◇◆◇ 2008年(新暦69年)01月 ◇◆◇
家という名のマンションもどきが、ついに完成。
新築5階建て。1階と2階は関係者用、3階はジェイル・スカリエッティと戦闘機人とカリム・グラシア達用で、4階と5階がテスタロッサ家用。
隣接する工場跡地はまだ工事中だけど、住居の方は問題ない。
というわけで、今日はテスタロッサ家のお引っ越し。
旧八神家、月村家、ハラオウン家の3カ所から集まってくるけど、荷物はさほど多くない。
新しい家具類は先に配達してもらって予定の場所に配置し終えてるし、別荘やデバイスの格納領域も便利。
「今日から、私達もここに住むことになるわ。
雑務や管理業務、よろしく頼むわね」
「はい、お任せ下さい」
プレシアと挨拶してるのは、コンシェルジュ的な役割、要するに管理人さんを任せる事になってる
1階入り口の受付奥に住居部分があって、引っ越し作業や事務所の準備はほぼ完了してる。
住居部分は2LDKだけど広い部屋だし、子供もいないから問題ない。
「うわ、こうやって見るとえらい広いなぁ」
「そりゃあ、キッチンもLD部分も、学校の教室並みの広さがあるからな。
しかもオープンキッチンだから、見た目は増量だ」
「数字だけならそうやけど、図面だとそこまで解らんし」
「それはそうだが、人数を考えると、これくらい必要らしいぞ?」
そして、みんながちょっとびっくりしてる、LDK部分。
合計床面積は135㎡。正確には、キッチンが52㎡でLD部分が83㎡。一般的な小中学校の教室が60㎡から70㎡だから、お察しください。
システムキッチンが3つ並び、業務用オーブンや大型の鉄板まであるのは、普通の家庭じゃ見られない光景。完全なオープンじゃないけど、9.5mある幅のうち5mくらいがオープンになってるから、それなりに見通しもいい。
ついでにLD部分の半分以上が上の階への吹抜けになってるから、開放感もある。
その片隅に、5階への階段が見えてる。階段のほとんどは壁の向こうだけど。
5階にも勝手口があるから、共用のエレベーターで5階に持ち上げる事は可能。重い荷物を4階から手で5階に上げる必要は無いようになってる。
そして、割り当てられた部屋を見た、各人の感想(ダイジェスト)は。
「……やはり、広いな」
「もっと狭くてもいいとは言ったけど、大きなベッドを置けてるから構わない」
「そういう問題か?」
主は納得してるけど、お姉様は合計55㎡になる2部屋を見てちょっとため息を漏らし。
「普段1人で使うには、広すぎたかしらね」
「家長ですし、良いのではないでしょうか。
時の庭園では、もっと広い部屋だったでしょう?」
「それもそうね」
プレシアと、いつの間にか現れてた
「ここに3人って、やっぱり広すぎや。
今まで、8帖の部屋にヴィータと2人でいたんやけど」
「私達と一緒ですけど、ヴィータちゃんは別になっちゃったですし……」
「立場上、騎士達より明確に狭くするわけにもいきません。
広い部屋ですが、これでも1人分の広さとしては、他の者より狭いはずです」
「それは聞いてるけど……」
やっぱりお姉様達と同じ大きさの部屋に、はやてとルーナが困惑し、リインフォースが窘めて。
ちなみに、一部例外を除いて1人当たりで20㎡ちょっとになるように調整してある。
その割り当ては、当然ながら1人部屋もあるわけで。
「こちらに置くものも多くはありませんし、これくらいでしょうか」
「えっと、学校の荷物はこれでいいはずだから……」
ヴィヴィオとすずかは、ごく普通で。
「イメージしてた以上に、広い部屋ですけど……」
「居候の身分には、過剰だね」
戸惑ってるセツナと成瀬カイゼがいて。
「おお、これは良い秘密基地でござい……秘密基地やな」
他の人より狭くて窓が無いけど、希望より広い部屋に喜ぶ、これまたいつの間にか現れたチクァーブがいて。
「今日から、この広さに1人なのかよ……」
今までと比べ、異様に広くなった部屋で顔を引きつらせるヴィータがいる。
「あの、私は……?」
シャマルは面白くなかったから除外。
ついでにチャチャマルと私達は、建築中の差し入れとか配達時の搬入指示とかで何度も来てるから除外。
他の面子というか主従ペア、要するにフェイト&アルフ、アリシア&リニス、シグナム&アギト(なんとなく姉妹っぽい雰囲気で落ち着いてる)の3組は、それぞれ2部屋ずつの割り当て。
2部屋合計で40㎡ちょっとくらいだけど、2人で使う前提だからか、過去の経験の賜物か、特に戸惑ったりする様子は無い模様。
そんなこんなで、各自の部屋を最低限整えて。
5階の西側、テスタロッサ家のプライベートガーデンとして屋上緑化された部分を見て大騒ぎしたり。
5階の東側にある、民宿には負けない気がするサイズの浴室(ちなみに63㎡くらい)を見て歓声を上げたり。
夕食時に、引っ越し記念と称したパーティーをしたりしつつ。
今年もよろしくお願いします?
もうすぐ2月になるんだけどねっ!
◇◆◇ 2008年(新暦69年)02月 ◇◆◇
引っ越しから、2週間ちょっとが経過。
色々と慣れない部分があったり、お風呂ではやての揉み癖が悪化したり、お姉様の同衾率が更に上がったり、別荘で訓練する時にどこに行けばいいかで連絡の不備があってどっちでも良くなったりと、ちょっとした事はあったけど、概ね平和な時間が流れてる。
カリム・グラシア達(シルフィ・カルマンを含む)やジェイル・スカリエッティ達の引っ越しも完了済み。もちろん起動済みのナンバーズ7人も全員集合してるし、ようやく安心して娘達を起こす事が出来るとかも言ってたから、ついに残る5人を起動する気になったらしい。というか、今まで住居面で遠慮してたのが意外と言えば意外。
そして、1階と2階にはお姉様が使い魔にした家族やらが住み始めてる。
某ナカジマ家のゲンヤ氏が、普段1人で住むには広すぎるとか言いながらも入居してたりするのは、色々と都合が良いから。たまに
そんな日常の水曜日の夜。
数人の女性が、台所に集まった。
「せっかくの広い台所と機会やから、みんなで共同作業や!
者共、気合は充分か!?」
「そんなに叫ばなくても大丈夫。
けど、はやてが音頭を取るのは予想外」
こんな感じに、首謀者ははやてで、協力者が主。
「けど、私はどうやればいいか、よく解らないし……
教えてもらった方が、助かるんだ」
「個別でやるよりも、いいんじゃないかな」
賛同者、フェイトとすずか。
「まあ、不安はシャマルやけどな?」
「最近は、だいぶ改善してますっ!」
おまけ、シャマル。
「というわけで、バレンタインはエヴァさんをチョコレート漬けにしてやんよ作戦、決行や。
材料はいっぱい用意してあるし、オーブンやらまで揃ってる。予定通り、チョコケーキ、チョコクッキー、ベイクドチョコタルト、ガトーショコラのレシピも揃えてある。
シャマルは……ベイクドチョコはどうや?」
「私は焼くだけですかっ!?」
「けど、翠屋とか別荘の人らとかに対抗出来る味を出さなあかんからな。
レシピ通りならほぼ大丈夫になっとるんは知ってるけど、慣れん台所で失敗するかもしれへんし」
「ううう……」
「私もエヴァさんに感謝してるし、やっぱりあの人は姉とか母やなくて、兄か父や。
日頃の感謝を伝える為にも、私は本気や。手抜きはせえへんよ」
「わ、解りました……」
(だ、大丈夫かな……?)
(はやてちゃんがこの中で一番上手だから、出来る物は確かじゃないかな。
それに、私達は眷属になってから1晩寝ないくらいは大丈夫になってるはずだし、朝までに完成すれば何とかなるよ、きっと)
「んじゃ、始めよか。
……こんだけ騒いどいてなんやけど、エヴァさんは別荘やね? 部屋に戻ってるとか無いよね?」
フェイトとすずかがコソコソ話してるのを無視したはやて。
台所の真上がお姉様と主の部屋だと思い出すのが遅すぎる。
取り敢えず、お姉様は現在、眠れる冥府の少女を色々と調査してる。
「大丈夫、今はイクスを見てる。
だけど、いつ戻るかまでは解らないから、早目に始めた方がいい」
「そやね。
それじゃ、やるよ!」
というわけで、5人による作業が開始。
結果? お姉様が、当分チョコレートは見たくないとか言いながらも全部食べ切ったんだから、上手に出来たんじゃないかな。
◇◆◇ 2008年(新暦69年)04月 ◇◆◇
「さあ、今年は理由もたっぷり、設備も揃ってる。
派手にやるよ!」
「……平日なんだ。騒ぐのも程々にな」
例によって行われる、4月のパーティ。
原作娘達は揃って聖祥大学付属中に進学してるし、その関係で高町なのはやアリサ・バニングスも呼んである。
ついでに、料理人として黒羽早苗と、大学を卒業して社会人になった月村忍・高町恭也の婚約済みカップルも。
馬場鹿乃と上羽天牙は、女性過多の空間に耐えられないという事で参加辞退。
仕方ないね、数少ない男もいちゃついてるとか料理してるとかだもん。
他には、普段からちょくちょく来てる、スカリエッティ家の戦闘機人やカリム・グラシア達もいる。来てる目的は1に風呂、2に食事だから、人恋しくておっぱい好きの料理人はやてが全力で歓迎してた。対価は労働力で、やっぱり賑やか好きなはやてが、人が増えると大喜びしてた。
「……実に居辛い空間だね」
会場で普通にしてる唯一の男となった成瀬カイゼがぼやいてるけど、それが日常。
というか、
「で、この家でアタシだけ別の学校になっちまったけど、取り敢えず祝っとけばいいんだな?」
前の住所の近くの小学校に行ってたヴィータは、昨年に主が、今年にはやてが聖祥大学付属中学校に行ったため、取り残された形。あと1年だし、路線バスを使えば通える距離や位置だし、転入するにも6年生の定員に空きが無いらしいしという事で、無理に転校する必要もないという結論に達しちゃった結果。仕方ないね。
アリシア、ルーナ、アギトの3人は、最初から聖祥大学付属小学校だし。
おまけとして、セツナだけが高校生、しかも3年になって未だ進路を迷ってたりもする。
同じく進路を考える必要がある中学生3年の成瀬カイゼは、早々に進学と決めて余裕の構え。
というか。
「当分は学生の予定か。
その技術なら、資格さえ揃えば第一線で働けるがな」
「うん、栄養学をちゃんと学んでみたいから、大学まで行きたいかなって。
それに、今までずっと下っ端だったから、少しは人の上に立つ練習もしたいし」
「そうか。
向上心があるのはいい事だ。しっかり学ぶといい」
同じく中学3年生の黒羽早苗は、将来を見据えて次(高校)の次(大学)まで計画済み。
人生設計という意味で、一番しっかりしてる。
前世と
◇◆◇ 2008年(新暦69年)05月 ◇◆◇
最近では、お姉様が直接関わる事は殆ど無かった、教導隊としての業務。
生徒の入れ替わりは5月が定着済みで、最近は指導員と若手が混じるようになってきてる。
ついでに、訓練ばかりで実戦経験が不足してる親衛隊の隊員も、ある程度入れ替えていくことになったらしい。本当の理由は、お姉様の情報がある程度知れ渡り状況が落ち着いたことで、入れ替えられる人員が確保出来るようになったからと、親衛隊も多少は教導のお零れにあずかれるから(クロノ・ハラオウン談)だそうな。
それでも放置する気でいたお姉様だけど、今回ばかりは、無視出来ない点があった。
「で、あいつがどんな人物か知っていて送り込んできた、という事でいいんだな?」
『先に断わっておくが、僕が率先して動いたわけじゃない。
ミッドチルダ首都航空隊からの推薦だ』
というわけで、本局でお仕事をしてるクロノ・ハラオウンに連絡。
別に怒ってるわけじゃないけど、どうして来たかくらいは気になる。
「競争率が高いとか聞いているし、こっちが左遷的な扱いになってるわけじゃないだろうに。
何があった?」
『人伝で聞いた話になるが、旧最高評議会と関係があった犯罪組織に踏み込み過ぎて、命を狙われているらしい。
得た情報は貴重だし、その熱意と技術は高く評価するが、もう少し命を大切にする事を教えてほしいそうだ。当面の危険から遠ざける緊急回避的な意図もあると聞いている』
「ふむ……随分と気に入られているな。情熱が能力を超えてしまって、命が危ないという事か?
というか、未だに火種は燻っているのか」
というわけで、今回来る生徒の事前情報で見付けた、原作関係者。
その名は、ティーダ・ランスター。
死亡時期は年度的にこの辺になるから、命が危ない状況になってるのは理解出来なくもない。
『以前の裏側関連組織は、意外なところにまで蔓延っている。
それに、地下に潜ってしまった連中を追うのは大変だ』
「それはそうだろうが、その辺は頑張ってくれとしか言えんな。
で、来た理由は解ったが、妹はどうした。両親が健在だったりするのか?」
『いや、両親共に最近亡くなっている。
正確には、両親が亡くなった事故を起こした犯罪組織を追った結果、こうなったそうだが』
「……駄目じゃないか」
『というわけで、捜査協力で知り合って、そこそこの交流があり、年齢の近い娘がいて、親衛隊での教導にも理解がある、地上部隊関係者の家庭に預ける事になったそうだ』
「妙な予感は、気のせいでいいな?」
『いや、気のせいではない。
恐らく予想していると思うが、ナカジマ家に居候しているそうだ。
あと、そこの下の娘さんは、既にシューティングアーツに目覚めているという話も聞いている』
スバル・ナカジマとティアナ・ランスターの出会いイベントが、既に終了していた件。
ついでに、空港火災イベントの回避が確定的に明らかになった。
稀によくあるバタフライエフェクト的な何か。
「今更やっちまったとか言う気も無いが……未だに原作に絡まれるとはどういう事だ」
『君達が行った並行世界の影響だと推測する。
あの世界は、3作目が始まっていたと聞いているが』
「ああ、そうだ。その通りだ。
全く……あと6年くらいは、こんな事があるのか…………?」
お姉様がため息をついてる。
本当に、世界はいつだってこんなはずじゃない事ばっかりだ。
◇◆◇ 2008年(新暦69年)07月 ◇◆◇
なんだかんだと時間は過ぎて、夏と言っていい季節になった。
そして、色々あった結果。
「別に、私は説教を趣味にしてるわけではないんだが……」
ぼやくお姉様は、別荘で焼き肉が乗った皿を手にしてる。
周囲は賑やかにバーベキュー中。
参加者は、テスタロッサ家、親衛隊、近衛騎士団の主要なメンバーと、生徒達。
つまり、ティーダ・ランスターを含むし、このイベントはアルフとザフィーラが困ってリンディ・ハラオウンに相談した結果、開催されたもの。
そして、お姉様への依頼は、ティーダ・ランスターの熱血ぶりを何とかする事。正確には、復讐心を基にした執着を緩和する事。
「別に、熱意を殺せと言っているわけじゃないのだけれど」
「だがな……親を殺した組織を追っているのだろう?
私ならもっとひどい事になる自信がある以上、窘める権利すら無いと思うが」
「私も経験しているから解るけれど、健全な状態ではないわ」
「人としては不自然とは言えんぞ」
そんな事をお姉様とリンディ・ハラオウンが話しているのを聞いたらしく。
ティーダ・ランスターが登場。
「お初にお目にかかります、エヴァンジュ最高評議会議長。
ミッドチルダ首都航空隊所属、ティーダ・ランスター1等空尉であります」
「ああ、話は聞いている。
とりあえず、私の見た目はコレだし、身分も面倒だと感じる人種だ。フランクに話していいぞ」
「いえ、そういう訳には参りません」
うーん、やっぱり固い。
主に頭が。
「ま、好きにすればいいさ。
早速だが、親の仇である犯罪組織に深入りして命を狙われているというのは、本当か?」
「そこまでご存知でしたか。
はい、本当です」
「ふむ、自覚はあるのか。
それなら、肉親の死に囚われ過ぎて、生きている肉親を犠牲にするな。
私が言えるのは、それだけだ」
「エヴァさん、本当にそれだけ?」
「私はリーナの死後、それを理由に身内を犠牲にしたつもりは無いぞ。プレシアに八つ当たりしかけたが、あの時はまだ身内とは呼べなかったしな。
それに、リーナを誰かに殺されていたら、犯人を殺さずに済むほど自重出来る自信は無い。
実力や実行力が不足する中で報復を目指すのはどうかと思うだけで、その行動自体を悪だとは言わんし、言えん」
「実力と実行力の不足、ですか……」
「家族や仲間を傷付けられた事に怒りを覚えるのは当然だ。だが、その報復で別の家族や仲間を傷付けるようでは、本末転倒だろう?
多少腕に自信がある魔導師だろうが、1人で組織を相手にするのは難しい。だからと言って、素質のある人間が努力すればバグと呼ばれるような化け物に成れるなんて思わない方がいい。異常な存在は、やはりどこかがオカシイものだからな。
つまり、組織には組織の力で対抗するのが正道で、組織を動かす力が実行力に直結するんだ。
執務官などという、人手不足を個人プレーで解消しようなどという腐れ制度が無くならない程度には、管理局も困っているのだろうが……」
「腐れ制度ですか!?」
おおぅ、ティーダ・ランスターの反応が激しすぎる。
目指すものが貶されたと言っても、この反応は予想以上。
「執務官1人で、司法関連の色々な権限と、それを行使する為の武力を持つ必要があるんだぞ。
私が今住んでいる国で言えば、警察、検察、執行、刑務、保護観察……あたりだったか? どれもきちんとした資格や知識が必要な業務で、今言っただけでも5人分の役目を負う事になる。専門の者5人分の訓練や学習の時間を確保した上で任務をこなすなど、高度な社会では狂気の沙汰だし、1人で捜査から判決まで関わるなら冤罪も免罪もやりやすいだろう。
おまけに、私が最初に会った執務官は、軍事力である海の次元航行部隊で、切り札と呼ばれていた。悪い言い方をすれば、軍と司法の癒着に繋がる運用がまかり通っていたという事になる。
これも腐れ脳味噌の負の遺産だと言える気がするが、どう思う?」
「しかし、必要であるからこそ、今でも無くなっていないはずです!」
「作られた当時は、少ない戦力を活用する効果的な手段だったのだろう。それに、ヒーローが悪を倒すような耳触りのいい偶像として、実に利用しやすい権力を持っているとも言えるな。正義感に溢れる目障りな人材を死地に送る場合にも、都合がいい役職だ。
だが、体制そのものが限界を迎えて変わりつつある現状では、最終的に執務官制度も変わると思っている。組織改編に手を取られ、少ない人手で何とかしている間は難しいだろうし、変わるのが何時になるかなど予想出来んがな」
「……それが、最高評議会としての判断なのですか?」
お姉様、言いたい放題。
というか、執務官制度そのものをディスりまくってる。
ティーダ・ランスター本人を責める気が無いからって、それもどうよ。
「いや、私個人の感想だ。
最高評議会としての私達は、どう変えるかを指示した事は無い。今回の改革の口火を切った事でこんな立場に立っているが、期待されている役目は監視者であって、指導者ではないしな。
そもそも、私はあの腐れ脳味噌より古い存在だ。覇権主義者好みの暴力装置であり、懐古主義者好みのアンティークでもある私が権力を振りかざしたところで、碌なことにならん。未来は、今を担うお前達が作るものだ。
せっかくだ、組織を動かす力を持つために、最高評議会の座を目指してみるか?」
「最高評議会を、ですか……?」
ティーダ・ランスターは、唖然としてる。
あまりにも気軽に、重要な決断を迫られてる自覚は……あるかな?
「私は死ねないから、このままずるずると新しい組織の癌になる未来しか予想出来ん。
残念ながら私の意志で譲位する事が出来んから、代表評議会を説得してもらう必要はあるが、それさえ為せば最高評議会のメンバーが総入れ替えになる。
そういう制度になっているんだよ」
「え、しかし、やはり妨害等も……」
「私は邪魔せんし、させる気も無い。邪魔者を自認する私が、やる気がある若者の芽を摘んでどうする。
ま、別にそれを目指せと言っているわけじゃないし、犯罪者連中を叩くにはそういう道もあると知っておくだけでも意味があるかもしれん。
自分は何を目指し、その為にどの様な手段を使うのか、たまに考えてみるのも良い事だぞ。私の様に、立場に縛られているわけじゃないんだからな」
お姉様、肉を焼いている方へ移動。
少し離れてたリンディ・ハラオウンは、ティーダ・ランスターが唖然として立ち尽くしてるのを確認して、お姉様に接近。
「随分と制度を批判していたけれど……」
「本人を批判する気は無いと言っただろう。
まあ……クロノが今の話を聞いたら、ショックを受けるかもしれんが」
「どうかしらね。今のクロノは、執務官としては殆ど動いていないもの。
意外に賛同するかもしれないわよ」
「現実問題として、少ない人手で回そうとする場合は、広い範囲の権限を持つ者が必要になるのは確かだ。それに、必要な人数が増えれば増えるほど、必要な時間も長くなるしコストも上がる。それは身軽さが失われることに直結するからな。
結局は、どこでバランスが取れるか、どこで関係者が納得するか、なんだが……現状では、腐れ脳味噌の揺り返しで極端に走らなければいいがと思いながら、生暖かく眺める事しか出来ん」
「あら、温かく見守るんじゃなくて?」
「私の手は、仲間や従者達でいっぱいだ。
管理局の連中まで手を伸ばしても碌な事にならんし、知らない連中を守る気も無いからな」
どちらかというと、お姉様の力をあてにする阿呆の暴走が、碌な事にならない原因な気がする。
その意味では、必要以上には頼らない今の仲間達と、命と生きる場所を授かったという既存事実だけに基づく信仰心を持つ従者達は、このカテゴリーに入りにくい。
お姉様の選択は、きっと、結果的に正しい。
というわけで、色々と垂れ流しました。特に新テスタロッサ家は中途半端な説明で、もやっとする感じに。間取りやらを色々考えて、かなり時間を使ったのはヒミソ。
管理人さんはめぞん某刻が由来ですが、今の若い人(年寄用語)だと知らない人も多いのかな。今後登場する予定もないですし、知らなくても全く問題無いですが。
ちなみに、「教導を受けにきているティーダ」より「ゲンヤの所に来たティアナ」の方が、先にエヴァ達に会う可能性がありました。が、次話で説明する理由により、実現していません。
2016/09/10 両親が無くなった→両親が亡くなった に修正
2017/09/06 ディーダ→ティーダ に修正