◇◆◇ 2007年(新暦68年)01月 ◇◆◇
年が明け、とりあえずみんなでお姉様とヴィヴィオを詣でて。
「いや、何故私を神扱いするのが当然だと思っている?」
「同感です。私自身は聖王教会にほとんど関係していないのですよ」
……身分はともかく、宗教的な価値を自覚したがらないない2人をしっかりと拝んで。
カリム・グラシアがまだ目覚めないイクスヴェリアにも祈っていたのを生暖かい目で見つつ。
今は別荘でお餅タイム。
みんなでワイワイと、雑煮やら磯辺焼きやらあべかわ餅やらおはぎやらを作ったり食べたり。
「でも、いいのかな?
こんな事に使って」
「これも“へーわりよー”ってやつだ」
ちょっと気まずそうなフェイトは、餅をついてるヴィータのお手伝いをしてる。
グラーフアイゼンも、まさか
「……で、無粋な
そんな中、ふらりと無限書庫に現れて、書庫担当のチャチャに別荘への転送を要求してきた
お姉様とアルクに用事らしいから通したけど、通すべきじゃなかったかもしれない。
「いえいえ、これでもちゃんと“頼まれていた用事”を済ませようとしているのですよ。
これはアルクちゃんからの依頼の品なのですが、渡して良いか確認しておこうと思いまして」
そう言いながら出してきたのは、紫色の本。
表紙には、槍と言うには先端の三角が大きい、むしろ傘に近いようなマークがある。
魔力反応も、割と大きい。
「ロストロギアの一種か?」
「ええ、そうですね。本来の名は知られていない様で、研究施設では紫の書という名前で呼ばれていたものです。
そうそう、先に言っておくべき事がありました。この書はアルクちゃんの依頼の範疇ですが、名指しで求められたわけではありませんし、方向性としては少々ずれるものでもあります。ですが、参考になるものではあると思って持ってきたものですよ」
「ふむ……アルク、ちょっといいか?」
「はぁい、お母様。
何か御用?」
呼ばれたアルクが、間髪を入れずに登場。
流石はお姉様の自重無しの眷属、素晴らしい実力。
「
「生命や生物の強化や改造に関するものよ。
チタマの方も人手不足だし、せっかく眷属や眷属もどきを作るなら色々試してみようと思って」
「……つまり、何だ。魔改造した部下を作る為に、なのか?」
「そうね、それで間違ってないわ。
お母様の従者は農地の広さに比べて少なすぎるし、自動人形でカバーするのも限界があるもの。
全てを維持する必要は無いと言われてるし、消費し切れないから生産量が減るのはいいけど、種類はなるべく維持したいから人手が必要なのよ」
300年前の地球の人口は、概ね6億から7億。
それを1万人と自動人形で引き継ぐのは、どう考えても無理がある。
作物は品種改良した現代のものに順次入れ替える予定だけど、苗の生産やらにも手間がかかるし、農場の維持は自動人形に任せられても、調整や改良、作物の変更等は人の判断も大事になる。
「あー……まあ、意図は理解した。
で、その魔導書は、この意図からどうずれるんだ?」
お姉様は、ちょっと頭を押さえながら
農地をカバーするという名目とは思えない程、怪しげな物体。
「人を兵器化する研究の過程で作られた物の様ですからね。肉体や魔法に関しては色々と強化出来るようなのですが、精神面の崩壊が前提のようです。それを何とか出来れば使い物になるかも、という代物ですね。
まあ、信頼のおけるところで管理した方が良さそうな危険物でもありそうですし」
「……今度はForceか。Forceなんだな?
エクリプスやらディバイダーやらの元とかいうオチなんだな?」
「正解です。いやー、カイゼ君に手伝ってもらって、並行世界でも情報を調べた甲斐がありましたよ。事件がある場所を予め特定して、先回りで動くのは楽ですね。
そうそう、銀十字の書はまだ設計段階でしたし、エクリプスウィルス自体も完成したとは判断されていなかったようです。感染実験の犠牲者はいましたが、それを含めきちんと処理してきたので安心して下さい。対処漏れは、恐らくありませんので」
Force終了のお知らせ。
トーマやリリィ、フッケバインな人達なんかがログアウトしました。
「はぁ……まあ、放置した場合は被害が大きそうだし、いいと言えばいいのかもしれんが。
アルク、悪用はするなよ?」
「当然よ。お母様に不利益な事はしないわ」
「……そうか。
一応確認しておくが、研究しているのはそれだけなのか?」
「私が管轄しているのは、これだけね。
本星の方でバリアジャケットの強化を試しているのは聞いているけど、少し相談されているだけだし。っと、そっちの話は聞いてる?」
「ロボットアニメに触発されたとか言っていたやつなら、話だけは。
結構本腰を入れてるのか……?」
気の技術を応用して、カートリッジ以上に効率良く魔法を使う為の補助具を作りたいと、従者達が言い始めたのが発端。
ただ、人間搭乗型ロボットや、機械化人間を作ってるわけじゃない。
AMF等の魔法妨害にも強い、個人用補助装備の方向。
簡単に言えば、アームドデバイスとForceのAEC装備を足した感じのものを装備化出来ないか、色々と研究してる。
「お母様のAMFは存在しているし、スカリエッティのAMFも試作は成功しているし。
その影響下でも飛行や防御くらいは維持したい、といったところよ。
あとは、お母様に負担にならず、かつ安心して魔法を使うためでもあるわね。日常の業務で、魔法を使える使い魔達の負担を減らせるし」
「その方向なら、まあいいか。
で、
「八雲の書、らしいですよ。
兵器化を妖怪化と捉え、分断する機能は境界を操る能力の影響と考えれば妥当でしょうか?」
「今度は東方か。東方の影響なのか。
……どうしてお前が持ち込むナニカは、やけに影響が大きいものばかりなんだ」
「影響の小さいものは、私達でも処理出来るからですよ。
全て人任せにしたり、任せるに値しない人を頼ったりするほど、落ちぶれていません」
なんという正論。
実際、有象無象はそこそこ片付けてきてるだけに、批判もしにくい。
迂闊な組織や人物に聖王・冥王・エクリプスウィルスの元を渡すのは、更に面倒な事になりそうではあるし。
ジェイル・スカリエッティ関係とか、トレディア・グラーゼとか、研究施設とか、その辺はほぼお任せ状態だったし。
「……今後は、管理局に任せられるものは任せろ。
連中にも面子はあるし、こっちにばかり頼られるようになってはかなわん」
「ええ、解りました。
原作絡みの問題はこれで概ね終了ですから、大丈夫だと思いますよ」
予想出来る範囲で残ってるのは、Vivid関係でベルカ繋がりの人が来る程度?
確かに、原作絡みの“問題”は、終了したかもしれない。
少なくとも、私達が知る範囲では。
◇◆◇ 2007年(新暦68年)02月 ◇◆◇
『……当初の予定とはだいぶ変わっているが、このような方針が決定された。
もちろんこれは形式や制度上の事で、君達が通常の運用に関わる必要は無い。管理局との関わり方も従来通りで問題無いよう調整は出来たつもりだ』
「…………まあ、その意図があるのは一応理解するが…………」
ギル・グレアムからの連絡は突然に、と言うわけではないけど。
資料の到着から10分後って、あまり読ませる気ないよね?
でも、その内容は、重要。時空管理局の体制の変革について。細かい法整備や組織変更はこれからだけと、大まかな方針が決定したらしい。
ひとつ。時空管理局の権限縮小。管理世界全体の治安維持に特化し、広域犯罪や大規模な犯罪組織への対応、危険なロストロギアの管理、様々な技術の開発と管理、紛争等の調停を行い、管理世界間の交流及び交易を円滑に行える環境の維持を存在意義とする。
ひとつ。地上部隊、つまり警察組織の運営及び管理を、原則として時空管理局から各地の行政機関へ移す。行政機関は時空管理局に業務を委任する事も出来るから、これからはそれぞれの世界や地域の人の選択に任せる事になる。また、質量兵器が該当地の行政機関に承認された組織に関しては解禁されることになった。但し、警察組織や次元航行部隊であっても、承認が無ければ質量兵器の使用は認められない。
ひとつ。統幕議会が、治安維持に関する運用及び維持管理を行う。これには次元航行部隊や司法関係の部署が含まれる。
ひとつ。代表評議会が、憲章や広域法の制定と、管理世界間の調停を行う。
ひとつ。最高評議会は、通常は各議会等への助言を行い、法令違憲の最終判決を行うことが出来る。また、緊急時に限り、次元航行部隊または監査部または最高裁判所への命令権及び指揮権を持つ事が出来る。
「……現状で持っている、法令の停止権限以上の劇薬まで仕込まれているんだが?」
『あまり綺麗ではないが、地球の3権分立に近く、かつ君達に配慮した結果なのだよ。
各管理世界の行政は、最終的にそれぞれの世界自身に任される。
立法を含む指針の決定は、代表評議会の役目だ。
統幕議会は時空管理局の維持管理を担当する。次元航行部隊の運営や技術開発、司法関連の管理もここだが、それぞれ別の下部組織となるようだ。
最高評議会は、重石だ。ここまで重ければ、そう遠くないうちにこの体制に対する反発も出るだろう。それをうまく利用してほしい』
「やれやれ、この身分からの脱出は自前なのか。落ち着くまでという話だったはずなんだがな」
『それについては、申し訳なく思っている。
それでも、管理局の一部解体を伴う改編なのだ。安定するにはまだ時間がかかるだろう』
「それなんだが、要は管理局を縮小して地上部隊を拡充し、警察権を各管理世界に戻すという事だろう?
当然しわ寄せは次元航行部隊にも来るし、高位魔導師という牙を地上に戻すという事でもある。
本当に安定させられるのか?」
『管理局の設立当初は不可能だっただろうが、最近では人や物、文化の交流もそれなりに盛んになっている。その上、管理世界から外れる事は、技術でも後れを取る事になる可能性がとても高い。大規模な犯罪組織に対抗するには、やはり協力が不可欠という理由もある。
そもそも、犯罪組織よりよい傘だと思われないようでは、我々の存在意義が無いのだ』
「となると、心配すべきはマッチポンプと大規模事件への対応力低下か……
その辺の対応は?」
『犯罪組織も拠点や人員は必要になる。大きな組織ほど、それは隠し辛いものとなるはずだ。
管理世界の捜査は現地行政機関の目と耳が頼りになるが、逆に言えば、管理局が揉み消す事が難しい場所が増えるという事になる。
対応力に関してだが、次元航行部隊の専属魔導師は減らすが、その分は地上部隊からの派遣で賄う事になっている。金銭面で苦しい世界が人的貢献をする為や、人的な交流を増やし協力関係を強固にする為ではあるが、次元航行部隊の実態や実情をオープンにする為でもある』
「管理局より各地の行政機関の方が犯罪者を抱えない、犯罪者が紛れ込む可能性が高くなっても上層部に犯罪者が混じっていた以前の状況よりマシ。そう思われたのか。
管理局の維持そのものが心配になるレベルだぞ」
『国際連合に近付くと考えてもらった方が良いかもしれない。平和維持軍や国際司法裁判所、国際連合教育科学文化機関といった組織の集まりとなる感じだよ。
スローガンは、全ての世界、全ての人々の為に。
中央集権の体制をある程度解体していくと同時に、広報活動にも力を入れて、世界の事を知ってもらおうとしているのだ』
「管理世界全体の教育レベルと経済水準は充分なのか?
他人に目を向けるには、この2点が最低必要条件だが」
『行き渡っているとは言い難いが、それを何とかする為の協力も管理局の役目となるだろう。
従来の様に管理局主導で、とはいかなくなっていくがね』
「やれやれ、気の長い話だ。
益々、私達の立場が特殊になっていくじゃないか」
『我が祖国、英連邦王国の女王陛下と同じく、君臨すれども統治せず、という姿勢をある程度貫く事は可能となっているはずだ。
だが、従来の上意下達体制は腐敗という弱点で倒れたが、完全な自由は自己中心的な考え方の蔓延等といった問題を孕むことになる。私としては、切り札としての力を持つ象徴でいてもらいたいとも思っているのだよ』
「結局、逃がす気は無いという事だろうが」
ここで文句を言っても、決まった事は変わらないけど。
結局、お姉様が少し文句を言う程度で、通信が終了。
法令が違憲かどうかの最終判断を押し付けられてる時点で、統治せずには該当しないだろうし。
それでも通常は助言程度で済むくらいには、頑張って配慮してるようにも見える。
あとは、式典やらに呼ばれる可能性が上がるくらい?
今はたまに
「……面倒事を請け負ってくれているという点は、アレに感謝すべきか……」
◇◆◇ 2007年(新暦68年)03月 ◇◆◇
「えーっと、名前は書けてるし、ノートも揃ってるし……」
はやてが紙を片手に確認してるのは、ルーナとアギトの入学用品。
2人はようやくフルサイズのアウトフレームが安定し、幻術やらと組み合わせれば大人としても活動出来るだけの目途が付いた。
余裕を持って手続きを進められたのは、【リインフォースⅡ】の稼働情報のおかげ。ありがたやありがたや。
というわけで、ちゃんと戸籍を確保する事になり、必然的に学校に通う事になったわけで。
「はやてちゃん、そんなに何度も確認しなくても大丈夫ですよ?」
「買いに行った時も、名前を書いた時も、しつこいくらい確認してんだ。
それに、1年生になるっつっても、中身は子供じゃねーよ」
2人を直接保護する立場に立つはやてが落ち着かない。
ヴィータの時は、どちらかと言えばいぢって楽しんでたのに。
何という格差。
「住所がうちやないからな。
直接見れる時間が少ないんやから、仕方ないんよ?」
そして、2人の“住所”は、一時的に月村家という事になった。
八神家は満員だし、新テスタロッサ家は未だ工事中。そこで、姉となるすずかの現住所であり、部屋数も余裕がある月村家の居候として、約1年間の予定で住むことになった。
プレシア達は相変わらずハラオウン家在住だから、テスタロッサ家の別居状態が悪化の一途。
「すずかちゃんや忍さん、ノエルさん達だっているです。
なんくるないさー、ですよ」
「ふっふっふ、ここでその言葉はあかんよ。
それは本来、人として正しい事をしていれば、という意味の言葉に続けて使うんよ。人事を尽くして天命を待つ、の後半と同じや。
つまり、まずは人事を尽くさなあかんということや!」
「おい、バッテンチビ。
余計な事言っちまったぞ」
「あうぅ、やってしまったです……というか、バッテンチビは酷いのですよ!」
うん、これはルーナの大失言。
はやてが本気風になった。
でも、やってる事は道具類の確認。心行くまでやればいいんじゃないかな。
転生前は「2012年春」ですので、Vividの6巻が発売されていた頃になります。
その為、チャチャ達も雷帝の人の存在は原作知識として把握していますが、エレミアや魔女っ娘は(ヴィヴィオに確認したりしない限り)オリヴィエと関係があると思ってないはず。
なお、エヴァが見せた原作は、テレビ版3本(無印、A’s、StrikerS)と映画1本(1st)です。
そして、友人宅にあったVivid(コミック)を読んでみたら、魔女っ娘の祖先が猫耳&尻尾付きだった件。オマエナニモノダ! オリヴィエにくっついてた変態が無印編31話で言ってた内容と思いっきり矛盾しますがどうしましょう。
変態の台詞を変える(翼を持つ人は見た事が無い、とする)か、オリヴィエに近付きすぎて活動不能になり見落としてた(情報を取れず、接触する機会も無かった)、人体改造で猫化してた(天然物じゃない)、くらいしか逃げ道が無いかなぁ……
更に、イクスが大変な事に。何あの可愛い生き物。
設定的にものすごく合わせにくい(というか、この先どんな設定が出てくるかわからない)ので、うちのイクスは当分の間眠ったままの方がいいかなぁ……年代的にSTSの終了辺りまでを最低限のイベントだけ消化して駆け抜ける予定ですし。Forceは終了のお知らせが届いたので、気にしない事にします。
作者です。Forceの時系列がわからんとです。
作者です。トーマが巻き込まれる鉱山事故が74年(STSの前年)だから、スカも最高評議会もいる時にECウィルスが完成(フッケバインが活動開始)してるのは間違いないとです。
作者です。81年時点で管理局が長年追ってるって、どれくらいの期間ですかっ!?
あ、次話から時間が更に加速します。
べ、別にネタが尽きたわけじゃあるんだからねっ!(錯乱)
※原作に絡むようなネタがさほど残ってないのは本当です。