<本編完結>親友のお隣さん~万の羽が彩るハッピーエンド~ 作:白豆男爵
熱中症回です(どういったらいいか分からんので仮称)。
彩葉のキャラ崩壊注意です。
かぐやのソロライブから数日、俺は特に予定もなかったのだが、「買い物に付き合って」、とかぐやは俺と彩葉を連れまわしていた。
やがて最終的に着いたのは...
「...不動産屋?」
「ねえねえ、こことかどう?」
そう言ってかぐやが指さしたのは一つの看板物件。
<極上空間を味わうデザイナーズマンション 3LDK 家賃三十五万円>
「いや高っ!」
「こんなとこ住んでたら人間おかしくなるって...」
「いいじゃ~ん、かぐやが出すからさ~。」
「てかなぜ俺までここに連れてきた?」
「えっ?万羽も一緒に住むでしょ?」
「いやいや、一緒には住まないから!」
さも当然のようにかぐやは言った。
もう半分彩葉の部屋に入り浸ってるがそれとこれは話が違う。
それは男子高校生にとって超えてはならない一線なのだ。
「いいから、帰るよ、かぐ...や。」
彩葉はそう言った瞬間力なく座り込む。
「彩葉、大丈夫か?」
「大...丈夫。」
「...!彩葉、体熱々だよ!?」
「っ!彩葉、しっかりしろ!」
体が熱い、熱中症か?
最近の彩葉はかなり無理してた。勉強やバイトに加えて、かぐやのプロデュースまで。
兆候はいくらでもあったはずだ。なんで気づかなかった!俺の馬鹿!
どうしよう、どうしたらいい。彩葉が、彩葉が...
呼吸が乱れる。また、失ってしまう。もう失わないように強くなるって決めたのに...!
「万羽...彩葉が...っ!」
「はっ、」
なにしてんだ。この状況で俺がテンパってどうする。
とにかく急いで家に...!
「タクシーを呼ぶ!かぐやはそこのカフェで休ませてくれ!」
「わ、分かった!」
「もしもし、タクシーをお願いします!場所は...」
「彩葉、ちょっとだけ我慢してね。かぐやと万羽が何とかするから...」
カフェの店員もその様相を見て冷やすものなどを出してくれている。
優しい店員さんに感謝だな...
「かぐや、タクシー呼んだから彩葉を乗せて家まで連れていけ。」
「万羽は...?」
「俺は水...じゃダメだな。スポーツドリンクとか、必要なもの買ってくるから。大丈夫、急いで戻る。」
「うん、ここはかぐやに任せて!」
俺は近くのスーパーに向かう。かぐやも不安だろうに、彩葉のために平静を保ってる。
「くそっ!」
俺はその足を速めるのだった...
・・・
「酒寄...さん?大丈夫か?」
誰かの声が聞こえる...あれ?なんで家の前の廊下で寝てるんだっけ...?
確か家に入ろうとして、めまいがして、それで...
「おい...!大丈夫じゃなさそうだな。ちょっと失礼!」
そう言うとその誰かは私の体を抱きかかえる。
「ごめんけど、緊急事態だから、俺の部屋で我慢してくれ!」
もう駄目だ、うまく頭が回らない...
私はまた意識を落とすのだった...
・・・
「うーん、ここは...」
目を覚ますと、キッチンで誰かが料理していた。
その後ろ姿はあの日の彼と重なっていて...
「万羽...?」
「...!やっと目覚めたか!あと俺はこっちだ。」
左から万羽の声がする。
よく見たら料理してるのはかぐやだった。
「あ、ごめん...」
「いいんだ、それくらい疲れてるんだろ。」
「...!彩葉、しんどい?」
「大丈夫、バイト...行かなきゃ。」
「おい無理すんなって!休みの連絡は入れといたから、今は休め!」
「えっ?」
スマホを見ると、丁寧な文章で休みの連絡が送信されていた。
「あと、いっぱいふかふか置いといたから、いっぱいふかふかしてね!」
「ふかふか?ああ、ふかふかか...ありがと」
私はぬいぐるみを一つ抱きしめてそう言う。
「あと彩葉、病院行こ、一緒に。」
「ああ、多分熱中症だが、念のために診てもらった方がいい。」
「病院は...お金かかるからやだ。」
「そんなもん、かぐやに任しとき!」
かぐやは力こぶを作りながらそう言った。でも...
「無理だよ...全部ギリギリで予定組んでるから...何日も休んだら...追いつけないよ...そしたら奨学金も...出ないかも...」
「彩葉...」
熱で弱ってるからだろうか...悪いイメージが連鎖する。弱音が止まらない。
そんな私を見つめてかぐやは...
「なんで彩葉は、そんなに一人で頑張らないといけないの?」
そんな確信を突くような質問を繰り出す。
「かぐやのせい?かぐやもめっちゃ無理言っちゃったし...彩葉ぁ、死んじゃったらヤダぁ~!」
「落ち着けかぐや、死にはしない。でも、俺もいつも一緒にいたのに気づけなかった...ごめん。」
かぐやも、万羽も、優しいな。
そんな優しさに浮かされ、私はぽつぽつと語り始めるのだった...
彩葉の話を俺とかぐやは黙りこくって聞いていた。
亡くなってしまった父の話、出て行ってしまった兄の話、変わってしまった母の話...正しさに押しつぶされそうになった彼女自身の話。
「...それで、私が一人で学費も生活費も賄うならって、やっと折り合いついたんだよね。」
「えらい簡単に言ってるけど皆そんなことしてなくない?」
「ああ、俺もそんなことしてるのは彩葉しか知らない。」
「お母さんはそのくらいのこと平気でやってたし、私も譲らなかったし。最初にここで目を覚ました時、自分の力で生きるんだって思ったらめっちゃ力湧いてきた。なんかラッキー...みたいな?」
「いや、ラッキーはちょっと違くないか?」
「宇宙人調べでもそのお母さん激ヤバおかしいって!」
正直俺もそう思う。でも、彩葉にとっては、見てきたそれが当たり前だった。
だから彼女は自分の力だけでなんとかしようとする。
「かぐやと万羽には...」
分からない...と言いたいだろう。だが彩葉はその言葉を飲み込んだ。
無理に追及する必要もない。彼女自身の口から喋ってくれた。それだけでも上々だ。
やがて料理が出たのか、かぐやは台所に駆けていく。
「今日のメニューはネギ味噌ショウガと卵おじや。まず鰹節と細かく切ったネギとおろしショウガをクソほど練る。そこに熱々の熱湯を...」
「「長い長い。」」
「卵は二個入ってるよ。あつあつだから、ふーふーして食べてね。」
「...超うまい。」
「でしょぉ?」
...自分が不甲斐ない。ずっと近くにいたのに、こんなことになってしまうなんて。
あの日と、何も変わってないじゃないか...
「...万羽?どうかした?」
「ん?ああ、安心したら腰が抜けちまってな...」
「そっか...」
「なあ彩葉、なにも全部ひとりで頑張らなくていい。抱え込まなくていい。俺も、かぐやも、綾紬や諌山だっている。だから、助けを求めていい。もっと周りを頼れ。」
俺は思ったことを口にする。とりあえず彩葉に無理させないためには、助けを求めることを覚えさせなければ。
「一人で抱え込まないでいいの...?」
「ああ。」
「みんなのこと、頼ってもいいの...?」
「そうだ。」
「かぐやたちのこと、頼って!」
「...じゃあ、ちょっとだけ胸、借りていい?万羽。」
「勿論。存分に使え。」
そう言って彩葉は俺の胸に顔をうずめる。そして...
「うっ...ずっと一人でつらかった...お母さんに頑張ったねって言ってほしかった...お兄ちゃんに助けてほしかった...お父さんと一緒にもっと...曲を作りたかった...」
「うわあああああああああああああああああああああああん!」
彼女は吐露する、自分の気持ちを。俺の胸の中で泣きじゃくる、今まで溜めていた涙を流す。
俺とかぐやは、彩葉が泣き終わるまで、静かに彼女を抱きしめる。
...俺も腹を括るか。
『万羽も一緒に住むでしょ?』、そのかぐやの言葉を、思い出していた。
原作よりも彩葉が弱弱しいですが、こういった世界があってもいいのかなと...後悔はしてません
原作軸だともうそろそろ黒鬼戦ですね。
戦闘シーンうまくかけるかな...不安です。