<本編完結>親友のお隣さん~万の羽が彩るハッピーエンド~ 作:白豆男爵
文化祭2日目。
一般公開となるこの日は昨日よりも多くの人々が行き交っている。
そして昨日と変わらず、俺は挑戦券の門番としての務めを果たしていた。
この高校のOBも含めた大学生たちが主に行列に加わり、相変わらずの行列である。
昨日の飲食部門の売り上げはぶっちぎりの一位だったが、今日も今日とて大繁盛。
「くそっ!後輩にコテンパンにされるなんて!」
「綾紬さんとのツーショットがー!」
「あの向こうには一体誰が...」
「も、もう一回だっ!」
まあ、昨日に続いて負けなしである。
昨日と合わせたらかなりの人数が挑戦していると思う。
最初の方は自分がキルすると言わんばかりに挑戦者同士で争いが多発し、俺のもとに来る頃には残り4人くらいに減っていたのだが、このままでは勝てないとなったのか、今やほぼ全員が結託し、俺目掛けて猛進してくる。
それでも負けるわけにはいかないため、攻撃が敵同士で当たるように誘導したり、建物を使って1対1に持ち込んだりと、なんとか工夫して無敗を維持していた。
こんな状態でも列が止まないのだから、彩葉や綾紬たちがいかに人気であるかが分かる。
「さあさあ、ミリオネをキルできた人はまだいませんよー!」
「ぜひ参加してくださーい!」
諌山と綾紬の煽り文句に乗り、さらに行列が増える。
「俺も参加する!彩葉とのツーショットを撮るんや!」
「なんか聞き覚えのある声が...って、RANSENNに集中しないと...!」
俺は瞼を閉じてRANSENNに入り、挑戦者たちをなぎ倒していた。
「いや~、商売繁盛ですな〜!」
「真実の戦略ぶっ刺さりだったね。」
「挑戦券、大人気だったもんね〜。」
「俺はめちゃくちゃ疲れたけどな...」
「よくぞ真実を守り切った万羽。褒めてつかわそう。」
2日目の文化祭も無事乗り切り、現在は後片付け...というわけではなく、後夜祭の準備をしている。
「じゃあ俺は向こうにこの荷物運んでくるわ。」
「うん、また後でね。」
俺はそう言って彩葉たちといったん別れる。
こうして見ると生徒たちが楽しそうに色んな出し物を準備している。
辺りを見回していると、見覚えのある人がこちらに歩いてきた。
「あれ、雷さん?来てたんですね。」
「ああ、万羽。リーダー経由でな。リーダーもRANSENNに参加しようとしていたみたいだが、さすがに騒ぎになるだろうから止めておいた。」
「あはは、雷さんも大変ですね...」
カーテンの向こうから聞き覚えのある声が聞こえたと思ったらそういうことだったのか...
高校の文化祭に帝アキラが来たとなったら大騒ぎ間違いなしだろうしな。
ナイス雷さん。
「ルナさんも、文化祭楽しめましたか?」
『はい、画面越しでも熱気に包まれているのが分かりました。』
雷さんのスマホ越しにルナさんと会話する。
あのRANSENN以降、ルナさんは定位置のごとく雷さんのスマホに入り込んでは旅行の景色を共に楽しんでいるらしい。
なお、この距離間で恋の気配など一ミリもない様子に朝日さんはヤキモキしてるみたいで...
「なんであれで付き合ってへんのや...」
とたまに愚痴をこぼしている。
「俺はリーダーと乃依を連れてもう帰るところだ。万羽たちはこれから後夜祭だろう?楽しむといい。」
「はい、雷さんとルナさんもお元気で。」
別れを告げると雷さんはスタスタと歩いていった。
歩きながら雷さんとルナさんは楽しそうに会話している。
うーん、まあ朝日さんの言わんとしていることも分からんでもない...
俺は荷物運びを再開し、目的の場所まで運び終える。
俺が運んでいたのはライブ設備の一部。
なにやらゲストを呼んでライブを行うらしいのだが、一体誰なのだろう?
そんな疑問を抱きつつ俺は彩葉たちのところへと戻るのだった。
後夜祭が始まり、ダンス部や軽音部のパフォーマンスで会場は大盛り上がりとなっていた。
そうして進行役の生徒会役員のアナウンスが入る。
『さて、次はお待ちかねのゲストライブです!』
「お、ようやくだね~。」
「ゲストって誰だろ~?」
「うーん、分からんな...彩葉はどう思う?...あれ?」
「いないね、酒寄さん。」
彩葉の意見を聞こうと思ったのだが、気づいたら彩葉はいなかった。
さっきのパフォーマンスは一緒に見てたのに、いつの間に...?
「お手洗いとかかな?」
「彩葉が何も言わずにいなくなるかなー?」
取り残された俺たちはちょっぴり不安になっていたのだが、その不安は杞憂だったと知ることになる。
なんなら次の瞬間の衝撃がその不安を吹き飛ばした。
『それでは、ゲストのご登場です!』
「かぐやっほ~!月からやってきたかぐやだよー!」
「な˝っ˝!」
「あれ、かぐやちゃんだー!」
「ゲストってかぐやちゃんだったんだね~。あっ、彩葉もいる。」
幕が上がり現れたのはまさかのかぐやであり、その後ろには狐の着ぐるみが立ち尽くしていた。
彩葉、かぐやの押しに負けたな...
大人気ライバーの登場により会場の生徒たちは沸きあがっている。
「みんな盛り上がってるねー!じゃあこのお祭りをもっと盛り上げるために、早速歌いまーす!」
そしてかぐやは『私は、わたしのことが好き。』を歌い始める。
即興のライブステージとは思えないほどの音響と美声を響かせ、観客を圧倒する。
「やっぱりかぐやちゃん歌うまいねー。」
「ああ、そうだな。それはそれとしてなんでここにいるのかは後で問い詰めるけどな?」
「まあまあ、今は楽しもうよ~。」
やがて曲が終わり、拍手と歓声が巻き起こる。
「ありがとー!あともう一曲歌うんだけど、せっかくだし誰かに一緒に歌ってもらおっかなー。」
かぐやは突然そんなことを言い出す。さりげなく俺の方に視線を向けながら。
おい待て、それは話が違うぞ...?
「と・い・う・わ・け・でー...そこの君!一緒に歌って?」
かぐやは今ランダムで選んだかのように俺のことを指名する。
こいつ、最初からその気だったな...
観客からもコールが巻き起こり、その雰囲気から俺は拒否などできるわけもなかった。
「行ってきます...」
「「「行ってらっしゃーい。」」」
無慈悲な3人の言葉を背中に受け、俺はステージへと向かった。
「後でじっくり話を聞かせてもらうからな...!」
「まあまあ細かいことはいいじゃん!コラボ歌枠で一緒に歌ったことある曲だから大丈夫だって!」
「こうなったら道連れだよ、万羽...」
「彩葉まで...」
「それじゃあ聞いてください!『かいしんのいちげき!』」
こうして強引なかぐやの策にはまり、俺はかぐやと共に歌い出すのだった...
彩葉はかぐやの押しに負けてライブステージ関連をいろいろ根回ししていました。