青の悪意と曙の意思   作:deckstick

128 / 162
蛇足:或いはこんな未来も/StrikerSだった何か2005年03月

 ◇◆◇ 2005年(新暦66年)03月A ◇◆◇

 

 

「戦技披露会?」

 

 久しぶりに顔を見せたクロノ・ハラオウンから伝えられたのは。

 要するに、戦えって事。

 

「親衛隊について、色々と言われる事も多い。

 具体的には、人を送り込むための言い訳だと思うが、最高評議会を守るには戦力が小さすぎるという批判をよく耳にする。

 だが、君達は不用意に人を増やされたくないだろうし、こちらの人手も足りていない。そもそも現状でも戦力過多だ。

 幸い、嘱託魔導師を含む民間協力者が多いから、コストについての批判は多くないんだが」

 

「批判が出るのは、アースラの維持費くらいか?

 あれはあれでこの付近の治安維持に協力する事になっていたと思うが……切り札兼後継者の不在で動きにくい様だぞ」

 

「無理を言わないでくれ、僕も早くこの状況を終わらせたいんだ。それに、その後も本局側の対応が主任務になりそうだから、哨戒任務をこなす時間は無さそうだ。現地に充分な設備を確保出来るならアースラも無くせるんだが、別荘を現地と見なすには問題が多いし、当面はこの体制のままだろう。

 話を戻すと、今の最高評議会、親衛隊、近衛騎士団の戦力が充分だと示すには、実際に戦力を見せるのが一番手っ取り早いだろうという案が通りそうなんだ。

 本局の武装隊との集団戦を考えているようだが」

 

「私達も含むとなると、妹達を数えなくても、オーバーSだけで軽く10人以上いるんだが。

 というか、私かリインフォースだけで充分だ。他の連中は存在感すら無くなるぞ」

 

「そうなんだ。何かいい方法は無いか?」

 

「最高評議会の6人対それ以外、ならどうだ?

 念のため防衛プログラムや妹達を外しても、異常性を見せ付けるには充分だろう」

 

「武装隊が蹂躙されるよりは、無難か……?」

 

 という会話から、早1か月。

 別の案が出る事なく、お姉様の案が通っちゃった結果。

 

 お姉様、主、プレシア、リインフォース、はやて、変態(ロリコン)の最高評議会チームと。

 クロノ・ハラオウン、セツナ、フェイト、シャッハ・ヌエラ、守護騎士4人、アギト、成瀬カイゼ、高町なのはの護衛代表チームが。

 戦技披露会という形で対戦を行う事になり、今は会場にいる。

 

『さあ、次の試合は何と!

 最高評議会 対 護衛代表という、本来ならばあり得ない組み合わせ!

 アルハザードの遺産の実力はどの程度なのか! 脆弱な子供部隊と批判されがちな護衛の実力は充分と言えるのか!

 25分1ラウンド勝負、砂丘及び海上浮遊物なし、開始距離は200メートル!

 カートリッジ使用制限なし、ユニゾンあり、結界内での魔力供給ありの、派手な撃ち合いが予想される一戦が、間もなく始まります!!

 そしてなんと、解説には聖王の継承者、ヴィヴィオ陛下に来ていただいています!』

 

『こんにちは。ですが、聖王の記憶と力を継承したのであって、地位は継承していませんよ。

 陛下は無しでお願いします』

 

『そうですか! では、ここからはヴィヴィオ様とお呼びする事に致しましょう!』

 

『いえ、あまり持ち上げる様な敬称も避けて頂けると嬉しいのですが』

 

『無理です!』

 

 ナレーターが嬉しそうに叫んでるけど、今回のは管理世界全部で放送予定らしい。しかも、近い世界では生放送中。

 だけど、戦いたくない相手を持つ人がいる。戦わせたくない人もいる。

 だからこそ、お姉様がマイクを持って。

 

「開始前に宣言しておくぞ。

 チーム戦扱いだが、私達は原則として交代制でいく。誰かが前に出たら、それまで戦っていた者が下がる形だ。

 だからと言って、ルールを縛る気は無い。全員で向ってくるもよし、回復や温存等の為下がるもよしだ。但し、後ろへの攻撃は同時参戦要求と受け取るから、そのつもりで行う事。

 以上を理解したら、全力でこい。私達の力を知るお前達だ、手加減が不要な事は理解出来ているだろう?」

 

『これは驚きです!

 護衛されるはずの最高評議会が、まさかのハンディキャップ&全力を出せ宣言!

 オーバーSランクやニアSランク魔導師を相手に、余裕の構えです!!』

 

『それだけの力を持つと、お見せ出来ると思いますよ』

 

 だけど、プレシアがフェイトを攻撃するとはとても思えないし。

 お姉様は主やはやてを前に出す気が無いし。

 守護騎士達は、主やお姉様に剣を向けたくないだろうし。

 グダグダにならないためには、必要な制限でもある。それに加えて。

 

「先鋒はお前だ、変態(ロリコン)

 さっさとフクロになってこい」

 

「一番気兼ねなく戦ってもらえる立場だという事実は認めましょう。

 ですが、扱いが悪くありませんか?」

 

「好かれていると思っているなら、墓場に行って埋まってこい。

 馬鹿も、死ねば治るかもしれん」

 

『最高評議会チームは、クーネ書記が先陣を切る模様!

 さあ、護衛代表チームの作戦は決まったのか!?

 オーバーSやニアS魔導師の意地は、どこまで通じるのか!

 手加減不要と言い切った自信は、どこまで実力に裏付けされているのか!

 戦闘空間の固定も完了、双方の準備も完了!

 それでは、試合、開始!!』

 

ラケーテンハンマー(Raketenhammer)!」

 

『おおっと、開始直後に元黒の騎士団、ヴィータ突撃隊長が突っ込んでいく!

 その後ろでは早速シグナム団長がユニゾンだぁ!!』

 

『ほぼ全員が動くようですね。

 固まっていれば纏めて落とされる可能性が高いですから、散るのは正しい判断でしょう』

 

『ですがクーネ書記は涼しい顔で躱し、受け止め、受け流しています!

 次々に現れるバインドの解除も極めて高速、ですが片足のバインドを1つだけ放置する余裕を見せています!』

 

『高度な幻術使いなので、普段は正面から戦う事が無い方なのですが。

 後衛のシャマルさん達は、やはり幻影の可能性も考慮していますね』

 

『そ、そうなんですか!?

 接近戦を挑む騎士3人を霞めて撃ち込まれる誘導弾を操るのは、後衛の子供3人! これだけでも信じられない制御技術と度胸ですが!?』

 

『あの3人でしたら、その気ならこの倍は制御出来ますよ。

 実際、手元や周囲にいくつか待機させているでしょう?』

 

『ほ、本当です! 確か「雷鳴剣!」な、何事ですか!?』

 

「エヴァちゃん、どうして相手チームに魔力供給をしているのですか!?」

 

「うるさい! これくらいやらんと試合にもならんだろうが!!」

 

『え、えーと……』

 

『エヴァさんが、セツナさんに魔力を供給している様です。

 セツナさんは魔力供給の技術との相性がとても良いので、無視出来ない威力になっていますね』

 

『だからですか! 雷を伴う上空からの強襲に、この試合で初めてクーネ書記が真面目な顔で防御って、今度は全員を雷が襲いました!!』

 

「交代よ」

 

「助かった様な気分になれば良いのでしょうか?

 思い切り巻き込まれたのですが」

 

「あら、この程度で墜ちるほど脆弱な夫だったかしら?」

 

『今の雷撃は、プレシア評議員だった模様です! という事は、最高評議会チームは選手交代という事でしょう!

 護衛代表チームで接近戦を行っていた3人……いえ、ユニゾンが解除されたため4人は、即座に転送されて治療を受けています!』

 

「フェイト、あの3人が動けなくなってしまったから、次は前に出るのでしょう?

 あまり無茶をしてはダメよ」

 

「か、母さん、その、今は試合中だから」

 

『親馬鹿です! 親馬鹿がいます!!

 微笑ましい姿ではありますが、試合中で相手チームという事を忘れています!!』

 

『魔力を回復させていますから、試合だという事自体は忘れていないようですよ。

 次はリインさんが出るみたいですから、横槍のお詫びかもしれません』

 

『おおっと、プレシア評議員への交代かと思いきや、フェイトちゃんを抱きしめた後はすぐに下がりました!

 次は闇に翻弄された悲劇の魔導書、リインフォース評議員が出る様です!!』

 

「……エヴァンジュ。人前に出て、こんなに恥ずかしいのは初めてだ」

 

「言っただろう? 悲劇のヒロインみたいな扱いだと」

 

「みたいではなく、そのものと思えるのだが」

 

『こっちはこっちで、照れています!

 6枚の黒い翼がパタパタ動く姿は、何だかクール可愛いです!』

 

「え、えっと、リインフォースさん。行きます!」

 

「ああ。早く始めて、この空気を変えてくれ」

 

『護衛代表チームで最も民間人に近い、なのはちゃん9歳が突撃!

 先ほどは素晴らしい誘導弾の制御技術を見せましたが、近接はどうでしょう!?』

 

「なのは!」

 

『プレシア評議員の娘、嘱託魔導師でもあるフェイトちゃん9歳も突撃!

 何というスピード、これは凄いです!』

 

『なのはさんは遠距離、フェイトさんは近接の方が得意ですね。

 もちろん、他が出来ないわけではありませんよ』

 

『そうなのですか!

 おっと、ここでクロノ執務官も前に出ました! 同時になのはちゃんが少し下がって誘導弾に切り替える様です! しかも嘱託魔導師であるカイゼくん11歳も誘導弾での支援を継続中!

 AAAランクの4人を相手に、リインフォース評議員は捌き切っております!!』

 

『リインフォースさんは、あれで広域型なんですよ。

 それに、まだ本調子ではないと聞いています」

 

『え、あれで本調子じゃない上に苦手な距離なんですか……?』

 

『その筈です。あ、なのはさんが勝負に出ますね』

 

『勝負……って、何ですかあれはーー!?

 桜色です! 桜色の……えーーーー!?』

 

『集束砲撃、ですね。

 エヴァさんが使用許可を出していたので、どこかで使うとは思っていました』

 

「スターライトぉ……」

 

『だからって、9歳が使っていい技術じゃないですよ!!』

 

「ブレイカー!!」

 

「さあ、遊びの時間はここからだ! 敵弾吸収陣(キルクリ・アブソル・プティオーニス)!」

 

『と、止めたー!? エヴァンジュ議長が止めました!!

 ていうか何ですかアレはーーーー!?』

 

『エヴァさんが遊び始めましたね。

 とある物語に、相手の魔法を吸収する魔法が登場します。それを模倣した物だと思いますよ』

 

『だからって、だからって……!!』

 

固定(スタグネット)掌握(コンプレクシオー)! 術式兵装(プロ・アルマティオーネ) 桜色の魔王!!」

 

「にゃー! 魔王って何ーーーー!?」

 

『念話で説明されましたが、受け止めた魔力をカートリッジと同じ方法で加工して、使用(ロード)しただけだそうです。

 魔力光が桜色のままですし、変換等をせず、直接利用しているようですね』

 

「その身に刻め!」

 

『今度は翼と槍ですか!? どっちも本物っぽい上に何だか神々しいんですけど!!』

 

「ニーベルン・ヴァレスティ!!」

 

『なんと一発で撃墜! AAAランクの4人を纏めて撃破です!!』

 

『これは……別の物語で、戦乙女とも呼ばれる天使が使用する技ですね。

 エヴァさん、物理攻撃に見えましたけれど、大丈夫ですか?』

 

「ん? 攻撃部分は非殺傷専用で組んであるし、見た目は演出効果の幻影が主体だ。

 翼もなかなかに天使っぽいだろう。外見は良い出来だと思っているが」

 

『そ、それなら、実物……ではないんですか?

 攻撃魔法は終了していますが、今でも翼が出したままですし』

 

「攻撃魔法とは別に、実体を持つように組んだ魔法だ。

 飛行補助でも使えるが……そっち方面は、今のところお勧めしかねる出来だな」

 

「エヴァ、使ってみたい。教えて?」

 

『おおっと、アコノ評議員が前に……っと、護衛代表チームの主力ほとんどが治療中ですね。

 どうやら、アコノ評議員も翼を使う模様です!』

 

「私と同じ方式だと色々無理が出るから、別方式になるが構わんな?」

 

「大丈夫。見た目や出来る事が近いなら、手法は気にしない」

 

「んー、なら、これだな」

 

「ありがとう。ええと……こう?」

 

『おおっ!? アコノ評議員も翼を広げたー!

 何だか戦技披露会ではなく、特殊技術披露会になっているぞーー!?』

 

「飛行補助……こう?」

 

「待てアコノ!」

 

『あ、あれは危険ですね』

 

『ちょ、アコノ評議員が凄い勢いで飛び……えーーーー!?』

 

「だから待てと言っただろう!! 保護機能が変わらんのに飛行魔法の性能だけが極端に上がるんだ、前みたいな事になってるだろうが!!」

 

「ごめん、またやった」

 

『え、ええと、これは、自爆……でいいのでしょうか?

 というか、前って何でしょうかヴィヴィオ様!?』

 

『以前、闇の書の闇との戦闘時に、危険な攻撃を避けるために高機動の回避を繰り返しました。

 その結果あの様な状態になっていたので、その事でしょう』

 

『そ、そんな事があったのですか。激しい戦いがあった事は公開されていましたが……

 え? こ、ここでやるんですか!?』

 

『あら。あれは、ゼスト隊ですか?』

 

『そ、そうなんです。地上の守護者、英雄ゼスト隊から4人が挑戦者として来て、改めて最高評議会の戦力を証明するという話だったんです!』

 

「なるほどな。身内部隊で手加減や贔屓があると思われても面倒という事だろう。

 私は構わんぞ」

 

「済まないが、上の指示だ」

 

「上と言うか、レジアスあたりか。

 お前とクイント、メガーヌは判るが、あと一人は普通の隊員か? 射撃か支援担当に見えるが」

 

「デュアリス・ドーフィン、うちの隊員だ。

 押しかけたのはこちらだ。準備や治療の間くらいは待とう」

 

「ふむ……そうだな。遊びの時間を続行でいいか。

 4対4、こちらの戦力を正しく示す為に私とアコノ、後の2人は護衛の連中から選ぶ。陸戦の方が得意だろうから、飛行する場合でも低空限定で上空には上がらない。

 そんな感じでいいな?」

 

「俺達は構わんが、3人が手負いで戦えるのか?」

 

「私を見くびるなよ。

 死の、先を往く者達よ!」

 

『な、何だか勝手に話が進んでいますが、また何か……って、今度は何事ですか!?』

 

『これの元は、先ほどの技を使う天使が、仲間を呼ぶ時の台詞ですね。

 銀色の魔力光もうまく使っていますが……ええと、本人の言葉を伝えますね。無駄に洗練された無駄のない無駄な演出だと思うがどうだ、との事です』

 

『だからって、全員の治療まで終わっているじゃないですか!

 それに、エヴァンジュ評議長とアコノ評議員とセツナちゃんとフェイトちゃんって、子供だけですよ!? 相手はあのゼスト隊なんですよ!?』

 

『大丈夫だと思いますよ。

 それにほら、まだ何かする様です』

 

『ユニゾン!? アコノ評議員が金髪になりました!

 というか、更に人数を減らすんですか!?』

 

「25秒後に拘束、30秒後に撃ち抜くから、それまでに私を墜とすか耐え切る事。

 タイムアタック、準備して」

 

「おう。行くぜお嬢さん」

 

『なんという自信! 4人の攻撃を3人で抑え……何と護衛代表の2人の魔力が一気に膨れ上がった!? 今度はどんな仕掛けですかヴィヴィオ様!!』

 

『魔力を供給しただけだと思いますよ。

 さあ、始まりますよ』

 

『え、ええと、測定班からはSS級だという情報が来ていますが、と、にかく、最高評議会と護衛チーム対ゼストチーム、戦闘開始です!』

 

「行くぞ!」

 

「百烈桜華斬!」

 

「30、29、28……」

 

『ゼストチームの3名、突撃開っと、出鼻を挫かれた!?

 いきなり大技炸裂、砂煙で視界が!!』

 

『あ、後ろでドーフィンさんが斬られましたね』

 

『な、なんと!? フェイトちゃん速い、速すぎる!!

 デュアリス一等陸士を、後ろからずんばらりん!!』

 

「予想以上だな。クイント、足止めを頼む」

 

「後ろを見せるべきではないですよ!」

 

『おおっと、今度は砂煙の中から飛び出たセツナちゃんがずんばらりん、って翼が!?』

 

『翼の扱いは、あの魔法の開発にも関わったセツナさんが一番上手なんですよ』

 

『そ、そうなんですか!

 さあ、これでエヴァンジュ議長とアコノ評議員のカウントが……って、本当にカウントを取ってるだけなんですか!?』

 

『そうだが、何か問題でもあるのか?』

 

「19、18……」

 

『い、いいえ! ありません!!

 ゼスト隊長はセツナちゃんと、メガーヌ准陸尉はフェイトちゃんと戦闘中!

 実質1対1の勝負に持ち込んだ!!』

 

『2人とも高速機動型ですし、そう簡単には隙を見せませんから。

 逆に、隙を見れば確実に突いてきますよ。セツナさんならSランクの防御でもある程度のダメージを通せますし、ゼストさんが強引に突撃しても届かないと思います』

 

『なんと、ヴィヴィオ様の予想では間に合わないという事でしょうか!?

 そう言っている間にも、カウントは確実に進んでいます! さあ、ゼスト隊はどうなってしまうのか!?』

 

「7、6、バインド」

 

『おおっと、ついに行動開始だ!!』

 

「4、集束、スターライト」

 

『なんですと!?』

 

「ブレイカー」

 

『ちょ、戦闘空間を壊すってどんな威力ですかーーーー!?』

 

 

 ◇◆◇ 2005年(新暦66年)03月B ◇◆◇

 

 

「あれでも手加減されている事は理解出来ている。

 理解出来ているんだが……やり過ぎ、という言葉を送っていいか?」

 

 戦技披露会の終了後、地球に戻るためのアースラ艦内。

 お姉様と主は、クロノ・ハラオウンにダメ出しをされてる。

 

「戦力が充分だと示す事が目的だろう?

 同数で地上の英雄様を圧倒したんだ。それも、双方に怪我無く、私と護衛の力を見せて、だぞ」

 

「確かにそうだが……最後のアレは、どこまで本気なんだ?

 あの威力でも手加減していたとは思うんだが」

 

「1秒しか集束していないし、魔法名を言って何をするかも宣言したし、バインドの後にも時間を取った。使った魔法も得意じゃないミッド式で、なのはが直前に使用していた物。

 集束と発動の間に1拍入れたのも、手加減のつもり。あれだけ時間があれば、エヴァなら余裕でバインドを解除して墜としに来る」

 

「戦闘中に使った私達の魔力は、私とアコノの2人合わせてもAAかAAA程度だ。技術や適性の問題は置いておくが、魔力出力だけで言えば、お前1人でも可能という事だな。戦闘前の魔力供給も、カートリッジで代用出来る範囲のはずだ。

 ただ、セツナとフェイトが5分耐えられたかは、正直言って微妙だな。だからこその30秒制限で、集束は私とアコノがユニゾンしている事が前提の速度だったが。

 どこまで本気かと聞かれると……どう答えればいいんだろうな?」

 

「やはりか……」

 

 久しぶりにorzの姿勢を見た。

 それに、お姉様や主が本気なら、自力の魔力だけであれ以上の威力を出せる。

 集束した事自体も、手加減と言えなくもない。

 

「あえてゼスト達の駄目出しをするなら、2人の速度を甘く見た事が最大の失敗だろうな。

 人数減で油断した上に砂煙に気を取られて、後衛がフェイトの的になったのが最初のミスだ。突出したフェイトの対処に人を割くのは仕方ないが、向かおうとした隙をセツナが高速魔法弾で牽制しながら最大速度で突撃して突いたことにも事に対処出来なかったのも問題か。後ろを向いていなければ対処出来た可能性が高いと思うが、結果的に、速度に対処する前に2人墜ちている。

 その後は2人とも突破は出来なかったが、墜ちてもいないんだ。せめて撃墜を1人で抑えられていれば、私達のところに辿り着いた可能性は充分あったはずだぞ。セツナもフェイトも変態(ロリコン)やリイン相手にそれなりの速度を出していたんだし、予め魔力も増やしたんだから、予想外ではなかっただろうしな」

 

「……それは、本人達に伝えた方がいいか?」

 

「さあな、向上心が強くて精神的にタフなら伝えた方が伸びるかもしれん。プライドが高かったりするなら止めておいた方がいいが……そんな連中はそもそも出せんか」

 

「それはそうなんだが。

 とりあえずは、乱入を指示したレジアス中将には伝えて、本人に伝えるかどうかの判断は任せる事にするよ。

 あと……あの演出は、フェイトも眷属になっているという事でいいのか?」

 

 死の先を往く者。ぶっちゃければ死者。

 クロノ・ハラオウンは眷属について知ってるから、あれがただの演出じゃない事に気付けたらしい。

 

「何だ、聞いていなかったのか?」

 

「ああ。眷属にすることは積極的ではなかったと思っていたんだが」

 

「フェイト自身の判断だ。

 それに、ずっと一緒にいたいという言葉で、プレシアがあっさり陥落した。そもそも不老の連中では説得力不足で、ストッパー不足なんだ。変態(ロリコン)は話をするだけ無駄だろうしな。

 ツッコミ役として、こっちに来てくれないか?」

 

「無理を言わないでくれ。いくらなんでも手に余る」




セツナが翼の魔法に関わったのは、「魔法を作成する理由になった事」と「外見の参考資料になった事」の2点のみです。魔法の作成作業自体には関わっていません。
魔法を作った理由はもちろん、セツナが翼を使っても排斥されないよう「似た事は魔法で出来る事を示し」「とりあえず魔法だと思わせておく」事にあります。


2014/09/25 やぱりか→やはりか に修正
2014/09/28 海上浮遊物なし→砂丘及び海上浮遊物なし に変更(陸戦があるため)
2020/01/29 ―(横線)→ー(長音符) に修正

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。