◇◆◇ 2013年(新暦74年)09月 ◇◆◇
「で、新型の装備……の前に、山の方に居たアレは何だ」
お姉様は再びアルクに呼ばれて、別荘チタマにあるアルクの官邸へ。
今日のお題は、新型装備。
だけどお姉様は来る際、遠くに見えたナニカが気になる模様。
「山の……ああ、あの子達ね。
キャロの飛竜を真似て作ってみたんだけど、いい出来でしょう?」
「確かに単純性能だけならドラコ並みに見えたが、そっちは
もう1頭……数え方は頭でいいのか? まあいい、もう1頭いたアレは何処から出てきた。
「神龍の方? 心配しなくても、似たようなナマモノがいるわよ。
原作のシグナムが蒐集しようと戦っていた相手に、似たようなのがいたでしょう? 地球から個人で転移出来る範囲にいるはずという事で、ちゃんと探して、見付けてあるわ。
取りあえず、これが2人のスペック表よ」
「要らん。と言うか、数え方は人なのか」
スペックを確認すると……うん、飛竜の方はドラコを少し肉体派にした感じで概ね互角。但しドラコやフリードリヒと違って、手がある。ゲームとかで一般的なドラゴンに近いから、別の呼び方の方がいいのかもしれない。
神龍は魔法関係に全振りで、
「名前だけれど、飛竜はバハムート、神龍はカドゥルーよ。
共に女性で、王になってもらってるわ。ハイエルフ達のような立場ね」
「……こいつらも増やすのか」
「もちろん。人型の種ほどは増やさないけど、戦力として当てに出来る数は揃えるわ。
転移方法が開発された時に、お母様に頼らなくとも別荘の2惑星を防衛出来る戦力を揃える事が目標だもの」
「不要だと思うんだがなぁ。
そもそも、魂はどうした。人のものは適合出来そうにないし、他の生き物のものでは理性が欠けるだろうに」
「これは私達の自己満足で、材料が無いなら具現化で作ればいいじゃない。
見せ札として使う事も考慮しているから、必要だと思ったら遠慮なく使ってね?」
「無茶しやがって……使う場面が思い付かんぞ」
お姉様がため息をついてると、ドアがノックされた。
「アルク様、お茶をお持ちしました」
「ありがとう。入って」
「はい」
そして、入ってきたのは。
「……猫耳?」
「まだ直接眷属の女性2人しか作ってなくて、それも調整中だけどね」
「初めまして。マレットと申します」
頭を下げ、お茶を置いてくその姿と声は。
某ビオレさんそっくり。
「2人……女性2人か。もう1人はレオなのか」
「シェリー様ですか?
モデルは確かにレオという方だと聞いていますが」
「はぁ……やってしまったのか。犬耳も作っているとか言わんだろうな?」
「勿論言うわよ。
ミルヒちゃんとか、可愛いし」
「確定なのか。これ以上作っていないだろうな?」
「えーと、他は……そうそう、狼がもうすぐ目処が付くわ」
「狼? 犬耳とは別にか?」
「ええ、狼よ。
見てもらった方が早いかしらね。おいで、マテラス」
アルクの転送魔法で呼ばれたのは……うん、確かに狼。
アルフやザフィーラの狼形態とほぼ同じ大きさで、純白の毛並。
当然のごとく、魔力も高い。
「お初にお目にかかります、創造主様」
伏せに近い感じで頭を下げてるし、女性の声だし。
静かに佇む姿には、気品すら感じられる。
「……あれか。狼が大神で天照とかいう発想なんだな。
というか、私の事は名前で呼べ。創造主なんてガラじゃない」
「それではエヴァ様、と」
そんな話をしつつも、思わずといった感じで
「ええ、そうよ。
太陽神の由来に負けない能力に仕上げる目途は付いてるけれど、もう少し調整が必要ね。
相棒のフェンリルはその後に取り掛かる予定よ」
「そっちは、そのまま……というか、マテラスの方が特殊なのか?
バハムートは有名過ぎるからいいとして、カドゥルーの由来は?」
「インド神話、蛇神ナーガの母よ。発音の揺らぎとかもあるけど、一応はそのまま使ってるわ。
マテラスはあれよ。天照の名は別件で使おうと思って」
「増やすから母なのか……」
ここに来てから何度目か数える気にもならない、お姉様のため息を見なかった事にして。
というか、新しい眷属達の話が既に別件だから。
「というわけで、お母様に来てもらった、本来の用事なんだけど。
私達で、色々と研究してた成果が出来たから、見てもらおうと思って」
「あいつらだけで、お腹イッパイなんだが」
「大丈夫、貰った原作情報も考慮した、デバイス発展形の様なものだから。
具体的には、対AMFや対EC、要するに魔法阻害系技術対策も考慮した装備って言っていいかしらね」
具体的には、中止のお知らせが届いてるForceで使ってたAEC装備のような。
取り敢えずとして、結界や戦闘機人システムを参考にした外部干渉に強い構造、構成によっては質量兵器やカートリッジ代わりの小型駆動炉等も採用する。
「ちょっと待て、機動スーツでも作るつもりか?
それに、質量兵器は色々面倒だぞ」
「そこまで大きなものじゃないけど、近いものはあるわね。
だけど、Forceだと魔法で氷塊を作って物理攻撃をしようとするし、鉄球を撃ち出すヴィータもいるんだから、魔法で砲弾を作って撃ったっていいじゃない。
少なくとも、AMFとかで色々妨害されてる時に使える手段なら」
「言い訳だなぁ……」
「使わずに済むのが理想、見せ札や警告射撃レベルで済めば及第点。どこかで実験はしたいけど、本格的に実戦投入するには色々と未完成ではあるわね。
それでも私達は、お母様と共に歩みたいの。傘の下で安穏としてるなんて、我慢出来ないのよ」
「全く……私達の安住の地を維持する事だって、簡単な事ではないだろうに」
「ええ、全くその通りよ。
だから、安住の地であり続ける為に、外敵が現れた時に慌てなくても済む力を望んでいるの。
ついでにこの装備は、日常でも危険な作業をする場合なんかにも役に立つしね」
明らかに、日常で使うにはオーバースペックだけど。特に対AMFの部分とか。
ただ、絶対という事は、あり得ない。
別荘の世界が、絶対に侵入出来ないとは言い切れない。
要するに侵入方法が見付かった時、お姉様や私達だけで対処する事に、アルクや従者達が異議を唱えてるという事。
「……何度も言っている気がするが、そこまで頑張る必要は無いんだぞ」
「あら。私達の存在意義で、自分達の安全を守るためでもあるのに。
特に本星の従者は戦争をしてた頃から居るんだし、チタマの従者も素材は当時のものでしょ? 力無き者が虐げられる現実を知っていれば、弱者でいる事に何も思わないわけがないじゃない」
「解った解った。
で、どんなのを作ったんだ?」
お姉様が意見を受け入れた……というか、説得を諦めた。
うん、この辺までがいつものやり取り。ある意味テンプレート。
さて、本番いっくよー。
「そうね、見てもらった方が早いわ。
隣の部屋に用意してあるから、行きましょ」
場所も変わって。
実物を目の当たりにした、お姉様の表情も変わった。
ぽかーんとしてる。
「えーと……」
「これが全力稼働する時の姿で、製造時に物理的な作り込みを行うために必要な大きさを確保するための形でもあるわ。
変形としては、待機状態がブレスレットとかのアクセサリー、移動や魔力の補助だけの限定起動状態と、この姿の完全起動状態の3つが基本かしらね。
設定する機能や構造によっては、限定起動状態を無くしたり、変形自体をオミットしたりする場合もあると思うけど」
「……それは、まあ、いいとして。
名前は?」
「
まあ、少しは某インフィニット・ス「アウト」……言わせてもらってもいいじゃない」
いや、最初に目に入る位置に置いてあったのは、まさにアレと言っていい形だし。
下半身が重厚というかまともに足を動かせるのか心配になるレベルで、翼に見立てたような巨大肩部装甲がある辺りが特に。
「これは一応、機装という区分で呼んでるわ。どちらかと言えば機能や出力よりも機動力を重視した、航空機の様な運用を目的にしたものよ。
例えばこれは
方向性で言えば、死なない事、最悪でも檻を食い破って逃げれる事。
その為の力として、敵を倒す能力も持っている感じ。
「……で、その隣の、戦艦を切り貼りしたようなのは?」
「あれ、艦隊娘コレクティブは知らない?
戦艦とか駆逐艦とかを擬人化したゲームなんだけど」
「やっぱりアレなのか……軍艦、なのか」
でも、艤装とは呼ばない。
装備するのは、人だから。
「軍艦を装備するから、艦装と呼んでるの。機動力を犠牲にして、大出力で大規模な機能を組む事を想定してるわ。
これの簡易版として、生存と移動に必要な機能と、人が運べる程度までの小型化に成功した駆動炉をパッケージにして、リュックやランドセルの様に背負えるようなものも計画中。日常用で、変形機能もオミットするのがこれね。
大出力のものは……色々ね。治療設備丸ごととか、大型の砲とか。46センチ砲も理論上ではいけるわ」
「日常用や治療設備はともかく、発射の衝撃だけで人を殺せるものを装備させるな。
というか、サイズがオカシイだろう」
「実際に1.5トンの砲弾3発を40キロ以上飛ばせるようにするつもりだけど、少し時間差で発射して、数秒後に本来の砲弾サイズに戻すから大丈夫よ。
いくらなんでも、2000トン以上ある本物の砲塔を背負わせるわけにもいかないでしょ?」
「どっちにしても、普通に無理があるからな。
で、これは誰のなんだ?」
「
構想としては、私のと連携して別荘から部下を直接転送するポート役も考えてるわ」
「どこかに攻め込むつもりか?」
「お母様は外で活動してるのだし、何かあったら駆けつけたいでしょ?」
「そんな事態は、無いと思うんだがなぁ……」
お姉様は困った顔をしてるけど、あってほしくない事態に備えるのが、軍隊の役目。
別荘チタマを統率し、技術開発やらに関しては別荘本星の従者達も巻き込んでるアルク。
屯田上等、むしろ全力で屯田兵化を希望する別荘の住人達。
混ざったらこうなった。
「杞憂で済んで良かったと言えるから、無い方がいいのよ。
次の説明に進んでもいい?」
「銀色の輪もそうなのか?
他の2個とは随分と毛色が違うが」
「ええ。あくまでも魔法の行使を重視して、主に妨害対策の機能を詰め込んでるわ。
魔装って枠の名前も付けてあるし、これは
「何か問題でもあるのか?」
「ぶっちゃけて言えば、対AMFや対ECの防護機構と、魔法の強化機構の検証用に近いのよ。駆動炉もオミットしてるし。
広域魔法を撃ち込むためにAMFを押し返して魔法を使えるエリアを作ったりする能力はあるけど、敵味方を問わずに割と広い範囲で魔法が使えるようになるから、使い勝手が微妙なのよね。
殆どのインフィニット・シェルに対AMFとかの機能を持たせるから、AMFの無効化そのものが利点にならない場合もあるし」
厳密には、広域に対AMF結界を展開する為に、切頂八面体で空間充填的な仕切りいっぱいの結界を作る点が特殊能力。艦装や機装は自分が魔法を使う為の機能として装備してるから、仕切りが無く狭い結界を想定してる。
魔力の強化は、超強化ミッドチルダ式デバイスみたいなもの。艦装や機装でもサイズと出力にものを言わせれば実現可能だけど、他の機能が犠牲になる。それに、そこまでの強化が必要なのかという疑問を解決する必要がある。
「単純な魔法の補助なら、普通のデバイスやカートリッジでもいいわけだしな。
ここまで大掛かりな物を作る利点が薄いわけか」
「リュックタイプの艦装の方が、作りやすい上に使用者が限定されにくいから。
そんなわけで、魔装は少なくなると思うわ」
ついでに趣味や浪漫に走ったのは内緒。
「その辺は、実用性重視なのか。
作っているのはこの3種でいいんだな?」
「厳密に分類するなら、元々AMFの影響が薄い戦闘機人用の派生品があるわ。具体的には、クアットロさん用の、機装をベースに広域探知と探知妨害の補助を重視した機体ね。
対AMFや対ECの情報を蓄積する為に、協力してもらってるのよ」
「あいつまで関わっているのか……スカリエッティもか?」
「当然よ。大艦巨砲は男のロマンだとか言いながら、嬉しそうに砲撃部分を開発してくれたわ。
AMF環境下での移動能力は、戦闘機人の飛行システムを参考にしてるし」
「なるほどな。
で、ここまでやっているんだ。お前自身のものも作っているんだろう?」
お姉様の、じと目!
アルクは、ちょっと怯んだ。
「え、えーと……まだ構想しか無い上に、付ける機能も研究中と言うか……」
「今更怒りはせんから、言ってみろ」
「私も一応は別荘と他の世界を繋げられるから、それを安定させて、お母様やチャチャさん達の手を煩わせずに眷属達を移動させられたらなぁと……」
「……それで、転送時の座標特定で
内容的に、艦装で空母でも名乗るつもりか?」
「駆動炉とか無くてよさそうだし、内容が特殊すぎるし、神装とか宮比とか呼ぼうかなぁって……
ダメ?」
アルクの、不安気な上目遣い!
あざとい。実にあざとい。
「神で宮比……確かアメノウズメ、だったか。
まさか、私のが天照なのか?」
「内容は全く決まってないから、名前の予約だけよ。
……本当よ?」
「全く……やるなとまでは言わんが、やり過ぎだ。
もうちょっと自重してくれ」
「何かあってから後悔したくないから、全力なのよ」
「……そうか」
自重に関しては、お姉様も人の事は言えないし?
流石親子、こんなとこまでよく似てる。
アルクが各人用
※一部は構想や名前のみ。
※実物があるものも、アルク的には未完成。
カシス 機装:紫電
ラフィー 艦装:日向
シャマル 艦装:明石
アコノ 艦装:大和
ケイナ 魔装:銀輪
クアットロ 機装:セントリー
アルク 神装:宮比
エヴァ 神装:天照
アルクが「リュックやランドセルの様な」と言っているのは、某駆逐艦娘達から「兵装部分」を取り外した感じで。
その他、アルク作っているとばれた配下(名前に意味は無い。ないったらない)
飛竜(手があるため
神龍(ぼおや~良い子だ、パンティをくれ)
大狼(どこからともなく謎の筆を取り出したりはしますん)
カニディーテイル(イヌ科ミミ。狐もいるよ?)
ファリディーテイル(ネコ科ミミ。もちろん虎や獅子もアリ)