青の悪意と曙の意思   作:deckstick

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アルハザード編8話 隠れ家の完成、崩壊の足音

 お姉様との生活も、20年目に突入。

 アルハザードの勢力は健在。

 だけど、権威に陰りが見える。

 

 テロの頻発。

 技術者や上級士官の国外流出。

 益々酷くなる締め付け。

 お姉様や主様の予想の範疇。

 

 対抗勢力も増加、強力化。

 筆頭は、ベルカ。

 アルハザードからは遠い。

 対策は後手に回っている。

 近くの非支配地域や、支配地域にも抵抗組織が多数。

 上層部は対応に追われている。

 

 

 お姉様の環境は、若干変化。

 

 お姉様の研究室は、研究内容の増加に伴い500人を超える研究者を抱える規模に。

 研究者同士の仲は良好。

 他の研究所や実務部隊との共同研究も活発。

 お姉様と主様の2人で、今のアルハザードの研究を牽引する状態。

 多くの協力者。アルハザードの研究者の内、半分は2人を支持。

 2人は、今でも好きなことをやっているだけだと思っている。

 研究所の管理も人任せ。

 貴族との衝突は度々発生。お姉様と主様が協力して叩き潰している。

 私達から見た場合、問題は発生していない。

 

 コンピュータシステムを公開。

 資料庫には無くてはならない存在に。

 ついでにネットワーク化。

 請求の多い研究所や調査機関、貴族の執務室等に端末を配置。

 技術や歴史に関する資料は比較的自由に検索可能に。

 普及に伴い、お姉様の業務負荷が軽減。

 資料庫の人員は、入れ替えはあっても増員は無い。

 ぐるーぷうぇあ的なものも用意。

 お姉様の研究所等で、内部資料や作業の管理に使用。

 特に資料管理については様々な研究所で試験導入や本格導入。

 内部資料を対象とする検索技術は高評価。

 電子精霊は非公開。

 各地の研究所に潜り込み、お姉様のために情報収集中。

 資料管理で売り込んだ甲斐があった。

 

 私達は5000人に到達。

 私達の増員は一旦打ち止め。

 必要と判断しない限り、増員は認めない方向に。

 余力はある。大きな問題は無い。

 

 保護(プロテクション)部門による護衛の体制は若干変化。

 今はチャチャマルが表に出て指揮を執っている。

 防衛プログラムの矜持。妥当な理由。

 でも、普段は筆頭侍女。納得がいかない。

 チャチャゼロは伏撃及び遊撃担当。適切。

 

 

 別荘はネギまの物とは異なる仕様だが、ほぼ完成。

 空間を新しい世界と見做せる水準。

 空間作成時の魔力量を確保できれば、広大な世界をも生成可能。

 お姉様がその気なら、創造主にもなれる。

 

 時間の調整自体は問題ない。

 時間隔離障壁が鍵で、障害。

 加減速幅を大きくすると、障壁を超える際の魔力負荷が膨大に。

 時間隔離障壁を超えた通信や魔力転送も困難。

 夜天や宵天からの情報を受け取る必要のあるお姉様は入らない方が良い。

 記憶転送や魔力転送の必要がある私達や眷属も同じく。

 お姉様にとって、実質的に自立型の使い魔専用。

 時間隔離障壁自体は、難易度はそれほどでもない。

 これと空間魔法を発展させれば、原作の封時結界になると予想。

 

 普段は時間を加減速しない別荘を利用。

 ネギまの類似魔導具に肖り、名称はエヴァンジュ・リゾート。

 語呂が悪いため「’s」は省略。日本語的には問題ない。

 通常、私達はこれを指して別荘と呼んでいる。

 時間隔離障壁が無いため通信や転移も簡単。

 但し、お姉様と繋がっているが虚数空間内なので、座標の特定はお姉様や私達しかできない。

 とても広い空間。

 具体的には、惑星4つを含む星系1つ。

 星の材料については、お姉様には秘密で確保を実行。

 お姉様が“お偉方の命令を忠実に”実行した結果を私達が利用。

 何も問題は無い。

 別荘を作る際に、こんなこともあろうかと思って材料を確保しておきました、と提出。

 呆れられた。何故。

 

 お姉様の記憶から、地球に近い環境を再現。

 動植物は、現時点で食用に出来るもの、環境に優しいものを中心に選定。

 四季が発生するだろう土地、具体的には熱海に主要拠点を準備。

 屋敷以外に、研究所を超える各種設備を併設。

 デバイスだろうが魔導炉だろうが製造や修理が可能。

 魔導炉も用意。お姉様や私達が魔力を供給しなくても維持が可能。

 

 お姉様の記憶から、沖縄、軽井沢、札幌、パリ、ジャカルタ、ケアンズにも生活可能拠点を準備。

 お風呂が気持ちいい。

 海も気持ちいい。

 夜風も気持ちいい。星が見えない点は改善を検討。

 

 各生活拠点近辺を含む十数か所に、食糧生産拠点も準備。

 最終番号(ラストナンバー)の部下が100人程、半定住状態で管理している。

 その部下として、従者化した者を2000人程、自立型の使い魔化した者を100人程配置。

 従者や使い魔も、お姉様には秘密で確保。お偉方の命令には反していない。

 主要な役目は設備維持。ついでに各種農産物、畜産物、海産物の確保と、これらの加工品の製造。

 宵天の情報に遺伝子や栽培手順、生態といった情報も含まれていたのは称賛。

 食事がおいしい。

 冷蔵庫、冷凍庫、釜戸、その他各種台所用品。

 お姉様の知識や宵天の情報を元に、色々と再現。

 品種改良にも挑戦予定。時間が必要。じっくりと取り組む。

 食材の長期保存は時間超減速の別荘。

 転移で出し入れ。少し不便だけどとても質の良い保存庫。

 

 安全性を考えると、眷属も欲しい。

 従者も不老で再生能力は高めだが、自力で魔法を使えない。海に出すのは少し不安。

 使い魔は魔法を使えるが、不老でない。年齢操作で対処する必要があるが、年齢操作も完全ではない。いつか限界が来る。

 リンカーコアと魂を同時に剥奪する眷属化は、お姉様とチャチャゼロにしかできない。

 きっと、いい顔をしない。

 

 私達には、魔法と連携するコンピュータシステムがある。

 これを応用。魔法が使えない人も、用意された魔法技術は利用可能に。

 設備の機能として組み込まれた魔法も多数。

 食材の出し入れ。拠点間の通信と転移。設備や備品の修理や生産。浄水。調理を含む加工用熱源。空気や水の温度管理。洗濯用浄化。資材などの再生。医療。遭難者の捜索。

 農作業や各種救助用にも、各種用意。

 頑張った。

 

 

 進展の見られない研究もある。

 

 未来や過去の参照は、不安定。

 何度も試すと、違う未来や違う過去が見える。

 今の情報ではあり得ない未来や過去が見えることも。

 可能世界の可能性?

 並行世界の可能性?

 判断材料不足。

 改変は厳禁と判断。

 危険性が高すぎる。

 

 気。咸卦法。

 未だ発見されず。

 実態が不明。計測手段が確立出来ない。存在しない可能性。

 夜天や宵天からもそれらしい情報は無い。

 

 闇の魔法。

 概念が意味不明。

 攻撃魔法を取り込むのは狂気の沙汰。

 人も魔法も、そこまで常軌を逸していない。

 実質的に、自爆魔法。

 混乱させるための嘘技術。

 

 各種精霊魔法。

 例えば魔法の射手。

 精霊がいない。

 認識できていない?

 現時点での再現手段。

 周囲に人工精霊を多数配置?

 自動人形が性能比で優れる。

 

 

 上層部からの要求は、悪化する一方。

 

 反乱軍の、必要以上の殲滅。

 無茶な要求を満たすため、お姉様も八つ当たり気味に。

 オーバーキル。命令に違反はしていない。むしろ完璧に遂行。

 お姉様に対する嫌がらせ?

 結果的に、私達には大きな利益。

 

 最高貴族院議長の暴走。

 恒常的な空間を自動人形内に生成。

 将来のデバイスの内部空間に相当すると思われるも、現時点ではデバイス1機で制御できる水準に無い。失敗は確実。

 成功させろ。生成した空間での実験なら失敗しても被害は出ないだろうと暴言。

 不安定な生成空間内で、更に不安定な空間生成は狂気。

 お姉様は、実験の主導権を最高貴族院議長お抱えの研究者に丸投げ。

 設備提供はお姉様。拒否しきれなかった。

 要求は生成空間、魔導炉、高出力デバイス。

 実験中止の強制介入条件と、介入時点及び非介入時の被害予想を最高貴族院に提出。

 併せて、予想される損失の補填契約を最高貴族院監視下で締結。

 必要設備は貸出扱いで、実験を敢行。

 結果、次元断層発生寸前。

 抑え込みの為に、魔導炉数基が過負荷により犠牲に。

 お姉様の実験用デバイスも喪失。

 実験用デバイスからの切り離しに成功した魔導炉があった分、予想より被害は軽減。

 監査は最高貴族院議長本人や最高貴族院からの派遣を含む大人数。

 そもそも実験失敗までは最高貴族院議長お抱えの研究者達だけで行った。

 事前点検や準備内容も要求条件を満たしていることは本人達を含めて確認済み。

 お姉様に不正や不備は認められず。

 結果及び被害予想は概ね適切。

 アルハザード崩壊のフラグを回避?

 当面のアルハザード存続は確実。補填はきちんと請求。

 強行を指示した最高貴族院議長は顔面蒼白。

 議長位も喪失。

 最高貴族院議長の処分資産から、お姉様に損失補填。殺してでも奪い取る。

 いい気味。

 お姉様に譲位の話。

 お姉様は魔導具であることを盾に固辞。

 譲位が裏で煽っていた連中の意図?

 

 お姉様を指す、お姉様と主様を指す、現在の二つ名。

 資料庫の主。お姉様の役目。

 研究者の頭脳。お姉様と主様が、実質的に研究者の頂点。実力も権力もあるのに支配者面しないせいで余計に慕われる始末。

 治安部隊の盟友。非殺傷設定等での協力によると思われる。盟友と呼べるほど親しくないが、治安部隊側が積極的に広めている。

 医療部隊の天使。これは戦場での治療行為の為か。やはり幼女の一言が加わることがある。余計なお世話。

 殲滅戦の最終兵器。お姉様と主様の二人だけで出撃、惑星系を1つ丸ごと消失させた実績がある。骨の欠片も残すなという命令を忠実に実行。問題ない。

 貴族最後の良心。いつの間にか、お姉様まで貴族扱い。不思議。

 影の支配者。お姉様と主様に頭が上がらない貴族が、割といる。元はと言えば、お姉様に不当な圧力をかけてきたせい。私達は悪くない。

 政治的権力以外の勢力図を作成した場合の、お姉様の実態。

 最高貴族院の貴族達ですら陰で使う呼び名。

 影響力を端的に示している。

 陰から陽へ?

 議長はお姉様の影に怯えて暴走?

 

 

 主様も、最近様子がおかしい。

 きっかけは、恐らく先日別荘に来たとき。

 別荘自体の構想は既に知っていた。

 体感して驚いた?

 ある意味アルハザードの頂点に立ったお姉様。

 お姉様を恐れている?

 どちらも、違和感。

 お姉様との会話が原因?

 会話を解析、原因を調査。

 

 お姉様の疑惑発言。

「こんな静かな世界で暮らすのも悪くないだろう?」

 自然でない者達が、自然に生きている。

 戦争と搾取ばかりのアルハザードとは対極の生活。

 体感しての衝撃は大きいはず。

 

 お姉様の疑惑発言。

「アルハザードの終わりはそう遠くないだろう。

 私達はその時、どれくらいの仲間を裏切り、失うのだろうな」

 アルハザード崩壊を推奨する気はないが、食い止める気もないお姉様と主様。

 気の合う研究者や軍の仲間達を見捨てることに繋がる。

 複雑な思い。

 主様も、思うことはあった模様。

 

 お姉様の疑惑発言。

「私は、既にアルハザードを裏切っている。

 この様なものを作っている事がばれた時点で死刑は確実だ」

 影の支配者とも呼ばれているのに、本人は属している実感すら無い。

 主様も心情的には似た状態。

 お姉様と主様の立ち位置。

 どちらも、不安定。

 

 お姉様の疑惑発言。

「7000人を擁する宗教国家で教祖にでもなった気分だ」

 宗教の教祖。

 私達や従者達から見たお姉様。

 聖戦と叫びながら自爆を行う信者達。

 お姉様が右と言えば、右に地獄が有ろうと喜んで従う私達や従者達。

 ……大きな差を認めず。

 アルハザードも、宗教の危険性は認識。

 魂を扱う主様。

 作り出された者達からの視点。

 宗教に近いとまでは思っていなかった模様。

 私達にとっても意外。でも納得。

 

 

 とりあえず、お姉様まんせー、とでも叫ぶべきでしょうか?




ここ数日、いろいろ大変だったようですね。ハーメルンの中の人に感謝を。
次話が、アルハザード編の最後になります。

2012/11/15 エヴァンジェリン・リゾートじゃなくてエヴァンジェリン()・リゾートだったため、「’s」の省略理由を追加。

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