<本編完結>親友のお隣さん~万の羽が彩るハッピーエンド~ 作:白豆男爵
神崎研究室、その一角。
昼休憩に入ると所員たちはある二人組についての談議に花を咲かせている。
もちろん、言うまでもなく神崎夫妻についてである。
あっ、こんにちは。2話ぶりの葵です(メタい)
「やっぱ所長って顔いいよね〜。眺めるだけで寿命延びるわ〜。」
「それで言うと副所長も結構イケメンだよね~。顔もだけど、特に性格が。」
「分かるわー。俺なんて、この前資料の束運んでたら副所長がスッって隣からちゃっかり七割分持って歩いていったからな。」
「うわっ、何そのエピソード、イケメンすぎ...」
「あれは所長と同じ天然人たらしだよ。さらっとイケメン行動をとって人を惹きつけては、向けられる好意に全く気付かずに笑顔を振りまくあの人はまさに鈍感クソボケと呼ぶにふさわしい。」
いささかテンションが高いように見えるが、いつもこんな感じだ。
まあ、あの日脳を焼かれた俺も人のことは言えないんですけどね。
「先輩方、花咲かせてますね。」
「あっ、葵くん。もうルーティーンみたいなものだから...葵くんも混ざる?」
「あはは、僕でよければぜひ。」
きっとここの所員はもれなく全員あの二人に脳が焼かれていることだろう。
ここにいてあの二人に狂わされない方がどうかしている。
「あの夫婦眺めてるだけでストレスが嘘みたいになくなってくんだよね。」
「今の熟年夫婦っぷりもいいけど、かぐやちゃんの言う付き合いたての初々しいころも見てみたかった感はあるんだよな...」
「なにそれ、見たみたいですね...」
あの二人が付き合いたての頃とか想像できないな...
「いやー、リアルもいいけど、やっぱライバー活動の方も目が離せないよねー。」
「あっ、それ僕気になります。そっち方面あんまり詳しくなくて...」
「おっ、これは布教チャンス!」
「これを機に葵くんももっと沼に沈もうじゃないか。」
先輩たちは目をぎらつかせる。
ちょっと怖いけど、きっとそれだけの熱意をもって推してるんだろうな...
「まずはなんといってもかぐや・いろPでしょ!」
「だよねー。かぐやちゃんのその破天荒っぷり!そしてその我儘に振り回されつつもお願いを聞いちゃういろPが可愛いんだなぁこれが。」
「うわぁ、目に浮かんできますね、その光景。」
「そしてかぐやちゃんは歌がうまい!あの天真爛漫なお姫様から発せられているとは思えないほどの美声!」
「あの卒業ライブの『Reply』、メチャクチャよかったよな。今でも見返すもん、俺。」
「分かる、あれからもう8年も経ってるんだもんねー。それでも色あせない歌声と人気!さすがかぐや・いろP!いろかぐてぇてぇ!」
その思いのたけを語る先輩方の目には確かな熱意がこもっていた。
所長はかぐやさんのプロデューサーとして活動し、多くの人々を虜にしていったのだろう。
まったく、罪な女性ですよ。うちの所長は。
「さすが、所長は凄いですね...」
「ふっふっふ、まだまだここからだよ葵くん。次は副所長ことヨロズについてだよ。」
「ヨロズはなんていうか...安心するよね。」
「ああ。お父さんって感じだ。」
「お父さん...?」
確かに副所長は優しいし、気遣いできるし、分からないことを聞いたら丁寧に教えてくれるし...あれ?意外とそうかも?
「まずなんといっても、あの人、自分の配信よりかぐやちゃんの配信に出ることの方が多いんだよ。準レギュラーレベルの出演量で、付いた通称がかぐやパパ。」
「ええ...?」
「てかなんで研究の片手間にちょくちょく配信しながらかぐやちゃんの配信にも出てるのあの人?」
「かぐやちゃんのお願い、断れないもんなあ副所長。」
「構図が完全に父と娘なんだよねー...」
なにそれ、めっちゃ気になる。
帰ったらアーカイブとか見てみよ。
「かぐやちゃんとの絡みもいいけどー、私的にはヨロズ単体の配信もいいと思うんだよね!私の一押しは雑談配信。」
「分かるわ~。チルったヨロズの声、落ち着くっていうか、こう、心に刺さるんだよな。」
「私は歌も好きだけどなー。落ち着いた曲調の歌が似合うんだよねー。」
「なるほど...でも、確かもともとゲームの配信がメインだったんですよね?それは朧気に聞いたことがあります。」
「そう!そうなんだよ!最初はSETSUNAの配信者としてやってたんだよ。」
「あの人普通に強いからなー...前に副所長も誘ってみんなでSETSUNAやってたんだけど、一回も攻撃当てさせてもらえなかったんだよな。」
「7年前からかな?急に日本刀握りだして覚醒したよね。静と動の使い分けが経験者のそれっていうか...」
「日本刀と銃剣とかいうイカれたスタイルを使いこなせるのはあの人だけだよ...」
「あんまり想像つかないですね。温厚な副所長が刀握って無双してるの。」
「そうそう、あの日本刀の名前知ってる?彩に狐って書いて【彩狐】っていうらしいよ?」
...露骨すぎないか?
誰を想って作ったのか容易に想像できる。
「SETSUNAプレイヤーの中でもかなり上位らしくて、一対一なら帝アキラとも互角って噂だよ。」
「あの人攻撃よけたり受け流すの異様にうまくて...的確に攻撃を刺してくるんだよね。」
「へー、気になりますね...」
「お、興味津々だねー、葵くん。」
「ようこそこちら側へ。」
そうして俺たちがワイワイと話していると...
「うぇーい、みんなお疲れ~。」
副所長がやってきた...のだが、様子がおかしい。
なんというか...酔ってる?
「ふ、副所長...?」
「おー、一之瀬くん。先輩とも仲良くやれてるみたいでよかったよー。」
「この雰囲気...まさか!」
「あー!あの机の上のチョコ、ウィスキーボンボンだ!」
「誰だアルコール入りのチョコを持ってきたのは!」
「あっ、それ俺です。もしかしてまずかったですか...?よければ皆さんにと思って...」
「じゃあ言ってない私たちが悪いね!ごめん!」
「くそっ!もっと気をつけろよ
「大事なところだけ鈍感なんだから
「ええ...?」
「ほっ。」
俺が事態も分からず困惑していると、突然副所長の背後から所長が現れ、手刀を喰らわせた。
恐ろしく速い手刀。俺でなきゃ見逃しちゃうね。
「ごめんねー、
「な、何だったんだ...?」
「副所長、めっちゃ酒に弱いの。普通のビールとかでも一発ノックアウトらしいよ。」
「弱すぎません!?」
「今はアーカイブ非公開だけど、雑談配信でアルコール入りチョコを食べて暴走した回もあったよ。」
「だからアルコール入りの何かしらは十分に気を付けないといけないんだよねー...最初に言うべきだったわ。ごめん。」
「は、はい...次からは気を付けます...」
こうしてヨロズといろPの魅力、そして副所長の意外な弱点?の発見と共に昼休憩の時間は過ぎ去っていくのだった...
所員たちの脳焼きエピソード第二弾でした。
マジでネタがねぇ...おいらはそんなキラキラした青春送れてねえんだ...