<本編完結>親友のお隣さん~万の羽が彩るハッピーエンド~ 作:白豆男爵
というわけで前回のバッドエンド√2を夢落ちにした回になります。
「...葉!彩葉!」
「はっ!」
ひどい、夢を見た。今は深夜の3時ごろだろうか。
体中を汗が伝い、パジャマはぐっしょりと濡れている。
万羽が仮死状態になって、それで...
「かずは...?万羽っ!」
意識がはっきりしていき、隣にいる万羽に思わず抱き着く。
彼の存在を、この手で確かめるように。
「うおっ!?大丈夫か?すごい魘されてたみたいだけど...」
「っ、夢で万羽が仮死状態になって、それで、私が...私がっ...」
「そうか、悪い夢を見たんだな。大丈夫、俺はここにいる。大丈夫だ。」
私は万羽に夢で見たものを語った。
万羽はずっと、話すのもままならない私の言葉を黙って聞いてくれた。
「怖かったよな。大丈夫、俺はいなくならないよ。彩葉を置いてくなんて、そんなこと絶対にしない。」
「うん、うん...」
万羽は私をそっと抱き返し、背中をさする。
私が再び眠りにつくまで、万羽はずっと私のそばに居てくれた。
夜中に目が覚め、廊下を歩いていると彩葉の苦しそうな声が聞こえ、思わず扉を開けてそばに駆け寄った。
魘されて目が覚めた彩葉は怯えた表情で夢の内容を語り、落ち着いたらまた眠りについた。
「仮死状態...か。」
眠りについた彩葉の横で、夢の内容について考える。
かぐやを守るとき、叶が俺を止めてくれた。
夢の中の俺はきっと、その静止さえも振り払ってしまったのだろう。
その結果、誰も幸せになれなかった。
結果的にあの日の選択は間違っていなかった。
「叶に感謝しないとな...」
きっとあの叶は、俺の無意識のストッパーが生み出した幻影なのだろう。
叶と過ごした時間が無かったら、あの絶望を味わっていなかったら、俺は迷わず自己犠牲を選んでいたと思う。
もちろん、あの出来事を肯定するわけじゃない。でも、あの経験があったから今があるのだ。
こんなに俺のことを思ってくれる
「俺、今とっても幸せだよ。叶。」
俺は一人、そうつぶやいた。
やがて時間が経ち、朝日が昇ってきた。
ドアが勢いよく開かれ、もう一人の同居人が現れる。
「おはよう、いろ...万羽?」
「しー。悪夢に魘されちゃったみたいでな。もう少しだけ、寝かせてやってくれないか?」
俺は左手で口に手を添え、静かにするように促す。
ちなみに右手は彩葉が握って離さないので使えないし、俺はここから動けない。
「分かった。おいしい朝ご飯作って待ってるね!」
そう言って親指を立てると、かぐやはキッチンに降りていく。
少しすると、彩葉が目を覚ました。
「ん...」
「おはよう、彩葉。今度はよく眠れたか?」
「万羽...?っっっ!?///」
彩葉は起きた瞬間、握っていた俺の手をバッと離す。
驚いてるとはいえ、ちょっと寂しいな?
「ご、ごめん!」
「いいって。さあ、かぐやが朝ご飯作ってくれてるから、行こう。」
そう言って移動しようとすると、彩葉が再び俺の手を握る。
「彩葉?」
「今日は、その...ずっとそばにいて?」
「...もちろん、仰せのままに。」
きっと、まだ不安が拭えないのだろう。
今日が土曜日でよかったなと、そう思うのであった。
「ひゅ~、朝からラブラブだね~、二人とも♪」
「からかうのはやめてくれ、ヤチヨ...」
モニターの向こう側からヤチヨが茶化してくる。
どうせかぐやから大体聞いてるくせに。
「ほらほら、今日の朝ご飯は特製サンドイッチだよ~。」
「おお、美味そうだな。」
「ありがと、かぐや。」
俺たちはテーブルに座り、かぐやの作ったサンドイッチを食べる。
いつも通りの朝。何気ない日常。
それこそが、今の彩葉に必要な物だろう。
やがて朝ごはんを食べ終え、俺たちは家で映画を見ることにした。
彩葉の体調を考慮して、見るのはファミリー向け映画にしたのだが...
「うおおおお!こっからどうなんの!?」
「かぐや、今いいところだから。」
かぐやが終始テンション上がりっぱなしだった。
昼ご飯を食べた後は、ヤチヨも含めて4人でパーティーゲームをした。
「おい!なんで俺ばっかこんな目に...」
「だって万羽強いんだもーん。」
「強い人を集中攻撃するのは定石だよね~。」
「ふふっ。」
彩葉も少しずつ笑顔が戻りつつあるみたいだ。良かった良かった。
まあそれはそれとして...
「俺ばっか狙うなー!」
いつかあの邪知暴虐のかぐヤチをぎゃふんと言わせてやる。
俺はそう決意した。
「じゃーん、今日の夜ご飯はオムライスでーす!今日はケチャップアートでみんなのツクヨミのアバターの顔をかいてみたよ!」
「...再現度高っ。」
まさかかぐやに美術の心得もあったとは。
あまりにも上手すぎる。食べるのがもったいないくらいには。
「上手すぎてちょっともったいなく感じるな...」
「やっぱりそう思うー?でもでも、味も自信あるからちゃんと食べて!あ、写真にはちゃんと収めてあるよ!」
「ほら、冷めちゃうから早く食べよ。」
「そうだな、いただきます。」
「「いただきます。」」
俺たちはそのオムライスをほおばる。
出てくる感想はもちろん...
「う~ま~!」
「うん、美味しい。」
「うまっ。」
である。いや、料理人の才能あるぞ、ガチで。
夢の内容を思い出させるから口には出さないが...
そしてオムライスを食べ終え、今日一番の関門が俺を襲う。
それは...
「万羽、そこにいるよね?」
「あ、ああ。ちゃんといるぞ。」
風呂である。
といってもさすがに一緒に入るわけにはいかないので、風呂の扉越しに待機している。
かぐやが一緒に入ればいいのでは?と折衷案を出してみたが、
「...万羽じゃないと嫌。」
「彩葉にフラれたーー!」
となってしまったのでこうなっているわけだ。
俺は今絶賛目を閉じて瞑想している。
こうでもしないとおかしくなってしまう。
だって今扉の向こうでは彩葉が...
「ふんっ!」
俺は自分の顔を殴る。煩悩を消し去るのだ、俺。
「だ、大丈夫?なんか鈍い音が...」
「大丈夫、自分を律しているだけだ。」
「なんか、ごめんね?わがままばっかで...」
「いいんだって。こういう時くらい頼ってくれよ。一応...彼氏だからさ///」
「う、うん。ありがと///じゃ、じゃあそろそろ出るから...」
「お、おう。」
そんなやり取りをして、俺は洗面所から出て、その扉を閉めて待機する。
着替えを終えた彩葉が出てくる。しばらくして寝る時間になったのだが...
「まだ、不安か?」
「うん、寝るまででいいから、一緒に居てほしい...」
「分かった。最後までとことん付き合うよ。」
彩葉の部屋に足を踏み入れる。その瞬間、ガチャリ、と後ろから音がする。
「あの、彩葉さん?なんで鍵を閉めて...むぐっ!?」
彩葉は突然、俺の唇に強引にキスをし、その勢いのまま俺をベッドに押し倒す。
彩葉が使っているシャンプーの甘い香りが鼻を刺激する。
「そばにいるだけじゃ、足りない。万羽がここにいるって...私が万羽のものだって、この体に刻んでほしい。言ったもんね?寝るまで付き合ってくれるって。」
「彩葉さん、それは揚げ足取りというやつじゃありませんか...?」
「問答無用」
「...分かった。いいよ。彩葉がしたいっていうなら、その思いに応えるよ。」
その夜、俺たちは体を重ねた。
はい、やりました。何がとはいいませんが。