――曙天の指令書、防衛プログラムNo2。チャチャマル、起動しました――
――曙天の主、リンカーコアが過負荷ながらも稼働継続中です――
――曙天の主からの魔力供給は順調、起動魔力の確保完了を確認しました――
――お目覚め下さい。マスター、妹達――
「……
ここは?
お姉様の声が聞こえる。
チャチャネットワークの稼働を確認。
付近の魔力素は中濃度、低適合性、高負荷率。
一部で適合不良を確認。私達の稼働率が低下。
お姉様は適合?
別荘、環境の維持を確認。人員及び設備の破損や喪失は軽微、農場の拡張を確認。
常用デバイス5機、機能に問題なし。いつでも別荘より転送可能。
チャチャゼロは実体具現化済み。
お姉様は本のまま。
チャチャマルも姿は見えない。
窓の外は赤い景色。夕焼け?
目の前に、一人の少女。
チャチャゼロの記録及びリンカーコアの同期を確認。書の主と認識。
長い黒髪で、不思議な雰囲気。
身長や体型から見ると、12歳くらい?
車椅子に座っている。
元気さは不足。
表情が無い?
造形としては可愛いというか、綺麗。
表情が無い分、人形のような綺麗さ。
情報不足。
この場は主とお姉様の対話が優先。
みんな静かに。
「起きた?」
少女……主が、日本語で問いかけてくる。
その声から、言葉に相応な、疑問や心配と言った感情は一切感じられない。
その横にふわふわ浮かんでいるチャチャゼロは、嫌らしい笑みを浮かべながらお姉様を見ているだけ。
「……何とか、な。
今度の主は随分と幼いようだが……チャチャゼロ、何処まで説明済みだ?」
「ケケケ、転生者ニ向カッテ幼イナンテ、言ッテイイノカヨ?」
「転生者?
そうか……つまり、前世の分、精神年齢は高いと判断して良いのか?」
「前世を思い出し始めたのは4歳頃だった。
いきなり全部ではなく、少しずつ思い出した感じ。
曙天の書が人型になるとエヴァンジェリンに似ている事は、起動時に流れ込んできた記憶で理解してる」
「ふむ。それならば、人型の方が話しやすいだろう」
そう言うと、お姉様は人の姿……エヴァンジェリン風の姿になった。
服装は黒のローブで、吸血鬼や魔法使いっぽいイメージ。
「うん、やっぱりエヴァンジェリンそのまま」
「身体の外見年齢的にも、概ねエヴァンジェリンと同じはずだ。
お前は……ネギま的に言えば、近衛木乃香を無表情にした感じか?」
「昨日が誕生日で、10歳になった。中学生の木乃香より少し幼い。
木乃香を少し幼くして、ナギといた時のアスナみたいに無表情にした感じだと思ってる。
感情を感じられないから、アスナよりも酷いかもしれない。
あと、名前は小野アコノ。よろしく」
「思ったよりも若いな。それに、感情を感じないか……転生特典の一環か?」
「多分、そう」
「そうか。その辺は後にして、まずは自己紹介だな。
私は、前の主にエヴァンジュと名付けられた。記憶を読まれてネギまやエヴァンジェリンも知られていたから、それを少し変えただけだ。
どうせこの姿だ、エヴァとでも呼ぶといい。
年齢は……よくわからんな。前の主とは、現地時間で20年と少々の付き合いだった」
「前の前は?」
「無い。前の主が私の製作者で、最初の主だったからな。
お前……アコノが二人目だ」
「ゴ主人、前ノ主ガ死ンデカラズット寝テタカラナ」
「そう。前世は大人だった?」
「一応成人はしていた。大学生だから、世間一般の大人と言う表現に該当するか分からんが」
「でも、前世も今世も、私より年上。
私は成人前の大学生だった」
「ふむ、そうか。では、ここがリリカルなのはだという点は知っているか?
それと、原作についての知識はどの程度ある?」
「それは、神っぽい何かとチャチャゼロに聞いてる。
原作は、テレビの3つは見たことがある。
内容まで思い出したのは昨日だけど」
「結構思イ出シタミテーダゼ?」
「それなら、話はしやすいな。
私の事は何処まで?」
「アルハザードで作られた魔導具という事。
夜天の魔導書の妹という事。
管制人格……エヴァが転生者という事。
エヴァが妹達と呼ぶ、ミサカネットワークもどきがある事。
防衛プログラムがチャチャゼロもどきと茶々丸もどきだという事。
主になった私は無限再生と無限転生の対象になって、不老不死になった事。
聞いたことと流れ込んだ記憶を纏めると、概ねこれくらいだと思う。
二つ名や何をやっていたかとかは、本人に聞けと言われた」
「私の存在については概ね聞いている状態か。
チャチャゼロ、今の状況は?」
「じゅえるしーどトカイウ
「無印の開始後ということだな」
「今日は神社の辺りで封印していた。
かなり初期のはず」
「マダ飛ンデモイネーシ、いたちモ喋ッテタダケミタイダゼ。
チト遠カッタカラ、詳シク調ベテネーケドナ」
「ストーリーはテレビ版か。神社は……犬の話で、2個目のジュエルシードだったか?」
テレビ版原作で高町なのはが行った封印としては2個目。
原作では第2話。犬の封印前にユーノの2個見つけた発言がある。
ユーノが単独で1個封印していて、計3個封印済みと予想。
「……だそうだ」
「今のが、妹達?」
「ああ。私の前世の記憶を私以上に駆使する存在でな。
原作のテレビ版3作と映画1本を映像音声音楽効果音まで復元された。
他にも色々と復元されているな」
「優秀」
「そうだな。確認したかったら見てみるといい。
私の記憶だから細部に間違いがある可能性はあるが、大筋は正しいはずだ」
「わかった。
でも、私達がいる。
未来はたぶん変わる」
「胡散臭い神もどきの事だ、修正力とやらがある可能性も考慮すべきだろう。
それに、今のところは原作準拠と思えるなら、関わるかどうかの指針の参考程度にはなるだろう。
とりあえずの気持ちとして、関わる気はあるのか?」
「分からない。
感情が感じられないから、やりたいこと、やりたくないことも分からない。
だから、普段は前世の記憶を参考に考えるようにしてる。
単純に自分一人が転生したと思えたなら、喜んで関わりに行ったはず。
でも、転生者が複数、少なくともここに2人いることは確定してる。
他にもいる可能性がある。
二次小説的には、オリ主様や踏み台様の出現フラグが立っている状態だと思える」
「では、なるべく避ける方向か」
「他の条件を考慮すると、はやてには関わりに行く。
書の主、科学では原因不明の病、車椅子、年代、性別。共通点は多い。
同情と仲間意識的なもので、知り合いたいと思うはず」
「同類相憐レムッテヤツカ?」
「チャチャゼロは黙っていろ。
はやてに係わるなら……原作通りなら私も夜天の魔導書に用事があるから、都合は良いな」
「用事?」
「夜天を直してやらないとな。
私……いや、曙天の指令書に与えられた役目の一つだ」
休眠中に夜天から送られていた情報は解析中。
守護騎士システムの追加、防衛プログラムの権限昇格とバグによる暴走、複数の自滅処理の追加、闇の書の呼称が判明済み。
現時点の情報では、概ね原作同様。
相違点として、基礎構造部への強制介入キーの発行及び受領を確認。
夜天に託されたと認識。
強制介入が自滅による無限転生の発動を引き起こさないか要確認。
「妹達、優秀過ぎ」
「全くだ」
八神はやての住居を発見。
現在一人暮らし、食事の準備中。
ヘルパーの日程表が存在。基本的に毎週火曜日。
通信教育の教材を確認。義務教育の体裁は整えてある様子。
リンカーコアは不活性。体に大きな負担がかかっている模様。
お姉様が起きる前の主に近い状態と推測。
夜天の修繕による原因の除去が最善。
修繕に伴い、本来の形の主として設定される可能性。
夜天と八神はやてが望むか、相性が良ければ不老不死化。
「不老不死、私と同じ?」
曙天の主は、強制的に不老不死化。
夜天の主は、よほど相性が良くない限り選択の余地がある。
「余地があるなら、本人の意思次第だな。
長く友であれるなら嬉しいが、強制はしたくない」
「確かに。
管理局の猫は?」
今は付近にいる様子はない。
監視用と思われる魔法の存在を確認。
広い範囲で探知の妨害も行われている。
情報収集は八神はやて本人及び邸宅が対象、これ以外に対する監視はついで程度?
付近の人に対する意識操作と思われる魔法も確認。
認識阻害に近い?
「そうか、現時点で私達の情報は洩れていないと考えて良さそうだな。
管理局との敵対は、恐らく面倒事になる。
現時点で猫は放置、必要になったらメッセンジャーか案内役になってもらうとするか」
少し離れた場所に、魔力の残滓を確認。
行使者は不明。八神はやて宅近辺の魔力とは異なる。
何らかの魔法の練習跡と推測。
ミッドチルダ及びベルカの魔法について、情報解析が不足。
魔法情報の整理が必要。
詳細は追って確認。
「他に魔導師が存在する可能性?」
「転生者の可能性が高いが……調査を続けるしかないだろうな。
何か問題や聞きたい事はあるか?」
「エヴァの今後の日常生活をどうするかについて。
この家には、私の両親と兄がいる。
子や妹として扱われているけれど、感情が無いから不気味なものとも見られている。
関係は良いと言えない。
八神はやての守護騎士の様に、家族として受け入れるのは難しい」
「ふむ。私は今まで、本としてここに在ったのだろう?
当面はそのままで良いだろう」
「不自由なはず。構わない?」
「何らかの都合で人の姿で行動する必要がある時は……そうだな、最近知り合った県外に住む知人が訪ねてきたとでも説明しておけば、大きな問題は無いだろう。
人として動きたいだけなら、別荘もある。
ネギまのアレに近い代物だな。
時間の加速は無いが、広さだけは保証できる。
欲しい設備があるなら、何とかしよう」
「温泉は?」
「もうある。
アルハザードには私達が楽しめる様な娯楽が無くてな。
妹達が張り切って作っていたぞ」
「アルハザード。プレシアが目指す場所で正しい?」
「恐らく、そうだな。
虚数空間に落ちて滅んだ、と言う点でも大きな相違はない。
辿り着いても、何も残っていないが……」
「何かあった?」
「……秘密にするのもおかしいか。
虚数空間に落ちた後、アルハザードの全てを破壊したのは、私だ」
「必要があった?」
「仮に辿り着いた者が居ても技術を悪用されないため。
生きることが絶望的な友人達を獣に堕とさないため。
独善的な理由だな」
「違う。
本当に全ての技術が集まる地なら、悪用の懸念は正しい。
生存が絶望的なら、安楽死は選択肢に含むべき」
「……そう言ってくれるか。ありがとう」
「でも、プレシアの目的は、原作の行動ではどうあっても叶わない事が判明した。
現実問題として、アルハザードの技術でどうにかなった?」
「条件付きでなら、可能とは言える。
過去の改変は出来ない。蘇生は条件付き。プレシアが望む水準ではないだろうがな。
アルハザードが滅んだ直接の原因は、過去へ干渉する魔法の実験中の、テロによる魔法暴走だ。アルハザードには過去の改変に成功したという事例は無いし、そもそも正確な過去を見る事すら確実性は無かった。
蘇生は、アリシアの魂が今でも残っていれば可能だろう。可能性は微妙だがな。
肉体の年齢操作は可能だ。
アリシアの蘇生に成功すれば、後はプレシアの肉体年齢を事故当時に戻して、望む当時の状態にすることはできるだろう。
アリシアが事故で死亡した、管理局と敵対した、違法研究を行ったという事実は消えないから、幸せに暮らすことが出来るかわからんが」
「全ての魔法が究極の姿とかいう原作のアルハザードの評価は、間違い?」
「プロパガンダの誇張表現だな。
他の世界に出来てアルハザードに出来なかった事はほぼ無かったし、当時の最高峰ではあったが、それだけだ。
他の世界で生まれた新しい技術は取り込むか潰すかしていただけに過ぎん。
それに、20年程度しか活動していない私が、時間魔法と空間魔法の祖と呼ばれていたのだぞ?
たったその程度の時間で、新しい技術が究極の姿に辿り着くはずも無かろう。
第一、時間魔法の事故でアルハザードは自滅したんだ。そんなものが究極のはずがない」
「アルハザード滅亡の元凶?」
「実験の元になった技術を作ったのは確かに私だが、少なくとも、実験に私は関与していない。
それに、前の主が私を作った理由は、アルハザード滅亡後にも魔法の技術を残すことだ。
その時点で、国として無理が見えていた。
そこから20年も滅びなかったんだ、私も多少は貢献していたはずだが」
「貢献の内容は?」
「魔法開発と、戦争の戦力だな。
特に空間魔法は、他の世界の牽制や自国の士気高揚に役に立っていたようだぞ?
戦力としては……まあ、最終兵器と呼ばれた事はある」
「イメージは、アイン何とかと闇の書の組み合わせ?」
「分かりにくいイメージだな。
えーと、StrikerSのアインヘリアルか? 旗頭にして牽制という点は近いか。
戦闘力は、A’sの闇の書とは比べ物にならないくらいには強いぞ?」
「過剰戦力?」
「そうだな。
……ん? そろそろ食事か?」
主を呼ぶ女性の声が聞こえた。
きっと、主の母。
「呼ばれた。
行ってくる」
「ああ。
家族との時間は、大切にするといい。
今の関係はともかく、大切な保護者だ」
「わかった」
時系列としては、テレビ版の第2話(エンディング直前の夕焼け空の頃)になります。
2人目の転生者であるアコノの外見は、実質的にネギまの近衛木乃香相当です。
顔の造りが若干幼いですが無表情で、中学生並の身長があるため、年齢不詳な感じです。
そして、チャチャゼロはこの先空気化。当分出番なし、台詞はもっとなしという冷遇っぷりです。
アルハザード編の復習も入っているのは原作入りから読みたい人&忘れた人向けですが、うまくいっているでしょうか?
2012/11/16 アスカ→アスナ に修正
2012/11/16(2回目) 以下を修正
アスカ→アスナ
待機態勢へ移行。→みんな静かに。
聞いたことと記憶を→聞いたことと流れ込んだ記憶を
放漫→胡散臭い
夜天から送られていた→休眠中に夜天から送られていた
同感。→確かに。
時間魔法の事故で→第一、時間魔法の事故で
2012/11/18 胡散臭いな神→胡散臭い神 に修正
2012/11/23 以下を修正
過負荷→リンカーコアが過負荷
旗柱→旗頭
2012/12/25 意気高揚→士気高揚 に修正
2013/01/11 アルハザードには娯楽が無くてな→アルハザードには私達が楽しめる様な娯楽が無くてな に修正