青の悪意と曙の意思   作:deckstick

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A’s編33話 繋がる人

 大騒ぎの顔合わせから数日。

 八神はやてが、倒れた。

 

「蒐集もしているし、負荷を抑える様にもしているんだが……

 このイベントは変わらないんだな」

 

 お姉様がため息をついてる今日は10月28日、木曜日。

 原作より1日遅れ。でも、元が木曜日だから、曜日は同じという微妙な状態。

 

「教えといてくれれば良かったのに。

 気構えが出来てれば、もうちょっと慌てんで済んだんよ?」

 

 胸の痛みが治まった八神はやては、自宅のベッドで横になってる。

 原因がはっきりしてるから、病院には行ってない。行っても意味が無いし。

 

「だけど、あまり良くない兆候ね。

 時間が無い証として報告してみようかしら」

 

「そうですね。蒐集しても、侵食の速度があまり変わっていませんし……」

 

 様子を見に来たプレシア・テスタロッサが、八神シャマルと一緒に色々と検査をしながら呟いてる。

 得られた結果も、あまり宜しい物じゃない。

 

「そうだな、是非頼む。今は協力者からしか蒐集していない事になっているから、集めたと言える量が絶対的に足りん。

 その辺はグレアムやリンディとも調整してくれ。うまく言い含められたら、犯罪者対策の話が通りそうだ」

 

 そんな話をしてると、主と成瀬カイゼが帰宅。

 結構急いでる雰囲気。

 

「はやて、大丈夫?」

 

「あら? 学校が終わるにはまだ早いはずだけれど……」

 

「早退だよ。妹の症状が悪化したから、状況の確認と必要なら一緒に検査するために帰る、と押し切ったそうだ。

 僕については、帰り道で倒れられると不味いという学校側の配慮だね」

 

 不思議そうなプレシア・テスタロッサに答えたのは、成瀬カイゼ。

 主は八神はやての方に突撃してる。

 

「問題無いと伝えたはずだが……心配や焦りか?

 感情が戻りかけているという事なら、喜ぶべきか……」

 

「さあ、それは解らない。

 それより、はやては?」

 

「はやてについては想定範囲で、まだ命に別状はない。

 期待した変化が無かったという意味で、問題が無いわけではないが……まあ、その程度だ」

 

「そっか、良かった」

 

 主から、ほっとしてる感じがする。

 やっぱり感情が復活し始めてる?

 

「ふむ、少しは感情が出るようになってきたじゃないか。

 抑制型という解析結果は正しく、特典の破壊も想定通りに機能したと見るべきか」

 

「実感は無いけど、少しでも感情が戻った感想がそれ?」

 

「私としては、感情が戻るならよし、戻らなくても原因が気になるだけで、それもまたよし、だ。

 アコノ自身がらしいと思える自分で居られるなら、それでいい」

 

「……口説かれてる?」

 

「口説くも何も、お前は私の主、関係性で言えば私はアコノの所有物だぞ。

 この関係が失われるのは、死ぬ時だけだ。

 側に居るために無理をすれば、いつか擦り切れるぞ?」

 

「そう、解った」

 

 

 ◇◆◇  ◇◆◇

 

 

 その後、プレシア・テスタロッサとリンディ・ハラオウンの連名で、“闇の書の主”についての現状が報告されて。

 

「リンカーコアに高い負荷をかけて、魔力の回復力を高める訓練があるが、どうする?

 理想的に行けば、魔力の総量が微増、回復力がそれなりに高まる。

 失敗すれば総量が減り、回復力も落ちるからな。落ち着いて考えろよ」

 

 というお姉様の口車に乗った馬場鹿乃と上羽天牙が、金曜の夕方から高負荷トレーニングを開始。

 この際に2人からも蒐集したという書類と治療履歴をでっち上げて、以前のリンカーコアの異常は闇の書と関係ないという状況証拠を作ってみたり。

 

「子供達ばかりに負担をかけるわけにもいかないからね」

 

「というわけで、今の所は余裕がある武装局員の皆様とか、特に魔法を使う用事も無い私達が、有志として協力しようってわけで」

 

「……まあ、きちんと人員の状態やリスクを考えているならいいが」

 

 その様子を見ていたアースラの武装局員や、エイミィ・リミエッタ等のちょっとした魔力持ちオペレータ達が、順に蒐集に協力する事になったり。もちろん、切り札のクロノ・ハラオウンや奥の手のリンディ・ハラオウンは対象外。有事の際に動けないのは困る。

 これで、犯罪者の件が通らなくても、管制人格の起動までは確実に到達出来る確信が持てた。対外的にも説明出来る蒐集だから、実績としても問題ない。

 

「付近の世界ですと、第108無人世界辺りが手頃そうで御座いますな。

 生物がほとんどいないにも関わらず、小さな海に藻の様な植物があるおかげで呼吸が可能な大気を持つという、なんとも奇跡的な惑星が御座います。

 赤道付近の最高気温が5℃程度で気圧も低めという環境の為に入植に向かず、魔力素が薄めで魔導師には少々厳しく、遺跡類も確認されていないため、仮に崩壊したとしてもさほど気に病む必要も無いと思われます。現地に電子機器やデバイス類が無く、我等が行く事は不可能で御座いますので、あくまでも資料上での話では御座いますが。

 グレアム提督も有力な候補と考えている様子で御座いましたので、考慮されてはいかがで御座いましょうか」

 

 その夜、チクァーブが報告してきたり。

 ちなみに、この世界の名前はルスター。違法な魔導師等が逃げ込んでいないか確認するために、時空管理局の調査員が極稀に訪れる程度で、基本放置されてる。環境としては、赤道付近の平地が富士山の山頂に似た感じだと思えば、想像しやすい。

 高山病予防用の術式があれば活動可能だし、人が住む世界から少々離れていて小規模次元震程度なら被害も出ないし、最悪壊れても問題ない。

 これらを説明し終える頃には、お姉様的にも有力候補として考えてた。

 

 そんな感じで日々が過ぎ、土曜には時空管理局の説得に一応は成功したらしい。

 というわけで、家族代表兼蒐集担当として、八神チャチャが行く事になった。守護騎士達は色々な問題を抱えるし、闇の書の起動に関して勘繰られても面倒。主に金子狗太の情報的な意味で。

 移動はアースラから複数の転送ポートを経由して。その使用許可が下り次第、作業を開始すると決まった。

 

「そんな感じだから、1週間以内には作業を開始出来るはずよ」

 

「1週間以内か……お役所仕事で長いと見るべきか、こんな無茶な案が通るには短くて済んだと見るべきか。微妙な期間だな」

 

「裏からの介入の可能性を考えると、短くて済んだと言うべきかしらね」

 

 というわけでお姉様は今、アースラの現地拠点でリンディ・ハラオウンやプレシア・テスタロッサと一緒に、お茶を飲みながら会話中。

 打ち合わせと言うよりは、雑談に近い雰囲気だけど。

 他の拠点の人、つまりエイミィ・リミエッタやカリム・グラシア達は、さっきまでこの部屋に居た。今は夕食の準備と日本の社会を知るという名目で、クロノ・ハラオウンとシャッハ・ヌエラを護衛役にして外出中。聖王教会や本局では着られない服を見たり着たり出来るのは、なかなか楽しいらしい。

 テスタロッサの娘達は、高町家。アリシア・テスタロッサはじっくりと体力作りをしてるし、フェイト・テスタロッサは最近剣術の型を教えられるようになってる。アルフも体のさばき方なんかを指導されてるし、3人共戦闘民族に気に入られてる。

 

「まあ、管理局側の準備が出来次第、チャチャが動くことにする。下手に守護騎士達を動かすわけにもいかんし、私が動くより平和だろう?

 DかEランク相当の魔力に見せて、闇の書の蒐集を実行させるのがギリギリの実力だと思わせておけば、余計な警戒もされにくいんじゃないか?」

 

「確かにそうだけれど……また、未確認の魔導師を増やす事になるわね。

 前線に出れない実力であれば問題にはされないでしょうし、別の事が難しい実力であれば警戒はされないでしょうけれど、暴走する人が現れる可能性はあるわ。

 その辺はどうするつもり?」

 

「クロノ辺りの実力者に、監視や案内という名目で実質的な護衛をしてもらうのが一番だろうな。後は、迂闊な事をすると暴走する危険があると警告しておくくらいか。リーゼにも付いてもらえたらクロノの負担が減るだろうが……拒否される可能性はあるだろうな。

 闇の書がチャチャから離れたら不安定な状態になるようにしておけば、いくら阿呆でも理解出来るか?」

 

「そんな危険物を持ち込むなと言っている人達が、転送ポートの使用許可を出さないようにしているみたいだけれど……隔離施設であれば大丈夫かしらね」

 

「闇の書を無理に抑え込む事の弊害だが、チャチャが命を張って対処している事にして、同情してもらう方向はどうだ?

 実際、まだ起動していない事になっているんだから、色々と無理をする事は間違いないしな」

 

「そんな事をしなくても、話がスムーズに通ってくれればいいのだけれど」

 

 そんな感じで愚痴大会になりかけた時、玄関が開いた。

 具体的には、テスタロッサ家の娘達が帰ってきた。

 

「あら、お帰り。アリシア、フェイト、アルフ」

 

「ただいまー!」

 

「ただいま、母さん」

 

「今日も怪しい気配は無かったよ。

 だけど、エヴァや恭也達がいるんだから、ここまで警戒しなくてもいいんじゃないかい?」

 

「何を言っているの。手出しをしてきたゴミがいる以上は、警戒しない理由が無いわ。

 それとも、自分の主を守る事が嫌だとでも言うのかしら?」

 

「そうじゃないけどさ……訓練に集中出来なくて、なんか悪いんだよ」

 

 ちょっとお疲れに見えるアルフ。

 プレシア・テスタロッサに厳命されて、外出中はずっと警戒し続けてるのが原因。

 両方の気持ちは理解出来るし、家族の事だから口出しはしない。

 

「プレシアさん、口調があまり子供に聞かせられない感じになっているわよ?」

 

「あら。駄目ね、こんな事ではアリシアとフェイトを怖がらせてしまうわ。

 ところでアリシア、エヴァンジュに言いたい事があったのでしょう?」

 

「うん。

 ……えへへ」

 

 プレシア・テスタロッサの強引な話題転換に促されて、前に出てきたアリシア・テスタロッサ。

 何故か、曖昧な笑みを浮かべてる。

 

「どうした。別に悪い事じゃなさそうだし、言いたい事を言えばいいんだぞ?」

 

「うん。えーと、おねえちゃん、ってよんでいい?」

 

「姉、か。それは構わんが……フェイトの方が大きいのに妹だから、甘えにくいのか?」

 

 割と甘えてる気はするけど。

 でも、フェイト・テスタロッサはアリシア・テスタロッサを姉として扱ってるし、アリシア・テスタロッサ自身はさほど気にしてない感じだけど。

 

「ううん。きんぱつどーめー!

 エヴァおねえちゃんでしょ、シャマルさんでしょ、カリムおねえちゃんでしょ、アリサおねえちゃんでしょ、フェイトでしょ。

 いっぱいいるよ?」

 

 確かに関係者には金髪が妙に多い。

 学校や幼稚園には少ないから、仲間が欲しくなった?

 アギトとユニゾンした八神シグナムは……入れない方がよさそう。今は魔法を教えてないし。

 だけど、姉呼びをいちいち確認してくる辺りは、律儀としか言いようがない。

 

「ふむ。ユーノは入れなくていいのか?」

 

 細かいところではアレックス・オーラムも金髪だし、武装局員にもちらほらといる。

 まだ会わせてないけど、ヴィヴィオもそう。

 でもまあ、この辺はいいか。

 

「あ……えへ。

 えっと、うん。わすれてない……よ?」

 

「そうか、忘れていなかったか。

 金髪同盟を作って、何をしたい事はあるか?」

 

 どう見ても忘れてたけど。

 でも、むやみに掘り返すのも大人気ない。

 

「んー、かみのおていれ?

 かみはおんなのいのちだー、とかきいたよ?」

 

「……プレシア?」

 

「いいえ、そんな事は教えていないわ。

 髪なんかより、笑顔の方がよほど大事よ」

 

 お姉様の疑惑の視線を、あっさりと跳ね返したプレシア・テスタロッサ。

 遺体を必死で維持してきた過去を持つだけに、重みが違い過ぎる。

 

「リンディ……ではなさそうだし、エイミィあたりか?」

 

「あら、その辺は信用してもらえているのかしら。

 エイミィは……違和感が無いわね」

 

「うん。エイミィおねえちゃんがいってたよ」

 

「そうか。しかし、髪の手入れか……髪の長さではプレシアやリンディもかなりのものだ。

 話を聞くと参考になるぞ?」

 

「エヴァおねえちゃんは?」

 

「私は自分でやっていないからな。だから、どうすればいいか解らん」

 

 実際は、無限再生でベストな状態を維持してるだけだし。

 主や私達、チャチャマル、チャチャゼロ、従者達も同様。確実に使い魔達の方が詳しい。

 最近になって八神はやての髪で慣れてきたけど、私達が参加するのは意味がある?

 

「そっかー」

 

 でも、それを抜きにしても、お姉様は参加すべき。

 アリシア・テスタロッサを困らせると、5+26年モノの過保護者が怖い。

 

 

 ◇◆◇  ◇◆◇

 

 

 こんな感じで一見静かな状態を維持したまま、火曜日になり。

 ようやく凶悪犯に限っての全力魔力蒐集が認められ、八神チャチャが蒐集担当として時空管理局の本局……ではなく、本局の比較的近くにある収容所へと転送ポートで送られた。

 もちろん、闇の書を持って。起動していないように見せるために鎖で縛ってあるから、蒐集時も見た目上は本を開かずに行う。

 予定通りに、監視兼護衛としてクロノ・ハラオウンが同行。収容所に着いた時点でクロノ・ハラオウンからの紹介という形でリーゼ姉妹も合流し、この3人のうち誰かが常に傍にいる事になった。相変わらずリーゼ姉妹の視線がきついけど、オハナシした結果だから仕方ない。対外的には11年前の事件を引き摺ってる事になってるから、変な行動に出ない限りは問題ないし。

 そして、本局近くでリーゼ姉妹の保護下に入るなら、ギル・グレアムの世話になるという流れになるのは当然で。

 

「君には随分と世話になったが、望んだ結果を出せているかね?」

 

 自ら足を運んできたギル・グレアムと面会なう。

 場所は、収容所にある会議室。

 特に盗聴などがされてない事は確認済み。わざわざこんな所を盗聴する酔狂な人がいないし。

 

「今のところは、想定範囲内。

 今後危険性があるかどうかは、管制人格の起動でどこまで介入出来るようになるか次第」

 

「なるほど。危険な橋を渡らずに完了する見込みはどれほどかね?」

 

「正直に言えば、可能性はあまり高くない。

 過去の事例や改変の記録を見る限り、管制人格を起こし、現状とあるべき姿の確認と調整を行う際に、障害となる防衛プログラムを力尽くで排除する事になる可能性が高いと見てる」

 

「そうか、リンディ提督から伝えられた情報からの変更は無いか。

 エヴァンジュも同意見という事でいいのだね?」

 

「当然。排除の際に問題になりそうな、時空管理局や裏側の方の調整や対処は大丈夫?」

 

「使用する世界の選定は行っているし、その際に同行する者の人選も進めている。

 様々な(しがらみ)もあって、数名の高官と、査察官や執務官を10名程、他に数人は連れていくことになりそうだが……関係各所を納得させられる人物という時点で、なかなか難しくてね。

 人格や行動基準については、保証し切れないかもしれない」

 

「予め要警戒の人を挙げておいてもらえると、対策しやすい。

 問題になるのは、半数くらい?」

 

 むしろ、半数で済めば御の字。

 ギル・グレアムが関係した組織的にも、最高評議会的にも、真っ黒な人物が多く混じるはず。

 清廉潔白な人物が数人でも混じれば奇跡。そんな人だけが集まる事は、最初から期待しない。

 

「そうだね。ある程度は説得もするし、私も同行する。

 老いたとはいえ、勇士と呼ばれる身だ。枷となる事くらいは出来るだろう」

 

「解った。

 可能なら説得に使える資料を探すから、人選が決まったら教えてほしい」

 

「無限書庫、か。うまくいけば、本格的に稼働させられそうという話じゃないか。

 つくづく、君達には驚かされるよ」

 

「私達が中心で動けたのは、偶然が重なった結果。狙ってやったわけじゃない。

 本来はユーノ・スクライアに任せる予定で、デバイスも実力の底上げを狙ってた。

 ただ、思ったよりも危険な情報が多く見付かってる。私達から見たら、闇の書の闇より、時空管理局の闇の方が怖い」

 

「それに付いては、リーゼ達やクロノ、リンディ提督からも話を聞いている。

 私自身も理念から外れた身だ、否定もし辛いが……今は改善する為に構想を練っているところだ。

 君達が夜天の魔道書を知るように、私達は時空管理局を知っているつもりだ。今すぐというわけにはいかないが、可能な限り何とかしよう」




2014/03/28 チャチャシリーズを金髪軍団から除外
※ネギまの1巻カラーページや3巻表紙、アニメの茶々丸は淡い金髪に見えますが、12巻のチャチャゼロや21巻以降の茶々丸は緑系みたいです。一般的にはどっちの印象が強いんでしょう……?
 私はどうも金髪というイメージが強いのですが。
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