青の悪意と曙の意思   作:deckstick

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蛇足:StrikerSのはずだった何か 08

 ミッドチルダを初めとした、時空管理局が言う所の“管理世界”は、大騒ぎなう。

 震源は、ミッドチルダ。

 先ずは、地上本部のトップと、公式指名手配されてる犯罪者と、8年前に死んだはずのストライカー級魔導師が、並んで最高評議会の犯罪を告発。

 その直後に機動6課の突入と最高評議会の逮捕が報告され、聖王教会との関係が強い査察官が同行してる等、“一部の腐敗した上層部”と対決する陸と海の実行部隊や聖王教会という演出も開始。

 人員の多くが本局所属の地上部隊で、聖王教会との関係も強い機動6課の立ち位置って便利。ここが動いて上手く情報を広めるだけで、これら3組織が協力してる様に見せられる。

 ついでに、伝説の3提督からの支持も、秘密裏から公然のものに切り替え済み。これにより、上層部全てではなく一部の腐敗である事を強調したりもしてる。

 

「けど、準備不足やね。必要な人手が全然足らへん」

 

 だから、【八神はやて】が部隊長室で疲れた顔を見せてるのは仕方ない。騒動の中心付近、実働部隊の中心にいるのは間違いないし。

 局員や協力者に該当する人達は忙しく走り回ってるけど、部隊長は指示を出し終えたところ。

 そんな感じで、お茶とお菓子を手に束の間の休憩中。

 

「私達の時は、まだ準備期間があったからな。レティやグレアムも先に巻き込んでおいたし、無限書庫も掌握済みだった。

 その意味では、こちらの方が少々強行軍ではあるが……想定していた状況でないという点では大差無いぞ」

 

「グレアムおじさんもなんか?」

 

「夜天の魔導書の治療直後、要するに闇の書事件の最終段階で事態が動いてしまったからな。

 本来は私の関与を隠すために人を集めていたんだがなぁ……」

 

「関与を隠すって、要はこそこそしとったんか。

 なーんか、今みたいな感じやね?」

 

「私の様な存在は本来、表に出るべきじゃない。

 まして、権力の頂点に立つなど間違っている。“空の網”や“終わらせる者”に勝てないからと言って、そいつらを権力の頂点に据えるようなものなんだが」

 

「ででんでんででん、な曲でおなじみのあれやね。人に作られたものって点もやし、過去に介入するのと、並行世界に介入するのも似たような感じや。

 けど、エヴァさんは別に、人類相手に反乱を起こしたとか、人を滅ぼそうとしとるわけやないよね?」

 

「過去にそんな事もあった様な気がしないでもないが……まあ、現時点ではそうだな。それでも、人でない者、不老不死の化け物が上に立つと言うのは、色々と都合が悪いんだぞ。

 老化やらを理由に引退出来ない、とか。

 身分制度とは比べられない程に、地位や権力が人の手から離れてしまう、とか。

 アレに任せとけばいいやと下の連中が無気力になる、とか。

 頂点に上り詰めようと張り切る権力者の勢いがなくなって、結果的に政治が停滞する、とか」

 

「最初のは個人的やけど、外のは割と真っ当な理由やね。

 けど、エヴァさんは自称悪人のお人よしやって聞いてるよ」

 

「こっちでは悪人だと名乗っていなかったはずだが?

 それに、少なくとも善人でないのは確かだ」

 

「見捨てる見捨てる詐欺をよくする自称悪人てプレシアさんが言ってたって、フェイトちゃんから聞いてるよ。

 敵対すれば厳しいけど、そんな相手を傷付ける事すら、自分の為と言いながら誰かの為になってるって」

 

「プレシアか……意趣返しのつもりか?

 誰かの為と思って行動しているわけではないんだがな」

 

「プレシアさんを助けたのも立場を利用する為のはずやのに、先払いで問題の殆どを解決した上に、協力自体が追加報酬に繋がるやり方やったって。

 アリシアちゃんはそれで救われたし、フェイトちゃんも傷付かんで済んだんやろ? その上、今はみんなが家族で大事にされてるって」

 

「う……ま、まあ、確かにそういう手法は使ったが。

 それは、あれだ。信賞必罰というか、盛大に恩を売っておけば裏切られにくいというか、結果的にそうなっていたというか……」

 

「照れんでええよ。やっぱり、エヴァさんはツンデレさんや」

 

「ちっがーう!」

 

 

 ◇◆◇ ◇◆◇

 

 

 一方、その頃。

 とある隠された場所では。

 

「ふむ、やはりこの方法で起動する事は不可能のようだ。予測通りではあるが、残念だよ」

 

「そうですね。それでは、第2案を試してみましょう」

 

 ヴィヴィオとジェイル・スカリエッティが、聖王のゆりかごの起動に失敗してた。

 目的は、この世界の【聖王のゆりかご】の保護。原作通りに破壊するのは、改造中の……じゃない、完全稼働状態で確保済みの聖王のゆりかごに影響する可能性を考慮して避ける方針。

 ヴィヴィオによる起動が出来たらよかったけど、やっぱり多重接続に無理があった。予想通りだから、他の案を順に試していくだけだけど。

 

「あのマテリアルを使えば、確実に起動出来るのだが。

 それは本意ではないかね?」

 

 おまけと言っちゃなんだけど、【ジェイル・スカリエッティ】もいる。

 【ヴィヴィオ】用、正確には聖王のクローンでも起動出来るようあれこれ弄ってあるらしく、その解説役として同行してる。

 

「はい。私の対となる存在ですが、一般人として過ごせるなら、それもまた一つの可能性として見てみたいですから。

 起動の鍵として使ってしまえば、必要以上に縛られてしまいます。最悪、その力を借りる必要がある場合でも、私が矢面に立ちますが」

 

「最初から矢面に立つ事が組み込まれているのだ。

 鍵の存在を隠すのは容易、むしろ無理に表に出さない限りばれることは無い。計画通りだよ」

 

 ジェイル・スカリエッティが言ってる通り、計画ではヴィヴィオが“オリヴィエ”として表に出る予定。

 起動の目処がつき次第【クロノ・ハラオウン】に連絡を入れ、クラウディアを中心とする次元航行部隊の一斉砲撃で撃沈、に見せかけて別荘に確保する計画。

 【聖王のゆりかご】を宇宙まで移動させる途中に、ヴィヴィオが【カリム・グラシア】経由で聖王教会に通信を入れ、一方的に宣言をぶちかます事も予定済み。

 

「では、レリックを直接使用しての制御を試してみるとしよう。

 完全起動には程遠いが、移動くらいは可能になるはずだ。変に弄られている部分が干渉しなければ、だがね」

 

 玩具を手にした子供のごとく、わくわくしてるジェイル・スカリエッティは、平常運転。

 その横で、似たような様子の【ジェイル・スカリエッティ】も、平常運転。

 

「遊びではないのですよ?」

 

 ヴィヴィオは、自身の力だけだとこれ以上は不可能だし、レリックの解析はジェイル・スカリエッティが行っていたのだし、と、ちょっとため息。

 性格やらはアレだけど、2人とも実力はあるマッドサイエンティスト。

 天才とナントカは紙一重、ナントカと鋏は使いよう。

 癖があるモノをうまく扱うのは、大変だ。

 

 

 ◇◆◇ ◇◆◇

 

 

 そして、聖王教会の病院では。

 

「申し訳ありません!」

 

「状況はどうなってますか?」

 

 【ヴィヴィオ】が検査の合間に姿を消して、【フェイト・T・ハラオウン】と【八神シグナム】が到着したところだったりする。

 人が変わってるのは、多分、ライトニングの2人が行く事になったから。

 既に特別病棟とその周辺が封鎖されるのはまあいいとしても、病院にいたシスターや看護師、医師までが総出で探し回ってて、大騒ぎになってる。

 そんな感じだから。

 

「こんな所にいたの。心配したんだよ?」

 

 中庭で【フェイト・T・ハラオウン】が見付けるのは、予定調和として。

 

「陛下!?」

 

 即座に飛んできて跪きながらも、出歩かないでほしいオーラが漂う【シャッハ・ヌエラ】達の態度が原因にしか見えない。

 ぶっちゃけ、ものすごく怖がられてるし。

 だから。

 

「ごめんね、びっくりしちゃったかな。

 大丈夫だった?」

 

 普通に優しく接してくれる【フェイト・T・ハラオウン】に懐く流れになるのは、仕方ないと言うか。

 聖王教会にどっぷり取り込まれるのも避けたいし、何か手を打とうかと話はしてたけど。

 なんという、人物入れ替えで部分的原作準拠な展開。

 原作準拠なら、この後は機動6課にお持ち帰りして離れたくないとぐずられる。でも、【高町なのは】より子供の扱いが上手い【フェイト・T・ハラオウン】だと、どうなるのかな?

 

 

 ◇◆◇ ◇◆◇

 

 

 更に、機動6課の食堂では。

 

「なーんか、私達ってこんなに平和でいいのかな?」

 

「知らないわよ」

 

 【スバル・ナカジマ】と【ティアナ・ランスター】が、ゆっくりと昼食中。

 機動6課も慌ただしく動いてるのは確かだけど、フォワードが全員出払うわけにもいかないという事で、2人は待機任務中。

 デスクワークが少しあるとはいえ、必要以上に体力を消耗するわけにもいかないから訓練も制限されてるし、時間に余裕がある。

 だから、のんびりというか、ぶっちゃけだらけてる。

 

「フェイト執務官とシグナム副隊長は保護した子のとこ、なのはさんとヴィータ副隊長は調査で駆け回ってる。エリオとキャロはギン姉の応援。

 八神部隊長達も色々大変みたいだしさー」

 

「待機だって重要な任務なんだから、我慢しなさい。

 権限的に資料のまとめ位しか手伝えないんだし、さっき手伝ってたのだって、守秘義務でガチガチな内容じゃない」

 

「でもさー、ティアだって何か落ち着いてないしさー」

 

「そりゃあ、何か他に出来る事があるんじゃないかって思ってるわよ。

 けど、私達が見た内容から何かを考察するのは無理なんだし、今は私達以外の誰が戦力として待機出来るのよ」

 

「肩書上はそうだけどさー」

 

「じゃあ、少しばかり裏話を聞いてみるかい?」

 

「……え゛?」

 

 パスタを口に入れたまま、【スバル・ナカジマ】の動きが止まった。

 視線の先にいるのは、成瀬カイゼ。

 その手にあるのは、コーヒー。

 

「……アンタ誰よ」

 

「エヴァさんの部下と言えば、理解しやすいんじゃないかな。

 関係者である以上、君達も少しは知る権利があるだろうと言っていたよ」

 

「そう。で、防音の結界まで張って、何を語ってくれるのかしら」

 

 【ティアナ・ランスター】の右手は、フォークを持ったまま。

 だけど、左手がデバイスに向かってる。

 

「今更敵対する気は無いから、心配しなくていい。それに、話をすることは八神部隊長も了承済みだ。

 先ずは、この部隊が設立された理由、というのはどうだい?」

 

「ロストロギアの対策を専門に行う事を目的に、試験的に設立された部署。

 違うんですか?」

 

「納得出来ていない顔で言っても、説得力が無いよ。

 部隊長や隊長がオーバーS、副隊長ですらAAA以上で、全員がリミッターを付けてる。その反面、部下は新人ばかり。

 表から見える情報だけでも、突っ込みどころが満載だからね。これがどれくらい異常か、理解して……いない人は置いておこうか」

 

「え? えっと……」

 

「スバル、ちょっと黙ってなさい。

 確かに異常ですが、理由を聞いてもいいんですか?」

 

「最悪の事態は回避され、機動6課の立ち位置が重要になってしまっているからね。

 元々は、聖王教会にいる予言能力者が、管理局の崩壊と思える予言を行った事が発端だよ。しかし、色々理由があるにせよ、地上本部は対策を行わなかった。それに対して本局と聖王教会が用意した手段が……」

 

「機動6課、ですか」

 

「そういう事だね。

 聖王教会との関係も強い本局所属の部隊長。

 本局のエースオブエース。

 本局の提督の家族で、本局所属の執務官。

 後ろ盾も、聖王教会と本局の人物。

 地上本部に喧嘩を売っていると思われても仕方ない人選になっているのは、こういう理由だからだね」

 

「それでも、必要だと判断したんですね。

 ロストロギアの対策も、まさか偽装……?」

 

「いや、ロストロギアに関する事件が切っ掛けになるという予言に対応している以上、事件への対応が主任務なのは間違いない。

 事件に対応した先を重視しているだけだね」

 

「そう、ですか。

 ですが、ここまでの話は、後々公開される内容。嘘ではなくても、真実でもない。

 ですよね?」

 

「ティ、ティアぁ……やめとこうよ……」

 

 【ティアナ・ランスター】の眼が鋭く、【スバル・ナカジマ】の顔が情けなくなってる。

 もちろん、ある程度資料を理解してるなら気付けるはずだけど、口にしていいかは別問題。

 

「そうだね。

 では、ここまでは期間限定の秘密、ここからはある程度事情を知っている人限定の話といこうか。

 何を聞きたい?」

 

「貴方達について。

 都合よく戦力が出てくるなんてあり得ないし、どう考えても裏側の担当ですよね?」

 

「うん、そうだね。

 僕達については、多くは語れないけど……そうだね、ここの法では管理されていない、と言っておこうか。

 管理世界の出身ではない異世界渡航者のようなもの、と言えば想像出来るかい?」

 

「おおよそは。

 エヴァンジュさん達と……恐らくですが、ホテルアグスタで戦っていた人達もそうですよね。

 目的は何ですか?」

 

「現状、正確に言えば最高評議会がのさばっている管理局の在り方だけど、これによる好ましくない影響を受ける事を避けるため、だね。

 僕達は、好まない影響を避けることが出来て安心。

 君達は、組織の闇や犯罪者を生み出す構造を排除出来てめでたしめでたし。

 明かせない情報や人の関与はあるけど、大局的に見てウイン-ウインではあるね」

 

「放置は出来なかった、という事ですか」

 

「こちらにも予言の能力持ちがいてね。

 そうそう、念のため言っておくけれど、予言と言っても未来を明確に知る事は出来ないそうだよ。曖昧だったり抽象的だったりするから、実際に何があるのか、何をすれば対処出来るのかという点では少々頼りない面もあるらしいね。

 だけど、原因に心当たりがあり、結果が避けるべき内容である場合は、放置するわけにはいかない。

 というわけで、調査と必要な対処に来たのが僕達、という事だ。理解してもらえたかい?」

 

「……おおよそは」

 

 まだ何か考えてるけど、伝えようとした内容はこれで全てのはず。

 最高評議会発の犯罪者が管理外世界に余計な手出しをして大変な事になるのを阻止しに来た、みたいに理解してくれてるといいな。

 この内容が、時空管理局の上層部向けの話になるから。




没ネタ(説明を入れる場所が無かった事による)

ティアナ エヴァンジュさんの実力は、本当に話していた通りなんですか?
カイゼ  どういう風に聞いているんだい?
ティアナ 一般的な魔法に適性が無い、と聞いています。
カイゼ  なるほど。僕が知る限りでは、嘘ではない様だよ。
     例えば、高町なのはが昔やっていた訓練に、空き缶を使ったものがある。
     聞いた事はあるかい?
ティアナ 魔力弾の制御の練習ですか。
カイゼ  そう、それだよ。
     エヴァさんはデバイスを使わなければ、2回当てる事は無理だそうだ。
ティアナ 適性が無いって、それ程なんですか……
カイゼ  (1回目で破壊してしまうから、だけどね)

※エヴァが「自身のみで」行使する魔力弾は、高威力過ぎて「缶を弾く」事が出来ません。
 所謂非殺傷設定も無く、人に使うには色々問題があるものばかりとなっています。
※こう考えると「夜天の書」で「最も良かった改造」は、「ミッド式(の非殺傷設定)」が使えるようになっている事なのかもしれません。


2015/04/10 以下を修正
 切欠→切っ掛け
 実力はある→2人とも実力はある
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