<本編完結>親友のお隣さん~万の羽が彩るハッピーエンド~ 作:白豆男爵
ちょっとしたひとときのおとぎ話...
高校2年生の夏の日の朝、私は万羽と一緒に学校に登校していた。
「彩葉、この前の期末試験も学年一位だったな。さすがだよ。」
「ありがと。でも気を抜けないよ。油断してるとこの立ち位置が脅かされる...」
そう。私、酒寄彩葉には鎬を削るライバルがいる。
その人物とは...
「いーろはっ!おはよ!」
「わっ、叶!?」
「おお、おはよう、叶。」
「万羽もおはよ!」
万羽の幼馴染である、深海叶だ。
万羽と私は同じアパートの隣の部屋に住んでおり、実家住まいの叶もちょくちょく万羽の家に遊びに来るため、自然と仲良くなっていった。
彼女もまた成績優秀で、なんとか学年一位を維持しているが、こっちも追い抜かされないように必死なのだ。
「この前の期末試験も負けちゃったな~。でも次は負けないから。覚悟しててよ?彩葉。」
「こっちも譲る気はないから。次も私が勝つよ。」
「「ぐぬぬぬぬ...!」」
「仲がよろしいことで...」
そうしてバチバチの雰囲気の中、学校へと向かうのであった。
時間が経ち、昼休み。
私は万羽と叶に加えて、芦花と真実と共に昼食を食べていた。
「彩葉は学年一位、叶は学年二位か〜。私には縁のない世界だよ〜」
「二人とも可愛い上に天才すぎ〜」
「か、可愛いは余計じゃない...?私なんて叶に比べたら全然...」
「もっと自信持ちなって。彩葉はこの深見叶が認める美少女ライバルなんだから。」
「なにそれ、聞いたことないんだけど。」
「うん、だって今作ったもん。」
「そうですか...」
「ねえねえ、万羽は私と彩葉、どっちのほうが可愛いと思う?」
「か、叶!?」
急に何を聞いているんだこの女は。
こういうのってこんな軽いノリで聞くものなの?
「うーん、俺からしたらどっちも同じくらい可愛いと思うけどな〜...」
「///」
「強いて言うならどっち!?」
「ええ...?俺には決められないよ。あっ、飲み物なくなった...ちょっと買ってくる。」
そう言って万羽は席を立ち、教室を出ていった。
私は赤面しながらも、教室を出ていくまでの万羽をしばらく眺めていた。
「私のこと可愛いだって。もっと好きになっちゃいそう〜」
「ちょっと、何勝手にアテレコしてんのよ、叶。」
「えー、だって実際満更でもないでしょ〜?」
「そ、そうだけど///今のは叶がそう思ってるだけでしょ。」
「あっ、バレた?」
「叶の考えなんてお見通しだから。」
「はっきりしてないのは癪だけど...可愛いって言ってもらえたし良しとしようかな。」
この反応でお察しの通り、私も叶も万羽のことが好きだ。
もちろん、異性として。
私たちは成績を競い合うライバルであると同時に、恋のライバルでもあるのだ。
叶の恋愛事情に関しては詳しく聞いたことはないけど...幼馴染だし、きっと何かきっかけがあったのだろう。
私のきっかけは、バイトの過労で倒れたところを助けてもらったあの日。
あの日から万羽の優しさに当てられ、気づいたら彼を意識するようになっていた。
「相変わらず天然で鈍感だね〜、万羽君。」
「ある意味難攻不落だ〜、二人とも頑張りなよ〜?」
「さすがにこっちの勝負は私のほうが有利かな〜。なんといっても幼馴染だし。」
「わ、私だって万羽のお隣さん...だし。」
我ながら苦しい負け惜しみが出てしまった。
「...ぷっ、あはははは!」
「ちょっと、そんなにおかしかった!?」
「だって、拗ねて意地張ってる彩葉が面白くて...ひひっ、つい...あははっ!」
「も、もう...!」
「なんだかんだ仲良しだねー、二人とも。」
「だね〜。」
「ただいま〜...何があったんだ?」
こうして笑いのツボに入った叶と、それを見て困惑している万羽、完全に傍観者モードの芦花と真実との昼休みの時間は過ぎていくのだった。
放課後、万羽はバイトのため一足先に帰宅。
私は叶と一緒に下校していた。
「ねえねえ、恋バナしようよ、恋バナ。彩葉は万羽のどういうところが好きなの?」
「な、何急に...」
「いいから聞かせてよ〜、絶対誰にも言わないから!」
叶は鬼気迫る勢いで質問してくる。
これは答えないと逃げられなさそうだ。
「え、えっと...誰にでも優しいところとか、かっこよくて頼りになるところとか...」
「ふんふん、なるほどね〜。」
「そ、そういう叶はどうなのよ?」
「私はね〜、困ってる人のために全力を尽くしてくれるところ。私、中学の頃いじめられてて、そんな私を見かねて、万羽は嫌がらせとかをなくすために奔走してくれたの。そのときは本当にうれしかったんだ。」
「へえ、そうなんだ。初耳。」
叶って常に優等生で誰にでも人気な印象があったから少し意外だな。
「もともと好きだったけど、そこからもっと好きになったんだ。彩葉は?何かきっかけとかあったの?」
「わ、私はバイトの過労で倒れたところを万羽に介抱してもらったの。それから万羽は一層私のこと心配してくれたり、助けてくれて...」
「へぇ~。」
「...私を気にかけて、優しくしてくれる。そんな万羽が私は好き。だから、叶相手でも譲るつもりはないよ。」
私は堂々と宣言する。
叶はそんな私を見て、静かに笑った。
「ふふっ、万羽想いで一途ないい人捕まえたみたいだね、万羽は。」
「えっ?」
「あーあ、こんなに楽しい日常が送れるなら、もうちょっと生きてみてもよかったかな〜。万羽や彩葉、芦花と真実と過ごして、彩葉のライバルとしてぶつかり合ってさ...」
叶は急にそんなことを語り出す。
「何を、言ってるの...?」
「でも、私はもういないから。
やがて私たちはT字路に辿り着く。
叶とはここで別れる...のだが、ここで別れたら二度と会えなくなってしまうような、そんな気がした。
「じゃあね、彩葉。私はこっちだから。」
「ま、待って叶!」
「ダメ。ここから先は彩葉は行かせられない。彩葉が進むのは、あっち。」
叶はそう言って私の帰路の方向に指をさす。
そして叶は反対方向に歩みを進めながら、笑顔でこう言い放った。
「万羽のこと、よろしくね、彩葉!」
そんな言葉を最後に、私の意識はぷつりと途切れるのだった。
ピピピ...
「ん...」
私は携帯のアラームで目を覚ます。
「ゆ、夢...?」
妙に現実味のある夢だった。
今でも鮮明に内容を思い出せる。
最後の会話、叶さんはすべてを理解してるような雰囲気だった。
私の夢に化けて出てきたのか...?
叶さんがもしも生きていたら、こんな世界もあったのかもしれない。
「...託されちゃったな。万羽のこと。」
私はポツリと呟きながら自室の扉を開けるのだった。
もしも深見叶が生きていたら、というif√でした。
万羽の努力の結果、深見叶は嫌がらせから解放され、無事、華の高校生活を送ることができました...というifです。
なぜ彩葉の夢に出てきたのかは、単純に万羽の彼女である彩葉がどういう人なのか気になったんでしょうね。