<本編完結>親友のお隣さん~万の羽が彩るハッピーエンド~ 作:白豆男爵
彩葉の誕生日って最初は1月68日=3月9日だと予想してたんですけど、深読みしすぎましたね。
ー2031/5/11ー
「じゃあ、バイト行ってくるね」
「おう、行ってらっしゃい」
「行ってら〜」
『彩葉頑張ってね〜』
昼下がり、俺たちはそう言って彩葉を送り出す。
そして次の瞬間、顔を見合わせ...
「行ったね?」
『うん、ちゃんと行ったよ』
「よし、それじゃあ...」
「「『準備開始!』」」
俺たちは各々で準備に取り掛かる。
何を隠そう、今日は彩葉の誕生日だ。
記念日にもバイトを入れているのは相変わらずと言うべきかなんというか...だが今は都合がいい。
彩葉がバイトに行っている間に誕生日パーティーの準備を決行する。
かぐやは料理に取り掛かり、ヤチヨは綾紬や諫山、朝日さんたちを召喚、俺は部屋の飾り付けを開始する。
「せっかくこっちに残って彩葉の誕生日を迎えられたんだから、かぐや張り切っちゃうよ〜?」
かぐやはそう言いながら次々に料理を作り上げていく。
俺たちが連れ戻さなければかぐやはこの記念日を迎えることはできなかった。
だからこそ、いつにもまして張り切っている。
「俺も頑張るか!」
俺はその様子を見てより一層気合を入れる。
こうして準備をしていると、去年のこの日を思い出す。
かぐやが来る前の高校2年生の彩葉の誕生日。
しかしそれを知ったのはその日から1週間前の話だった。
・・・
「ねえ万羽君、彩葉の誕生日っていつか知ってる?」
「あー...そういえば知らないな。いつなんだ?」
「やっぱり彩葉は言ってないか〜。もっと早く言うべきだったかな...実はね、1週間後なんだよ、誕生日。5月11日」
「...マジで?」
「「マジで」」
・・・
さすがの彩葉といえど、誕生日くらい近くなったらカミングアウトすると思っていたので、そこからは急いで準備をしたものだ。
そのため、去年は割と簡素なものになってしまったが、今年は違う。
記念日が事前に分かっている。かぐややヤチヨ、朝日さんたちも加えて、偉大に祝ってやろうじゃないか。
そう思っているとインターホンが鳴る。
ドアを開けるとそこにいたのは綾紬と諫山だった。
「来たか、綾紬、諫山」
「おつかれ、万羽君」
「おじゃましま~す」
「いらっしゃい!芦花、真実!」
「わ〜、美味しそうな料理がいっぱいだ〜!」
「フッフーン、そりゃあこの日のためにずっと前から準備してましたから!」
かぐやはこの日のために彩葉にバレないように少しずつ料理の下準備を進めていた。
時々怪しまれることもあったけど、うまく誤魔化せてるはずだ、多分。
「こんなに準備して、よくバレなかったね?かぐやちゃんとかすぐ顔に出そうだけど」
「そこはなんとか誤魔化したから大丈夫!」
『ちなみに、かぐやも万羽も誤魔化すのだいぶ下手くそだったよ?』
「え、俺も?」
『だって万羽、嘘つくとき明らかに挙動不審になるもん。声もうわずってるし、見てて丸分かり』
「まあ万羽っち嘘つけなさそうだもんね〜、性格的に」
「あれ?もしかして彩葉にバレてる?」
『多分何かしら計画してるのはバレてるんじゃないかな〜?』
マジかよ、上手く隠し通せてると思ってたんだが...
「せっかくサプライズパーティーにしようと思ったのに...」
「でも、ここまでの規模は想定してないんじゃない?」
「そうそう。予想を上回るサプライズで驚かせちゃえばいいんだよ!」
「さすが芦花と真実、それだ!よーし、俄然やる気出てきたー!」
「うん、そうだな。ありがとう。パーティーの準備、手伝ってくれるか?」
「「オッケー!」」
そして俺たちは準備を再開する。
やがて朝日さんたちも到着し、ついにその時間は訪れた。
「ただいま〜...あれ?」
私はそう言いながら玄関のドアを開ける。
普段ならかぐやがドタドタとこちらに向かってくるのだが、今日はそうではないらしい。
少し疑問に思いつつも、私はリビングへ続く扉を開く。
すると...
パアン!
「「「「「「「『誕生日おめでとう!』」」」」」」」
「...えっ?」
盛大なクラッカーの音とともに、祝の言葉が私を出迎えた。
「そっか、今日って私の誕生日...」
「また忘れてたの?もう、彩葉ったら...」
「じゃあ、これからはかぐやたちが毎年、忘れないくらい盛大に祝ってあげる!」
飾り付けられたリビング、恐らくかぐやが作ったであろうたくさんの料理が目に入る。
かぐやと万羽が挙動不審だったから何かあるのかなとは思ってたけど、私のためにこんなに準備してくれたんだ...
「あ、ありがとう...」
「さあさあ、主役はこっちですよ〜」
「ほら座って座って〜」
私は芦花と真実に連れられ、言われるがままに席につく。
どこから持ってきたのか、かぐやが本日の主役と書かれたタスキを私の肩に掛ける。
「彩葉の誕生日を直接祝うのなんて小さい頃以来やなぁ。覚えてる?母さんが撮ったあの写真」
「あー、私の目が半開きで写ってたあれね。懐かし」
「母さん写真撮るの下手すぎひん?って子供ながらに思ったわ、あの時は」
お兄ちゃんと他愛もない思い出話をしていると、万羽がキッチンからケーキを持ってきた。
「どうだ?去年と違って念入りに準備したからな。喜んでもらえたならいいんだけど...」
「...うん、すっごく嬉しい!」
それからはたくさん並んだ料理を食べたり、みんなからプレゼントを受け取ったり、ツクヨミに入ってヤチヨとも一緒にお祝いして遊んだり、あっという間に時間は過ぎ去っていった。
夜も更け、後片付けも無事に終え、パーティーは解散となった。
「はー、めーっちゃ楽しかった!」
「この規模感のパーティーは俺も初めてだよ」
「ありがとね、私のためにこんなにたくさん準備してくれて」
「だって、彩葉はかぐやたちの大好きな人だから!来年も、再来年も、その先もずーっとやろうねっ!」
「...うん」
かぐやの楽しそうな表情に、彩葉は静かには微笑む。
彩葉の楽しそうな顔を見れて本当に良かった。
(こっちも喜んでもらえるといいけど...)
そう思いながら俺は懐に忍ばせている箱を握りしめる。
「じゃあかぐやお風呂入ってくる!」
「あ、うん。行ってらっしゃい...」
かぐやはそう言ってお風呂場へと駆けていく。
「頑張ってね、万羽!」
「お、おう...ありがとう」
俺の横を通るときに小さな声で耳打ちをしながら。
「一緒に入ろうって言わないなんて珍しい...疲れてるのかな?」
「あー、そ、そうなんじゃないか?」
「...どうかしたの?」
...我ながら緊張をごまかすのが下手くそである。
ヤチヨの言う事は本当だったらしい。
空気を読んでくれたかぐやのためにも、ここは勇気を振り絞ろう。
「彩葉」
「な、何?急に改まって...」
少し困惑気味の彩葉に、俺は懐から小さな箱を取り出して、その箱を開ける。
その箱の中身は、小さな指輪だ。
「少し早いかもしれないけど...俺と、婚約してくれませんか?」
「え...」
「高校卒業してすぐに式を挙げるってのは無理だ。でも、いつか必ず式を挙げて、正式に結婚したい。だからそれまでの約束の証ってことで...受け取ってくれるか?」
心臓がバックバクだった。
こんなに緊張したのは初めてかもしれない。
「...はい。私をお嫁さんにしてください。」
そう言って彩葉は俺に向かって微笑んだ。
「指輪、付けて?」
「...ああ」
俺は言われるがままに箱から指輪を取り出し、彩葉の薬指に付ける。
「どう?」
「すごい似合ってるよ」
「私、今一番幸せだよ、万羽」
「俺もだよ、彩葉」
月明かりが、その指輪を輝かしく照らしていた。
ちなみにヤチヨは懲りずにこの場面を録画しています