青の悪意と曙の意思   作:deckstick

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A’s編38話 ○○の秋

 旅館から出たお姉様、主、プレシア・テスタロッサは。

 若草色で鞠をいっぱいあしらった振袖を着て嬉しそうな八神はやて、巫女装束(脇は出てない)の八神シャマル、戦国時代を連想させる甲冑姿の八神シグナムと会って。

 ……これは、どんな品揃えの貸衣装屋だと驚愕していいレベル。

 

「1人、どうしたと聞きたくなる人物がいるんだが」

 

「お店の人のオススメや。な、シグナム」

 

「動きやすく、不良やらに絡まれた時に対処しやすい服装と言ったら、これを薦められてな。

 トモエゴゼンと言っていたが」

 

「……うん、まあ、戦装束ではあるな。

 貸衣装で戦うなという話はあるし、動きやすいかというと……」

 

「振袖というものよりは、激しく動いても大丈夫だと聞いている。

 剣道の防具のようなものだと思えば、それほど違和感もない」

 

「……そうか」

 

 そんな感じで、何を出されるのか戦々恐々としつつ。

 到着した貸衣装屋で相談した結果として。

 

 お姉様は、黒地にタンポポの振袖に。

 主は、常磐色の地に梅の花をあしらった振袖に。

 プレシア・テスタロッサは、カサブランカ柄の黒留袖に。

 それぞれ、着替える事になった。

 だけど、車椅子でも着やすいよう加工された振袖が、よく主と八神はやてが選べるだけあったなとお姉様も感心する品揃え。

 

「プレシア、本当にそれでいいのか?

 私やリンディが黒だからといって、合わせる必要は無いんだぞ。色留袖も置いてあるし、格が必要な場面でもないしな」

 

「いいじゃない、大人の女性はこういった色合いが主流なのでしょう?

 郷に入っては郷に従え、こういったものは慣れも必要よ」

 

「まあ、それでいいなら構わないが。

 っと、どうしたアコノ」

 

 店員が、主用の着物を取りに、店の奥に行った時。

 主が、お姉様の手を握った。

 

「着替えを手伝ってほしい。

 具体的には、服を脱がせて。背中のボタンを外すのが難しいから、自分では無理」

 

「……そういえば、今日はそういう服を着させられていたな」

 

「苦情はチャチャマルに。

 少し恥ずかしがった方が嬉しい?」

 

 胸の前で手を交差させ、いやんいやんみたいな感じの仕草をする主。

 表情を見る限り、恥ずかしいとか欠片も感じてなさそうだけど。

 

「着替えも裸も、今まで散々見ているんだ。今更恥ずかしがられてもな。

 感情を思い出す練習としても……その方向はどうなんだ?」

 

「エヴァも思い出してみる?」

 

「私は女として百合に目覚めるべきなのか?

 それとも、男として劣情を感じればいいのか?」

 

「エヴァが自分らしいと思える方で。

 それに、大人になったり出来るなら、男になるのも不可能ではないと思える」

 

 残念ながら、性別の変化は、かなり負荷が大きくなるという計算結果が出てる。

 何故か、下腹部の変更の負荷が大きい。

 主がお姉様に抱かれたいなら、所謂フタナ(やめんか! そもそもアコノは10歳だろうが!)……怒られた。

 

「あと、前世でも未経験。知らない事を知る努力は必要」

 

「知識はともかく、この経験はそういうものじゃないだろう」

 

「だからエヴァを相手に選んでいる。

 大切と思える相手。定義上は問題ない」

 

「いや、問題ありまくりだからな?」

 

 

 ◇◆◇  ◇◆◇

 

 

 何だかグダグダになりつつも、着替えを済ませて旅館に戻ってきたお姉様達。

 そこで一頻り写真を撮ったり着崩れがどうのと話をしたり、それなりに堪能した後で元の服に着替えて。

 一度お風呂に入ろうと、みんなで入浴した頃に男連中が戻ってきて、ロビーに1人放置されてたクロノ・ハラオウンと合流して、執事やチャチャマルと合流すればよかったのにと突っ込まれてたりもしたけど。

 そろそろ予定の時間だから、夕食を食べに行こうという事になった。

 

「……もう食べるの?」

 

 うん、なんだかお腹が空いてなさそうな上羽天牙がいるけど、食べるの。

 

 というわけで、夕食の時間。

 食事場所として割り当てられた宴会場に並んでるのは、会席料理。

 

「せっかく日本の温泉旅館に来たんだから、やっぱり和食でしょ。

 高級な懐石だとスプーンとかフォークを断られるし、こういう所の方が、高い漆器に傷をつけて揉めたりしなくて済むしね」

 

 とは、選んだアリサ・バニングスの弁。

 ちなみに、食事中の状況を適当に表現すると。

 

 ひたすらいちゃつく、高町恭也と月村忍。

 ひたすら娘達を構う、プレシア・テスタロッサ。

 

 この2組の印象が強すぎて、口の中が甘い。

 他の人の状況を見る限りは、穏やかな食事風景。イカやタコの刺身が初体験らしく、恐る恐る食べてるカリム・グラシアがちょっと可愛い。

 美女美少女が多いせいか酔っ払いが入ってこようとしたけど、お姉様に念話で指示されて威圧に出た馬場鹿乃を見て逃げてったから実害なし。髭面巨体のインパクト勝ち、外見だけでも役に立った。

 

 その後は、またお風呂に行ったり、部屋でお酒を飲んだりしてから就寝。

 あえてダブルの部屋を取ってる誰かさん達の部屋は見ない。見ないったら見ない。

 

 

 ◇◆◇  ◇◆◇

 

 

 夜が明け、旅館としてはごく普通、ご飯に味噌汁に小さい焼き魚に漬物にといった内容の朝食を食べてから。

 

「今日は山! そしてバーベキュー!

 張り切って行くわよ!!」

 

 というアリサ・バニングスの掛け声とともに、山に向けて移動開始。

 といっても、道のほとんどは舗装された温泉街の中。荷物はバーベキューの施設近くまでバスで移動する執事やメイドの5人が運ぶことになってるから手も軽い。お店やらを覘きつつ、のんびり散策を兼ねてる。となると、当然の帰結として。

 

「エヴァさん、ここの炙り牛の握りがおいしかったよ」

 

「ん、そうか」

 

「エヴァ、私も食べる」

 

「解った。2つだな」

 

 黒羽早苗に案内されたお姉様が主と買い食いしたり。

 

「酒粕のソフトクリーム?」

 

「エヴァ、気になるなら食べよう?」

 

「そうだな」

 

 見かけた物に惹かれたお姉様が主と買い食いしたり。

 

「美味しかったけど、口の中が冷たい」

 

「ちょっと肌寒いしな。そこでコロッケが売っているようだが、それなら温かいか」

 

「揚げたてだといいけど」

 

「ちょっと、今からバーベキューだってのにどんだけ食べるつもりよ!」

 

「忘れたか? 私の胃袋は特別だ。いくらでも食えるぞ」

 

「私も似たようなもの。だけど、つられて食べてる人達までは責任を持てない」

 

「そういう問題じゃなーい!!」

 

 更に買い食いしようとするお姉様と主にアリサ・バニングスが吠えたりしたけど、いつも通りの風景。その後ろで仲良くソフトクリームを食べてるカリム・グラシアとヴィヴィオや、テスタロッサ親子は見なかった事にしよう。既にコロッケと牛串を持ってる馬場鹿乃も。

 

「まあまあ。エヴァさんは、普段はそんなに食べへんし。

 たまにちょっと羽目を外すくらいは、ええと思うんやけど」

 

「甘いわよはやて。このタイプは目を離したら、何を仕出かすか解んないんだから」

 

「けどなぁ。こうやって外で色々食べた後って、別荘で似たものが食べれるようになることが多いんよ。

 味とかの情報を集めてるとしか思えへん」

 

 実際は、お姉様や主の感想を集めてる、が正しい表現だけど。

 美味しい料理なら私達や従者達がレシピに加える候補の上位に入れて、改めて作り方を調べたりする。

 

「……そういえば、ずいぶん貧しい食生活だったとか言っていたような……」

 

「さて、何の話だったか。

 ん? 鹿児島からやってきた酒寿司……?」

 

「絵は、押し寿司に見える」

 

「面白そうだな。食べてみるか」

 

「ちょっと待ちなさーい!!」

 

 

 ◇◆◇  ◇◆◇

 

 

 そんな感じで、昼近くに到着したバーベキュー場、意外な事に完全貸し切り状態。

 もうすぐ着くと連絡しておいたから、メイドや執事達により炭火の準備も概ね完了していて。

 

「今からバーベキューなんだけど……あれだけ食べといて、本当に大丈夫なんでしょうね?」

 

 アリサ・バニングスが睨んでるけど、お姉様は全く気にしてない。

 

「大丈夫だ。せっかく誰も見ていないんだ、どんどんいくか」

 

 お姉様がそう言いながら出したのは、大きいクーラーボックス。

 中身は、カルビ ヒレ ハラミ 若鶏 ひね肉 ラム肉 マトン肉。 だけど何より、牛と豚の区別が足りない。

 他にも野菜やサーロイン等々、いっぱい入り過ぎてて意味不明とも言う。

 

「ちょっと、何やってるのよ!」

 

「ちまちま出すより問題は少ないと思うが。

 アリシアが山の方を見ていたのは確認済みだ」

 

「よんだー?

 ……あれ? こんなおっきいの、あったっけ?」

 

「さっき持ってきたぞ。

 とりあえず、この皿をみんなに配ってくれ」

 

「はーい、おねえちゃん」

 

 アリシア・テスタロッサが皿を配りに行き、入れ違いで来たのはフェイト・テスタロッサ。

 

「お、お姉ちゃん。私も、何かする事あるかな?」

 

「呼ぶ度に緊張するくらいなら、他の呼び方でもいいんだぞ。

 そうだな、箸も配ってしまうか。箸が苦手な人にはこっちのフォーク、それとタレを希望者の皿に入れてくれ」

 

「うん、わかった」

 

 という会話でテスタロッサ姉妹が給仕役っぽくなってきたあたりで、メイド達からちょっと非難するような視線が飛んできた。

 曰く、仕事を取るな。

 何故かチャチャマルも似た視線を送ってるけど、よくある事。問題ない。

 

「さて、ここからは食事の時間だ。

 食欲は充分か?」

 

「あーもう! 後で一番いい肉を寄越しなさいよ!」

 

 そして始まる、バーベキュー大会。

 コンロは多めに確保してあるし、肉に野菜に烏賊に貝に鰻にと、食材も色々ある。おにぎりやパンといった主食はもちろん、枝豆や漬物、飲み物、変わり種としてチーズフォンデュや魚のカマ、バナナやリンゴといった焼ける果物も用意。

 メイド達のコンロでは、スペアリブを煮込んだり、じゃがバターを焼いたりもしてる。

 

「焼くだけならシャマルでも大丈夫やろ。やってみるか?」

 

「これは味付けねーもんな」

 

「外は黒焦げ、中は生とならなければよいが」

 

「ひ、ひどいっ! 火加減だけは間違えないですっ!」

 

 何だか仲間にいぢめられてる人がいるけど、見なかったことにして。

 

「この様な食事は、ヴィヴィオさんはどうなのですか?」

 

「戦場ではもっと簡素でしたよ。食材の質もこちらの方が良いですし、楽しみです。

 カリムはどうなのですか?」

 

「騎士団の訓練で、似たものを食べた経験はあるのですが……緊張や食べ慣れないものだったせいか、あまりおいしいとは思えませんでした。

 それに、脂分の強いものは少し苦手なんです」

 

「それなら、魚介類や野菜が良いでしょう

 ポン酢も使えば、あっさり食べられそうですよ」

 

 食べ慣れてない人達同士で、色々考えるのもよし。

 

「い、一番いい肉とは言ったけど……」

 

「ステーキ用のサーロイン、だよね……すっごく高級な……」

 

「にゃ? そんなにすごいの?」

 

「……多分、それなりのお店だと、サイコロに切ってあるコレ1切れ分で、翠屋のシュークリームを5個以上食べられると思うわ……」

 

「これ、本当に私達が食べていいのかな……

 リンディさんとか、偉い人達に渡した方がいいんじゃ……?」

 

「そ、そんなにすごいの……?」

 

 原作無印3人娘の様に、渡されたものが予想以上で、気後れして迷うのもよ……くない。

 これはさっさと食べるべき。

 

「こ、この肉は……!?」

 

 馬場鹿乃は一口食べた時点で、固まってるし。隣にいる上羽天牙は声すら出てないし。

 

「うん、相当いいのを持ってきてるね。

 これはエヴァさんに感謝しないと」

 

「鑑定出来る知識は無いけど、いい物なのはわかるね。

 料理人としてはどうなんだい?」

 

 成瀬カイゼは、高町なのはと同じく知識不足。ついでに感動も不足してる。

 

「んー、このリブロースを見た感じだとA5は確実、BMSの10以上じゃないかな?

 色も味もいいし、かなり高かっただろうけどいい肉を選んでるよ。脂分が多いから、こってりが苦手な人には向かないけどね」

 

「つまり、良いものなんだね?」

 

「うん。普通のお店だと、A5といっても8や9が多いはずだよ。11までいくと高級店でしか扱えないし」

 

「値段的にかい?」

 

「そうだね。んー、このお肉1人分で考えても、産地や買い方にもよるけど店頭価格3000円で買えるか微妙かな?

 ヒレのシャトーブリアンっぽいのがエヴァさんやアコノさんのとこにあるのは、ちゃっかりしてると思うけど仕方ないかな」

 

「安売りされるようなものじゃない、という事だけは理解したよ。

 シャトーなんとかってのも、いい肉なのかい?」

 

「あのグレードだと、えーと、1万円以上は確実じゃないかな。

 小さなホテルだと縁のない食材だよ。個人で買うにも高すぎだし」

 

「……高級だね」

 

 転生者の男連中の様に、知恵袋の黒羽早苗を中心に肉の話で盛り上がるのもよし。

 

「おいしいのだけれど……」

 

「やっぱ、カロリーがなー」

 

「どれも美味しいのが解るだけに、どうしよう……」

 

「それでしたら、鶏や羊はどうでしょう? 牛程ではありませんが、良い物ですよ」

 

 転生者の女性達は、明らかに体重を気にしてる。

 そこにやってきたノエル・K・エーアリヒカイトが持ってるのは、鹿児島産の地鶏と、北海道産のラム。

 他に、レバーやハツといった内臓系の肉もある。こんなのを食べるのもよし。

 

「牛タンというのが、一番あっさりしていていいわね」

 

「ハラミってのもなかなかいいよ」

 

「軟骨の歯ごたえも捨てがたいでしょ」

 

「えーと、これは鶏のモモでしたっけ」

 

 異世界組の様に、いろいろ食べて楽しむのもよし。

 一番純粋に楽しんでるのがここの様な気がするけど。

 

「……」

 

「……」

 

「そんなにがっつかなくても、逃げやしないよ?」

 

 一心不乱に食べるザフィーラとチクァーブを、アルフの様に生暖かい目で見るのもよし。

 テスタロッサ一家がお姉様の近くにいて、その輪からは一歩引いた位置に3人(?)がいる。言葉が無くても、ひたすら振れてるザフィーラの尻尾が全てを物語ってるけど、見なかったことに。

 アルフも尻尾を隠してなければ似たようなものだろうし。

 

 そんな中、プレシア・テスタロッサの宣言を聞いたお姉様は、ちょっと驚いてる。

 

「……本当にいいのか?」

 

「ええ。私達の中で過ごしている以上、いつかは気付くわ。

 話していい事と悪い事の区別がつくなら、秘密を作りたくないもの。知られてから話すより、先に話しておいた方が色々と都合がいいのよ」

 

「懸念が無いとは言わんが……伝えない事に支障が無いわけでもないか。

 大問題にはなりそうにないし、私には強く反対する理由も権利も無いな。いつ伝えるんだ?」

 

「今よ。ねえ、アリシア」

 

「ん? なあにママ?」

 

「魔法について、きちんと教えようと思うの。だけど、今ここにいる人達は良いけれど、他の人に話してはダメよ。約束出来る?」

 

「うん! わたしも、まほうをつかえるようになるかな!?」

 

「ええ、きちんと練習して、もっと大きくなれば、間違いなく使えるわ。

 だけど、魔法を見た事があったかしら……?」

 

「びょーいんで、つかってるひとをみたよ?

 それに、むかしはママもつかってたよね。ピクニックにいくときとか」

 

「……覚えていたのね。

 ありがとうアリシア。思い出を忘れずにいてくれて」

 

「わぷ、ママー、ふくよごれちゃうよー」

 

 割とあっさりと、アリシア・テスタロッサへの魔法ばれが行われたのもよし……かな?

 魔法が一般的な世界の出身で、しばらく本局にいた以上は、そりゃあ見た事もあるよね。

 仲間外れになってる事も多かったし、家族としてはこれで良かったかも。

 魔法の隠蔽も、高町なのはよりもしっかりしてそうだし。

 

「エヴァさん、これで、ここにいる全員が魔法を知ってるんやろ。ついでに、夜天さんをお披露目せえへん?

 私の言う事が聞こえるなら、名前も付けたいし。いつまでも夜天さんとか闇の書さんとか呼ばなあかんのは、なんかいやや」

 

「そうだな……状況としては前回の様になるが、夜天の言葉を私が伝えればいけそうだな」

 

 というわけで、急遽開催される事になった夜天お披露目会。

 念のため人払いや各種結界を仕掛けて、準備完了。

 観客達は食事をしながらも、興味津々で見てる。

 

「それじゃ、始めよか。おきろー」

 

 前回同様の方法で、八神はやてが夜天との接触に挑戦。

 今回は認識阻害も最初から防いでるし、姿がばっちり見えてる。

 周囲からは、おお、とか声が聞こえてるけど、今は無視。

 

「はやて、夜天が出てきたぞ。

 見えるか?」

 

「おきろー……うーん、見えへんなぁ。

 本の辺りにいるんか?」

 

「そうだな。本の真上、はやてがまっすぐ前を見れば視線が合うような位置だ」

(夜天、通信は大丈夫だな?)

 

(ああ、大丈夫だ。だが、済まない。あまり調査は進められていないのだ)

 

「そっか。話はできるやろか?」

 

(とりあえずは、私を経由しででもはやてと話が出来ないかを試すのが主目的、情報を渡すのがおまけだ。それ以上は期待せんが、まずは基礎構造の情報転送の続きを始めるぞ。

 あと、はやての声は聞こえているな? 声を出すことは?)

 

(我が主の声は聞こえているが、声を出すのは難しい。少なくとも、情報を受渡ししながら話す事は不可能だろう。主自身が直接認識出来ない以上、無理に行うのは得策ではない。

 こちらからも、現時点で得た情報を全て渡そう。解析の役に立てば幸いだ)

 

「夜天が声を出すのは難しいようだな。録音してでも聞かせられたらと思ったが、もうしばらくは保留だ。

 はやての声は聞こえるらしいから、伝えたいことがあるなら、遠慮なく言えばいいぞ」

 

「そっか。いるのはこの辺やね?

 こうやって話っぽいことをするのは初めてやから、えっと。

 初めまして。夜天の魔道書の主をやらせてもらってます、八神はやていいます」

 

(これはどうもご丁寧に。私は闇の書の意思と呼ばれております)

 

 何をやってるんだろう、この2人は。

 特に夜天。律儀なのか天然なのか。

 

「お見合いじゃないし、生まれてからずっと寄り添っていた仲だろう。

 というか、お前の声は、今はまだ私にしか聞こえないんだ。もう少しそれを意識してくれ」

 

 あ、って夜天が慌ててる。

 何故か知らないけど、手をパタパタしてる。

 コホン、って感じで咳払いした。

 

(済まないエヴァンジュ、今はまだ呪われた身だが、受け入れてもらえて嬉しい、と伝えてくれるか)

 

 なかったことにしたー!

 

「何だか思っていた性格と異なる気がするが……まあいいか。

 はやて、夜天は共に在れて嬉しい、と言っているぞ」

 

(なっ!? エヴァンジュ、何か変わっているぞ!?)

 

(呪われた身とか言われて、はやてが喜ぶわけがないだろう。

 あまり自分を下げるな)

 

「そか。んじゃ、闇の書とか、もう呼ばせへん。夜天の魔道書も、全体を指す名前や。

 だから、名前をあげる。闇に負けない、強く支える者。(チカラ)の統率者、リインフォース」

 

(我が主……ですが、今は管理者権限が制限されています。

 闇の書の名を消すことは出来ません。その名は、今は呼称として認識します)

 

「だから直接は伝わらないんだと何度言えば……

 はやて、今はまだ名前の書き換えも出来んらしい。あだ名のようなものとして認識するが、本当の名として設定するのは、書の完成後になりそうだ」

 

「そか、やっぱ完成させなあかんか」

 

「そうだな。

 というわけで、お前達もリインの呼び名が解禁だ」

 

「これで一安心ってわけね。

 何かあったらぽろっと言いそうで怖かったし」

 

「だな。やれやれだ」

 

 ほっとしてるのは、夜月ツバサと馬場鹿乃。

 主は特に変化なし。そもそも、そこまで詳しい人もあまり多くない。

 

「貴女達は、この名を知っていたのですか?」

 

「あいつらは知ってたみてーだけど、私はそんなに詳しくねーんだ」

 

「そうね。私の知識もそれほど多いわけじゃないから、名前までは知らなかったわ」

 

 こそっとカリム・グラシアが長宗我部千晴や真鶴亜美に尋ねてるけど、この2人は知識不足。

 既に原作という枷から解放されつつあるとも言える。

 

(済まないエヴァンジュ、そろそろ限界だ)

 

(そうか。基礎構造の転送は……それなりに進んだな。

 こちらでも解析をするが、他に必要な情報があったら、遠慮なく言ってくれ)

 

(ああ)

 

 リインフォースの姿の消滅と、通信の断絶を確認。

 認識阻害も終了してる。結界の解除が可能に。

 

「今日はここまでのようだ。

 まあ、顔見せと名前を伝える事は成功したから、結果は上々か」

 

「そやね。んじゃ、今からはバーベキューの続きや。

 リインフォースがちゃんと出れるようになったら、またやろな?」

 

「そうだな」




はやては「INNOCENT 桃の節句メモリー」か「INNOCENT フラワーウィンド」
アコノは「FIGUMATE 近衛木乃香」
あたりで探すと、それっぽいのが見付かるかと。
他の人(シャマルの巫女、シグナムの巴御前、エヴァ、プレシア)は、雰囲気と妄想力で。特に巴御前は色々なパターンがありそうですが、お好みのモノを着せてください。


ようやく、今回で「リインフォース」の名が表立って使えるようになりました。
でも、コンピュータやらは融通が利きません。権限が無いと、名前の変更も出来ないのですよ。
というわけで、今はまだ「別名」として自分を指すと理解するに留まります。


2015/02/25 話す事はは不可能だろう→話す事は不可能だろう に修正
2016/04/06 ママ―→ママー に修正
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