あれからのあらすじ。私達とチクァーブが付き合う事になったらしい?
現実問題として、何が変わるのかよく解らない。今でも協力関係という形でやり取りはあるし。
とりあえずは様子見。それよりも、今からはきっとドロドロした時間。
地球の人達は帰った方が良さそうなので、順次送り届けて。残ってるのは、アースラ及び本局にいた顔触れ。
「その様子では、結論は出たようだが……
何故そんなに並んでいる?」
その中からお姉様の正面に進み出たのは、ヴィヴィオ。
その横には提督3人とカリム・グラシアが並んでる。
「その説明の前に、1つお願いがあります。
少々無茶をしたいのですが、協力して下さいますか?」
「私に可能な範囲なら構わんが……何を思い付いたんだ?」
チクァーブに気を取られ過ぎたせいで、誰も話を聞いてなかったし。
別に悪い事を考えるわけじゃないだろうと、信用したいところではあるけど。
「まずは、先ほどの願いの結論から。
ゆりかごの解析と改造をお願いします」
「改造、か。聖王として表に立つ気か?」
「はい。その上で、もう1つ協力してほしい事があります」
「この先は私が言おう。
君達に、ある役職に就いてもらいたいのだよ」
「は?」
ギル・グレアムが話すという事は、時空管理局関連の役職のはず。
その上で、お姉様達……達?
「表舞台に立つ気は無いぞ
それに、私達とはどういう事だ?」
「いろいろ検討したのだが、これが最も混乱を抑える事が可能だと思えるのだよ。また、“原作”を見せた意図であろう、回避すべき未来の災いにも対応出来る。そう判断したのだ。
今の最高評議会の断罪は、行うべきだ。だが、そうすれば時空管理局は大きく動揺するのは確実だろう。現在の“裏側”に属する者達をどう更生するのか。情報などの流出をどう抑えるのか。何より、何を以て時空管理局再生の象徴とするのか。問題は多くある。
そして、アルハザードの遺産である君達も、丁度3人だ。新生最高評議会として、人には不可能な視点から世界を見守ってほしいのだ」
「ちょ、ちょっと待て!
私は兵器であり、主を持つ魔導具であり、元は人間の精神を持っているんだぞ!?
人には不可能な視点で見守るなどあり得ん! それに私が欲しいのは平穏だ、権力じゃない!!」
「それは理解しているが、最高評議会は君達に関する情報を持っていると、ジェイル・スカリエッティも証言しているのだ。
その情報が拡散した場合、君が住む地にも犯罪者の手が伸びるのは確実だ。そもそも、時空管理局の混乱に乗じて管理外世界を含む多くの次元世界が荒れる、荒らされる事になるだろう。
我々だけでは、それを防ぐのは無理だと判断せざるを得ないのだ」
「だからと言って、何の実績も無い部外者の小娘がほいほいトップに立てるものか!
そんな事をしても誰も納得せんし、纏まるものも纏まらなくなるだけだ!!」
「君は闇の書の脅威をほぼ単独で排除し、無限書庫の有効利用の目途を立たせ、時空管理局の闇に光を当てた功労者だろう。
まして、星1つを平和に支配する国の王と呼べる立場であり、時空管理局と正面から戦えるような戦力すら持っているのだ。その力を借りて時空管理局を立て直す事は、我々だけで行うよりは現実的だ」
「だから、私は表舞台に立つ気が無いと言っているだろう!
最高評議会の排除は簡単だし、アホ共を晒す材料は腐るほどあるんだ、何とかならんのか!?」
「今回我々が行うのは、ある種のクーデターなのだ。
双方が様々な手で相手を潰そうとする以上、相応の混乱は避けられないだろう。皮肉な事に、証拠があまりにも多すぎるせいで、人的勢力でこちらが不利となりやすいという実情もある。何とか盛り返す事が出来たとしても、均衡してしまえば長期化や分裂の危険もあるだろう。
それを避けるために、アルハザードの崩壊から逃れ、表舞台から姿を消していた勢力の力を借りて、犯罪に頼る体質の是正を図る。どうかね?」
「アルハザードまで表舞台に出すなど、正気か!?
リインと
「い、いや、私は、我が主に罪を背負わせないためには、人々の為に働く姿を見せるべきだと言われてしまい、その……済まない」
いつの間にか、リインフォースが陥落してた。
管理世界を無視すれば、過去のやんちゃを清算する必要も無いけど。
そこまで気が回ってないだけか、責任感が強いのが原因か。
「まあ、嫌がる事は予想出来ていたので、ここで妥協案を提示しましょう。
エヴァちゃんは、時空管理局を導く気が無い。そうでしょう?」
「ああ、そうだ! そんな事やってられるか!!」
「ですので、面倒を避ける方向で調整する、例えば最高評議会就任の前提として、権力の返還を含む立場の変更を条件とするのはどうでしょう。
意思決定機関である事を止め、基本はお飾りに徹する。見守るための情報収集や監査といった部分に特化し、自分達に害がありそうな行為を摘発する権限は保持しつつ、権力構造的に最上位には立たない。これなら、ゴミの排除を少しは時空管理局に任せる事が出来るでしょう。
いかがですか?」
「……つまりあれか。私に、内部から潰す権力を持てという事か?」
「外から潰すよりも、騒動は小さいですからね。それに、仲間と思われる立場にいる方が、余計な手出しをされにくいのですよ。
アルハザードについても、今の最高評議会の関係者には多少なりと知られているでしょう。無理に隠し続ける今の状況よりも、ある程度公開してしまった方が健全だと思いますよ。そもそも技術に関しては、アルハザードよりも古代ベルカの方が厄介ですからね。ゆりかごの様にアルハザードからの流出物を取り込んだ物もある事ですし」
「……で、私達が時空管理局の、ヴィヴィオが聖王教会の象徴的な立場に立つと仮定しよう。
一方的に宣言していいモノじゃないが、どうやって立場を確立する気だ?」
「まずはゆりかごを起動して、隠されてきた犯罪を一般の人達に解りやすく見せ付けるとともに、聖王の継承者の存在を大々的に広めます。この際にマスメディアの協力も必要ですが……これは、エヴァちゃんの技術力や人脈に期待ですね。
同時に、3人の提督が秘密裏に内偵を進めていたという事で、最高評議会の罪を暴露します。
もちろん管理局は動揺するでしょうが、事前にある程度根回しをしておく事で崩壊を防ぐ事は可能でしょう。正義感や責任感のある人物であれば、協力してもらえると思いますよ。
例えば、悠久の翼は“ロストロギア対策の技術”が交渉材料として使えます。使命感の強い組織ですが、好き好んで後ろめたい手段を使うわけではないですし、管理局の権力よりも一般人の命が大事だと言える上層部ですから」
「完全なショック療法じゃないか、管理局が崩壊する可能性も充分あるぞ。
それに、タカミチもどきはガングロに同調していたが」
「便宜を図ってもらっていたという事もあると思いますが、エヴァちゃんの力を危険視したのではないでしょうか? 特に敵対する様子が無かったせいか、早々に敵視を止めていますし。
それに、ショック療法だろうが、後ろ暗い人達を何とかしない限り平穏は無いと思いますよ。ここまでやってしまったのですから」
そろそろ、お姉様は諦めるべき。
仕方なかったとはいえ、力を見せすぎた。
「……いっそ、地球付近を魔法完全禁止に書き換えてしまうか……?
そうすれば、馬鹿共がいくら来ようとしても……」
「いえいえ、それは不老不死の隠蔽に支障が出ますし、ごく少数ですが存在する魔導師の命に係わる問題になります。
私達も魔法で維持しているのですから、何らかの問題が出るかもしれませんよ?」
「チッ……使えん能力だ」
「嫌だという事は見ていてとてもよく解るが、ある程度事態が落ち着くまででいいのだ。
我々の旗印となってほしい。頼む、この通りだ」
ギル・グレアムが、ついに土下座し始めた。
「エヴァさん、お願いします。
非力な私達がこの大事を成し遂げ、世界の未来へ繋げるには、力を持つ方の協力がどうしても必要なんです」
リンディ・ハラオウンまで土下座し始めた。
「私からもお願いします。
現状では、私達はあまりに弱小。賛同する人数がどれ程になるかは、エヴァンジュさんの情報と立ち回りにかかっていると言えます。
それに、最高評議会として立場を確立出来た後なら、リンディ提督を中心とする部隊を親衛隊として常駐戦力とする事も出来るでしょう。そうすれば、犯罪者等の対策を行うと共に、時空管理局内部からの圧力を受け止めるクッションとして立ち回る事が出来ます。
これが、最も平穏に近付ける方法ではないでしょうか」
レティ・ロウランまで土下座した。言ってる事はリンディ・ハラオウンを生け贄にしてるような気がしないでもないけど。
でも、敵対するよりは、穏当な結果を得られる方法ではある。
溢れるだろう犯罪者的にも、生まれるだろう時空管理局の残党又は後継組織的にも。
「……アコノとはやて、忘れているかもしれんがユーノはどうする気だ?
私達3冊を最高評議会に据えても、それぞれが主を持つ身なんだぞ」
「最高評議会が5人か6人になっても、特に支障は無いだろう。
ユーノ君は立場や実績を鑑みて、やはり無限書庫の司書長が無難かもしれないがね。アルハザードの関係者と呼ぶには、少々辛いだろう」
「ふん……要するに、手に負えん危険物を纏めて祭り上げようという事か。
「こんな大それた事を、私には発案出来ませんよ。
ですが、エヴァちゃんは、管理局の下につく気は無い。そうでしょう?」
「そうだな。上の連中が増長する未来しか考えられん」
「更に、管理局を導く気も無い。
であれば、泥沼の敵対か、支配されないだけの権力を持つか。状況的に、もはやこの2択しか残っていないのですよ。
行方をくらませた場合、関係した人物が追及されるのは明らかですからね。全員連れて逃亡、というのは色々問題があるでしょう?」
「……やはり、力を見せすぎたか。
やれやれ、最初から管理局を切り離した方が良かったのか……?」
「悠久の翼や時空管理局の一部が闇の書の存在を知っていましたし、実際に動いていましたから、完全な切り離しは不可能だったと思いますよ。
あり得た未来の中でも、比較的平穏が見えやすい道を歩めているのではないでしょうか」
「
「長男として、家族の行く末を心配しているだけですよ」
◇◆◇ ◇◆◇
話し合いの結果、とりあえず方針を了承したお姉様達は、少々の打ち合わせと、誤魔化していた疲れをとるための休憩をしてから
その後、お姉様、ヴィヴィオ、ウーノ、ジェイル・スカリエッティ、
転送先は、もちろん。
「……確かに、ゆりかごですね。聖王核も反応していますから、間違いありません。
王となった私は、この王座の間、その王座に縛られました。懐かしいような、悲しいような、不思議な気持ちです」
ヴィヴィオも認める、聖王のゆりかご。
その中枢というか、少なくとも重要な施設である、王座の間。
同時に、チクァーブもミッドチルダで大増員中、通信設備やらの掌握を開始してる。当面は私達からの魔力供給で大丈夫そうだし、いざとなれば駆動炉や発電所を制圧すればいいから、維持も問題ない。
「さて、情報の確認だ。
聖王はゆりかごの起動キーであり、強大な魔力や保護を受ける代わりに、生体コアとなって兵器の管制を司る義務を負わされる。
あくまでも求められるのは兵器としての役目であり、兵器としては不要な、人としては普通の事の多くが奪われていく。
そうだな?」
「はい。かなり早い段階で、食事や睡眠も不要となります。
最終的には人の姿や声も認識出来なくなるという話でしたが、それには至らなかったので私自身が確認したわけではありません」
技術的には、魂の改変と肉体の強化の組み合わせ。
人としての枠を外れ、部品に落とし込む。
(……私達が作ったコンピュータと、考え方は同じか。
違いは、人の意識や記憶、それに体を多少なりと維持するかどうか。そんな所か)
似てなくはないけど、同じとはとても言えない技術。
死者に意識させないまま活用するのと、生者をじわじわ変化させるのは、同じと言いたくない。
方向性としては、銀十字に近いような気がする。お姉様の記憶には情報が少なかったけど。
(同じでなくとも、似たようなものだ。技術的にもな。
だからまあ、魂や体に対する改変の抑制と、兵器としての思考を強要するような機構の改造は、何とかなるか……)
「聞いた限りでは、やはり理解出来る技術の可能性が高い。
とりあえず調べてみるが、ヴィヴィオはその間どうする? 何度か調整のための協力が必要そうだから連れてきたが、外見的に外に出るのはまずいだろうし、生活用の設備が動いていないようだから不便そうだが」
「私達が調査するための、休憩所が用意してある。最低限の設備と保存食しかないが、休む事くらいは可能だよ。
聖王陛下や家事はウーノに任せ、私がこちらを手伝いたいのだがね」
「そうですね、すぐに手を貸してもらう必要は無いようですし、エヴァちゃんとしても、私達がヴィヴィオの傍にいるのは好ましくないでしょう?
その点、ウーノならば休憩所とやらの状況や使い方も把握しているでしょうし、何より、エヴァちゃんに従う女性です。安心出来るのではないでしょうか」
「自分達が危険人物だと把握しているなら、何とか直せこの阿呆共。それ以前に、お前達では生活能力に問題しかないだろうが。
だがまあ、お前達の知識やらは、改修には役立つはずだからな。時間が無い以上、扱き使うぞ」
「望むところだよ。こんな技術の塊をどう料理するのか、楽しみだ」
「そうですね。エヴァちゃんやチャチャちゃんの本気を感じられそうですし、私としても楽しみですよ」
「趣味に走るな、とっととやるぞ阿呆共!」
2014/07/06 クーネの台詞をちょっと追加