150話目でも通常運転です。何かやる余裕が無いのですよ。
◇◆◇ 2006年(新暦67年)10月 ◇◆◇
もう、秋です。
読書とか食欲とか、いろいろ言われる季節です。
並行世界では【ヴィヴィオ】が【フェイト・T・ハラオウン】の娘になる事が決まったのに、相変わらず【高町なのは】と【ユーノ・スクライア】の関係が進展しない、鹿しか恋しないかもしれない季節です。
そんなわけかどうかは置いといて、お姉様は珍しく八神家のダイニングでポテチとチューハイをお供に、夜の読書中。
もうすぐ日が変わる時間。主やはやては寝てるし、ヴィヴィオや守護騎士達も自分の部屋や別荘にいる。つまり、割と広いLDKにお姉様1人。
セツナが階段を下りてくる音が聞こえてるけど。
「……どうした、眠れないのか?」
「はい……疲れは感じてるんですけど。
あ、ポテチ少し貰っていいですか? チューハイ飲みたいです」
「ポテチは構わんが、酒を飲んでいいのか高校生?」
「前世は成人済みでたまには飲んでましたし、今世はこの姿で固定ですし、エヴァさんも小さい方の姿で飲んでますし。
心や体への影響とか自制心とかが禁止の理由だと思うんですけど、ぶっちゃけ私達には関係なくないですか?」
「違いない」
そんな事を話しながら、セツナは冷蔵庫と食器棚を経由してお姉様の隣に。
ぷしゅって音が、とっても缶のチューハイらしい。
「で、何かあったか。
愚痴ぐらい聞けるし、可能な範囲なら手助けも出来るぞ?」
「それなら、ちょっと愚痴をこぼすので、聞き流してください」
それからぽつぽつと話す内容は。
要約すると、女子高生怖い。
「私は、そういう状況になったことは無いが……そんなにか」
「一部の人だけなのは解ってますけど、その一部の頭がピンク過ぎて……
こっちは精神的に男なので、誰が誰を好きだのお前は誰が好きかだの彼のどこがいいだの彼と付き合ってる彼女はあれが駄目でこれも駄目だの……付き合い切れません。
子宮で思考する肉食系女子、怖いですよ……」
「股間で思考する野獣系の男もいるから、あまり言えん部分ではあるが……絡まれたのか?」
「最初は、そんな子達のグループが姦しく喋っていたのが聞こえてきただけでしたし、無視していたんですけど……どうも、その中の1人が好きな人が、私を好きらしいと噂が立ってですね……
男に惚れられても気持ち悪いだけですし、それをオブラートに包んで言っても彼のどこが気に入らないんだとか言って切れるし……
未だに女って理解出来ません……」
「心配しなくていい、私にも解らん。
鈍感系ハーレム主人公のどこがいいのか理解出来んのと同じくらい、現実の女の恋愛観も複雑怪奇だ。人によるのだろうが……それでもな」
「ですよねー。呼び出して振るから落ち込んだところを優しく励ましたらどうかって提案したら、なし崩しで見せ付ける様に付き合うつもりなのでしょうとか、意味が解りません。自分以外は全員敵なのでしょうか……その割には群れてますけど。
あ、ポテチ無くなったので、次のを取ってきます。何味がいいですか?」
ポテチ等々は、戸棚にいっぱい。
煎餅やチョコもあるし、色々と買い置きしてある。
「別にポテチじゃなくても好きな物でいいが、ついでに私の酒も頼む。
昔から色恋が原因の騒動はあるからな……私達に直接影響しそうな連中は、比較的平和だと思えるんだが」
「お酒は何味がいいですか?
と言うか、直接影響しそうって、なのはちゃんとユーノと……」
あの2人は……ねぇ。
並行世界の2人は、相変わらずの奥手っぷりを発揮してるらしいし。【ヴィヴィオ】の【フェイト・T・ハラオウン】ファミリー入りが内定して、2人の時間は原作より作りやすいはずなのに。
「甘めのなら何でもいいぞ。
原作で結婚するクロノとエイミィ、同じく恭也と忍、恋愛と言っていいか判らんカイゼと美由希、外に相手がいないザフィーラとアルフ、既婚のプレシアと
とりあえずの組み合わせは、これくらいか?」
「プレシアさんが、早苗くんを気に入ってませんでした?
あと、すずかちゃんは、馬場と契約が云々とかあったような」
「黒羽は料理が恋人みたいだし、異性に恋愛感情を持っているのか微妙じゃないか? それに、フェイトやアリシアも異性としては意識していないと思うが。
将来はともかく、今はまだ仲のいい友達程度に見えるぞ」
いやいや、当時のフェイトはちょっと意識してた気も。
プレシアに紹介するくらいだし。
恋愛と言っていいかは確かに微妙だけど。
「あと、馬場はな……すずかがテスタロッサ家入りした時点で、可能性はほぼなくなっていると思っているんだが。契約以前に、血を飲む必要が無くなっているからな。
駄目押しで、あっちの世界から戻ってから逆ナデポも破壊しているし」
「やっぱり、そうなんですか。あ、がちよいのバニラピーチミルクでいいですか?
あとは……男が少ない割に、天牙って誰ともそんな感じが無いですよね?」
「ああ、有り難う。
天牙の場合、視線は行っているが特定の誰かという感じじゃないな。あれでも男だし、思わず目が行っているだけだろう」
「胸とか足とか、ですよね。男のチラ見は女のガン見って言うらしいですけど、確かに気付けますし。
でも、私は魔獣と戦っていたせいで視線なんかを感じるのには慣れてますけど、世の女の人ってどうやって気付いてるんでしょう……?」
「私は暗殺者対策で鍛えていたな。
妹達が捕捉していたから、不意打ちを受けた事は無いんだが……そういえば、殺す為にわざと私のところまで通した事はあったか」
「殺す為って、ひどくないですか?」
「生きて捕らえた場合、大抵は拷問の後、人体実験、資材、奴隷、狂人共の玩具のどれかだ。外見が良くて若い女なら性奴隷、反抗的だと手足を切られて処理道具扱いになる事すらあった。
私が殺し、一瞬で全てを奪ってしまった方が救いになる場合だってある。そんな時代だ」
「殺伐としてますね……リアル魔物を狩るモノたちも似たようなものですけど。仲間が生きたまま食べられてるところなんか、トラウマものですし。
ところで、眷属とか従者って、子供が出来なくなって性欲も無くなるんですよね?」
「そうだな。それがどうかしたか?」
「いえ、フェイトちゃんとか、すずかちゃんとか……恋愛するのかなと思ったので。
それに、性的な行為自体はどうなのか、詳しくは聞いてないなと」
「性的な欲求や興奮が無くなるだけで、肉体的な反射は一応あるし、刺激で少し気持ちよくなったりはするらしいぞ。疲れた肩や腰のマッサージの方が気持ちいい程度らしいが。
お前達の感情面は、さほど変わっていないはずだ。従属属性の連中、要するに別荘の従者や戦闘機人はこの辺もかなり狂っているんだが……それよりも、不老化した年齢の方が問題だな。
あの年で、どこまで異性を意識してるやら。本当の体が成長しない以上、成長に伴う学習がうまくいくか判らんし」
一応、大人モードやらで、体の成長を模倣してはいるけど。
不自然さはどうしたって出る。
夜寝る時とか、体を休めるためにも大人モードを解除してるし。
「好きな気持ちがあっても、性的な欲求が無いわけだから……静かに寄り添う老夫婦、みたいな感じになるんでしょうか?
それか、仲のいい友達に好きとか言う子供らしい付き合いとか」
「当面は子供らしい付き合いになるだろうが……難しく考えない方がいいかもしれん。
従者連中の話を聞くと、仲のいい相手とデートでいちゃついて、食事して、休憩したりする事もあったりしているようだ。つまり、休憩がホテル用語ではなく本来の意味なだけで、普通の人と大差は無い。
その辺が気になったという事は、誰か気になる相手でもできたか?」
「私が誰かに恋をするのって、あまり想像出来ません……少なくとも、男性相手は全力で遠慮したいです」
「あらんかぎりの力でそれとなく断るのか。高等技術だな」
「拒否とか拒絶とかでもいいんですけどね。
エヴァさんはどうなんですか? アコノさんがあからさまに好意を向けてますけど」
「私も恋は無理だろうが……アコノを好きか嫌いかで言うなら好きだし、男として一途に想われるのが嬉しくないわけもない。永遠なんて狂気の世界を押し付けた責任を取る気もある。
もっとも、日本で同性婚は認められていないし、法的には姉妹になっているからな。家族として仲良くやっていくさ」
家族(笑)
言い方だよねぇ。
正確には
「それ、同性婚が可能なら結婚するって聞こえますよ?
日本とかならともかく、別荘だとエヴァさんが法律ですし」
「そういう形式をアコノが喜ぶなら、用意するぞ。
ただ、別荘には戸籍という制度すら無いが」
「あれ、無いんですか?
というか、いくらなんでも人の管理はしてますよね?」
「人を管理する名簿はあるが、人の関係に関する記載はメモ程度しかないぞ。
私の使い魔は子孫を残せるんだが、別荘の連中は年齢操作をする事が前提だからか自主規制しているらしいしな。金や財産というモノ、死や世代交代という区切り、血族という繋がりが無いとなると、家という概念が不要になる。全員まとめて家族の様なものだしな。
1人暮らしから多夫多妻まで、色々な形で集まったりばらけたりしているらしい。その集団を見分ける一番簡単な方法は、住所だそうだ。複数登録してある場合もあるから、単純には調べられんが」
本宅や本籍という概念も無いから、本当に曖昧になってる。
本人の特定は、IDと認証情報的な感じで問題になってないし。
連絡手段も、本人直通と主要な関係者が判れば充分だし。
「はあ、やっぱり別荘って制度が特殊ですよね……あれ?
使い魔の人は、死ぬ事があり得ますよね。その場合は色々と問題が出るんじゃ?」
「死亡した事は確かにあるが、貨幣が存在しない上に全てが私のものという前提だから、個人の資産や遺産は無い。つまり、死亡した場合は全ての持ち物が共有物に戻されるから、相続問題は発生しない。子孫や扶養者がいないから、親権やら養育云々の問題は原因すら無いしな。精々が思い入れのある品の取り合いになる程度らしい。
問題が出るとすれば業務の維持に関してぐらいだが、複数人体制が当たり前に組まれているし、少人数で行う業務でも人の入れ替えはあるから経験者はまあまあいるらしい。だから、残りの者で調整するなりすれば問題無かった、と聞いている。
そもそも2500年でも数えられるほどしか死んでいないし、使い魔達は魔法を使う役目を担っていたから複数人体制が必要だったようだ」
「魔力の有無で、役目が変わるってことですか」
「自分の能力で役に立つ業務の担当になるという前向きな建前で、実際問題としても、自分達がやっているんだという自負とプライドは相当なものだぞ。
実際、法的な決め事と言う意味では、人の役目を限定するものは無い。私が頂点である事、私が過ごしやすい事、あいつらに可能な手段で維持管理する事、全員が人として互いを尊重し合う事。憲法に相当する決まりの内容など、この程度だ。
法律に近いものもあるが、担当者が作った説明書や引継ぎ用の手順書の様な形式が多いしな。幾つか見せてもらったが、内容決定や改定の経緯や理由、根拠なんかも書いてあって、むしろ文化的な資料としての方が優秀かもしれん。要求される能力の記述もあるが、日本でも技術や資格が必要な仕事などいくらでもあるのと同じようなものだ。
その辺の記述がしっかりしていたせいか、チタマの方の従者達も一旦はそのまま取り入れる方向になった様だしな」
それもあって、最近は魔力が必要な業務に、カートリッジを引っさげた従者が参加する事も増えてる。
規定を満たしているから問題ないし、問題が出たら原因を調査して規定が変わる。
「決まった頃は人数が少なかったから、なんですよね?
そのままだと、人数が多いチタマの方だと問題があるんじゃ……」
「私という最高意思決定者の不在という状況と、別荘の維持という負担もあったからな。ある程度は担当する者に任せ、文句が出た場合は都度相談して改善しながら運用するという体制で落ち着いたらしい。
それに、どうしてこうなっているかという情報があるんだ。とりあえず取り入れて、必要に応じて改定していくという方針らしいぞ。現状を理解して話し合いをスムーズにするためには有用な情報だし、制度面まで人を回す余裕も無いかららしいが」
「確かに、たたき台としては優秀かもしれませんね。
現実というか、法律とか組織の決まりとかには無い情報が付いてるって事ですよね?」
「正確に記録を残すのは難しいし、その維持にも手間暇がかかる。経緯を残したくない連中も中にはいるだろう。
運用に必要なのは結果であって経緯ではないし、公布するには不要なものでもある」
「完璧って、あり得ないですよね……」
「どれくらい努力して、どこで妥協するかだろうな。
怠けたらいいものにならんのは当然だが、やり過ぎも時間や費用の無駄になる」
その辺は、時間がいくらでもあった従者達の特殊さというか。
お姉様や私達がいつ戻るか不明だったから、場当たり的に対応出来る柔軟さを維持しながら安定する方法を手探りで探すという、正解のない答えを模索し続けた結果と言うか。
「ですねぇ。でも、管理局でも法が決まった経緯とかが公開されていれば、夏に行った並行世界の事件は起こらなかったかもしれないですよね」
「その時は、それを前提とした隠れ方をするだけだと思うが。適当な理由を付けて明文化しないとか、方法はあるからな。
別荘は、全員が協力して維持するという質の悪い洗脳国家だから維持出来ているだけだ」
「テロリストを社会維持に使えるように教育するって表現にすると、悪い事かどうか判断出来なくなりますよ。管理局の更生施設なんか、その為の公的機関じゃないですか。
こっちの世界では結構埋まってるらしいですし……あっちの並行世界にもありますよね?」
「あるはずだが、こっちの方が時間の流れが速くなっていてな。
待っている時間ほどは事態が変わらないし、把握するのも面倒だから、あまり話を聞かないようにしている」
「そうなんですか? 確か、最初はあっちが60倍だったはずですよね。帰った頃には2倍くらいになってましたっけ」
「そうだが、今ではこっちが2倍くらいになっている。
最終的には同じ時間になるくらいで落ち着くんじゃないかと思うが……こればかりは、様子を見るしかないな」
「初めての事だと、予測も難しいですよね」
「そうだな」
◇◆◇ 2006年(新暦67年)12月 ◇◆◇
別荘の空間維持設備が全て停止し、駆動炉の出力もようやく安定した頃。
日本の学校は、冬休みに入ってた。
「で、お前達が休みにちょくちょく出かけていたのは知っているが……
何故私まで行く必要がある?」
そして、お姉様は
他の同行者は、主のみ。4人(私達を除く)でお出かけ。
「私達だけで何とか出来れば良かったのですが、やはり難しそうだという結論になったのですよ。
自分の専門分野以外の事でその道に明るい人に心当たりがある場合は、任せた方が良い結果が期待出来ますからね」
「だから、何をさせたいかを聞いている。
何の説明も無いままこんな所に連れてこられてるんだ。さあどうにかしてくれと言われても、意味が解らんとしか答えられん」
目の前には崩壊しかけてる石柱が並ぶ遺跡のようなものがあり、周囲は夕暮れを過ぎて闇に染まり始めてる。
人の気配は……遺跡の中に1人だけある。
「それは当然ですね。
とりあえず、場所はこの遺跡です。カイゼ君は手筈通りに」
「解ったよ」
相変わらず暗殺スキルがいい仕事をしてる。
「それで、私の役目は何だ?」
「とりあえず、歩きながら説明しましょう。
依頼するのは、この遺跡で眠っている人物の治療と、能力の封印又は制御です。上手くいけば、不老不死仲間が増えますよ」
「また眷属や被保護者が増えるという事か?」
「いえいえ、素で不老不死らしいのですよ。1000年程前の文献にも存在していた事を示す記録がありましたから、少なくとも人の寿命を超越している事は確かです。一言で言ってしまえば改造人間に該当しますし、聖王等と同じく、兵器としての力を与えられた存在ですね。
その現状を説明しますと、兵器としての機能を制御出来ないために活動を停止している状態ですから、これを何とかする事が最優先の課題になります。
次に眠っている状態を調査し、自然に意識を取り戻させる必要があります。友となる為には会話出来る事が必要ですし、無理に目覚めさせるのは無理がかかる可能性がありますからね。
私からの依頼は、以上2点です。すぐに意識が戻るかという問題もありますから、以降の対応は追って相談するつもりですよ。もちろん私の独断ですから、事後は全て私が見るつもりでいるのですが、それで問題が無いか、より良い方法が取れるかどうかの相談ですね」
「概ね理解した。
だが、これだけは言っておく。自重しろ
「おや、少女とは言っていませんが」
「どう考えてもイクスヴェリアだろうが! 貴様にストライクだから助けるとしか思えん!!」
お姉様のサウンドステージXのブックレットの記憶は、あまり鮮明じゃない。
けど、高町ヴィヴィオと同年代か精々少し上程度と思える少女の姿で描かれてるように見える。
つまり、少女または幼女と呼ばれる年齢。外見上は。
「流石にばれますね。そういう訳ですので、色々と面倒なことになる前に対処してしまおうと思ったのですよ。
我々、聖王教会、管理局。それぞれの利益を考えても、こうしてしまうのが一番問題ないかと」
「解った解った。だが、
「ええ、問題ありません。彼女としても、外見的に同年代の友人と過ごす方が良いでしょう。
到着しましたよ。この扉の奥です」
「くそっ、手のひらで転がされているようで気に入らん」
ようだというか、どう考えてもいいように使われてる。
益があるだけに、無暗に断るのもどうかと思わせられてる辺り、
それでもお姉様は扉に手を当て、解析開始。
「ふむ、封印処理はされているのか。術式は割と最近のものだが……脆弱だな」
「実力不足なのでしょう。解放戦線で活動しつつ、劣勢を覆す切り札としてロストロギアを漁っている人物ですから。
違いますか? トレディア・グラーゼ」
「は、離せっ!」
なんだか神経質そう。
こんなところで活動してるせいか、少々栄養不足気味に見える。
「コレが、アレか。
マリアージュという深淵を覗き、私達という深淵に見付かった不運男か」
「随分な言いようですね。否定はしませんが、エヴァちゃんは怪物ではないでしょう?」
「怪物や化け物の類だろう。というか、ツッコミはそっちなのか」
「それはそうでしょう。ああ、不運という言葉も相応しくありませんね。
身に余る力を求めた結果、圧倒的な力に潰されるのですから、良くある話で、不運ではなく必然でした」
「それもどうなんだろうな。
さて、イクスの状態は概ね把握した。というか、欠陥兵器だな。現状では制御する能力が力不足過ぎだ。
死を恐れぬ兵と言えば便利そうに聞こえるが、生きていれば敵味方関係なく殺し、作った死体から新たな兵を生み出す事しか出来ん。これでは、最終的には生物のいない荒れ果てた地を生み出すだけだろう。
眠っている状態なら、新たなマリアージュを生み出す事も無いようだが……イクス自身は、これ以上の破壊を望んでいないんだったな?」
「そうですね、資料等もそう読み取ることが出来ましたから、恐らく間違いないかと」
唖然としてるトレディア・グラーゼを放置して、お姉様と
男3人は、作業の役に立たず。
「それなら、マリアージュを生み出す能力を封印か破壊してしまうのが最も簡単か?
だが、生命維持や意識と直結していたら厄介だな……その辺の情報は無かったのか?」
「いくら無限書庫でも、見付からない情報はありますよ。
活動した際の情報は見付かりましたが、構造面の情報はさっぱりです。奇跡の産物とか、どうしてこうなったとしか読めない技術者の手記とか、役に立たないでしょう?
そういえば、とある魔道書の設計草案を基に研究を行った、という記述はありましたね。人の魂を核とし、死者を使い魔として使役するという構造を……どうかしましたか?」
ガン、っていい音が、扉に打ち付けられたお姉様の頭から聞こえてきた。
何だか、物凄く心当たりのある構造。
「……キサマ……嫌がらせか!? 嫌がらせなんだろう!!
そういう情報は先に言うか、隠したなら最後まで隠し通せ!!」
「いやぁ、ショックが大きいだろうと隠しておこうかと考えていたのですが、少々苦戦していたようでしたし、反応がおも「死ね!」しゔぁっ!?」
一瞬で大人化したお姉様の右ストレート(超音速)が、綺麗に炸裂。
ついでに、衝撃波で遺跡の壁にひびが入ってる。
今の主になってから、お姉様の身体性能がツッコミにしか使われてない気がする。
それも、
「……エヴァさん、遺跡の崩落は大丈夫かい?」
声は冷静な成瀬カイゼだけど、額に冷汗が見える。
トレディア・グラーゼは、今ので白目を剥いてるし。
「…………しばらくは大丈夫だ。
まあ、何だ。少々腰を据えて解析する必要がありそうだし、ここから動かしても大丈夫そうだから、イクスは連れて行く。
ソレは……スカリエッティと繋がっていたんだったか?」
「そうだね。この世界については、彼からの情報だよ」
「なら、過去の清算的な感じで処理しておけばいい。
後味が悪いなら、この世界に対する腐れ脳味噌絡みの弾圧やらが無かったか調査して、改善するよう手を打つのもありだ。やろうとしていた内容を考えると、放置はあまり宜しくないだろうからな」
「了解したよ。
そこの肉塊は、何かしておいた方がいいかい?」
「放っておいても、そのうち復活するさ」
「なるほど、確かにそうだね」
奥山に 紅葉踏みわけ 鳴く鹿の
声きく時ぞ 秋は悲しき
猿丸太夫
小倉百人一首より。
カクテル「がちよい」シリーズ。口当たりが優しいくせにアルコールが多い、カルーアミルク的なのを中心にラインアップ。どこかのメーカーが出してくれないかな、あんま売れなさそうだけど。
でも、カルーアはサントリーの商標だから、他のメーカーだとコーヒーリキュールミルク? いまいちおいしそうな気がしないのは何故だ。