青の悪意と曙の意思   作:deckstick

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蛇足:或いはこんな未来も/StrikerSだった何か2005年08月

 ◇◆◇ 2005年(新暦66年)08月A ◇◆◇

 

 

「別の世界でも、空港って似てるのかな?」

 

「うん、そうみたいだ。地球の空港の写真を見ても、それほど違和感は無かったよ」

 

 高町なのはとフェイトがいるのは、ミッドチルダの空港。

 名目は、高町なのはが嘱託魔導師の試験を受ける為。

 フェイトは経験者で友人だから励ましたりアドバイスしたり出来るし、加えて(プレシア)姉妹(アリシア)が過ごした世界をゆっくり見てみたいという想いから、同行を希望してた。

 訓練校の時は厳戒態勢で自由に出歩ける時間が無く、観光も出来なくて悲しかったらしい。

 今回はある程度状況が落ち着いてきた事と、ゼスト隊の隊員が同行するという事で、それなりに見て回る事が出来る予定。

 

「ミッドチルダの空港って言うと、あれが思い浮かぶんだが……」

 

「でも、まだ何年か先のはずだし」

 

 同じく嘱託魔導師の試験で、馬場鹿乃と上羽天牙もいる。

 話の“あれ”は、間違いなくStrikerSで描かれた火災。インパクトはばっちり。

 

「ロストロギアを密輸する理由も組織も減っていますから。

 きっと同じ事件は起きませんよ」

 

 ニコニコ笑ってるシャマルは、医務官の試験を受けるために同行してる。

 その他、ナカジマ家の女性3人(クイント、ギンガ、スバル)は案内兼家の管理で一時帰宅、アルピーノ家の2人(メガーヌ、ルーテシア)は育児の為に自宅に戻るという理由で同行してるから、結構な人数での移動になってる。

 決して、メガーヌ・アルピーノが気の素質が低かった事に拗ねてるわけじゃない、はず。

 もちろん、顔が知られてる数人は軽く変装をしてる。魔法は使ってないけど、一目で解る様な恰好はしてないし、人の少ない日や時間を選んでる上に人が少なめの通路になるよう調整してくれたらしいから、騒ぎにもなってない。

 ちなみに隊長のゼスト・グランガイツは、別荘で元気に気の訓練中。素質でクイント・ナカジマに負けたのが悔しかった模様。

 

「犯罪組織もだいぶ捕まえられてるし、事件の件数は数字として見えるくらい減ってるみたいよ。

 治安が良くなったせいで人の出入りは増えてるみたいだけど、元々大きな事件なんてそう滅多に……あ、あら?」

 

 クイント・ナカジマが胸を張りながら説明してると、割と近くから爆発音が聞こえてきた。

 それも、複数。どかんどかんいってる。

 

「……余計なフラグを立てたわね?」

 

 じと目でメガーヌ・アルピーノがクイント・ナカジマを見てるけど、悲鳴も聞こえてきてる。

 

「あーあ、休暇中なんだけど、どこかの部隊が動くまではお仕事しなきゃね。

 ギンガ、スバル。お友達を外の広場まで案内してあげて。あと、メガーヌの先導も」

 

「ちょっとクイント、1人で残るつもり?」

 

「赤ちゃんを気にしてちゃ派手に動けないし、指揮官も必要でしょ?

 中は任されるから、どこかの部隊が到着するまで外で人の誘導と指揮をお願い」

 

「私もお手伝いします!」

 

「あの、私も」

 

「なのはちゃんはまだ嘱託の資格を取ってない一般人だし、フェイトちゃんは親衛隊管轄だから、簡単には協力要請を出せないのよ。

 だから、まずはみんなで外に出て、メガーヌが人に指示出来るように協力して欲しいの。緊急時の自衛程度なら特例が利くし、その後ならきちんと要請を出せるから、お願い出来る?」

 

「クイントさん……はい! 頑張ります!」

 

 少なくともフェイトは本人の現場判断と言い張る事は出来るし、高町なのはも現場判断での協力要請という形は取れるけど、それをしたら最前線に行きそうな2人。

 流石二児を育ててる母親役、高町なのはがいいように丸め込まれてる。

 そんな時、館内放送を知らせるチャイム音が響いた。

 

『あーあー、もういいか?

 こほん。俺達はマディーラ解放軍! 支配を押し付ける管理局のトップの小娘に物申しに来た!』

 

 何やら若い男の声が館内に響き渡る。

 けど、言っている事が意味不明。

 ここにいる人物の立場にあってない、的な意味で。

 

「管理局のトップの小娘……もしかしなくても、エヴァちゃんの事よね?」

 

「かなり甘く見ても、はやてちゃんやアコノちゃんまでしか該当しないわ。

 最高評議会の関係者はいるけど、本人は……あ」

 

 ちょっと困った顔で話してたクイント・ナカジマとメガーヌ・アルピーノ。

 その視線が、フェイトで止まってる。

 

「わ、私……?」

 

「最高評議会関係者で、テスタロッサ姓で、金髪の少女となると……あまり当たってほしくないけれど、勘違いされる要素は多いかなってね」

 

「……私のせいだ……私が、一緒に来たいなんて言ったから……」

 

「そんなに気にしないの。それに言い方は悪いけど、こういう人達が問題行動を起こす可能性は考えていたから。まさか、権力的にトップに立ってるとか、本人がいるとか、色々勘違いしすぎてるのは予想していなかったけどね。

 状況は理解出来たから、急いで外に出るわよ。初動の遅さは多少改善してるはずだし、みんなが来る事も伝えてあるから、もたもたしてるなら問い詰めないと」

 

 ふふふ、と不敵に笑ってるクイント・ナカジマがデバイス(リボルバー・ナックル)を起動。それに続くように、フェイト、高町なのは、馬場鹿乃、上羽天牙、メガーヌ・アルピーノも。

 シャマルもだけど、使うのはクラールヴィント。やっぱりゲオルクティーレは使ってくれない。

 

「……何度見ても、その恰好は慣れないわね。

 フロントをクイントとフェイトちゃんに任せて、正面口まで一気に突破するわよ。後ろは鹿乃くんと天牙くんに任せるし、私とシャマルちゃんで娘達と助けた人を守りながらセンターから援護するわ。

 なのはちゃんは、逃げ遅れてる人がいたらその救出と、何かあった時はシールドでみんなを守ってもらえる?」

 

「うん、わかった」「大丈夫、任せて!」「お、おう、大丈夫だ」「う、うん」「やっぱり、この力は守るためのものなんです……!」

 

 場違い(ボディービルダー)に見える馬場鹿乃や1人感動してるシャマルを急かして、移動開始。

 元々人が少なかった通路。今は人影が見えないし、シャマルの調査で正面の出入口までの通路に損害が無い事を確認済み。出動してくる部隊との合流を優先するため、裏に出て迂回するよりも建物内を突っ切る事を選択。

 

「ですけど、私達を狙ったにしては、破壊場所がおかしいですよね。

 別の通路を封鎖するように爆破しても、意味は無いはずですけど」

 

「他の人と被らないように、配慮してくれたおかげかもね?

 本局との連絡航路は何度か使ったことがあるけど、この通路を使うのは初めてだもの」

 

「なるほど、それでですか」

 

 走りながら、何でも無いように会話するシャマルとメガーヌ・アルピーノ。

 速度がスバル・ナカジマ基準で割とゆっくりだから、大人組は余裕の表情。子供魔導師組も緊張で表情が硬くなってるだけで、疲れとかは問題なさそう。

 

「……誰かいる」

 

「待合室に、正面に3人いて、側面に2人隠れていますね。

 足止めと奇襲狙いですか。どうしましょう?」

 

 通路の終わりが見える頃、2番手を走るフェイトと、周囲を警戒してたシャマルが、同時に敵勢力を報告。

 数も位置も、ちゃんとあってる。

 

「探知と特定が早すぎでしょう、自信無くすわ……。

 狙いは多分交渉だと思うけど、こっちに相手がいないから、誘拐に踏み切る可能性があるわよ。

 特に後ろの2人は側面に注意。なのはちゃんとフェイトちゃんには壁役をお願いするわ。

 攻撃は私とクイントが担当、他の人は基本的に自衛と防御に徹して頂戴」

 

「え、私も……?」

 

「一番狙われる立場なんだから、前に出過ぎないでちゃんと守られてくれた方が、お姉さんとしては助かるんだけどなー?

 もちろん、攻撃が行った時は反撃していいわよ」

 

「……はい。解り、ました」

 

 冗談めかしてるクイント・ナカジマの言葉に、いかにも渋々と言った感で頷いたフェイト。

 前に出ても問題ない戦力を持つとしても、護衛役としての顔を立てるのも大事。

 身分って本当に面倒。

 

「さて、いきなりの可能性もあるから、みんな警戒してね?

 行くわよ」

 

 先頭のクイント・ナカジマは止まることなくドアを開け放ち、そのまま3人組の前へ。

 迎え撃つ側の3人組は、警戒はしてるけど即戦闘という雰囲気じゃない。

 どちらかと言えば、威圧する訃音(ふいん)()(何故か変換出来た結果、死亡フラグが立ってるように見える)、みたいな印象。

 

「おいでなすったな、最高評議会の小娘」

 

「公共施設の破壊行為の関係者と判断します。大人しく逮捕されなさい!」

 

「いえ、私は最高評議会じゃありません」

 

 3人の真ん中にいたチャラ男風の声に、ほぼ同時に反応するクイント・ナカジマとフェイト。

 もうちょっと証言を引き出した方がよさそうなのになー。

 

「俺達の街を支配しようと……へ? お嬢ちゃん、今なんつった?」

 

「だから、私は最高評議会の議員や議長ではありません。

 それに、最高評議会の人が入れ替わってから半年と少し、指導者としての権限も成立直後に停止しています。どこかを支配しろという指示も、それを止める命令も、今の最高評議会は出す事が出来ないはずです」

 

「へ……? おい、最高評議会の尻尾をようやく掴んだって、中身替わってんじゃねーか!

 どうなってやがる!!」

 

「しらねーよ! 使ってた情報屋と連絡がつかなくなって、新しい伝手をようやく作れたんだ!

 お前だって資料見ただろうが!!」

 

「チッ……お嬢ちゃん、名前は?」

 

「フェイト・テスタロッサ」

 

「テスタロッサ……家名は同じでも名前が違うじゃねーか! それに色合いは似てるけど、写真と雰囲気違い過ぎんだろ!?

 くっそ、ここまでやっちまったんだ、悪いが人質になってもらうぜ。なに、抵抗しなきゃ、悪いよーにはしねぇ」

 

「母さんやお姉ちゃんの足枷にはならない。バルディッシュ!」

 

『Yes, sir』

 

 抵抗する気満々のフェイトに応えるように、バルディッシュも鎌型のクレッセントフォームへ。

 メガーヌ・アルピーノはあちゃーって感じで頭を押さえてるし、クイント・ナカジマもため息をついてる。

 

「変に情報を与えないの、まったく。

 要人関係者襲撃の現行犯よ。大人しく「眠り「シュート!」「ファイア!」「チェーン・バインド!」なあっ!?」……あーあ、本気だとこれだから……」

 

 クイント・ナカジマの警告が終わるまでも無く、待機させていたらしい魔力弾を発動させようとした3人組と、そのスフィアを全て叩き落としたフェイトと高町なのは。

 ついでに、どこからともなく伸びてきた鎖が3人を拘束。

 なんという超反応。

 予想外だろう結果に、3人組が唖然としてる。

 

「この子達は、ゼスト隊長ともやりあえる逸材よ?

 首都防衛隊特務ゼスト隊所属クイント・ナカジマ、テロ行為及び要人襲撃犯を……」

 

 クイント・ナカジマ、猛然と突撃。

 唖然としてた3人は対応どころか反応さえ出来ず、あっさりと昏倒させられた。

 

「……成敗。ってね?」

 

 後方では、隠れてた2人もメガーヌ・アルピーノが狙撃済み。

 というか、そっちもバインドでぐるぐるになってる。

 

「ユーノくん、来てくれたんだ!」

 

「さっきまで避難を手伝ってたんだけど、間に合ってよかったよ」

 

 姿と笑顔を見せたユーノ・スクライアを見て、高町なのはが嬉しそう。

 到着予定は伝えてあったし、司書候補の面接でミッドにいるから何とかして来ると言ってた。

 だから、居ること自体は不思議じゃないけど。

 地味でもヒーローをやろうとする心意気は、認めてみよう。

 

「外に急ぎましょうか。他にも仲間がいるかもしれないし、急いで態勢を整えないとね」

 

 5人のデバイスを取り上げた上で、シャマルが空に浮かせて連行準備をしてから。

 余裕の表情で、先導を再開するクイント・ナカジマ。

 少しは状況を知るユーノ・スクライアが、並走しながら説明してる。

 その後ろ姿を見る熱い目があるのは、まあ、伝えなくてもいいかな。

 とりあえず、他の脅威も無さそう。

 だから、お姉様がフル装備で出待ちするのはもういい、とチャチャは進言します。

 

 

 ◇◆◇ 2005年(新暦66年)08月B ◇◆◇

 

 

「全員合格は、予想通りか。

 それで、襲撃してきた連中の理由やらは、どうだった?」

 

 フェイト達がミッドチルダに渡ってから2週間後。

 まだ帰ってきてないけど、色々結果が出たから報告なう。

 報告者は、クイント・ナカジマ。

 地上部隊に所属した事件の関係者で、本来は親衛隊で訓練中の為業務から外れていて時間に余裕があり、一時的にフェイトの護衛に近い立場に立ったせいか、この件の“最高評議会相手の窓口”をやらされているらしい。

 嘱託魔導師や医務官の試験結果は、ついでの連絡。

 

『数年前に結構強引に併合した世界の、抵抗勢力によるテロと断定されたわ。

 元々は無人世界で、犯罪者が逃げ込んで出来た街がある程度だけど、そこを管理世界に指定して統治しようとしていたそうよ』

 

 ユーノ・スクライアが調べた無限書庫情報だと、無人世界を管理世界に変えるための言い訳として、犯罪者にある程度開拓させたように見える模様。

 但し、穏便な方法で送り込んだわけじゃない。

 追い立てるような形で、裏の関係者の伝手で逃げ込ませてた。

 結果的に、そういった人だけで1万人を超えてる。ぶっちゃけ、管理者的な移民の10倍以上。

 手配されてる人が殆どだから、抵抗側も必死。

 冤罪が疑われる人や、刑罰が過剰と思われる人も多く混じってるし。

 子供もそれなりに産まれてる模様。

 

「……色々悪手過ぎるぞ、どうやっても禍根しか残らんだろうに。

 統幕議会も頭が痛いだろうな」

 

『手出しをするつもりは?』

 

「無いぞ。

 責を問われるべきは脳味噌やその取り巻きだ。統幕議会やらが主導していたわけではないだろう? 今の議会に関係者が残っているなら、監視役として告発する程度はしてもいいが、な。

 私は、どう対処するかを決めるべき立場にない。それをすれば脳味噌の取り巻きを再生産する事になるし、手法はともかく、やろうとした事は理解出来るからな」

 

『助言を得られれば、って非公式に相談されちゃってるけれど……その様子だと、する気は無さそうね』

 

「最上の結果を得るのは不可能だからな。

 1万人以上いるんだ、過剰刑罰に該当するか調査する余裕があるわけでも無いだろう。

 全員に恩赦を出すのは、本当の凶悪犯もいるようだから難しい。

 管理世界化を進めるのも無人世界に戻すのも、利害関係で対立があるだろう。

 合理的な判断をすれば感情を逆撫でし、感情に配慮すれば問題になるくらい大きな費用や労力がかかる。どの選択も正解ではなく、出来るのは、まだましと思える選択をして、それを信じて進む事だけだ。

 私としては、真摯に未来を考えて選択した事を問題とする気は無い。結果に伴う責任を負うのは私の役目ではないしな」

 

『はぁ……助言っぽい気もするけど、それを伝えるの、すごく気が重いと思わない?』

 

「アルハザードなら問答無用で殲滅してから自国領として開発していたとか言って、何かの参考になるのか?

 現在だとあり得ない選択だと思うが……ああ、そういう選択でも、未来を考えた上で行い、その結果の責任を負うのであれば問題にせん、という参考にはなるか」

 

『ないわー。御伽噺なのに、夢も希望も無いわー』

 

「成長や発展も、過ぎればそれを入れる器が崩壊するからな。

 地球の社会など、このままだと数十年か数百年で崩壊するぞ? それを防ぐための政策を否定する気が無いのと同じだ」

 

『そ、そうなの?』

 

「人が増えすぎ、快適さを求めすぎだからな。

 既に、地球という器の限界が近付いている。回避するには地球に住む人を減らすか、1人1人が使う資源を減らす必要があるだろう。

 他の次元世界に行く技術を持つなら、新しい世界という器を用意するという選択も、あり得ない手段ではないという事だ」

 

『人を減らすって……』

 

「現実的には、弱者の切り捨てだな。

 老人、病人、障害者、貧困層。

 順序や意図的かどうかはともかく、致命的な状況になる頃には、こういった者達から見捨てられていく事になるだろう」

 

『人権とか、そういった概念は発達している世界でしょう?』

 

「追い詰められた者に、他人を考慮する余裕などない。

 姥捨てや人身売買のような話などいくらでもあるし、自身の被害を避けるために他人の被害を許容する事は、緊急避難という名で正当化されている。そして“犠牲となる他人”は、常に自身よりも弱者だ」

 

『その世界が好きだから住んでるんでしょ、何とかしないの?』

 

「私が気に入っているのは、正確には文化だが……この文化は、刹那的でもある。

 大勢が永遠に無駄を続けられるほど、自然は優しくないしな。時期は読めんが、私がこの世界を離れる時はいつか来るさ。数十億の人間を見捨ててな」

 

『言いたい事は解るけど……そこまではっきり言う?』

 

「真実はいつもみすぼらしく残酷なもので、一般的な御伽噺など、華やかな面だけを集めて都合よく脚色された物語でしかない。

 今でこそ英雄などと称賛されてたりもしているが、私は兵器であり、確実に史上有数の大量殺人者なんだぞ?」

 

『……ほんと、現実と御伽噺は違うわー』

 

 

 ◇◆◇ 2005年(新暦66年)08月C ◇◆◇

 

 

「いや、確かに問題をクリアしたのは事実なんだが……」

 

「頑張ったよ」

 

 お姉様達の前で小さくガッツポーズしてるのは、月村すずか。

 カートリッジの魔力を使用しての、2週間耐久大人モード継続試験をクリアしたところ。

 再使用の為の回復時間も、お姉様と同程度で大丈夫だと確認済み。

 それはつまり。

 

「これで眷属になっても、外見の問題は大丈夫だよね?」

 

 というわけで、またまた眷属化希望者がお姉様を襲撃してるという事。

 既にセツナやフェイトといった実例がいるから、特に不安も無いらしい。

 それに、連続変化時間という意味ではお姉様を超えてるから、文句も言い辛いはず。

 お姉様だけじゃなく、横で見てる高町なのはやアリサ・バニングスも、またか、って感じの複雑な表情をしてるけど。

 

「だがなぁ……他の問題だって色々あるんだぞ?」

 

 リンカーコアが弱すぎて、従者にしか出来ないとか。

 家族との関係をどうするかとか。

 

「寿命や子供の問題は、夜の一族の時点で抱えてるから。不老不死でもそんなには変わらないんじゃないかな。

 それに、体を調整出来るなら、血を飲まなくても大丈夫に出来そうかも、って」

 

「……確かに出来そうではあるし、問題は既に抱えていたんだったな……

 忍、本当にいいのか?」

 

「ええ。裏側って血や家の繋がりが重視されたりするから、利点も多いのよ。色々と誤魔化す必要があるという点も、大きくは変わらないし。

 本人が希望していて、政治的な面でも利益が大きいとなれば、反対する理由は無いわね。

 一応は伴侶候補もいるけど、目立ち過ぎて隠すのも大変そうなのよ。血を飲まなくても良くなるなら、その方が有り難いわ」

 

「この体のせいかよ」

 

 月村忍の言葉と視線に、馬場鹿乃がダメージを受けてる。

 まあ、やたら大きいし。

 筋肉だし。

 髭だし。

 デバイスを起動すると、更にアレだし。

 

「ふむ、ここで私の出番ですね。

 私の不老不死の保護は、解除可能です。馬場君については、当面は不老で共にあるという妥協案はどうでしょう?

 もし捨てられたりした場合には、ちゃんと死ねますからね。

 この先もずっと生きる事になったなら、将来的には私の仕事を手伝ってもらうのもいいですね。普段は地球以外で活動し、時々帰れるような形であれば問題は無いでしょう。

 今でも無限書庫にチャチャちゃんがいますから、本局経由で別荘に来ることは難しくありませんし」

 

 変態(ロリコン)が突然現れた。

 高町家道場経由で普通に転送してきてただけなんだけど、馬場鹿乃からは死角だった。

 ちなみに、別荘の位置の基準が地球かお姉様だから、本局からの転送は色々面倒。

 本局基準での経路を維持するのは、もっと面倒。

 

「……えーと、アレだ。

 外見の問題とか、俺はあるんだよな? 大人モードは使えねぇし」

 

「髭面高校生の時点で、問題が無いとでも?

 その外見のまま50歳となっても、肌が若々しい事を妬まれる程度で済むと思いますが」

 

「うぐぅ……」

 

「その姿でたい焼きの食い逃げはいけませんよ?

 犯罪ですし、何より可愛くありません」

 

「しねーよ! てか、たい焼きの食い逃げって何だよ!?」

 

「おや、知らないのですか?

 名作なのですが……」

 

「……はぁ、何でこう、大事な話が真面目なままで終わらないんだろうな」

 

 馬場鹿乃と変態(ロリコン)の会話を聞きながら、お姉様が遠い目をしてる。

 けどまあ、月村すずかの従者化は、ほぼ決まりかな。

 作ってて良かった、親愛属性の従者化術式。




ふいんき(なぜか変換できない)をやろうとしたら、ネタに使える変換をしやがったMSIME2012。
訃音:死亡のしらせ。訃報。 (広辞苑第三版より)
……Windows7までのMSIMEには、収録されてなかったのね。


エヴァが「大人としての戸籍を取得し、大人として生活する事を決めた時」の大人モードは「最大連続使用時間は約10日間 @ A’s編01話」なので、2週間=14日の連続行使に成功したすずかの勝ち。

あと、私は「うぐぅ=たい焼き」の元ネタは未プレイ未視聴です。PC、コンシューマ、アニメ全て。


地球崩壊に関するお話で、入れられなかったお話。

無印編38話のエヴァの発言「死ぬとは何だ? 二度と意思の疎通が出来なくなる事とどう違う?」や「どうやっても意識が戻らないのが確実であれば、例え心臓が動いていても鮮度のいい死体と変わらん」、アルハ編5話のリーナの発言「人権なんて概念が存在しない」から考えると、アルハザードでの「重度の認知症」の扱いは「意思の疎通が出来なくなる=死」になると思われます。
そこまで生きていられるか、という問題は別として。

それと、実際に「絶対的な食糧不足」になった場合、真っ先に見捨てられるのは「食料を買えない貧困層」になるのではないでしょうか。意図的じゃない(経済が真っ当に機能しているなら、食料値上がり&経済力がある人が購入→結果として貧困層が買えない)ので、改善も困難ですし。
ついでに、食料値上がり→エンゲル係数が大きくなる→所謂3次産業が衰退、な事態にもなり得るんでしょうねぇ。


2017/05/03 素資質が→素質が に修正
2017/09/06 ―→ー に修正(2か所)

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