というわけで、壊れかけのユニゾンデバイスを保護した、とだけアースラの現地拠点に報告。
すると、聖王教会の人物を含めて知るところになるわけで。
「見せて見せてっ!
超レアモノの、本物の融合騎っ!!」
と、シルフィ・カルマンが大興奮。
今は治療中だから意識が戻ったらという事で強引に保留にして、レイジングハートとバルディッシュの改造作業に戻した。というか、お姉様が引き摺って作業場所に連れてった。
その頃、別荘にある使い魔達の治療室では、アギト(仮)の治療が進められてる。
現状は、カプセルに入ってたアリシア・テスタロッサに似た状態。溶液の中で浮かんでる。
元々は使い魔達の年齢操作や、大きな怪我や重い病気等を治療するための設備。転用出来るだけの余裕と能力があってよかった。
「……特に問題は無いんだな?」
「怪しい薬の影響が残ってるだけ。内部に破損は見られないから、回復に時間がかかるけど最終的な後遺症は無いはず」
治療に付き添ってるのは、八神シグナム。何故か気になるという事で、今日は剣道場に行けない事を伝えた上で、ずっと様子を見てる。
実際に作業をしてるのは、治療担当のチャチャ(暫定)。
「だけど、気になるという事は、過去に何かあった可能性もある。
原作と同じなら変換資質が一致するし魔力光も近い。変換資質の面を含めても、相性はかなりいいはず。過去に出会っていれば、ロードになっていた可能性が否定出来ない」
「そうか。だが、融合騎と共にいた記憶は無い。
尤も、擦り切れた記憶だ。過去に無かったと断言も出来ん」
「烈火の剣精も、過去の記憶はほとんど無いはず。ユニゾンデバイスが生きていた時代に資料がまとめられて無限書庫に残っているか怪しいから、関係の証明はきっと無理」
無限書庫の自動収集機能も、いまいち信用できない部分があるし。
まず、最低でも人に渡すための資料として纏めないと対象にならないのはほぼ確実。個人のメモは見付かってない。
それが個人や特定組織内に留められた物、公開前の関係者しか見れないような状態なら禁書庫に収められる。その後、公開されるか、ある程度以上の人数に内容が認識されたら最終的に通常書庫に入る模様。
公開前の草稿やらまで禁書庫に残ってるし、内部報告書やら会議用資料、果ては製品の売買記録や勤務シフト表まで存在しているのは確認出来てる。本気で意味が無い物も多すぎて、禁書庫の容量がヤバイ。ごく稀に重複もしてるし。しかも、資料が飛んだりしてるから、全てを集められるわけじゃない可能性もある。
私達が禁書庫と呼んでるのは、公開前の仮格納用を想定したものの可能性が高そう。だからと言って、まだ誰にも言えないけど。
「そうか」
「だから、全てはこれから。
人との繋がりも、守護騎士としての本当の役目、主を護る為に力を使う事も」
「……そうだな。我等は守護騎士と呼ばれる、守護するための騎士だ。
奪うための、傷付けるための存在ではない。そんな事すら忘れていたのか……」
◇◆◇ ◇◆◇
一方、夕方頃にアースラの拠点から逃げてきたお姉様は、セツナ・チェブルーに色々な実演や説明を開始。あまり他の人に知られたくないから、別荘のリオデジャネイロ相当の場所。農業用拠点で大した設備は無いけど、ケアンズはまだ合宿組がいるし、熱海は出入りする際に挨拶に来られたら拒否しにくいし。
先ずは理解しやすい、お姉様との直接通信と、お姉様からの魔力供給から。
「この点は、ネギまの仮契約……でしたっけ? それに似ているんですね。
何て言いましたっけ、魔法の道具的な物は無いんですか?」
「無いぞ。私が色々作れるから、それでいいだろう?
なんなら、
「あ、それが桜咲刹那の道具なんで……あれ?
それって、デバイスじゃないですか?」
「そうだな。ただ、ベルカ式のデバイスは製造時に形状を決める必要がある。そういう形の物が欲しいなら、新たに作り直しだな。
騎士甲冑とは比べ物にならないくらい柔軟性が無いが、そのぶん強靭だから仕方ないと割り切ってくれ」
「いえ、気になっただけで、そこまで欲しいわけじゃないですし。
他に……えーと、従者の召喚とかやってましたっけ?」
「本人だけなら、似たようなことは出来るな。今の体を破棄して、私の傍で再構成すればいい。
但し、所持品は呼べない。それを別途転送するくらいなら、素直に転移魔法を使った方がマシだ」
「何と言うか、微妙に残念仕様ですね。
それ用の能力じゃないからだとは思いますけど」
「不死を実現するための機能の一部でしかないからな。
とりあえず、ネギまに似た部分はこれで終わりだ。そうそう、非殺傷での怪我だが、お前達は基本的に大丈夫だから安心してくれ。はっきり言えば、今の私が特殊なだけだ」
「あれ、そうなんですか?
体を魔力で作ってるなら、一緒になると思ったんですけど」
「私の本体が本だという事は知っているだろう? それに今は、Cクラスの魔力で姿を維持する為に、見た目以外の部分をかなり簡略化しているんだ。この方式だと非殺傷の保護対象から外れる上に、魔力が漏れないよう密度も思い切り下げているから、魔力ダメージが弱点になる。怪我をしても痛いという感覚があるだけで、損失としては服が破れた程度でしかないがな。
その点、お前達は人としての構造を持っているから、非殺傷の保護も有効になるはずだ。非殺傷でもお前が怪我をする攻撃なら、一般人でも命に係わるような影響が出る威力だろうな」
設定を変えただけの“攻撃”魔法が純粋魔力ダメージだけで済むはずも無く。ソレ専用で組み上げた術式なら別だろうけど。
吹き飛ばされたり、バリアジャケットや地形に影響を与えたりする程度の物理ダメージが存在するから、現在の非殺傷設定も絶対的な物じゃないのは明白。
「えーと、エヴァさんは消費を抑えてるから弱点がある、という理解でいいんですか?」
「一応はそうだな。この体が吹き飛んでも死ぬわけじゃないし、その気になれば再構成もすぐに出来る以上、弱点と言っていいかは微妙だが。
そんなわけだから、非殺傷の魔法を受けて怪我をする心配はあまり無い。それが理由で眷属になった事がばれる事も無いから、周囲への説明はもう少し待ってくれ」
「それは大丈夫です。無暗に騒がれたくない、ですよね?
眷属に関してどう説明するかは相談しておくとしても、実際話すのは、早くて夜天の魔導書をどうにか出来てからがいいんですよね」
「……そこも説明済みか。
それなら、後は今後の件についてだな。一応言っておくが、本来の“肉体”は、今使っているそれだ。老化や成長は停止しているし、放っておいても新陳代謝でゆっくりと魔法生物みたいなものになっていくわけだが……」
「あ、私の希望は、チャチャさんには伝えてあります。
別にこの肉体に拘らないので、エヴァさんの剣になれるだけの力は欲しいです。大きな改変は無理が出るそうですけど、細かな不具合の修正は可能なんですよね?
私の場合は古い怪我の痕や無理をした後遺症を治すと、もう少し能力が上がるらしいです。調整の為に何度か体を作り直す必要がある事も説明されています」
「……実演以外は、殆ど説明と合意が済んでいるじゃないか。
私が説明する部分が残っているのか?」
だって、より正確に把握した上で納得してほしかったし。
契約前の説明と納得は、結果が重いだけに大切にしないと。
「デバイスについてはエヴァさんから聞いて欲しいって言われていますけど。
それって、今のデバイスの話じゃないですよね?」
デバイスは、説明というより相談?
主に、ネタ的なアレの意味で。
「そうだな。野太刀をベースにしたデバイスについてだが……刀については完成していて、今は鞘を用意している途中だそうだ。近いうちに感触やらを確かめに行って、問題が無ければそれを使ってデバイスの製作に取り掛かる予定だ。
それで、入れる魔法は追って相談するとして、機能を追加したい。
ええと、遠隔操作可能で、魔法を発動する起点に出来る代物だ。魔法の強化にも使えるし、直接の攻撃手段としても有効だ。魔力は私が供給出来るから余裕があるはずだし、マルチタスクを極めれば相当に使い勝手がいいはずだ。
使ってみる気はあるか?」
「そうですね、面白そうです。
でも、便利そうですけど、破損とか置き去りになった時とかは大丈夫ですか?」
破損や失くした時よりも、躯体放棄時の扱いが心配?
でも、デバイス1個くらいなら。
「それも魔力で構成すれば何とかなる。守護騎士達のデバイスと同じ扱いと言えば理解出来るか?
お前の付属品という扱いになるが、体と同時にデバイスも再構成するよう設定してしまえばいい。維持するための魔力くらいはサービスするし、再構成直後に裸にならない為に服は必要だから、騎士服の構成用とでも思えばいい」
「あ、やっぱり維持が必要なんですね。
えーと……普段から私の魔力で補う事は出来ませんか?」
「それが基本で、何もしなければ勝手にそうなるが、ただでさえ魔力を送る際のロスがあるんだ。
私の魔力を使える時は使え。私の剣になりたいなら、多少の魔力を遠慮して能力を落とすような真似はするな。いいな?」
「は、はいっ!」
◇◆◇ ◇◆◇
更に他方、別荘内ケアンズの合宿拠点。
高町なのはとフェイト・テスタロッサが蒐集の影響で欠席してる都合で、実に平和な練習風景が見られてる。
「ゆっくりなら、飛ぶのも何とかなる様になってきたかな?」
「……すずか、魔力をまともに使えない私の前でそれって、嫌味でしょ?」
「練習の為に来てるんだから、ちゃんと練習しないと」
……微妙に月村すずかとアリサ・バニングスの仲が悪くなってる気がするけど、平和。
月村姉妹は“自分で飛ぶ”事に惹かれてるようで、真っ先に練習し始めたのが浮遊魔法。浮かぶ事自体はかなり早い段階で可能になってたから、素質って怖い。
「すずかサンは、早めに保護や防御の魔法も覚えないと危険ヨ」
「うん、今はこれくらいが限度かな」
そして今の教師役は、従者のリーシェン。この娘もやっちゃった☆とお姉様に報告して呆れられた中の1人。別荘の駆動炉の保守や再生に腕を振るった、元々魔力に乏しい技術系の人物。従者は魔法を使えないという説明を信じて調査しなかった事を猛烈に反省して、今では従者トップレベルのカートリッジシステムの使い手になってる。素質はトップ集団のやや後方程度だし、そのうち抜かれるのは確定だけど、技術研究に関する第一人者という立場に固執するつもりらしい。
黒髪を2つの団子に纏めてるのはお約束。口調は本人にネタを教えたら面白そうに工夫してた。
「あの2人がいないと、こんなに平和なんだな……信じられねーけど」
「いいじゃない、落ち着いて練習出来るんだし」
少し離れたところでは長宗我部千晴と夜月ツバサが、ゆったりした雰囲気で結界魔法を展開してる。
今は少し弱めの結界を、安定的に持続する練習。攻撃魔法の打ち合いをやってる横では、やりにくい内容。のんびりとはいっても喋りながらだから、軽いマルチタスクの練習にもなる。
「そりゃそうだけど、あんな撃ち合いをするのが10歳以下って、どーなんだと」
「原作でもチートみたいなもんなんだから、気にしたら負けじゃない。
あれよ、ネギまでアタシ達がネギとかエヴァンジェリンとかを見て呆れるようなもんじゃないの?」
「あー、そう思えば……って、納得出来るか!
ネギま準拠なら、私は最後までまともに魔法を使わないんじゃねーのかよ!!」
「結界が不安定になってるわよ。そもそも、最初から魔法みたいな能力を持ってるんだから、関わるのは仕方ないじゃない。
アタシだって、自分の能力を閉じ込める様な羽目になるとは思わなかったし」
「そりゃあそうだけど……あーもう、何でこんな能力を希望しちまったんだろ。やたら機械の操作に強くなったのは便利だから、捨てるのもどーかと思っちまった辺りが泣けてくるし。
そういや、特典の破壊の話は聞いてたんだよな。まだ練習してるって事は、結局蹴ったんだろ?」
「まあね。悪意が聞こえるってのは、まあ何とかなりそうだし、使い所を間違えなきゃ便利かもしれないし。
それ以上に、見ただけで味が解るってのは、買い食いとかで重宝するしね。何となく食べた気になれるからつまみ食いしなくて済む分太りにくいし」
「それかよ」
「美味しいケーキって、大事でしょ?」
「まあ……それは同意するけどさ」
そんな感じでのんびりしてる2人から更に向こう側、パラソルの下では、主が休憩中。
魔法弾を使った缶の空中制御……要するに高町なのはが原作A’sの1話でやってたあれ、但し缶が4個と高速魔法弾16発を使った高難易度仕様を、何とかやり遂げたところ。
空間把握とマルチタスク、それに魔力制御を鍛える練習……だけど、広域型なのにここまで制御出来る主はちょっとおかしい。
「そんなにおかしい?」
お姉様のマルチタスクは、これくらいの水準に至るのに10年近くかかってる。
それも、業務や任務の無い夜間の大半を魔法の訓練に充てた状態で。
主は魔法の練習を始めてからまだ半年。それも、学校や人付き合い等の、人として不自然じゃない生活をしながら。つまり、成長速度という意味で異常。
原作主人公、高町なのはの成長速度すら超えてる。
「転生特典の、多くの魔法の意味を拡大解釈すべき?」
かもしれない。
多種、多岐、多重、多能、多量。とりあえずこれくらいを纏めると、主の素質と現状に合いそうな気もする。特に適性が高いのが広域系というだけで。
普通なら魔力が多いと思考を分割する余裕が無くなって、マルチタスクには不利になる。無理に分割すると暴走する……はず。その常識に真っ向から喧嘩を売ってるのが、主と高町なのは。
フェイト・テスタロッサは、高速な近接戦で必要な感覚や魔法を、無意識に処理出来る水準まで鍛えてるだけ。マルチタスクではなく、無我の境地的な何か。考える前に体が動くからこそ、高速戦闘に向くと言える。
そもそも融合騎や後方部隊の支援がないと制御が甘くなる原作の八神はやては、魔力に制御力が追い付いてないと言える。
「エヴァは?」
お姉様のマルチタスク技術は、訓練の賜物。それに、思考の分割と同時に魔力を抑制して、扱う最大量を抑える事で暴走を防いでる。
そこまでやっても高い水準だから誤魔化されるけど、思考を分割した状態では全力での魔法行使は出来ない。シングルタスクでの全力は狂気の領域だから、きっと見る機会は無いけど。
「SSSを軽く超える水準と言っていた覚えはある。
具体的には?」
恒星と惑星数個を同時に消し去っても、お姉様だから、で納得された実績を持つ。使用した恒星の半径は70万kmくらいだから、高々半径130kmのアルカンシェルを鼻で笑えるだけの出力が必要だし、その範囲を影響下に置くことが可能だろうと思われたという事。
実際問題として、低軌道人工衛星がある1000km程度の高度から地球上への爆撃は、精度を考えなければ可能。宇宙でも活動可能なお姉様は、ビームで人がゴミで人類滅亡で盆回り的な結果を簡単に作り出せるし、近いことをやったこともある。最終兵器は伊達じゃない。
仕様上は、夜天と宵天を合わせたよりも強力。私達を納められる事が絶対条件だから、特に容量については奇跡と狂気の産物としか言えない。
それなりに扱えるようになったお姉様の努力は認めるべき。
「普段エヴァが力を使わないのは、過ぎたものだと思ってるから?」
それもあるはず。
そもそも必要じゃない。アルハザードですら全力じゃなくても君臨出来た。地球ならこんな力が無くても普通に生活出来る。
魔力素の消費が厳しいのも一因。お姉様の全力は集まる魔力素の量の制約を受けるし、私達や従者達が必要とする分を差し引く必要もある。
私達が2万人まで増えられたのは、お姉様が訓練以外で魔力を使おうとしないから。その意味では、私達が積極的に遠隔地の魔力素を集めて利用出来る気の技術は有り難い。
力をひけらかすよりも研究する方を好む、奥ゆかしい性格も一因。
「奥ゆかしい……?」
必要があれば力で抑え込むし、気になる事は放っておかない研究者だけど、人としては普通である事を望んでる。特に、懐に入れた人とは、対等に近い関係を望んでる。
お姉様が所長をやってた研究所で、部下達が子供や私生活について相談しに来てたのは、別に偉いからでも子供の姿だからでもない。
手法ややり過ぎる事に苦言を呈した人はいたけど、それで離れた人は少ない。
それだけ慕われてたとは言える。
「……ひょっとして、それが多くの友人という特典の、本当の効果?」
関連性は否定出来ない。
特殊すぎるお姉様を拒絶する人が少なかったのは事実。
ただ、ニコポやナデポの様な即効性は確認出来ない。慕われるのはある程度付き合ってから。
無条件に対象になる事もない。お姉様から離れた人もいる。お姉様を嫌ってた人もいる。
友人になりやすい人が集まりやすい程度の能力?
「随分曖昧。それに、東方じゃない」
ごもっともで。
ビームで~盆回りが分からない人は、ようつべ等で「ビームで人類滅亡」を検索すると、いっぱい該当動画が見付かります。イチローのが有名みたいですね。
エヴァのトンデモ容量ですが、1人1人はSからSSの妹達(byクーネ、小話ズ4)を1万人以上軽く含められる(byリーナ、アルハ編4話)のは伊達じゃありません。
ナハトヴァールですら臨界点までに星1つくらい飲み込む可能性がある(by MOVIE 2ndのリインフォース)のです。それを含む闇の書(夜天の魔導書)の強化型姉妹機(曙天の指令書)の管制融合騎(エヴァ)。ほら、何もおかしくないです。
それに戦力という意味では、オーバーSの魔導師2万人という妹達の方が問題です。
ですが、最大の問題は「地球の公転半径である半径1億5000万kmが収まる人工空間を維持している別荘の設備」じゃないかなー?
リンディやプレシアも「別荘の太陽」が本物だとは思っていませんし。人工空間で地球環境の再現と維持だけでも驚愕レベルです。宇宙の広さを知る者として、流石にそこまでは……という常識が邪魔しています。
2015/02/10 以下を修正
体を再構築すると同時にデバイスも再構築するよう→体と同時にデバイスも再構成するよう
構築直後に→再構成直後に
再構築すれば→再構成すれば
2017/05/03 以下を修正
最も→尤も
奥床しい→奥ゆかしい