青の悪意と曙の意思   作:deckstick

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蛇足:或いはこんな未来も/StrikerSだった何か2005年06月~

 ◇◆◇ 2005年(新暦66年)06月A ◇◆◇

 

 

「確かに、親衛隊が教導隊の側面を持つ事は了承した。

 現場の人間が来るとも聞いていた。

 だが、何故お前達なんだ?」

 

 教導されに来る第1陣を迎えに、アースラの転送ポートに迎えに出たお姉様(幼女モード)やリンディ・ハラオウン達。

 その前に現れた人は、一応6人。

 

「政治的なあれこれがあったと聞いています。ですが、まずは挨拶を」

 

「ああ、堅苦しいのは要らんから、普段通りに喋れ。

 あの時の口調が普通だろう?」

 

「エヴァさんは元々こういう人だし、それ以上に、上に立つ気が無いのよ。

 立場を弁える必要はあるけれど、態度についてはあまり気にしない方がいいわ」

 

「そうか。なら、普段通りで行かせてもらおう」

 

 というわけで、ゼスト・グランガイツ、クイント・ナカジマ、メガーヌ・アルピーノの3人が研修生としての来訪。

 だけど、メガーヌ・アルピーノは赤子、ルーテシア・アルピーノを抱いてる。本来はまだ産休を取っているはずが、年末からの大騒動で駆り出されてたらしい。

 

「おとうさん!」

 

「久しぶり」

 

「ああ、久しぶりだな」

 

 そして、スバル・ナカジマとギンガ・ナカジマが、父であるゲンヤ・ナカジマと会うために。

 

「なるほど、子供の成長は早いからね。

 少々調整した方が良さそうだ」

 

 ついでに、体のメンテナンスを受ける事を兼ねて……だけど、ジェイル・スカリエッティが迎えに来てるのはどうなんだろうね。

 確かにアースラに滞在する事になってて、メンテナンスは別荘の予定だけど。

 今すぐやるわけじゃないのに。

 

「……お前が、戦闘機人を完成させた張本人というわけか」

 

 初対面となるゼスト・グランガイツの顔が渋くなるのも、仕方ない。

 ジェイル・スカリエッティは全く気にしてないけど。

 

「ああ、そうとも。最高評議会だった脳味噌達の希望通りに、だがね」

 

「今でもそういった技術に拘る気はあるか?」

 

「いいや。既に完成が近い娘達は、産みだした者の責任として目覚めさせるべきだとは思っているが、その後は管理調整に必要なものや、医療に転用出来る技術以外は凍結する予定だよ。

 それよりも興味深い事が多すぎて、私は忙しいのだよ。無論、現在の最高評議会の意に沿わない内容ではない事は、私の立場を見れば明らかだろう」

 

「……そうか」

 

 一応納得したのか、ゼスト・グランガイツはそれ以上追及するのをやめるつもりらしい。

 興味深い事に日本の文化面が多々含まれてるのは、言わぬが花。

 

「話が終わったら、こっちの質問だ。

 政治関係のあれこれとは、何があった? お前達の立場なら、犯罪者対策の最前線にいる方が自然だと思うが」

 

「どうも表立って活躍しすぎたせいか、英雄などと呼ばれてな。捜査に支障が出ているから、少し冷却期間が必要だとレジアスに判断された。

 それに、ここしばらくは働き詰めだった。ナカジマも家族と会いたいだろうし、アルピーノも子供と離れすぎた。

 指導のやり方をこっちの新人に教えるついでに、3か月ほどの骨休めといったところだ」

 

 既に2人の新人、アルフとザフィーラは訓練校から戻ってる。

 今は周囲の協力を得ながら、嘱託魔導師や高町なのはの指導を模索してるところ。経験者の助言は参考になるはず。

 

「ふむ、動きを縛っているのは、局内のやっかみか? 報道やその辺の民衆か?」

 

「両方だが、問題は後者だ。

 一時期は外に出るだけで一苦労だった」

 

「そうか。ふむ……まあ、丁度いいか。

 適性試験の結果次第だが、カートリッジシステムに関連する、新しい技術の訓練をしてみる気はあるか?

 訓練の為という建前の説得力も上がるだろうし、うまく使えたなら戦力の増強が出来るかもしれん。骨休めにはならんかもしれんがな」

 

 要するに、気に関する訓練。

 実力を持つ魔導師からの適用で、徐々に浸透させる方針は決まってた。

 近衛騎士団に派遣された護衛担当には訓練を開始してるけど、管理局側にいい人材がいなかったから、テストケースとしてちょうど良かったとも言える。

 

「それが、あの時の少女達の力の一端か?

 なるほど、確かに面白そうだ」

 

「それに、本部に戻ってからも、この技術の指導名目で引き籠りやすくもなるだろう。

 新しい技術だから、ある程度報告は上げてもらいたいがな」

 

「解った。よろしく頼む」

 

 

 ◇◆◇ 2005年(新暦66年)06月B ◇◆◇

 

 

 ゼスト・グランガイツ達はその後、近衛騎士団や現地協力者達とも顔合わせを行い、その足でお姉様の別荘に案内された。

 今ではお姉様を王とする国という扱いで存在自体は明かされてるから、驚かせる機会が減って少し残念……というのは置いといて。

 

「ようこそ。私は案内役及び教師役を仰せつかった、ロクトという者です」

 

 空色の髪をツインテールに括ったメイド姿でお辞儀をしてる、男の娘は楽し……問題かも。

 おもちゃにされないか、的な意味で。

 

「ここはともかく、私が住んでいるのは魔法が秘匿されている管理外世界だからな。

 行かないなら問題ないが、行くときは色々注意点やらを学んでおく必要があるし、相談役もいる方がいいからな。それと、ここでの注意点やらもある。

 こいつを担当に付けるから、よく聞いておいてくれ」

 

「配慮は助かる。だが、今までに何かトラブルでもあったのか?」

 

「管理外世界の方は、ゲンヤは魔法が使えんから決定的な問題は起こせないし、リンディやカリム達は元々が裏方なせいか行動は平和なものだったな。

 だが、お前達は現場側、何かあったら体が動く人種だろう? クロノは大丈夫だったし大丈夫だと信じたいが、念のためにな」

 

「そういう事か。

 この地は、魔法は大丈夫のようだが、他の注意点とは何だ?」

 

「そうだな……日本で一般的なマナーを守れば、概ね問題ない。日本とミッドの常識の違いを把握し切れていないが、比較的潔癖だと思っておいた方がいい程度だろう。

 あとは不用意に私を批判しない事くらいか。私が何とも思わなくとも、ここの住民が暴走しかねんからな」

 

「暴走とは人聞きが悪いです。

 この地にあるものは全て、我等が主であるエヴァ様の所有物なのです。エヴァ様を批判する人物がそれを消費するなど、決して許しません!」

 

「……とりあえず、ここにいるのはこんな連中だと思ってくれ」

 

「そ、そうか」

 

 いつの間にか棘の付いた金属バットに見えるデバイスを手にしてるロクトを見ながら、お姉様は遠い目をしてる。

 その後は気を取り直して訓練場という名の荒野を見たり、別荘の施設を軽く案内したりしつつ、微妙な時間だからお風呂に入ろうという事になり。

 一行は別荘の大浴場へ。もちろん、男女は別だから、ゼストやゲンヤ達が男湯、お姉様達は女湯へ。

 

「ここにいたという事は、待っていたのか?」

 

 はやて達、つまり夜天御一行様が既にいるのは、お姉様的には予想してなかったらしいけど。

 

「そうや。私達も一応は最高評議会の一員やから、顔は早目に見といた方がええと思ったんよ」

 

 それでも、本当の目的はきっと、解りやすいアレ。

 

「クイントにメガーヌ、一応先に言っておく。

 はやては揉み魔だから、嫌なら嫌とはっきり言った方がいい。それでも手出しする様なら、拳で黙らせても構わんぞ」

 

「いえ、流石に拳を使うのはどうかと」

 

「余計な肩書が付いているが、はやてはまだ10歳になったばかりの子供だ。悪い事は悪いと、きちんと教えんとな」

 

「ややなぁ、それくらいはちゃんと解っとるよ?」

 

「それでもだ。それとも、むやみに傅かれる方がいいのか?

 私としては、多少拳が出ても笑って済ませられる程度に気安い関係の方が、楽でいいと思うが」

 

「それはそうやけど、叩かれて喜ぶようなせーへきは持ってへんよ」

 

「アリシアと変わらん子供の前で、妙な用語を使うな。

 ま、こんな感じだから、見た目と中身が一致しない私の様なのもいるが、特別扱いする必要は無い。肩肘を張られるのも鬱陶しいし、普通に過ごしてくれればいいからな」

 

「は、はあ……」

 

 クイント・ナカジマとメガーヌ・アルピーノの目が点になってるけど、取り敢えず理解はしてもらえて。

 一部の人(はやて)にはとても楽しい、入浴の時間になった。

 

「なんや、素晴らしいハリとツヤやね?

 何も知らんかったら、2人も子供がいるとは思えへんとか言ってまうとこや」

 

 もちろん、はやては迷わずに揉みに行った。

 最初の標的は、クイント・ナカジマ。

 

「あの会話の後で早速って、度胸があるのか何も考えてないのか……」

 

 そう言いながらも、クイント・ナカジマは特に気にせずに揉ませてるけど。

 

「うーん、動じへんのは、奥様の貫録なんか?」

 

「そうね、子供相手に動揺するほど乙女じゃないわ。

 それと、やったらやり返されるのは世の常、ってね」

 

「ひゃう!?」

 

 胸を隠そうとしたはやては、腋を指でなぞられて妙な声を上げて。

 次の瞬間、這うように逃げ出した。

 

「あかん、怖いよお母さん~」

 

「あらあら、怖かったでちゅねー?」

 

 そのまま、メガーヌ・アルピーノの胸に飛び込んだはやて。

 だけど、ガシ、っと抱き抱えられて固定された上に、明らかに赤子扱いであやされてる。

 母性に触れた手には白いのがかかってるし。

 ハハから出るのにチチとはこれいかに。

 座布団ボッシュート。

 

「うー、赤ちゃん扱いされるとは思わへんかった……」

 

「ふふ、私の娘は1歳にもなっていないもの。私を母と呼ぶ子はこれくらいの年齢よね。

 ねー、ルーテシア」

 

「あー」

 

 メガーヌ・アルピーノの笑みを見てか、シャマルに抱かれてるルーテシア・アルピーノがパタパタ手を動かしてる。

 どう見ても意味は解ってないけど、同意してる事にしよう。

 

 

 ◇◆◇ 2005年(新暦66年)07月A ◇◆◇

 

 

 日曜日。

 世間は間違いなく、日曜日。

 だけど。

 

「やああああっ!」

 

「行きます!」

 

 ゼスト・グランガイツ相手に元気に突撃する、高町なのはとフェイトがいて。

 

「飛べるからって油断しない! 先読みに依存しすぎない!」

 

 クイント・ナカジマにウイングロードで高速移動を潰され、苦戦するセツナがいて。

 

「くっ、これは……」

 

「1カ所に意識を取られ過ぎちゃ駄目! 支援役は全体を見なさい!」

 

 メガーヌ・アルピーノに誘導弾でフルボッコ寸前の成瀬カイゼがいて。

 

「うん、なかなかいい動きだ。

 だけど、決める時はもっと思い切る事も必要だ」

 

「はい、ありがとうございます」

 

 高町恭也と軽く手合わせしてるギンガ・ナカジマがいて。

 

「みんな、頑張ってるね」

 

「そやね。けど、大人モードの持続時間くらいは、はよセツナちゃん達に追いつかんとな。

 夜天の主として、みっともないままはあかんし。すずかちゃんも目標があるんやろ?」

 

「うん。がんばろう?」

 

「はやてちゃんもすずかちゃんも、ファイトですよ!」

 

 地味な練習を続けるはやてと月村すずか、それを応援するルーナがいて。

 

「……あいつらの素質には、嫉妬しときゃいいのか?」

 

「さあ。でも、欲しい力に手が届くなら、別にいいんじゃない?」

 

「そりゃそーか」

 

 すぐ近くに長宗我部千晴と夜月ツバサがいて。

 

「アタシ達にあの真似をしろって言われても、無理だよねぇ……」

 

「幼いとはいえ、既に大きな力を持っている。我等では模擬戦の相手として力不足であろう。

 だが、眷属化で魔力が増えたと言っていたと思うが」

 

「フェイトの負担にならなくて済むだけで、最大量は増やしてもらえてないんだよ。

 魔力を割と自由に使わせてもらえるだけでも、有り難い話だけどさ」

 

「そうなのか。

 ならば我等に出来るのは、技術や戦術、心構えを教え、磨き上げる手助けをする事だろう。特に精神面は、我等でも支える事が可能だ。

 彼女達が、自分達の身を確実に守る事が出来るようにする。これを目標とすれば、エヴァンジュ達の期待には応えられるだろう。

 管理局から期待される教育を施せるような知識は、我等に無いのだ」

 

「3か月の研修で教官にって、無茶しすぎだよ。

 要は喧嘩すればいい戦技教導とかいうのじゃないんだしさ」

 

「そうだな」

 

 少し離れたところに、困った顔で相談してるアルフとザフィーラがいて。

 

「……なあ、俺達は無視されてるのか?」

 

「今までに色々と指導されてるし、今は試験勉強が中心だからだって、ちょっとは前向きに捉えとこうよ……」

 

 馬場鹿乃と上羽天牙が微妙に落ち込みながら魔法の練習をしていて。

 

「今日は、なのはちゃんとフェイトちゃんが怪我をしそうですね」

 

「セツナちゃんも、かなり危なそうですし」

 

 怪我人という出番を待ちながら軽い訓練をしてる真鶴亜美とシャマルがいて。

 

「ねえ、さんかしないの?」

 

「アタシが? 無理無理、あんなビックリ人間じゃないし」

 

「そうなの?」

 

 また少し離れたところに、訓練の様子を眺めてるスバル・ナカジマとアリサ・バニングスがいる。

 訓練しないのに来る辺り、付き合いがいいとは思えるけど。

 2人の視線の先で激しく切り結んでるシグナムとトーレは、まあ置いておくとして。

 とりあえず、お前ら。休日なんだからもうちょっと休め?

 

 

 ◇◆◇ 2005年(新暦66年)07月B ◇◆◇

 

 

「……よく、ここまで改造したわね」

 

 プレシアが呆然と眺めてるのは。

 時の庭園、改修版。

 今日はテスタロッサ家一行へのお披露目。

 

「従者達が、本気で弄っていたからな。

 次元空間やらへの出入りには私達が必要だが、出てしまえば以前と同じように次元航行艦として機能する。

 効率の悪い機構や劣化部分の改善も色々やってあるから、理論値だとアースラ以上の速度も出せるらしい。そこまでやると数日は動かせなくなるから、リミッターを付けてあるようだが」

 

 従者、というかリーシェンが提出した仕様書を見ながら、お姉様が感心したような口調で説明してる。

 駆動炉関連の設備保守を中心に力を振るってきた従者。時の庭園に関しては主に航行システムを担当してたから、仕様書もそれらが中心に記載してある。

 

「すごい……アルフと一緒になった頃の風景そのままだ……」

 

 横では、フェイトが感激してるし。

 

「ここおにわだよねー!」

 

 アリシアは早速芝生を駆け回ってるし。

 

「前は割と殺風景やったけど、綺麗なもんやなぁ」

 

「移植する木の選定に苦労した、とは聞いている。

 なるべく緑があった頃の景色に近付けたらしい」

 

「原作で見た限り、戦場となった時はかなり荒れ果てていたはずですが。

 本来はここまで緑豊かな場所だったのですね」

 

 主とはやて、それにシグナムは、前回とは比べ物にならないほど綺麗になった場所をきょろきょろ見てて。

 

「間取りは結構変わってるのかい?

 こりゃ覚えるの大変だねぇ」

 

 アルフは地図とにらめっこしてる。

 

「住居部分をかなり拡張したし、研究室用の部分を分けたからな。

 ああ、外周部に近い迎撃区画は最低限の通路だけ知っておけば充分だ。ぶっちゃければ、わざと転送しやすい個所を用意しての、傀儡兵の戦場用だからな」

 

「そんなの必要なのかい?」

 

「場所が余ったらしい。

 あと、住居も研究室も、今は空き部屋が用意してあるだけだ。家具や設備類は自由に揃えてくれていいが、別荘の方に用意した書斎はどうする?

 必要なら移しておくが」

 

「整理もしたいし、自分でやるわ。

 別荘からなら、自由に出入りできるのでしょう?」

 

「それは問題無い。

 ああ、次元空間やらに出ている時は自由にというわけにはいかないからな。そこだけは注意してくれ」

 

「別荘への出入りではなく、次元世界での転移扱いになるという事でいいのかしら?

 別荘の一部ではない、という事ね」

 

「正解だ。

 とりあえず今日はコレが動かせる状態になった事を知らせる目的だ。

 共同で使う設備やらはある程度準備し始めているが、自分の部屋に置く物は、各自で考えてくれよ」




おまけ:運動会?

アリサ  で、そこの目立つ保護者2人は、何で来たのよ?
エヴァ  保護者応援可で、アリシアとフェイトがいる以上、プレシアは這ってでも来るぞ。
     そんなプレシアを、1人で放り出していいのか?
すずか  止めた方がいい……かな?
フェイト はやて達が来るのは、一応止めたんだよ。保護者以外は許可されてないから、って。
アリサ  全員集合だけは避けたわけね……
     それで、なのはは何を落ち込んでるのよ。
なのは  うん……今年も来てくれないのかな、って……
エヴァ  シャマルとシグナムを翠屋に放り込む手筈になっているから、美由希は来れるはずだ。
     余裕があれば士郎か桃子も顔を出したいと言っていたぞ。
フェイト はやてとヴィータは、そっちを見に行く、って。
アリサ  2人を生贄にしたってわけね……
なのは  あ、ありがとう……?


2014/10/26 本局に戻ってからも→本部に戻ってからも に修正
2015/02/15 以下を修正
 フェイトに負担に→フェイトの負担に
 磨き上げる手助けする事→磨き上げる手助けをする事
2020/01/29 余計な」を削除

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