青の悪意と曙の意思   作:deckstick

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後日談:とある家についての意識調査

 大所帯になる事が決まったテスタロッサ家、必要な手続きは既に開始済み。

 拠点は地球。必要になるのは大きな住居。年が明けてから手配を開始する予定。

 でも、手配の前に行うべきは、どんな家がいいかの意識調査。

 

 

 ◇◆◇ 旧ルアソーブ家 ◇◆◇

 

 

 まずは、変態(ロリコン)

 変な事を言ったら叩き出す。

 

「私ですか?

 基本的に様々な世界を旅して回るつもりですから、専用の部屋は不要ですよ。

 家については、そこに住む人の意見を尊重してください」

 

 意外。

 なんだか平和な事を言ってる。

 

「どうしてそんなに意外そうなんですか?

 もっとも、たまには帰る事もありますから、その時に休む場所があれば充分です。

 その辺はまあ、プレシアと相談しますよ」

 

 何だかとっても意外な結果に。

 変態(ロリコン)防衛プログラム(ドラコ)は、そもそも地球で表に出せないから考えなくていい。

 ヴィヴィオは?

 

「そうですね、ある程度体を動かせる場所があれば充分です」

 

 明らかに別荘の出番。

 聖王全開で体を動かす前提なら、地球では無理。

 だけど、日本に戸籍を持つなら住居が必要。

 

「それでしたら、ベッドと少々の私物を置くことが出来る程度の部屋を希望します」

 

 個室希望?

 広さはそれほどでもなくてよい、と。

 

「部屋に籠る気はありませんし、訓練や運動がエヴァンジュさんの別荘であるなら、あとは友人が来た際に見せる事が出来る程度の生活空間があれば充分です。

 基本的にゆりかごや別荘にいることが多くなるでしょうが、地球に住む形を取る以上は、魔法に関わらない人に見せられる住まいを確保しておくべきでしょう」

 

 別荘生活に、すっかり馴染んじゃった。

 ゆりかごもあるし、気兼ねなく力を使える環境。従者達とも仲が良い。

 確かに、居心地がいいかも。

 

 

 ◇◆◇ 旧テスタロッサ家 ◇◆◇

 

 

 家長となるプレシア・テスタロッサと、その娘2人に使い魔1人。

 肩書的な意味で、発言力が最も大きい人達。

 

「そうね。研究室は……この世界では表に出せないわね。

 やっぱり別荘がいいかしら?」

 

 別荘大人気。

 地球に魔法の研究施設は作らない方がよいのは確実。

 

「それなら、大きいベッドや2人分の家具類を置ける程度の部屋がいいわ」

 

 2人分?

 大きいベッド?

 

「クーネは、自分の部屋は不要だと言っていたでしょう?

 でも、休むための場所や、必要な最低限の物を置く場所は必要よ。それなら、妻である私の部屋が一番だと思わない?」

 

 それなんて新婚夫婦?

 

「いいじゃない。どこかに必要なものを受け持つと言っているだけなのだから。

 アリシアとフェイトは……個室がいいかしら?」

 

「アルフは、私と同じ部屋でいい?」

 

 (フェイト)使い魔(アルフ)が同じ部屋なのは、特に問題ない。

 今のアルフは子犬モードが基本だし、個室の希望無し?

 

「アタシはほら、フェイト一筋だし、戸籍もないしさ」

 

 納得。アリシア・テスタロッサは……1人で個室?

 

「うん。フェイトはアルフがいるし、なのちゃんをよんだりしそうだから、べつのへやがいいかなって。

 おかーさん、わたしもつかいまほしい~!」

 

「ア、アリシア? ごめんなさいね、今すぐというわけには……」

 

「えー、リニスどこいったのー?」

 

「……ごめんなさい」

 

「アリシア、あまり母さんを困らせない方が……」

 

「だって、フェイトばっかりずーるーいー。

 わたしもおねーさんなリニスにあーいーたーいー」

 

 大惨事。

 駄々っ子恐るべし。

 とりあえず個室ということで、撤収。

 

 

 ◇◆◇ エヴァンジュ配下達 ◇◆◇

 

 

 要するに、セツナ・チェブルー、成瀬カイゼ、チクァーブの3人。

 チクァーブは、現在は明確な住所が無い。長宗我部千晴の家を中心に、アースラの地上拠点や八神家他をうろうろしてる。ミッドやらにもいるのは気にしない。

 

「部屋、ですか……私達も住んでいいのでしょうか?」

 

 わお、根本的疑問。

 少なくとも、眷属のセツナ・チェブルーは、お姉様繋がりで問題にさせない。

 チクァーブは……そもそも部屋が不要?

 問題がありそうなのは、直接の関係性が薄い成瀬カイゼだけ?

 

「確かに、僕は問題かもしれないね。

 これからも居候という扱いでいいのかどうか、他の人達の了承は必要そうだ」

 

 その辺は、追って確認。

 でも、反対しそうな人に心当たりがない。

 

「それでも、だよ。僕は保護されているだけで、八神でもテスタロッサになるわけでもないんだ。

 でも、普通に過ごせる部屋があれば、特に希望は無いね。同居せず、別に部屋を借りてもいいくらいだ」

 

「我等に、部屋は不要でございます。

 もし頂けるとしても、物置の様な場所があれば充分でございます」

 

 何だか、とっても平和というか、要求らしい要求が出ない。

 お姉様の眷属たるセツナ・チェブルーからは、要求が出ると期待。

 

「え……?

 え、ええと……その……飛ぶのは、やっぱり別荘限定、ですよね?」

 

 地球で飛んて見付かったら、UMAやUFO扱い。

 ミッドチルダも、少なくとも市街地の個人飛行は許可が必要。

 素人にはオススメ出来ない。

 玄人って何者だ。

 

「それなら、きっと、別荘にいることも多いと思います。

 だから、ええと……」

 

 はいはい、普通の個室個室。

 そんな感じ?

 

「あ、はい。それで」

 

 なんて要求の出ない結果に。

 意識調査の必要すらない?

 

 

 ◇◆◇ 旧八神家 ◇◆◇

 

 

 お姉様や主、八神はやて達を含む、人数的には最大勢力。

 他の人達の要求がなさ過ぎて、何か言えば通る状態に。

 

「なるほどな……で、どうしてプレシアと変態(ロリコン)がそんな事に……」

 

 お姉様が頭を押さえてる。

 1人は、ロリコン。

 もう1人は、戸籍上は60歳で、今の肉体年齢も30歳くらい。

 一皮剥けば、甘い空気が似合わない取り合わせ。

 変態(ロリコン)が留守気味とは言え、同室すら似合わない。

 

「……まあ、別に場所を確保しなくていいということで納得しておくか。

 それより、私達の希望だったな。とりあえず個室が欲しいのは誰だ?」

 

「オレはいらねーヨ。このナリじゃ表に出れねーしナ」

 

 チャチャゼロの身長は70センチくらい。

 子供扱いするにしても、体型や言動に問題がある。

 

「私はマスターと同室で。

 保護者とし「誰が保護者だこのボケロボ!」防衛の指「それはもういい!」……残念です」

 

 残念なのは八神チャチャマルの頭。

 でも、チャチャゼロと八神チャチャマルが個別の部屋を要求してこない。

 戸籍を持ってる八神チャチャはあった方が良さそうだけど、お姉様と同室でも問題ない。

 主は?

 

「今と同じように、エヴァと同じ部屋がいい。

 でも、みんなが来ると人数が多めになるから、広めの部屋がいいと思う」

 

 曙天関係者がほとんど集まっちゃった。

 なんという隔離環境。

 夜天な人達は?

 

「うーん、今までの流れやと、主従は同室って感じやね。

 リインは何か問題あるか?」

 

「いいえ、我が主。

 私は、いつでも主と共に」

 

「リイン姉様ばっかりずるいですぅ。

 私だってはやてちゃんと一緒がいいですよぅ」

 

 ルーナ・リインフォースが駄々っ子に。

 ここにも子供がいた。

 

「全員が同じ部屋では窮屈になり過ぎますから、我々は別室が良いでしょう。

 我々3人で1部屋でも構わないかと」

 

 八神シグナムが、やっとでまともそうな意見を出した。

 というか、現実的な思考の結果とも言えそう。

 でも、内容は八神はやてと部屋を分ける事のみ?

 

「んじゃ、アタシはシグナムと同じ部屋だな。

 こんなナリだし、一部屋は大きすぎだ」

 

 主従のセットがここにも。

 アギトは八神シグナムと同室というか、部屋の一角に住む感じ?

 ただ、ルーナ・リインフォースもアギトも、地球では子供サイズ推奨で、1人分の空間が必要になるのを忘れてる。

 

「あう。でも、普段は部屋の片隅にちょっと場所があれば何とかなるんだ。

 こっちにも居場所が欲しいんだよ」

 

「はやてちゃんの側……」

 

 アギトの意見もごもっとも。

 ルーナ・リインフォースは幼児退行しないでほしい。

 

「それなら私とヴィータちゃん、シグナムとアギトのペアはどう?

 1部屋に4人入るよりはいいんじゃないかしら」

 

 八神シャマルの意見が無難?

 要するに、守護騎士で2部屋。

 というか、ザフィーラは座敷犬扱いでいいの?

 

「うーん、みんなが集まれる部屋というか、みんなで食事できるくらいのダイニングは欲しいと思わへん?」

 

 みんな?

 最大人数でカウントしてみる。

 

 夜天関係者。八神はやて、リインフォース、ルーナ・リインフォース、八神シグナム、八神シャマル、八神ヴィータ、ザフィーラ8名。

 ナハトヴァールは日本での活動に色々無理があるから除外が無難と判断。

 

 曙天関係者。お姉様、主、八神チャチャマル、チャチャゼロ、八神チャチャ(わたしたち)の5名。

 一応人型のチャチャゼロも含めておく方がいいかも。大きさを子供くらいに誤魔化せるようになれば、活動出来るし。

 

 宵天関係者と旧テスタロッサ家。プレシア・テスタロッサ、フェイト・テスタロッサ、アリシア・テスタロッサ、ヴィヴィオ、アルフの計5名。

 ドラコと変態(ロリコン)は有無を言わさず外してある。

 

 セツナ・チェブルー、成瀬カイゼ、チクァーブの居候3名も合わせて、合計21名分が必要な計算になる?

 

「家族みんなやから、全員や。

 20人を超えるとなると、結構広くないとあかんね」

 

「一般的な住宅だと、全員住むには部屋が足りませんし。

 集合住宅や寮みたいな建物を基本にした方がいいかもしれませんよ」

 

 八神シャマルが、なんだか参謀らしいことをしてる。

 やっとで、全体像に関する意見が出た。

 

「面倒だな、小さめのマンションを建物丸ごと押さえてしまえ。

 どうせ転移やらで行き来出来るんだ。それ程問題も無いだろう?」

 

 お姉様、それはかなりの暴論。

 転移出来ない人も……あれ?

 こほん。今は転移出来ない、八神はやてとアリシア・テスタロッサがいる。

 

「でも、別居みたいになるんは嫌やし。

 全員が一緒に住むとなると……すずかちゃんのお家みたいな大きさになってまうか?」

 

 流石にそこまで大きくなくていい。

 既存の戸建ての建物を軽く調べた感じだと、多くても7部屋くらいしかない。

 必要な部屋数は、来客用や応接用を含めずに現在10、私達を別部屋にするなら11を想定。

 2名以上の部屋が半分ある。明らかに広さが必要。

 ダイニングも一般的な間取りだと無理がある。風呂やトイレも広さや数が必要。

 一般的な住宅では不可能と言わざるを得ない。

 

「設計からせなあかんな。

 ダイニングだけやなくて、玄関とかもかなり広くないとあかんやろうし……」

 

「それなら、マンションで壁を抜いてしまえばいい。

 下の階ならともかく、最上階なら別に壁が減っても支障は無いだろう?

 魔法で補強も出来るし、工事は妹達や従者達でどうとでもなるぞ」

 

 マンションの間取りを変える?

 何て乱暴な。

 お姉様らしからぬ……という程でもない?

 アルハザード時代に、狭いからと研究所の壁を抜いた前科が。

 実はお姉様らしかった。

 

「間取りやらをある程度好きに変えれるんか?

 それならアリかもしれへんな」

 

 八神はやてが感化されちゃった?

 真剣に考え始めてる。

 日本でやるのは問題なのに。

 

「ヴィータ、どう思う?」

 

「さーな。アタシははやての近くに居れればいい。

 今いる連中以外は実感ねーしな」

 

 ザフィーラと八神ヴィータは、蚊帳の外。

 子犬モードのザフィーラはともかく、それでいいのか八神ヴィータ。

 

 

 ◇◆◇ 家具屋へGo ◇◆◇

 

 

 結局、部屋の確保が課題という事で、結論は出ず。

 とりあえず部屋の広さがどれくらい必要なのか考えようという事になり、何班かに分かれて家具屋に下見に行く事に。

 というわけで、今日はお姉様、主、プレシア・テスタロッサ、ヴィヴィオ・テスタロッサの4人で家具屋にお出かけ。

 

「いつ見ても、この世界のベッドは小さいわね」

 

「住宅事情を考えると、仕方ないだろう。

 別荘には大きな部屋を用意しているんだから、広さが必要ならそっちにしておけ」

 

 夢の中でフェイト・テスタロッサとアリシア・テスタロッサが寝てたベッドみたいなのを基準にされても困る。

 どう見てもクイーンのロング級のベッドだったし。あのベッドだけで小さな部屋が埋まりそう。

 

 そんなわけで、とりあえず日本での一般的なサイズの説明を聞いて。

 

「うーん、だけど2人なら、最低でもクイーンサイズは必要かしらね……」

 

「……どんな部屋に住むつもりだ」

 

 悩むプレシア・テスタロッサの呟きが耳に入ったお姉様が、顔を引きつらせてる。

 

(どう見ても同衾する気満々だろうが!

 本当にこの組み合わせでいいのか!?)

 

 でも、夫婦だし。

 それに、その隣でヴィヴィオ・テスタロッサが見てるのも、似たようなサイズ。

 

「え? 以前使っていたものは、これくらいでしたから」

 

「全く、この金持ち共は」

 

「エヴァさんも、いつでも頂点に立てる身分を持っていたと聞いていますよ。

 別荘もありますし、相応の資産があったのではないのですか?」

 

「私は本来、モノだぞ。睡眠が必要無いし、他にすることが多すぎたからな。

 寝室どころか私室すら無かったぞ。別荘は、公式には存在していなかったしな」

 

「そうだったのですか。

 それでも、そちらでは広い部屋を使う事も出来たのでは?」

 

「使おうと思えば使えただろうが……感覚が日本人だし、物を置く場所も休む場所も、特に必要じゃなかったからな。

 私室として使うための部屋はあったが、使ったことは無いな」

 

「駄目ですよ。人として過ごしたいなら、少しでも人らしい生活をしなければ。

 自分から人である事を捨ててしまえば、どんどん人から離れてしまいますから」

 

「……そうだな」

 

 なんという正論。

 人であることを止めた経験者と言う意味では、確かに同類。指摘は決して間違いじゃない。




「ナハトヴァール」については、次で。
クリスマスイブ~正月の設定&小話集に近いものになります。


2017/04/15 つかえた→使えた に修正

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