青の悪意と曙の意思   作:deckstick

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蛇足:或いはこんな未来も/StrikerSだった何か2010年

 ◇◆◇ 2010年(新暦71年)04月 ◇◆◇

 

 

「付き添い?」

 

「正確には、保護者役や。

 学校の友達とか、みんなでカラオケに行こうって話になったんやけど、私らはまだ中学生や。アコノさんも誘ってるけど、高校生になったばかりで保護者としては微妙や。

 その点、大人で会社役員のエヴァさんならばっちりや」

 

 学校が始まってすぐの、休日。

 はやてが、お姉様を遊びに誘いに来た。

 

「それは構わんが。人数は多いのか?」

 

「ヴィータは参加せえへんらしいから……いつもの5人とアコノさん、エヴァさん、後は学校の知り合いとかが10人くらいやと思う。

 20人の部屋をアリサちゃんが予約してくれてるから、場所は大丈夫や。あ、全員女性やし、料金は割り勘する事になってるから、変に出してくれんでええよ」

 

「そうか。まあ、端数くらいは出すさ」

 

 というわけで、やってきましたカラオケボックス。

 いつものメンバー、はやて、フェイト、すずか、高町なのは、アリサ・バニングスに、夜月ツバサとそれぞれの同級生を加えた13人の中学生。

 主を含め、4人の高校生。

 それにお姉様を加えた合計18人が集まり、適当に挨拶した後で部屋に入ったけど。

 

「……どうしてこうなっている?」

 

 お姉様の左隣に座り、腕を絡ませてご満悦の主。

 その更に隣で笑ってるすずか。

 お姉様の右隣に座り、やっぱり嬉しそうなフェイト。

 テーブルを挟んだ向かい側から、それをキラキラした目で見る学友達。

 

「要するに、誰かさんが学校にまで指輪を付けてきたからよ」

 

「私はもう16歳。法的には結婚が可能だし、プレシアも反対していない。

 問題は、エヴァが法的には女性で、同性婚が認められていない事くらい」

 

 アリサ・バニングスによる暴露と、それに平然と補足を加える主。

 でも、お姉様は気にしてるのはそっちじゃない。

 

「いや、それも充分に問題ではあるが、指輪を渡したのは事実だし、今はいいんだ。

 問題は、そっちの連中だ。どうして百合の花が咲きそうな連中が集まっている?」

 

「延々と姉自慢を聞かされても、へこたれずに興味を持ち続けた猛者だからよ。

 それに、あんたも無駄に顔がいいじゃない。美辞麗句で膨らんだ妄想に負けない程度には」

 

 アニメ世界では意図的に不細工設定されたキャラ以外はみな程々の容姿の法則(使用2回目)はちゃんと発動していて、学友達の外見も別に悪くはない。

 お姉様達は、そこからもう数歩、見た目がいいというか、存在感があるだけ。

 それでも、美形という事実に間違いは無いわけで。

 

「アリサちゃん……そんなエヴァさんと対等に話せるくらいの度胸と根性があるから、お姉様なんて呼ばれるんだよ?」

 

「ぐっはぁっ!」

 

 ああっ、すずかのツッコミで、アリサ・バニングスが大変な事にっ!

 テーブルに突っ伏して、ぴくぴくしてる。

 

「んじゃ、質問いいですか?

 あ、私は聖祥大学付属中学校3年生、クラスメイトの朝倉知世です」

 

 手を挙げたのは、どこかで見たような気がする感じ……具体的には魔法先生ネギま!の朝倉和美を腰までのウエーブヘアに変えたような人物。

 何故かビデオカメラを持ってる。

 

「まあ、答えられるものなら。だが、言いふらすのは感心できんぞ?」

 

「うっ……なのはちゃん、新聞部を全否定されたー!」

 

「だから言ったのに……あんまり詮索しない方がいいよって」

 

「なのはちゃんも何だか謎が多いしなのはちゃんの両親の年齢も不詳だしアリサちゃんも何だか大きな家で秘密がありそうだしテスタロッサな人達は謎だらけだしー!」

 

 何だこのカオス。

 とりあえず、そこの高校生。タイミングを狙ったかのように、ミステリアスガール♪とか歌ってないで。

 どこの猫目さんだっつーの。

 

 

 ◇◆◇ 2010年(新暦71年)05月 ◇◆◇

 

 

 今年もやってきた、生徒と隊員交代の時期。

 ついにと言うか何というか、クロノ・ハラオウンが親衛隊の地球側の業務に入る事になり、今年の生徒や新しい隊員達と一緒に移動してくることになったらしい。

 最高評議会の業務については今まで通り親衛隊経由で行うから、クロノ・ハラオウンと直接顔を会わせやすくなる程度で、お姉様としては特に変化なし。クロノ・ハラオウン自身は、本部に残してきた補佐官に遠隔で指示する事になるから少し面倒になるそうな。

 それでも挨拶はしたいという事で、親衛隊長のリンディ・ハラオウンとエイミィ・リミエッタ、近衛騎士団のカリム・グラシア、アルフとザフィーラの教師役2人、お姉様、プレシア、リインフォースの最高評議会3人が……

 

「いやぁ、そろそろクロノ君も日本基準で成人ですし、年貢を納めるのでしょうか。

 原作やあちらの並行世界では、そろそろだったと思うのですが」

 

 ……3人と1変態(ロリコン)が、アースラの転送ポートまで足を運んでる。

 なんでコイツまでいるんだろう。

 

「この世界でどうなるか以前に、現状すら不明だし、どうでもいい。

 それより、どうしてこんな所にいる?」

 

「どうも私に関係しそうな事がありそうな予感がしたのですよ。

 勿論、得た情報からの推測等も含めた判断ですから、当てずっぽうではありませんよ」

 

「ふん、とりあえず余計な事は言うな。

 それで妥協しておいてやる」

 

「結構です。では、変な事を喋らない為に、このマスクでも……」

 

「やめんか!」

 

 赤いバッテン印の付いたマスクを手にした変態(ロリコン)をお姉様が殴り飛ばしていると、20人近い人数が転移されてきた。

 今回の転送は4回に分けて行うらしく、1回目と2回目は親衛隊の隊員と、新設された直近護衛部隊員。前回の襲撃時、親衛隊と近衛騎士団は「管轄の場所=最高評議会の居住地近辺の警備」の為に現場に居ることが出来なかった事と、ミッドチルダ地上本部で再び大嵐が吹き荒れた事に対する時空管理局としての結論が直近護衛部隊(これ)。ついでに、親衛隊と近衛騎士団の権限も増えたりしてる。

 

「お久しぶりです。

 直近護衛部隊、隊長クイント・ナカジマ以下35名。只今を以て、着任いたします」

 

 ……とっても見覚えがある顔は、ある意味仕方ない。

 直近護衛部隊の設立案の時点で、統幕議会と聖王教会に直談判して、この地位をもぎ取った行動派の英雄だし。

 真の希望理由が、状況(夫の単身赴任状態)が変わらないなら自分(の立場や勤務地)を変えればいいじゃない、というものだったりするけど。

 愛されてるねぇ、ゲンヤ・ナカジマ。

 陸士訓練校で寮に入ったギンガ・ナカジマと、今度はランスター家に行ってるスバル・ナカジマも、母の行動を応援したらしいし。

 取り敢えず、設備的に親衛隊に間借りする事になるし、立場上は親衛隊と近衛騎士団の下となる直近護衛部隊は、カリム・グラシアとエイミィ・リミエッタに連れられて移動。

 

 3回目は今年の生徒達のみで、教官と有望な若手と研究職の組み合わせ。とりあえず簡単に挨拶した後は、アルフとザフィーラに引き連れられて移動してく。

 続く、4回目の転送は。

 

「クロノと……妙なのが3人?」

 

 お姉様が訝しがってるけど、確かに妙な老人と老人と幼女がいる。

 3人は転送直後に平伏してるし。どっかの民族衣装っぽい格好だし。

 お姉さまも、プンプンする心当たりのにほいのせいで頬が引きつってるし。

 

「とりあえず、先に挨拶だけはさせてほしい。

 クロノ・ハラオウン執務官、只今を以て親衛隊本体へと合流し、現地での任務遂行に当たります」

 

「クロノも、そんなに固くしなくてもいいのに」

 

 びしっと敬礼してるクロノ・ハラオウンに比べ、リンディ・ハラオウンの脱力っぷりが酷い。

 一応形式としては重要なのに。部外者もいるし。

 

「さて、積もる話もあるだろうが……その3人は何だ?」

 

「ああ、君達の力を借りたいそうだ。

 今回の特別枠候補で、正式採用となるかは返事次第という事になっている」

 

「随分と回りくどいやり方だな。押し込むには問題がある人物か?」

 

「相談を受けたのがギリギリで、本来の手順では間に合わなかったんだ。今まで時空管理局と距離を取っていた関係であまり良い関係を築けていなかった事もあって、むしろ良かったとも言えるんだが。

 実際は旧最高評議会関係の組織と敵対していただけだから、誤解等は解消している。それでも、この教導は競争が激しくて、後ろ盾が大きくないと押し込むのは難しい。求める助力の内容が特殊と言う事情もある」

 

「それで経緯や状況を盾に、直接話をしに来たという事か。

 まあいい、話を聞こうか」

 

「は、はい。

 私は、アルザスのルシエの民を纏めている者でございます」

 

 はい、キャロ・ル・ルシエきたー。

 原作の追放処理よりは随分とマトモな手段だとは言える。

 お姉さまにとっては、突然で経緯が意味不明なだけで。

 

「話は概ねわかった。

 クロノ、どういう経緯で連れてくる事になった?」

 

「聖王のゆりかごを起動した際に、飛竜に先導させただろう。

 それを知って、その力があるなら彼女を導けるのではないかと思ったそうだ」

 

「……またか変態(ロリコン)! これも計算した結果か!?」

 

「はい、いやまさか」

 

「認めたな!? 一度認めただろう!!」

 

 はっはっはっと笑ってる変態(ロリコン)の首を、お姉様ががっくんがっくんと揺らしてる。

 その様子を唖然と見てる、ルシエな3人。

 碌に説明してないのに、どんどん話が進んでるというか、脱線していくというか。

 

「はぁ……まあ、取り敢えず、キャロは預かる方向でいいんだな?

 力の制御方法を教える事と、一般的な教育を受けさせる事……他に何か希望はあるか?」

 

「は……い、いえ、充分でございますが……」

 

 自分達には過ぎた力だからとかブツブツ言ってるけど、お姉様に聞こえてない。

 というか、声になってない。

 

「お前達の事を知っているのは、あれだ。色々な報告が飛び交っている中で耳にしたとか、そういう感じだ。

 飛竜の100や200でどうにかなる私達ではないから、その辺は安心してくれていい。母親役は……すまんがプレシア、頼めるか?」

 

「やっぱりその方向になるのね。

 他に適任もいないし仕方がないけれど、家族にどう説明するの?」

 

「ありのまま言うしかないだろう。

 あいつらの事だから細かい事は気にせず、妹が出来たと喜びそうだしな」

 

「確かにそうね」

 

「それなら、受け入れが決定したと関係者に通達しておく。

 詳細の打ち合わせや調整も可能な範囲でしておくが」

 

「ああ、その辺は任せる。

 当面の住居は……必要なら別荘に何か用意するが」

 

「その方が助かる。一応は封印処理をしてあるが、不安定なんだ」

 

 拒否して放逐でもされたら後味が悪いにもほどがあるし、というお姉様の呟きや、細かい事では……と平伏したまま頭を抱えてる爺さんは無視して、話がどんどんまとまってく。

 取り敢えず基本方針が決まったところで、お姉様は、まだ一言も喋ってないキャロ・ル・ルシエの頭にぽんと手を置いて。

 

「そんなわけで、歓迎するぞ、キャロ。

 取り敢えず、怖がらなくていい事を実感してみるか?」

 

 うん、どう考えても、魔改造で最終的にテスタロッサ家入りするフラグです。

 はやてが嬉しそうに歓迎会を開く様子が目に浮かぶようだ。

 

 

 ◇◆◇ 2010年(新暦71年)07月 ◇◆◇

 

 

 キャロ・ル・ルシエがやってきてから、2か月。

 その間、割と大変だった。

 盛大に行われた歓迎会で、キャロ・ル・ルシエが目を回してたり。

 ついでにと呼ばれたクロノ・ハラオウンとユーノ・スクライアが、隣にエイミィ・リミエッタと高町なのはを置いてからかわれまくったり。特にキャロ・ル・ルシエが眠気に負けた後は、並行世界でようやく夫婦になった【ユーノ・スクライア】と【高町なのは】──両方が有名すぎたため表向きは別姓のままらしいけど──ネタで盛り上がったり。

 フリードリヒ(大)が、ドラコに完敗したり。

 別荘ではヴォルテールを呼べず、一度ルスターで召喚してから別荘に連れ込んだり。

 ヴォルテールが、変態(ロリコン)の幻術に完封されたり。

 寝ぼけたフリードリヒがリインフォースに噛み付き、でこピンで地に伏す羽目になったり。

 全力のフリードリヒとヴォルテールのコンビが、お姉様に手も足も出なかったり。

 同じコンビで、戦闘訓練させてほしいと出張ってきたアルクにも簡単に叩きのめされたり。

 竜達がぼこぼこにされてる横で、ルーナやアリシアに猫可愛がりされてあわあわしてるキャロ・ル・ルシエがいたり。

 うん、特に大変だったのは、キャロ・ル・ルシエの賑やかな仲間達でしたが何か。

 住んでた辺りの地形もちょっと変わってるけど。

 それでも“暴走すると危険な力”を簡単にねじ伏せ、それ以上の事を仕出かす人達を含む大勢に可愛がられる生活は、抑圧されないという心理的な余裕を生むわけで。

 

「普段の制御は及第点か。荒事に巻き込まれる予定は無いし、この調子なら外に出ても大丈夫そうだな。

 心配なら、もう少しマシな封印の準備もしておくが」

 

 結果として、多少動揺したくらいなら暴走しなくなった。

 暴走しても無駄だと思い知らされた、とも言うかもしれない。

 

「えっと、お願い……します」

 

「そうか、解った。

 あと、この世界や管理世界に行くときは構わんが、私達が住む地球には魔法が無いし、飛竜もいない。そこに行くときは少し窮屈な思いをさせるが、その辺は我慢してくれ」

 

「いえ、大丈夫、です」

 

 未だに遠慮がちというか、お姉様に対しては借りてきた猫的な態度が抜けてない。

 とはいえ、別荘の住居区付近に住めるようになるのは大きい。

 元々が自然と生きる部族で、私達が常に傍にいたと言っても、人と触れ合いにくい環境に長くいるのは良くない。例え、毎日誰かが来てると言っても。

 

 

 ◇◆◇ 2010年(新暦71年)08月 ◇◆◇

 

 

 恒例行事になりつつある、モンディアル家の別荘旅行。今回はキャロ・ル・ルシエも参加。

 竜が暴走した時に対処出来る戦力が多い場所にいた方がいいとか、通常の生徒ではないとか色々理由を付けてたけど、すっかり妹ポジションで落ち着いてるのが最大の理由。

 一番構ってるのがルーナとアリシア、続いてアギトやヴィータというあたり、設定年齢か本来の外見年齢が近いという理由もあるだろうけど、どれだけ年下が欲しかったんだと小一時間問い詰めてみたい。

 今年もアルフとザフィーラとエイミィ・リミエッタは留守番だし、それに付き合ってかクロノ・ハラオウンも留守番組。

 そんなわけで、テスタロッサ家メンバーとしては1人増えただけ、全体としては直近護衛部隊も増えた状態で、やってきましたモンディアルな別荘。

 

「今年もようこそおいで下さいました」

 

「おいでくださいました」

 

 出迎えに出てきたソリオ・モンディアルと、その子であるエリオ・モンディアル。

 でも、挨拶をした後、エリオ・モンディアルが固まってる。

 キャロ・ル・ルシエを見ながら。

 

「ああ、今年も楽しませてもらう。

 ところで、あれはいいのか?」

 

「うーむ、若さとは良いものです。

 いかがですか? 我が子ながら、真っ直ぐに育っていると思いますが」

 

「キャロは本人が持て余している力を扱えるよう指導しているだけだし、他人の恋愛に口を出す気は無いぞ。そもそも、預かっているだけで私達の家族ではないしな。

 目障りなタイプや脅迫やらの後ろ暗い手段を使うような下種なら叩き潰すが、それだけだな」

 

「ははは、なかなかに手厳しいですな」

 

「エヴァンジュが過保護者と呼ばれる理由、理解してもらえたかしら?」

 

「それはもう。プレシア様が以前仰っていた通りです」

 

「……何を言ったんだプレシア」

 

「事実を伝えただけよ」

 

 事実だけで充分に過保護だし。というか、お姉様の実態はかなり知られてたりするし。

 ジュエルシード事件から管理局の革命までの辺りが何度も映画化やドラマ化されてるのは、お姉様も耳にはしてる。意図的に忘れたがってるだけで。

 ただ、実際の映像が多々使われてる、成人指定とされた某ドキュメンタリー映画に関しては知らないはず。キャッチコピーが“お前達のいない未来など、私は認めない”で、成人限定の理由が負傷流血身体崩壊を全く隠してないからという、暴走ナハトヴァール戦の実際の映像をほぼノーカット収録した、お姉様にとっての問題作は。

 変態(ロリコン)と変態博士とプレシアと某ネコミミな時空管理局員がノリノリで全面協力したという辺りも含め、隠されてる理由をお察し下さい。

 

 

 ◇◆◇ 2010年(新暦71年)11月 ◇◆◇

 

 

「ついに明日か。だが、本当にこっちでやってよかったのか?」

 

「いいんじゃない? あっちだと、テロ対策やら野次馬対策やらが凄い事になりそうだからさ」

 

 お姉様は現在、ハラオウン家でエイミィ・リミエッタと雑談中。

 家主のリンディ・ハラオウンは、アースラで親衛隊の業務中。

 クロノ・ハラオウンは、打ち合わせとかで留守にしてる。

 だから、今ここにいるのは、お姉様とエイミィ・リミエッタと。

 

「お姉ちゃん、飲み物はここに置けばいいかな?」

 

 お姉様についてきたフェイトを含めた3人だけ。

 フェイトは3年前までここに住んでたし、勝手知ったるという事でお手伝いを買って出てた。

 

「ああ、有り難う。

 確かにクロノも私も、名前が売れすぎているか。騒動を起こさないよう小さくやるなら、こっちで済ませた方が楽そうだが……形式やらはいいのか?」

 

「騒ぎが大きくなる以上に、招待客の事を考えると形式に拘ってられないって。

 最高評議会と聖王が来ちゃうんだよ? 時空管理局も聖王教会も下手な人を送れないとかで、調整に数か月とかかかっちゃいそうだし。

 さすがにそれだと……ね?」

 

「出来婚の辛いところか」

 

 というわけで、明日に迫った結婚式の話。

 経緯を纏めると。

 5月、クロノ・ハラオウン、現地(地球)に着任。

 8月、お姉様達がモンディアル家の別荘へ。リンディ・ハラオウンが同行し、クロノ・ハラオウンとエイミィ・リミエッタが地球側の維持管理や教導等を担当。この際、クロノ・ハラオウンがエイミィ・リミエッタに食べられる。

 10月、妊娠発覚。

 11月、結婚式。いまここの直前。

 

「でも、随分と積極的……だよね?」

 

「あはは、私だって、色々と……ね?」

 

「リンディに反対する気があるなら、何年も息子の補佐官と同居していないだろう。

 というか、襲うとは思わなかったぞ。性別が違う双子だから、排卵誘発剤すら疑ったが」

 

「あれ? 男の子と女の子なんだ。いつの間に……

 でも、薬は反則でしょ?」

 

「シャマルに診断されている時だ。私もいた時があっただろう? というか、シャマルも気付いていて、既に話していると思っていたんだが。

 これは知っていると思うが、自然な妊娠での異性双生児は、かなり率が低いんだぞ」

 

「この世界のお医者さんじゃまだ判断出来ないのかな。魔法の診断は経過を確認するだけって言ってたから、その辺まで気が回らなかったとか?

 それはそれとして、本当に薬は使ってないって。本局でちやほやされてるのを聞いてたら、腹立たしいというか、何で私が隣にいないんだというか……しかも、帰って来たって相変わらずの鈍感系のくせにやたら背も伸びてるし?

 それで盛大に喧嘩して、気付いたらこんな事になってたってわけよ」

 

「いや、こんな事と言われてもな」

 

「そう、なんだ……」

 

 はっはっは、なんて笑いながら暴露してるけど、お姉様達にここまで言っていいのかなぁ。

 フェイトも顔を赤くしながら聞いてるし。

 概要は既に主要な関係者には知れ渡ってるから、手遅れだけど。

 

「まあ、本人同士にその気はあったんだろうし、それはそれで切っ掛けとしては良かったんだろう。

 というか、明日のサプライズで、クロノが倒れないかを心配した方がいいかもしれんぞ」

 

「日本の結婚式って、宗教を無視した形だけでいけるから気楽だよねぇ。

 ヴィヴィオ様~って牧師役を頼んだ時も、冗談のつもりだったし」

 

「様付けだけは嫌がられたがな。それでも本人はノリノリだし、どうせキリスト教の信者でない夫婦の結婚式に来る牧師は、それっぽい外見のバイトだ。止める理由が思い付かん。

 それに、管理世界を知っている裏の連中ほど、反対出来んだろう。聖王教会の生き神様が自ら出てくるんだからな」

 

「そう考えると、贅沢だよねぇ……」

 

「絶対に別れられない、かも?」

 

「大丈夫だって。最悪でも寿命ってもんがあるし、子供っていう(かすがい)もあるんだから、問題ないない。

 フェイトちゃんだって、永遠を誓って眷属になったんでしょ?」

 

「そ、それは……うん……」

 

 どうして、そこでフェイトの顔が赤くなるんだろう(すっとぼけ)。

 少なくとも当初は、恋愛的な意味は無かったはずなのに。

 親愛属性の眷属化にも、そんな効果は無いはずなにのに。

 

「まあ、これで前例が出来るからな。もしカリムが結婚するなら、嬉しそうに行こうとするんじゃないか?

 聖王教会の上層部がひっくり返りそうだが」

 

「カリムちゃんは立場を理解してるから、大丈夫じゃない?」

 

「それもそうか」

 

 そんな、一部以外にとっては平和な結婚式。

 本番でクロノ・ハラオウンの意識が飛びかけた事以外、平和に終了。

 出番を譲ったカリム・グラシアが目を輝かせて牧師役のヴィヴィオを見てた辺り、本当に聖王が好きなんだねぇと思っておく。

 ……まさか、こんなとこにまで百合の花は咲かないよね?




StrikerS用フラグ(キャロ)回収デス。仕込みはお父さ~ん。
なお、ゆりかごの時以外でも仕込みに動いています。変態(ロリコン)の暗躍(?)はとどまることを知らない。


StrikerSのフラグ(クロノ、エイミィ)回収デス。仕込みは(禁則事項)
5年以上も未来の姑(リンディ)と同居していたという実績が、有象無象に文句を言わせません。その期間の大半はプレシアやフェイトもいましたが。
なお、クロノには牧師役はカリムだと説明されていました。ヴィヴィオだと騒動になるという理由付けで、他人に見せるための写真(前撮り)もカリムが牧師役で撮影してあります。


直近護衛部隊に関しては、襲撃対策が本人達の自衛能力に依存するのは大問題、現状の戦力では居住地の警備以外に回せる戦力が少なすぎるという建前の下、ついでに教導もしてくれるんじゃないかという期待、まともな戦力を送る言い訳が出来た(聖王教会限定)、新最高評議会と美形な仲間達のファンクラブからの「美少女の手を煩わせてんじゃねーぞ、てめーらが動かねぇなら俺達が勝手に組織すんぞ」という声が危険水準に達した、等の思惑や理由で、結成が行われました。
それでもあまりに多いと拒否されるので、管理局と聖王教会両方が関与する、10~12人程度の分隊×3の小隊相当の規模となっております。


2015/09/11 17人→18人 に修正
2016/05/07 フィリードリヒ→フリードリヒ に修正

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