<本編完結>親友のお隣さん~万の羽が彩るハッピーエンド~   作:白豆男爵

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意外ッ!それは突然の大人時間軸エピソード!

モブ研究員『俺、名前もらってもいいんすか?』
作者ワイ『ええで。』


モブ研究員の脳破壊日記

俺は神崎研究所の新任研究員、一之瀬葵だ。

女みたいな名前だけど、れっきとした男である。

神崎研究所は主にロボティクス工学を研究している。

俺がここに入ったのは至極単純で、就活中に見学しに来た時、ここの所長に一目惚れしたからだ。

凛々しく整った顔立ちもそうだが、なにより、目指す理想を語るときのあの熱意と表情に惹かれた。

ここまで芯の通った研究者は他にいるだろうか。

そう思った俺はこの研究所に入る決断をした。

厳しい就活を乗り越え、無事神崎研究所に就職。

 

「所長の神崎彩葉です。みなさん、これからよろしくお願いします。」

 

新しい所員である俺たちに丁寧に挨拶する所長。

そして次の瞬間、俺の初恋は音を立てて崩れ去った。

 

「副所長の神崎万羽です。前回の職場見学のときは不在で申し訳ない...彩葉ほど博識ってわけでもないけど、分からないことがあれば何でも聞いてください。」

 

所長と副所長が同じ苗字、よく見ればお互いの薬指には指輪がはまっている。

 

「ちょっと、謙遜はナシってこの前言ったじゃん。」

「いやだってその通りだし...」

「副所長に比べたら俺たちはまだまだですよ!」

「そうですって、もっと自信持ってください!」

 

謙遜する副所長を持ち上げる所員たち。

しかしその会話はもう耳に入っていなかった。

 

(さようなら、俺の初恋...)

 

だがこんなことでへこたれる俺じゃない。

所長の下で働けるというだけでも素晴らしいことじゃないか。

俺はそう決意を新たにするのだった。

 


 

研究所に入って数ヶ月、いろいろ分かったことがある。それは...

 

「万羽、あれ取ってくれない?」

「はいよ、あれね。」

新任一同(キッショ、なんで分かるんだよ...)

 

あの夫婦、距離感がおかしい。

いや、近すぎるとかじゃなくて、完全に結婚して10年以上経った熟年夫婦のそれである。

高2で付き合って大学卒業を期に...だから2年前に結婚?

この光景を見た後この話を聞いたときはさすがに嘘だろと思った。

でも先輩方は口を揃えて、

 

「そう思うよな。俺もそう思う。」

「でも嘘みたいな本当の話なんだよね〜...」

 

と言うもんだからきっと事実なのだろう。

そしてもう一つの衝撃の事実、それは...

 

「彩葉〜、万羽〜、雨振ってたから傘持ってきたよ〜!」

「ありがと、かぐや。」

「サンキュー。」

 

超有名ライバーのかぐやが普通に出入りしていることだ。

さすがに来るときは変装しているようだが、にしたってかぐやさんの突然の来訪にはさすがにビビった。

その他にも研究の出資者である、インフルエンサーのROKAやまみまみ、挙句の果てにはブラックオニキスの面々がやってくる。

一体どうなってるんだこの研究所は?

俺はとんでもない研究所に入ってしまったのかもしれない。

そう振り返りながら迎えた昼休憩。

俺は副所長に頼まれた資料だけでも渡そうと副所長室へ向かったのだが、そこには衝撃の光景が広がっていた。

 

「失礼します、頼まれた資料持ってきました...っ!?」

 

そこには副所長の膝の上で寝ている所長の姿があった。

 

「ああ、ありがとう、一之瀬くん。悪いけどそこの机の上に置いといてくれるかな?ご覧の通り身動きが取れなくて...」

「あっ、はい。分かりました。」

 

そう返事をして俺は机に向かう。寝顔でも所長の顔綺麗だな...写真に収めて家宝にしたいくらいだ。

 

「あっ、眺めるのはいいけど写真はダメね。」

「ナチュラルに人の心読まないでくださいよ...」

「いやぁ、なんか撮りたそうな顔してたから。」

「にしても、なんでこの状態に?」

「最近彩葉が頑張りすぎてたからさ、無理やりにでも休ませようと思って。」

 

いや、休ませ方がもう熟年夫婦なんですよ。

普通はそこから膝枕に派生しないんですよ。

 

「...つかぬことをお聞きしますが、副所長はこの研究所で何を成したいんですか?」

「どうしたんだい、藪から棒に。」

「いえ、無理にお答えしていただかなくてもいいんですけど...」

 

自己満足だって、見苦しい嫉妬だって分かってる。それでも、この人が所長の隣に立つのに相応しいのかどうかを自分の目で確かめたかった。

 

「副所長も、人気ライバーとして活動してたんですよね?だとしたら、その活動一本で生計を立てることだって出来たはずです。」

 

この研究所に入って知ったことだが、所長は『いろP』として、そして副所長は『ヨロズ』として活動しているらしい。

初めて聞いたときは驚いた。

名前は聞いたことある程度で俺はそっち方面の知識に富んでいるわけじゃない。

でも逆に言えばそれくらい有名人ってことなのだ。

 

「だからその、気になって...」

「...彩葉の夢を叶える手伝いをする。それが俺のやりたいことで、生きる意味だ。そのためにアバターボディを完成させたい...ってところかな?」

 

所長の手伝い?それってつまり...

 

「あくまでも他人のため...なんですね。」

 

ちょっと冷たい返し方だったかもしれない。

でも副所長は言い淀むことなく言葉を連ねる。

 

「うーん、ちょっと違うかな。俺はさ、彩葉や、かぐやや、ヤチヨの...大切な人の笑顔が見たいんだ。もちろん、世のため人のためってのもあるけど、それ以上に俺は俺のエゴで大切な人を助けたいと思ってる。」

「エゴ...」

「大切な人たちと共に笑顔で笑い合える未来をつくりたい。そのためだったら俺はこの人生を捧げられる。結局は巡り巡って自分のためなんだよね、多分。」

 

...正直、感服した。この人は本当に、自分にとって大切な人たちのために何かを成すことを生きる意味としているのだろう。

所長と同じくらい、理想に対してまっすぐな人だと思った。

 

「なんか、副所長に対する印象が変わった気がします。」

「そう?まあ俺も自分を見つめ直すいい機会になったよ。」

「質問、答えていただいてありがとうございました。それでは、失礼します。」

 

俺はそう言ってその部屋を出た。

 

(勝てるわけないだろ、あんなの...)

 

俺は心の中でそうつぶやく。でも不思議と悪い気はしなかった。

そう思っていると廊下の向こう側から誰か走ってくる。

いや、廊下を走る人なんて基本的に一人しかいないけど...

 

「あっ、葵だ!」

「かぐやさん、どうしたんですか?」

「彩葉たちにお弁当持ってきた!まったく、2人揃って忘れちゃうんだから〜。」

「あははっ、それは大変ですね。」

「葵、なんか変わった?」

「そうですか?あまり実感ないですけど...」

「うん、初めて会った時よりいい表情(かお)してると思う!」

「うーん、聞きたいこと聞けてスッキリしたからですかね?あっ、所長たちなら副所長室にいますよ。」

「おっけー!行ってくる!」

「あっ、所長寝てるんで静かに入ってくださいねー!」

「分かったー!ありがと葵ー!」

 

やれやれ、相変わらず嵐みたいな人だ。

 

「さて、午後も頑張りますか...」

 

俺は来たる午後の研究に向けて気合を入れなおすのだった。




唐突にモブ研究員の脳を焼きたくなったので書きました。
ちなみにかぐやは普通に年取ってるので見た目は成長してお姉さんになってます。
なので葵は普通にかぐやにも敬語で話してます。
かぐやは意外とちゃんと研究員全員の顔と名前覚えてそう。
モブ視点で話進むのにナナシはあれかなと思って名前をつけました。ちなみになんもひねってません。なんとなくつけました。
葵『俺の名前適当なの!?』
作者ワイ『せやで』
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