<本編完結>親友のお隣さん~万の羽が彩るハッピーエンド~ 作:白豆男爵
「...帝が彩葉のお兄ちゃんって、マジ?」
「...マジです。」
俺は驚いていた。まさかあの帝が彩葉の兄だったとは。
もうなんか、全然似てないだろ、キャラ的に。
「それはそうと、どうする?このままじゃ勝ち目ないよ?」
「すまん、俺が雷にまで意識を割けていたら...」
「いやいや、むしろよく乃依を倒したよ。うちらより全然すごいって...」
「ねぇ、帝ってさー」
互いに謙遜しあう俺らをよそに、かぐやは誰も思いつかないような奇策を思いつく。
二回戦開始。黒鬼は当然のようにトライデント継続だ。
さっきと同じく私とかぐやはトップへ、万羽はボトムへ向かう。
私は最短距離で帝に向かって斬りかかる。
「...かぐやちゃんは?」
「月に帰ったよ。」
「はっ、冗談!」
マップ上はかぐやは近くにいるが、帝の視界には私しかいない。
今頃『ハンマー職に隠密スキルはないはず』と思考を巡らせているだろう。
「あっ、上か!」
「よっと。」
上空でレプトケファルスに乗っていたかぐやがハンマーのジェットを起動。そのままボトムに直行する。
「雷、トップレーン!フォロー!乃依がまたやられる。」
「はっ!よそ見してちゃ、だめじゃない?」
「いいね!」
私は一人で帝と交戦する。
かぐや、万羽...お願い!
「ちっ、面倒な矢だな!」
次々と襲ってくるスタン矢。一発でも当たったら脱出は至難の業だ。
俺の銃撃を警戒してか、かなり遠くから打ってきている。
この距離じゃ当たらない...でも!
ドカーン!
直後、轟音が響き渡る。かぐや姫のご登場だ。
乃依の注意がそれた一瞬をついて俺はブースターを起動。
最高出力で乃依との間合いを詰める。
「うおおおお!」
「おっ、でも直線的で当てやすそうだよ!」
もちろん、このままじゃ狙撃されておしまいだ。
...射程内!
俺は即座に
乃依の撃破に成功した。
「なんか俺ばっかじゃない...?」
「しつこく俺に絡んでくるからだ。」
俺の
射程が短い分、捉えれば一撃必殺の難しい技だ。
そのまま俺とかぐやで櫓を占拠。
だがまだ勝負は終わってない。
彩葉は帝に落とされてリスポーン。
ここからは乱戦だ。
「かぐや、天守閣に行け。」
「ヨロズは?」
「俺はもちろん...」
その直後、赤い鬼が現れる。
「鬼退治だ!」
「一人でやる気か!?かぐやパパさんよぉ!」
『パパ...じゃない。ヨロズと帝の直接対決!果たしてどちらが勝つのでしょうか!』
『ヨロズさんはSETSUNAプレイヤーの中でも上位ですからね。もしかしたら勝てるかもしれません。』
「帝、彩葉の兄なんだってな。」
「...名前呼び。随分親しいみてえだな。」
「...あんたの考えは分からん。きっと彩葉に連絡を取らなかったのもそれなりの理由があるんだろう。でも悪いな...」
「助けを求めてた彩葉に手を差し伸べなかったあんたを、彩葉を置いていったあんたを、どうしようもなくボコボコにしたい気分なんだ...!」
その瞬間、彼、ヨロズの尻尾が揺らぐ。
一瞬ラグのようなものが走り、その背には3本目の尻尾が薄く映っていた。
顔、いや全身に赤い文様が浮かび上がる。
...どうなってる?
見たことない現象...スキルか?
そう思っていると、
「っ!」ガキン!
速い!反応するのがやっとの速度。
銃でけん制するくらいの距離を一瞬で詰めてきた。
「兄ならどうして彩葉を守ってやらなかった!あいつはまだか弱い高校生だ!そんなことも分かんねえのかよ!」
「こっちにもいろいろ考えがあるんだよっ!」
すさまじいパワー。怒ってしゃべりながらの剣戟でここまでの威力と精密さが出せるのか!?
俺だって彩葉のことは心配だ。でも、ずっと助けてばかりじゃあいつが俺に依存してしまうかもしれない。
そう危惧した俺は家を出ることを決めた。彩葉にも強くあってほしかった。少なくとも、依存しなくても生きていけるようになってほしかった。
「知らん!彩葉を泣かせたお前は絶対に許さない!」
刹那、半透明な尻尾が増え、合わせて5本になった。
恨みつらみのこもった剣がどんどん強くなっていく。
だんだんとその動きに理性がなくなっていく。
まるで本能をむき出しにした猛獣と闘っているようだ。
しかし直後、
ドカーン!
どうやらうちの天守閣が落とされたらしい。
『なんと!かぐや・いろPチームが一矢報いる!しかし、何やらヨロズさんの様子がおかしいぞ...?』
「ううううう!」
「おい、二回戦は終わったぞ!いったん落ち着け!」
彼の攻撃は止まらない。ブレーキがなくなった車のように一心不乱にこちらを攻撃し続ける。
「はい、そこまで。」
「うっ...」
「...ヤチヨちゃん?」
暴れまわっていたヨロズをの額を突然現れたヤチヨちゃんがはじくと、まるで電源を落とされたみたいに大人しくなった。
「ごめんね~、どうやら彼のスマコンがバグっちゃってたみたい。でも、もう大丈夫だから。」
「あ、ああ。ありがとう、ヤチヨちゃん...」
「...ヤチヨ...?」
「はーい、ヤッチョだよ!大丈夫?」
「す、すまん。あまり記憶がなくて...」
「休んどく?代わりにヤッチョの分身を向かわせるけど...」
「いや、いい。最後までやらせてくれ...すまなかった、帝。」
「いいよ。お前の情熱が伝わってきた。でも、また暴れないように気をつけろよ。」
そう言葉を交わし、俺とヨロズは自陣に戻るのだった...
私は一部始終を見ていた。試合が終わっても、万羽は一心不乱にお兄ちゃんを攻撃し続けていた。
何か、様子がおかしい!
そう思って飛び出そうとした直後、ヤチヨが現れて彼を制止する。
一瞬電源が落ちたように意識を失い、直後に目を覚ます。
何やら会話していたようだが、ここからじゃ聞こえない。
「...大丈夫だよね?万羽...」
私は彼のことが心配になっていた。
「すまん!心配かけた!」
「そうだよ!かぐやも彩葉も心配してたんだからね!」
帰ってきてそうそう俺はかぐやにお叱りを受けていた。
当たり前だ。バグとはいえ、理性を失った上に試合終了後も帝を攻撃し続けていたのだから...
「体調とかは?大丈夫なの?今からでも芦花や真実に代わってもらった方が...」
「いや、やらせてくれ。最後まで戦いきって、勝ちたい。だからこれは俺の我儘だ。」
「...分かった。でも、ほんとに無理しないでね?」
「しないでねっ!」
「分かってる。」
その直後、ブラックオニキスから連絡が来た。
『驚いたなかぐやちゃん、まさかあんな戦法をとってくるなんて。でも、こっちが作戦変えてたら?』
どうやら最後の方の俺には触れない方針のようだ。正直ありがたい。
「帝も負けず嫌いっしょ?私だったら勝ってるうちは絶対作戦変えないから~。」
『新解釈の登場だ...かぐや道は深い...!』
なんか感心してる。
さあ、最終ラウンドの始まりだ。俺は再び気合を入れなおすのだった...
おや、万羽の様子が...?
神崎万羽…謎のバグによって理性を喪失、ヤチヨに制止されるまで意識はなかった。帝に迷惑をかけたと思っているがそれはそれとして彩葉の件は許せないと思っている。