嗟に名前を付ける。
「かぐや~、かわよ~!」
「かぐや?かぐやかぁ~えへへ。」
かぐやか。確かにぴったりの名前だな。
心なしかかぐや本人もうれしそうだ。
名前は最初のプレゼント...でもないな。名づけより先に子育てしてたわ。
そうして、酒寄たちがパンケーキを食べてる間もかぐやはずっと俺の財布の中身を貪っていた。
どんだけ食うんだよこいつ...
神崎万羽・・・身長168、体重58くらいの想定。運動神経は人並みにある。成績は中の上くらい。170の壁を越えられないため、170以上の人のことはちょっと妬ましく思っている。
万羽の介入により彩葉は無事パンケーキを食べられました。よかったね。