「そっか、そろそろ帰る準備を始めなあかんのか……
ちっちゃい私らはあんまり顔を見せへんから、普通に移動してると思ってたんやけど」
撤収準備を始めるにあたって。
とりあえず話はしておこうと、お姉様は【八神はやて】の所へ。
そこで、まずは簡単な説明なう。虚実織り交ぜながら。
「時間の流れが違っている上に、移動自体も安全だと胸を張れるほどには検証出来ていないからな。恐らく大丈夫だと判断出来たから実行に移したが、帰るべき世界を見失ったり、最悪の場合は移動に失敗して存在が消えたりするリスクは0ではないんだぞ。
尤も、目に見える一番の問題は、夏休みは有限だという事なんだが。気軽に移動出来ん以上、遅くなり過ぎない内に帰してやらんとな」
「ちっちゃい私らはまだ小学生やし、エヴァさんも似たような外見やし。日本で暮らしてるなら、学校にはちゃんと行かなあかんよ。
でも、そんなリスクがあるなら、気軽に会うのは止めた方がええな……」
実態としては、リスク自体は小さいと判断出来てる。
時間の流れも近くなってきてるし、強くなった影響力が即座に無くなる事も考えにくい。
ただ、気軽に往来出来ると思われるのは、あまり好ましくない。
「何だ、寂しいのか?」
「んー……うん、そうやね。大変やったけど、思い出してみると楽しかった気がするし。
いっぱい助けてもろたのに、まだ何も返せてへんから、せめてお礼くらいは言わせてな。
エヴァさん、色々とありがとうな」
「あ、ああ。
とりあえずだな、恐らくあと1週間前後で帰る事になる。カリムやクロノにも話しておいた方がいいだろうし、それまでにやっておきたい事があるなら早めに……何が可笑しい!?」
お姉様の目が泳いでる。
どう見ても、照れてる。
それを見てる【八神はやて】は笑ってるし。
「いやな、“プレシアかあさん”から聞いてた通りや思って。
要するに……」
「言わんでいいっ!」
言わなくても、予想はきっと正しいし。というか、以前言ってるし。
見えてる地雷は。避けるよろし。突っ込むと突っ込み(物理)で返されかねないから。
◇◆◇ ◇◆◇
そんなわけで、やり残した作業を順に潰していく巡礼の旅。
本局への長い
はぁーるばる来たぜ、
「そしてこちらが予め
「えっと、料理番組じゃないんだけど」
「おー、来たのか。久しぶりだなー。
けど、アタシはいちゃまずかったかー?」
お姉様の日本どっぷりなネタは幼女な【アルフ】に流されたけど、【ユーノ・スクライア】に通じてる。
日本にいた期間はさほど長くないはずなのに、何で馴染んでるんだろ。
「いや、この際だからアルフも聞いておいてくれ。
とりあえず、ユーノは初めましてからか。聞いていると思うが、私がエヴァンジュだ。
先ず、今回の件での協力に感謝する」
「話は聞いてるけど、並行世界だったよね。
本来はこの世界に関わらなくてもいいのに、この世界の問題を解決に導いてくれたんだ。感謝するのは、僕達の方じゃなきゃ」
「フェイトも、今じゃ一般人にまで有名になったし。
なんか、あの3人のファンクラブが出来るとかって話だしなー」
「介入は私達の都合で、この世界に都合がよくなったのは結果だからな。
だが、あいつらのファンクラブか……むさい野郎どもの集まりか?」
「女の子も多いって話だぞー?
話を聞いたスバルがハッスルしすぎて幹部になっちゃったー、とか騒いでたしなー」
仕方ないね、元から【高町なのは】好きの【スバル・ナカジマ】だもの。
でも、お姉様達、正確には“新最高評議会と美形な仲間達”のファンクラブが存在してるのは公然の秘密で、お姉様の耳に入ってない事実。当然、非公式。
もちろん、お姉様がそういう事を好まないという情報は流してあるから、表立っては活動してない。雑草の草の根みたいな勢いで広がってるらしいけど。
愚痴を言いながら、それを暴走しないように監視するのもクロノ・ハラオウンのお仕事。同じく本局にいるユーノ・スクライアと掛け算されてる
「まあ、その辺はあいつらが好きにすればいいさ。本当にあいつらを好きな連中なら、本人が嫌だと言えば地下に潜るなりして目立たなくなるだろうしな。
それよりも、だ。ユーノに聞いておきたいことがある」
「何かな? 無限書庫についてとか?」
「私の世界の無限書庫は掌握済みだ、こっちよりも有効に利用している。
そうではなく、並行世界だからこそ発生する、並行世界に関係する問題だ」
「それは……僕に解る事なら」
「難しい問題だが、最後の答えはお前にしか出せん。
ユーノ・スクライア。お前は、高町なのはをどう思っている?」
「……え?」
「並行世界に関係する……?」
【ユーノ・スクライア】がぽかーんとし、【アルフ】が悩んでる。
どう考えても、意図が伝わってない。この質問で伝わるわけがないけど。
「私の世界とこの世界は、相互に影響しあっている。
何故と言われても困るが、対となる存在に何かあれば、もう一方に影響が出る可能性がとても高い。ユーノ・スクライア同士、高町なのは同士で、何らかの繋がりがあるという事だ。
そして、私の世界の高町なのはとユーノ・スクライアは、どうもお互いを意識している。まだ子供だし、どれくらい自覚があるか微妙ではあるがな。
そうであるなら、そろそろ大人と言っていいお前は、どうなんだ?」
「え……えっと…………」
「ユーノもなのはも、鈍いからなー。
鈍感系の両片思いってやつかー?」
「アルフから見てもそうか。
ネタを言ってしまうが、こっちの予言で、この先4年だか6年だか経ってもまるで進展がないという、素晴らしいワーカホリック振りを2人とも発揮する可能性があるらしくてな。
なのはの負傷にも関係しそうだから、付き合うなら正々堂々とやってほしいんだが」
「ヘタレだし、無理だと思うぞー?」
「なのはもその辺は疎いから、簡単に行くとは思っていない。
だから、こうして話をしに来たわけだ」
「ちょ、ちょっといいかな。
問題は、僕となのはだけじゃないはず。フェイトやはやても恋人がいる様子は無いし……」
フェレットもどきの、話題逸らし!
「この世界の2人はともかく、私の世界の2人はかなり特殊でな。はやてから話を聞いていると思うが、要するに不老不死のような状態だ。
誰かを愛しても子を産む事は出来んし、共に永遠の牢獄に囚われるか、相手だけが年老いるのを見守るかの2択だ。そんな辛く重い愛を、愛で受け止められる男が存在する事は期待せんよ。
だが、なのははまだヒトだからな。こんな茨の道を歩まなくて済む為にも、人としての幸せを見付けてほしいんだが……一番有望な相手が、このワーカホリック系フェレットなんだ。残念ながら」
「そりゃー大変だー……」
逸れた話題が、斜め上に!
犬耳幼女のじと目! フェレットもどきにだいだげきー。
「ア、アルフだって不老だから、似たようなものじゃないか」
フェレットもどきは、懲りずに話題逸らし!
「アタシはフェイト一筋だし、そもそも使い魔だしなー。
ちっこい子供の相手も、なかなか楽しいぞー?」
「こっちのアルフは、ザフィーラと仲がいいな。
共に不老で狼の使い魔的な存在だし、一緒に仕事をしている事も多いからだろうが」
「フェイトとはやてが不老で家族なら、アタシ達もずっと一緒にいられるって事だもんなー。
そっちのアタシもやるなー」
にやり、とした笑みを浮かべる【アルフ】。その視線の先には。
「そ、そんな……」
余計に抉られてる【ユーノ・スクライア】がいる。
でも、玩具にするのも程々にしないと、拗ねて悪化しそう。
「まあ、永遠に縛られた連中はどうにか出来るものでもないから、今は無視するぞ。
問題は、今を生きるお前達だ。ヴィヴィオが学校に通い始めたら、一緒に様子を覗きに行きそうな程度の仲なのに、それ以上進展する様子が無いのはどういう事だ。
自信が無いだけなら、逃げているだけだ。極上の優良物件と評価されるような立場と嗜好の持ち主なんだぞ?」
「え……?」
「どうしてそう意外そうなんだ。
その若さで既にそれなりの権力とそれに伴う収入を持ちながら、比較的安全な後方勤務の魔導師。簡単に代わりが見付かるような実力と実績じゃないから、当面は安泰で将来性もあるだろう。
酒や女に溺れる様子も無く、もはや幼馴染と言っていいほど付き合いが長い女性と親交が続いている。誠実さや一途さを表しているとも言えるな。
カタログスペックでお前に勝てる、同年代の独身男がいるのか?」
「え、えっと……あまり同年代の人と関わらない仕事だから、心当たりは……
それに、お互い仕事で忙しいし……」
「それが逃げだと言っている。
あの堅物で仕事の鬼の様なレジアスにも、信頼関係が出来ている娘がいるんだ。アレが恋愛という過程を経たかどうかは知らんし知る気も無いが、少なくとも家族愛はあり、きちんと家族と向き合ってきたのだろう。
それに比べて、お前はどうだ。なのはからだけじゃなく、自分からも逃げていないか?」
「そ、それは……」
原作知識ありな転生者なら、修正力のせいとか言えるんだろうけど。
なんて真面目なフェレットもどき。
「ま、散々言っておいてなんだが、お前の人生はお前のものだ。
無理にくっつけとは言わん。仕事に生きるのも他の女とくっつくのも、選択肢としてはありだろう。生きていれば後悔する事も誰かを傷付ける事もあるし、それを怖がるのも自然な事だ。
だが、人として納得出来る、少なくとも納得出来るよう努力した結果の選択をしているか。
それくらいは考えてくれよ?」
「う……うん…………」
お姉様の威圧!
【ユーノ・スクライア】は、頷いた!
多分、無意識に。
「おや、エヴァちゃん。
なのはちゃんの未来を案じつつ、ユーノ君で遊んでいるのですか?
それにしても、やはり可愛いですね」
そして、視線が【アルフ】の方を向いてる気がする。
「自重しろ
「阿部氏っ!?」
すごく……アッパーカットです……
「良かったのか? ホイホイ性癖をさらけ出して。
私は身内だろうが構わず殺ってしまう化け物だぞ?」
「いつもながら、容赦がないね」
「カイゼか。まだ調べものか?」
吹っ飛んだせいで姿が見えなくなった
説明役、成瀬カイゼ。
「少し気になる事があったからね。
捜査の邪魔はしていないから、その辺は心配しなくていいよ」
「そういえば、お前には無限書庫の権限を渡していなかったな。
ユーノ……あっちのユーノに頼めば、大抵の事は調べられると思うが」
「あっちのユーノも忙しそうだし、こっちの方が向いている事案もあるから、適材適所だよ
欲しい情報も概ね見付かっているしね」
「そうか。まあ、管理局も大騒ぎ中だから、必要以上には邪魔にならんようにな」
「エヴァさんよりは静かにしているつもりだよ」
「私の用事は終わっているからいいんだ」
◇◆◇ ◇◆◇
巡礼の旅、2番目の札所は。
「ヴィヴィオ、元気でしたか?」
「うん……でも…………」
軽く変装したヴィヴィオを連れて、【ヴィヴィオ】の所へ。
でも、お姉様を見て怖がってる。
「エヴァさんは、私の家族です。
少し言葉使いは悪いですが、優しい人ですから大丈夫ですよ」
「初めて見る顔だ、警戒するのは仕方ないがな。
そうだな、乱暴者の姉か友人あたりだと思ってくれていいぞ」
「う、うん……」
ちょっと言っただけで懐柔出来る程、子供は簡単じゃない。
うん、これが普通。
アリシアは色々な事情やら理解力チートやらが重なった結果と再確認。
「あー、だが、ちょっと嫌な話をする事にはなるのか?
それほど深刻な話ではないし、先送りした方がいい気がしてるが」
「そうですね……もう少し後でもよいのではないでしょうか。
すぐに決められる事ではありませんし、何らかの形で連絡出来るようにするのでしょう?
こちらで預かる以上、音信不通というわけにもいきませんし」
「出来る事を疑わないのか?」
「経過を見る為にも、このまま放置はしないと信じていますから。
そうですね……ヴィヴィオ、少しだけ良いですか?」
「うー……」
どう見ても、【ヴィヴィオ】は目の前の話に付いてきてない。
理解出来ないから、警戒を解く事も出来てない。
「ヴィヴィオだけが扱える物を、私達が預かっているのです。
今はまだ危ないですから、ヴィヴィオが大きくなったら、どうしたいか、どうするかを考えてほしいのです」
「ヴィヴィオ、の……?」
「はい。
もちろん、その頃にどんな物なのか改めて説明しますし、家族も含めたみんなで考える事になると思います。
その頃まで忘れていても良いのですが、そんな事も言われたなと覚えていてもらえると嬉しいですよ」
「うん……」
まあ、誰かがたまに言わなきゃ、覚えてないだろうけど。
保護者や関係者、要するに3人娘や守護騎士達にも伝えておけば、問題無いかな。
どっちにしても、当分はお姉様が責任を持って隠す事になってるわけだし。
今回のまとめ。
エヴァ、ユーノにSEKKYOUする……? 盛大に焚き付けたとも言います。
でも、恋愛色を無くす方向に進んだ「リリカルなのは」で一番不憫なのは、ユーノかもしれません。支援や探索に優れ、戦闘でもデバイス無しで守護騎士の攻撃を凌げちゃったりするくらい優秀なのに、どんどん影が薄くなっちゃって……。なのはの娘(真)が主役化する続編だったら、相手はユーノだったろうに。
他の人の多くは、何らかの形で「家族」を得てますし。ヴィヴィオ&なのは、エリキャロフェイト、はやて&守護騎士、フェイト&リンディ、クロノ&エイミィ、恭也&忍etc…
アリサすずか美由希etcは様子があまり見えないから好きに想像出来ますが、ユーノは中途半端に見える上に家族や一族の影が全くないだけに不憫さが際立つと言うか。
思わず「恋愛するレジアス」を想像して気持ち悪くなった人。
ナカーマ(-_-)人(-_-)
オジコン少女に追い回され、タジタジなレジアスを想像した人。
おまわりさん、こいつです。
2015/05/11 おお、幼女な【アルフ】には流されたけど、【ユーノ・スクライア】にネタが通じてる。→お姉様の日本どっぷりなネタは幼女な【アルフ】に流されたけど、【ユーノ・スクライア】に通じてる。 に変更
2017/05/03 最も→尤も に修正